1月27・28日の2日間にわたり、西日本研修センターで、第3回「オイスカ支援連携サミット」を開催しました。関係者が集い、オイスカが活動の柱に据える「人材育成」について意見交換をしながら、刻々と変化する世界情勢に合わせて、どのような研修を提供していくべきか、研修センターの運営などについて検討しました。
28日午後(13:00~15:00)は、会員さんや地域のみなさん約150名にお集まりいただき、研修生OBの活動事例発表会を行いました。
カンボジアから、研修生OBのワンナさん(2009年研修修了)、モンゴルから、ザグダさん(2017年研修修了)が来日し、ミャンマーのニー・ニー・ソーさんは動画で活動報告をしていただきました。
カンボジアのワンナさんとモンゴルのザグダさんの報告をレポートします。
日本で勉強して、感じたことが私のモチベーション
■Mr. SOVANNA Chhourng(ワンナ/カンボジア)
2008~2009年 西日本研修センター 研修修了生(MUFJ支援※ 第1期生)
※三菱UFJフィナンシャルグループの支援により、2008年から19年度まで、12年にわたって実施されてきた研修コース。同社が07年当時、CSRの重点項目として掲げていた「次世代社会の担い手育成」「地球環境問題への対応」にオイスカの活動が合致することから、「アジア・太平洋地域の次世代担い手育成」を目的としてスタートした。
日本では農業以外にもリーダーシップなどの勉強をさせていただきました。日本での研修を終え、2009年にカンボジアに帰国後、「子供の森」計画の活動をコンポンチャム県で始めました。出身は首都のプノンペンですが、活動はプノンペンの北東に位置するこの県を中心に行っています。
2009年から12年は、「子供の森」計画を進める一方で、カンボジアのローカルNGOであるBSDAでプログラムマネージャーとして活動をしました。孤児、中途退学の子どもための職業訓練学校を作り、学校で勉強した子どもたちが働ける場所としてレストランの建設にも携わりました。
2012年から3年間は、コンポンチャム県でJICAの女性のエンパワーメント能力向上支援プロジェクトのコーディネーターとして仕事をしました。
2014年から16年までの3年間は、FORTEという保険会社で、旱魃時の農家の収入減を補償するWeather Index Insuranceという商品を展開するため、バタンバン県で雨量計の設置を行いました。
2016年からは、シンガポール人が購入したカシューナッツ農園のコーディネーターをしました。最初は、農園の土地の範囲が不明確だったため、その地図作りに携わり、農園内の道路や排水路整備もしました。
2019年に、道路造成まで携わるセメント会社を立ち上げ、2021年にもう一か所拠点を増やし、現在35人の従業員がいます。
オイスカ・カンボジアの活動について
研修を終えて2009年の帰国時に、オイスカ本部からの要請があり、カンボジアで「子供の森」計画をはじめることになりました。情報や経験がないし、活動をする学校から協力が得られるのかもわからない。植林する苗木の運搬手段もない。何もないところから始めなければなりませんでした。
オイスカ本部が、「子供の森」計画の活動が盛んなタイやインドネシアでの研修や1ヵ月間の日本での研修の機会を用意してくれたおかげで、活動のノウハウを習得することができました。
2017年には、日本のオイスカ研修センターでの研修を終えたOBOGのミーティングを初めて開き、カンボジアでできるオイスカの活動や「子供の森」計画について話し合いました。
「子供の森」計画の研修やワークショップのほかに、日本からの訪問団からも激励をいただきました。
香川県のオイスカ三豊推進協議会や首都圏支部、静岡県支部、西日本研修センターの豊田敏幸副所長がカンボジアを訪問してくださり、2018年には廣瀬兼明所長、2020年に木附文化オイスカインターナショナル事務局長、中野利弘顧問にも来ていただきました。
オイスカ・カンボジア総局の会長が経営する保険会社FORTEの従業員も「子供の森」計画の活動のお手伝いをしていただいています。
