緑化技術担当参事の清藤です。
「植栽したクロマツにも雌花と思われるものがよく見かけますが、
雄花はないのでしょうか?」と担当の吉田さんから質問が来ました。
さっそく送られてきた写真を見ると確かに新梢の上部に赤い2つの雌花芽がついています。
今日は開花結実の話をしましょう。
雌花は、雄花から花粉をもらい交配し、結実して球果へと発達していかなければ種子は生産できません。クロマツは確かに花が2~3年でつくことがよくあります。花芽はストレスがかかると早熟な雌はよく付きますが、雄は憶手で、だいぶ遅れることが多いのです。
これは優良な種子を作るための自然の理と考えられます。これまで樹木を観察してきた私の結論ですが、しっかりした結実を始める樹齢は、人間が子供を産む年齢によく似ていて、15年から20年であるといえます。これはマツだけでなく、スギでもヒノキでも同じことがいえます。そのころには雌花だけ、あるいは雄花だけの単独花性はほとんどなくなり、写真に示したように3月下旬以降になれば新梢の上部に1~3個、卵円錐上の雌花芽、そして新梢の基部に丸みを帯びた雄花芽が見られるようになります。雄花芽は大きくなって写真のような土筆の状態となって花粉を飛ばすのです。開花は5月前後で、開花受粉が終われば、雌花は幼球果の形態を示し、雄花は赤褐色になって枯れていきます。
マツの場合は開花から球果を生産するまでは人間の妊娠から出産に要する月数よりも長く、翌年秋となります。約1年半を要するのです。非常に大事に育てられているのに驚きます。
ところで一個の雌花は何個の種子を持つ球果に発達するでしょうか?
それは雌花(球果)の麟片の数×2です。麟片数は15~40くらいあり、ですから種子の数にすると30から80粒ということになります。球果の大きさと種子の充実を見ますと、やはり大きな球果からは大きな種子ができ、発芽力も強いです。球果を見つけたら麟片の数を数え種子の数を推定しその発芽を想像するのも楽しいものです。