1月21日、東京大学名誉教授である太田猛彦氏(専門:森林環境学、森林水文学、治山砂防学)を迎え、講演会を実施。会場とオンラインを合わせて121人が参加し、行政や森林土木関係者に限らず、多くの方々が関心を寄せていることがうかがえました。
講演は、地球環境全体の状況を俯瞰しつつ、森林の歴史、法律、国際情勢、世論など多角的な視点から総合的に展開。特に戦後、森林・林業政策による造林事業を進め、荒廃した山々の森林を回復させた日本の治山・治水の成功例を世界へ発信する重要性を強調し、「途上国ではいまだに裸山が連なる地域が多い。森林の回復と維持が喫緊の課題」と指摘しました。また、森林は約3.6億年前に出現し、地球環境を創造してきた歴史を踏まえ、「森林が温暖化や生物多様性と深く関わるのは必然。気候の安定には、地域の気候に適した植生を回復させなければならない」と訴えました。最後に、日本は約100年前まで続いた森林劣化の時代を経て、現在は森林飽和の時代であり、「これからの林業は、温暖化や気候変動への対応、生物多様性の保全、防災や水保全などの多面的機能を果たす公益的産業であるべき」とし、「森林が人類社会に貢献する存在であらねばならない」と締めくくりました。
参加者からは、「日本には森林劣化の時代から森を豊かにしてきた実績があり、その経験を途上国で活かす役割は大きいと感じた」との声が聞かれました。
今後も、太田先生の知見をベースに持続可能な森づくりの活動を続けていきます。
太田氏の著書「森林飽和」をベースとした講演に熱心に聞き入る参加者