2022年2月10日

林業のプロと一緒に作業をしてきました

  • 海岸林再生プロジェクト
  • 本部スタッフ
  • 啓発普及部のグラゼンです。

    アジアでは『間伐』という考え方はあまりありません。法律で禁止されているのがほとんどです。

    1月25日から27日に、今後の私の仕事ため、そして間伐の重要性を十分に把握するために、「海岸林再生プロジェクト」が進む宮城県名取市へ出張しました。たくさんの学びを得ることができ、今までの名取出張の中で一番意味がある出張だったと感じました。以下にその理由をまとめてみました。

    1.これまで、「海岸林再生プロジェクト」の英語の申請書や報告書は私がまとめていたため、間伐については、名取事務所の佐々木統括や吉田担当部長にインタビューして、ある程度理解していました。それでも今回は現場に行って、実際のやり方を見て、自分の肌で感じて、間伐をもっと深く理解したいと思いました。

    ■佐々木統括がおっしゃるには、間伐は早めに行う方が、費用対効果が高いそうです。クロマツの木が若いうちに伐採し、処分するほうが簡単で安くすみます。

    ■間伐前はクロマツが密集しているため、林業のプロは現場管理の時に大変苦労します。間伐後は、十分なスペースができて、林業従事者が快適に移動できて、負担が少なくなります。長期的には、現場の管理にかかる費用の削減にもつながります。一方、外来種のツル性雑草の防除も楽になります。ツルはクロマツの一番上までに行くと、木の成長を阻害し、木から日光を奪って枯死させると聞いています。

    ※日本の森林率は67%ですが、私の国(フィリピン)は22%しかありません。フィリピン政府は残った森林を保護するため、自然林はもちろん、森林再生プロジェクトでも “total log ban”の法律を定め、伐採を前面的に禁止しています。そうした理由もあり、森林再生プロジェクトで植林した山は間伐もできず、ほとんど手入れがされていません。フィリピンでは、間伐という概念は一般的ではなく、ほとんど耳にしません。間伐は、植林した木が台風で倒れたときに自然に行われることがほとんどです。

    2.森林組合のプロの方々と一緒に作業し、しっかり話をしたのは初めてでした。彼らの存在が、私たちのプロジェクトが円滑に進む理由の一つであることは、常に意識しています。間伐作業の様子や、切った木を運び、林外に積み上げる姿に真剣さを感じましたし、間伐の際に誤って木を切ってしまった時の「反省」の様子からも、良い結果を出そうとする姿勢がうかがえました。現場から東京に帰る途中で、彼らはヒマラヤ登山者を支えるシェルパのような存在で、名取の「海岸林再生プロジェクト」の “unsung heroes”(隠れた英雄……日本だと「縁の下の力持ち」という言い方がしっくりくるでしょうか)だと感じました。

    3.日本人は安全に厳しいと良く言われます。現場に着いたとたんに目に入ったのは、「間伐作業中」ののぼりと、その隅に置かれた薬箱でした。作業に従事される皆さんは全員ヘルメット(名前と血液型が書いてあります)をかぶらなければなりません。日本以外のオイスカプロジェクトでは、地元の人はヘルメットも長靴も着用していません。ほとんどの場合、サンダルで作業しています。

    また、間伐時にもその後の林内の安全のことを考え、地上数センチの高さで木を切っていました。そのため、砂でチェーンソーが傷ついてしまうので、こまめに研ぐ姿を見かけました。道具を犠牲にしても安全を第一に考えるのだと分かりました。

    4.私は野生動物が大好きで、旅行先ではおいしい食事をするよりも、エコツアーに参加して自然の中で動物たちを見る方が好きです。ですから出張して最初の日に、吉田部長から「動物の様子を見ることができるよ」と聞いて嬉しかったです。もし、フクロウに会えたら、宝くじに当たったような気持ちになるでしょう。知床の野性動物の写真を撮るために頑張っている知人にも ”自慢“できるかなぁと思いました。でも残念ながら、今回はフクロウに出会えませんでした。間伐のチェーンソーの音で動物たちが驚いてしまったのかもしれません。それでも、次の日にキジのオスを見て、大満足でした。



    作業を終えて「家に帰って孫娘の顔を見るのが一番の楽しみ。それとバンシャクね」と話してくれた“unsung heroes”たちとの再会を楽しみに、次の名取出張の機会を待ちたいと思います。

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