2023年6月26日

ウズベキスタン アラル海 の海底を緑にする緑化プロジェクト本格始動

  • ウズベキスタン
  • 海外スタッフ
  • OISCA College LTD.の冨樫智です。

    今春から本格的に アラル海 での緑化事業と薬草栽培プロジェクトがスタートしました。

    アラル海という場所は、皆さまご存知のように、かつては世界第4位、琵琶湖の100倍もの広さがありました。しかし、年間降雨量がわずか100ミリのアラル海に注ぐアムダリア川の水が、流域の綿花栽培の灌漑によって徐々に減り、アラル海の水量は、かつての1/20までに干上がってしまいました。

    普段、私たちが着ている綿の約10%は、このウズベキスタンで栽培されたものだといわれています。まったく遠い国の話ではありません。

    私たちオイスカができることは、緑化技術で沙漠化したアラル海に緑を戻すことです。

    これまで同じような環境の内モンゴルで20年培ってきた植林と薬草栽培技術をウズベキスタンでも普及させることで、緑のアラル海を実現していきます。

    (内モンゴルでの植林事業はこちらの論文をご覧ください ↓↓

    <海外の森林と林業 No. 96 (2016)> 牧民の自発的参加型アプローチによる砂漠化防止植林
    -内モンゴル・アラシャンにおける NGO オイスカの事例より- 冨 樫 智
     )

    緑化プロジェクトのスタートにあたって思ったことがあります。

    このあたりは、5000年前にメソポタミア文明が栄えた地域の近くで、当時の代表的な文学作品であるギルガメシュ叙事詩の中には、もののけ姫のシシ神のモデルになったフンババという森を守る番人が登場します。

    フンババはギルガメシュらに殺されてしまい、森の木を切られてしまいます。町は発展しましたが、木を切られてしまったことで、塩害と沙漠化で文明も滅んでしまいました。

    この話は最古の自然破壊の話とされているのですが、この話の続きとして、ギルガメシュは海底にある不老不死の薬草を探す旅に出ます。しかし、この香りに寄ってきた蛇に取られてしまいました。

    プロジェクトで手掛けようとしているのは、まさに聖武天皇が不老不死の薬として飲んでいたといわれるニクジュヨウという薬草です。かつてアラル海の海底だった場所を歩いていると、砂漠地帯に生息するアカザ科のサクサウールという灌木の近くに不老不死の薬草、ニクジュヨウが顔を出していることがあります。ニクジュヨウは、日本では厚生労働省により生薬や医薬品として認められれる種類もあり、養命酒など、既に様々な製品に使われています。サクサウールの植林とニクジュヨウの栽培を組み合わせることで、緑化と同時に住民の生計向上にもつながり、持続可能な緑化プロジェクトとなることを目標としています。

    最古の自然破壊の話となっているフンババが守っていた森を元に戻すという歴史的な教訓の意味としても、重要なプロジェクトになると思っています。

    サクサウールに寄生するニクジュヨウをヘビが守っていました

    前年度までのプロジェクト形成調査を経て、今年4月から本格的にプロジェクトがスタートしました。新たにプロジェクト調整員として、青山優菜さんという、まさに名前通りの“青い山を優れた菜(木)で取り戻す”という助っ人が入ってくれました。

    彼女とともに3月27日にウズベキスタンに向けて出発しました。

    プロジェクト立ち上げ当初の色々は青山さんがブログに書いていますので、そちらをご覧ください。

    3月27日 プロジェクトを本格的に立ち上げるため、調整員の青山さんとともにウズベキスタンに向けて出発した

    ウズベキスタンと内モンゴルの違いは雨の降り方です。

    ウズベキスタンでは冬に雨が降るため、春先の水分が多く、飛行機でタネを播くことができると思っています。その反面、夏は65℃、冬はマイナス40℃という厳しい環境でもあります。そして塩害がひどく塩類濃度が通常では2以下ですが、200以上あったりします。

    また、苗の作り方も異なりますが、どちらが適した方法かを実証している所です。

    例えば種子の羽根を付けたまま蒔く方がいいか、取ったほうがいいかという議論になりました。内モンゴルでは羽根を取っていたのですが、ウズベキスタンの林業局やカウンターパートであるカラカルパクスタン農業大学の方々は、そのままの方がいいという話でした。そこでシャーレで播種試験をしましたが、その差は歴然としていました。こうしたことは、実際にやってみて証明することで変えることができます。

    (写真右)サクサウール種子についている羽根の有無が与える発芽への影響を調べるため、シャーレで実験しました (写真左)羽根を取り除いて播種した方が発芽率が高いことがわかり、羽根をとることにしました

    これまでの知見と現地に合った方法を合わせて、一歩ずつですが進んでいきたいと考えています。

    6月15日から「2023オイスカ夏募金」が始まっています。

    オイスカは、高潮や海岸浸食、台風被害から住民を守るためのマングローブ植林、水源を守るための山の植林、飛砂被害や沙漠化を食い止めるための乾燥地の緑化など、世界各地で緑化活動を続けています。緑化活動は、自然相手のために計画どおりにはならないことも多く、地道な活動です。ウズベキスタンでの緑化活動はスタートラインに立ったところで、この先、長期間にわたってプロジェクトを続ける覚悟です。地道ですが確実に成果を出していくオイスカの活動をぜひ応援してください。

    どうぞよろしくお願いいたします。

    ↑↑ 緑化プロジェクトの概要はこちらの動画をご覧ください ↑↑

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