「ラバウルでの呪術の思い出 1」の続き
パプアニューギニア駐在代表の荏原さんによる、駐在時の不思議な体験談です。
これまでのブログ
■ラバウルで使われている貝のお金(タブ‐Tabu)その1
■ラバウルで使われている貝のお金(タブ‐Tabu)その2
■ラバウルで使われている貝のお金(タブ‐Tabu)その3
■“デンデンムシムシカタツムリ お前の頭は何処にある ツノ出せやり出せ頭出せ!“
■ウドゥウド(udoud)‐小さくても貴重な石のお金(パラオ共和国)
呪術を取り除く彼の名は“ドクターソーガム”。生きた鶏を使って治療する有名なブッシュドクターでした。当時すでに80歳ぐらい(現地の爺さん婆さんの多くは自分の誕生日を知りません)。パプアニューギニア全土からお呼びが掛かって、他の州まで治療に出かける生活をしていました。
以下、彼の治療法です。
治療に使う資材はこちら:
1)キリスト教の聖母マリアと赤ちゃんのキリストが一緒に写っている額に入った絵:1枚。
2)キリスト教の讃美歌が入ったカセットテープとテープレコーダー:1セット(雑音が多くて聖なる感じは受けない)
3)生きた鶏(患者が女性の場合は雌鶏、男性の場合は雄鶏が望ましい):1羽
4)鶏を解体するナイフ
5)薬草:生葉一握り
呪術または病気を解く手順:
1)患者着席
2)ラジカセで音楽を流す
3)鶏を聖母マリアと赤ちゃんのキリストの絵の前に座らせる(足を縛っていないのに、鶏は決して逃げ出そうとせず、静かに絵を見つめて座っているのが不思議)(約3~5分間)
4)ドクターソーガムによる祈禱
5)鶏を両手で持ち、患者の全身(頭、肩、腕、胸、お腹、背中、足等々、主に患部に長く置く)(約2分):この作業を通して患部が鶏に写る/移る。
6)あとは通常のさばき方で熱湯を鶏にかけて羽根を取り除く
7)鶏をきれいにした後、両羽両足をナイフで切り分ける
8)そして腹を開き内臓(肝臓、心臓、肺、そのう、腎臓)を細かく調べる
→頭痛が酷い人は頭を切り開くと血痕があり、のどが痛い人の首には血痕が見つかる
9)患者は鶏に出た悪い部分を焼いて食べ、物凄く苦い絞った薬草の液を水で薄めて飲む
*ネイタン君の場合:
病気になった2~3日前、センターの横を流れているワランゴイ川で水浴びをした時、そこにいた現地の名前で“カイア”(そこのブッシュに住む霊的な力を持つ“被造物”)が気に入らないことをネイタン君がしたために、カイアの怒りを買って病気にさせられた、という説明をドクターソーガムから受け、本人も納得していました。
彼の場合、他の患者と違って顕著に悪い部分は見つかりませんでした。この治療の後にすぐ回復して、翌年だったと思いますが、無事に訪日をしてオイスカ西日本研修センターで有機農業研修を受けることができました。