コロナ感染症が拡大して、しばらく活動ができませんでしたが、行動制限の解除後は、少しずつ学校で木を植える活動を再開しました。首都圏でコロナウイルス感染者が増え、いくつかの地域でレッドゾーンが設けられ、外出制限がかけられ、買い物にも行けない状況がおこりました。有志を募り、寄附を集め、食糧などをレッドゾーンに住んでいる人にも届けました。その際には、廣瀬所長にもお願いして、西日本研修センターからも寄附をいただきました。
2009年に「子供の森」計画の活動をはじめ、2022年までに、61の学校やお寺で、合計18,530本、25ヘクタールの森をつくりました。「子供の森」計画のコーディネーターは3人です。
カンボジアでのオイスカ活動の問題点
「子供の森」計画の活動はあまり問題ありません。私は、コロナ禍で2つのビジネスに失敗しました。農薬散布用ドローンの販売ビジネスとオートバイ販売のビジネスです。
問題点は、予算が限定されているため、活動をひろげることができないこと。研修生OBOGは帰国後に自分でビジネスを始める人が多く、そちらが忙しく、また、居住地域が離れていることで、オイスカの活動に関与することが難しいことです。また、オイスカに携わる次の世代のリーダーを育てなければと思いますが、コロナのため、研修生を日本に派遣することができなかったことも大きいと思います。
将来の計画
オイスカの活動を支える事業を創らなければならないと思います。
1.建設機器のリース会社をつくる 2.温室での野菜栽培 3.小学校から高校までの学校を設立して子どもたちへの教育
オイスカへの期待
さまざまな助言や技術的なサポートを期待します。また、100%ではなく、不足する資金部分を補足していただければありがたいです。そうした支援があれば、持続可能な活動ができます。
学校をつくりたいという計画があるため、カリキュラムの作成にもサポートをいただければありがたいと思います。
Q.モチベーションはどこからくる?
A.日本で研修をしているとき、日本人の習慣からたくさんのことを学びました。
毎日、積極的に自立して独力で生活していると感じました。カンボジアでは、まず、どこかからサポートはないかと期待する傾向にあります。日本はそんなことはありません。日本で勉強して、感じたことが私のモチベーションになっています。
研修生OBOGは、帰国後、政府機関やNGOで勤務している人、自分のビジネスを立ち上げた人などがいます。
ゴビ沙漠で「米」をつくりたい!
■Mr.Dashnyam Zagdragchaa (ザグダ / モンゴル ウムヌゴビ県ダランザドガド市 アグロパーク 農業研究員)
2016~2017年 西日本研修センター 研修修了生(MUFJ支援※ 第10期生)
モンゴルは、世界の面積ランキング上位のロシアと中国に挟まれています。
人口密度の低さは世界一位。人口は335万人で、1キロ平方メートルあたり1.87人しか住んでいません。
ユーラシア大陸の中心にあり、4つの季節があります。最高気温は35度にもなり、最低気温はマイナス40度以上で、寒暖差は80度近くになります。ウランバートルは、数日前に―46度になりました。
私が住むゴビ沙漠地域について話をします。ゴビは、外国人のイメージでは「沙漠」のイメージがあると思いますが、すべてが沙漠ではありません。美しい自然、野生動物、植物、地下資源や恐竜の化石が発掘されるすばらしい地域です。
モンゴルの国土の43%を占めているゴビ砂漠には、世界最大の砂丘の山、ソウソウという灌木の森、川や湖が豊富なところでもあり、その気候、地形、土壌の条件に適応したユニークな動物や植物が生息しています。 例えば、野生のラクダ、馬、熊など絶滅危機となっている動物が多く生息しています。モンゴルでマザーライと呼ばれるゴビ・ヒグマは、ゴビ砂漠で生息し、世界で登録されているのは50頭くらいです。
植物の種類は少ないが、栄養価が高く、根が長く、再生能力が高い植物が多いです。ニクジュヨウ、カンゾウ(甘草)、ソウソウなど、250種類以上が自生しています。60%以上は漢方薬に使われる薬草です。
ゴビ沙漠は、恐竜の化石が大量に発掘されることで世界中が注目しています。世界中で330種類の恐竜が生息していたという話があるが、発掘された恐竜の16%はゴビ沙漠からです。
ゴビ沙漠のもうひとつの特長は地下資源です。世界で2番目に大きい鉱山がモンゴルにあります。埋蔵量は、銅は1億トン、金は3,000トン、銀は7,600トンとされています。
私のことについてお話します
