オイスカの国内研修センターは、コロナ禍により約2年間、研修生や技能実習生の入国がままならず、スタッフを中心に研修農場を運営する厳しい状況が続いていましたが、今年度より入国が叶い、研修生の11ヵ月に及ぶ研修の場、技能実習生の基礎研修(2ヵ月)の場として、活気づいてきました。
そのような中、各センターでは、それぞれの特色に応じたさまざまな参画や利活用が行われています。西日本研修センター(福岡市早良区)を例にご紹介します。
8ヵ国9名の研修生が揃った西日本研修センターでは、法人会員のトヨタモビリティーパーツ㈱九州北部統括支社(4月28日)、室町ケミカル㈱(5月10~13日)の新入社員研修が行われました。
研修内容は、各企業によって違いはありますが、センターに宿泊をしながら海外研修生の研修に溶け込む形が取られます。早朝からの国旗掲揚・点呼に始まり、規律訓練、食事づくり、農作業のほか、福岡タワーまでの集団徒歩、雑巾づくり、鶏の解体を行うなどの研修センターならでは「体験」プログラムが用意されています。こうした法人会員企業の新入社員を対象とした研修は、中部日本研修センターにおいても行われています。
また、視察・体験も多くの事例があります。5月10日には、UAゼンセンのボランタス委員会15名が半日間滞在。センター内外の圃場を視察するとともに、来日したばかりの研修生による出身国紹介にもお付き合いいただきました。入念に練習した日本語でのプレゼンテーションを委員の皆さまが真剣に聞いてくださり、研修生にとって日本語習得の自信につながる良い機会となりました。
2021年度、西日本研修センターでは、農産物生産のサポートに1,000名以上のボランティアが「戦力」として加わってくださいました。九州電力グループ、ライオン福岡支社、ホテルオークラ、JR九州労組などの会員企業・労組の方々や、隣接する県立早良高校とは連携協定を締結し、多くの高校生が農作業を体験しています。センターのある脇山地区の皆さまには、日常的なサポートもいただいており、特に毎週月曜午前中は、地域のベテランの皆さんが慣れた手付きで作業に加わります。
また、熊本地震や九州北部豪雨などの際は、海外研修生が現地に出向き、復旧・復興のお手伝いを行いましたが、現在も継続的にボランティアを行うなど、連携を深めています。
オイスカは農業法人ではないため、各種の公的補助や支援を受けることができません。また、海外青年に対する日本国内での循環型農業研修という分野には、植林・緑化といった民間助成金のスキームは皆無と言ってよく、会員からの会費、寄附金、農産物収入などの自己資金で、研修と農業生産を両立させています。また、海外でも急速にニーズが高まっている有機栽培・減農薬による循環型農業で、12haの広大な水田、2haの農地で70品目以上の生産にあたるため、圃場運営は多忙を極めます。
年々増えるボランティアや、そのリピート率の高さは、スタッフや研修生の姿に共感し、幾多の困難までも自分事と考えてくださる方の多さであり、国際協力のみならず、中山間地の農地保全や、農村活性化への貢献にもつながるものだと考えられます。
今年11月12日(土)に予定されている西日本研修センターの毎年恒例の収穫感謝祭には、1,500人以上が集うことが見込まれています。