私は、2015年にモンゴル国立農業大学を卒業し、科学アカデミー・ボタニカルガーデンでアシスタント職員として勤めていました。2016年からの1年間はオイスカ西日本研修センターで研修を受け、2017年から現在まで、ウルヌゴビ県ダランザドガド市のアグロパークで働いています。
現在、なぜ出身地と違うウルヌゴビ県で仕事をしているかということを話します。
ゴビ沙漠は、広大な土地がありますが、農地として使われていません。また、鉱業団地の急激な開発のために貴重な生物の絶滅を危惧して、保全する目的もあり、ゴビ沙漠を選びました。一方で、農業分野で働く人材不足です。
2017年に地元の行政機関、農業大学の先生方と一緒にアグロパークを建設し、野菜を作りました。
こちらが、私がゴビ砂漠にきてから栽培した野菜などです。
地元の住民がこれまで栽培したことがない野菜や果実を初めて作り、作り方を教えたり、地元の村に販売したりしていました。それから、温室栽培だけではなく、露地栽培もしています。
こちらの写真は、左が2016年当時の50ヘクタールの農場の写真。右は2022年の写真で、この5年でビニール温室、冬季用温室、研究所、職員の宿泊所を建設しました。
現在、活動の中での問題点
ゴビ沙漠で農業をする問題点は、気候変動、質のいい種や苗の不足、農業の開発が遅れている、農業機材や器具などが不足していることです。
4月の播種後の大雪や、5月にマイナス5℃まで急激に気温が低下するなど、急激な温度低下や砂嵐、洪水などが起こることが多くあります。
このような農業機材を使っていますが、機材はほとんど中国製で、壊れやすいので、自分で修理したり、手作りしたりして使っています。種のほとんどは、日本から送ってもらっています。
収入の高い鉱山産業に若者がいってしまうので、農業に携わる若者がほとんどいません。こちらの写真は若者が作業をしていますが、これは農業大学の学生に実習として手伝ってもらっているところです。農業専門家や農業労働力不足も問題です。
今後の計画
ゴビ沙漠でオイスカの育苗場を作りたいと思っています。
現在、勤務しているアグロパークは国の施設ですが、今後は、マネジメント契約で管理する計画です。
アグロパークでシイタケ栽培をしてみたいです。ゴビ沙漠で初の日本米を作りたいです。
オイスカに期待すること
いちばん期待することは、人材育成のサポートです。
農業機材サポート、アグロパークでの技術指導を期待しています。
もちろん、日本の研修センターでの研修修了生OBOGたちとの交流は続けてやっていきたい。モンゴル国内だけでなく、海外のOBOGたちともSNSを通じて知識や技術などを交換するオンライン交流もしていきたいと思っています。
Q.シイタケとお米を作りたいということですが、なぜそこに注目したのか?
A.シイタケは、モンゴルではニーズがとても高い、現在販売しているものはほとんど輸入品。
ニーズが高いので、販売したらいいマーケットになるのではないかと思っています。モンゴルで作るシイタケは美味しくなると勉強しました。
ゴビ砂漠はモンゴルの南端に位置していて、国内ではあたたかいので、沙漠でもお米が作れるのではないかと思っています。
<補足>
オイスカモンゴルの活動
2006年から活動し、現在、17年目になり、これまでオイスカや研修センターのサポートをいただき、色々な活動をしていきました。
モンゴルでの活動でいちばん重要なのはOBたちの存在です。日本の研修センターで育ててもらい、帰国後は、農業や色々な分野の開発に貢献しています。
オイスカ・モンゴルは、色々なテーマの活動をしています。
四国と西日本研修センターでモンゴルからの研修生トータル28人を育てていただきました。帰国後、8割は農業を継続しています。2割は子育て中などの事情でオイスカの活動からしばらく離れています。
OBOGのネットワークが強く、連携してお互いに助け合って活動しています。オイスカ・モンゴルの強みです。
政府行政機関との関わりが強く、ウランバートル市長もオイスカを理解し、応援してくれています。 モンゴルの21県のうち6県と提携して活動しています。
2006年以降、これまで11のプロジェクトを実施しました。モンゴル大統領が国連総会で発表した国家的プロジェクトの10億本の植林にもオイスカがかかわっています。
現在、いちばん盛り上がっているプロジェクトは、熊本×モンゴルプロジェクトです。これは最近とても知られてきて、政府もすごく注目しているプロジェクトです。