ここは仙台市太白区坪沼の、およそ仙台と思えない山奥。
我々が広葉樹の母樹林として使用許可を受けた市有林で、傾斜の少ない部分2haを目処に整備します。
天然記念物のニホンカモシカも、クマも、イノシシも「たくさん」います。特にに今年は既に、仙台の郊外で「クマ出没」が極端に多いと言われています。三井物産環境基金の助成を受けて、広葉樹母樹林整備や育苗を行います。
第1育苗場から北東に40分。
道中の中間に第2育苗場があります。
「広葉樹林の方が荒れている」と、東京一の林業家が昔、話してくれました。
経済林として研究されてきた針葉樹に比べ、整備方法が確立されていないのです。
6月13日、宮城中央森林組合の鈴木班(なんと女性が班長!)が
除伐を済ませ、伐採に入っていると聞き、挨拶に行きました。
5月18日の播種もしかり。班長さんには定年退職まで長くお世話になります。
鈴木さんは、まさに「何でもできる方」。
カモ撃ちの名人ですが、我々はよくイノシシを戴き、毎冬「大しし鍋会」。
車はある。でもチェーンソーの音は聞こえない。
ちょうど休憩だな。急ごう。
40年生ほどの太い広葉樹は、数多く見られた枯れた立木も含めすべて見事に選木・伐採され、無数のモミの若木で、林床が暗かったのがウソのよう。
おそらく、業務部次長の佐々木さんから、目的地まで車で行ける本当に良い立地なので「森林教室などで市民が入りやすい森」にという指示が出たのでしょう。
下刈りの刈り高は「5cm?」(普通は10cm)と思えるほど低く、上手な人が手を入れたことがわかります。
これは種子も拾いやすく、苗の採取もできる。 除伐・伐採木の「集積」も丁寧でした。
「きれいになったでしょー」
「モミばかりでねー。伐っても伐ってもあるのよー」
枝も多く、集積の時の「枝払い」の仕事量が多い。
しかも葉はチクチクする。
カタクリなどの群生も見られ、そのゾーンは言わずとも気遣われていました。やはり、プロのやる仕事です。 スピードと丁寧さに加え、余裕や森への愛情を感じる伐採作業でした。
次の春には「埋土種子」の発芽、伐採木からの「萌芽更新」も見られ、樹種も草木の種類も増えるでしょう。
市民が親しみ、母樹林として新たな価値を持った森になるでしょう。
まとめシリーズ⑥ 全体概況(経済同友会での発表より)
2013年6月21日( カテゴリー: 本部発 )
6月6日(木)経済同友会メンバーへのプレゼンの機会をいただきました。
その際の佐々木・吉田の発表等より、現在までの実績を抜粋してお伝えします。
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来年2014年4月からの植栽開始を見越して、これまでの2年間準備を進めてきた。
来年春・秋植栽分として、約20haに相当する苗木の供給体制が整った。
来年の出荷目標はクロマツ95,000本。広葉樹は2,500本。
震災後半年の調査・協議期間を経て、2011年9月末より募金を開始。
現在、約1億6000万円の寄附金・民間助成金をいただくことができた。
2年間の支出総額は4,500万円。
「将来の植栽・育林のための積立金」(特定費用準備資金)は、
計画通り5,000万円を積み立てることができた。
寄附者数内訳は、個人1,000人以上、法人300社以上。
この他、西友の「レジ募金」、高島屋カタログギフト等の「寄附つき商品」、
三菱UFJニコス等の「ポイント寄附」、ANAの「マイレージ寄附」、
東急ストア・三菱UFJニコス等の「顧客との省資源化努力に伴う寄附」など
支援企業・団体等の協力を得た広報啓発活動を並行させている。
その分、実質的協力者数をカウントするのが難しい。
名取市は国の治山工事(盛土等)が急ピッチで進められており、
名取市海岸林全138haのうち、工事対象は126ha。
そのうち90haの盛土等の工事が既に発注されている。
(植栽はまだ行われていない)
名取の大変厳しい寒風害・乾燥などの環境、植栽後に枯死した箇所の補植も計算し、
来年の苗木必要量は最大15万本と見込んでいる。
昭和40年の名取市内の県有林植栽では、50%が枯死した歴史もある。
不足分は、我々も加盟している宮城県種苗組合の傘下にて需給調整、購入する。
前年度から比べ、
育苗場使用面積は10倍。
農場雇用人数は前年度の22人から、現在は30人を超え、年間雇用時間は最大8倍になる見込み。
除草などのボランティア活動も、夏場から実質的に開始する。
将来の植栽は2014年から2020年の7年間にて約60万本を実施。
その後の下刈り・つる切り・除伐等の育林は「2033年」まで継続。そのための全体経費10億円を、前倒して集めていく。
引き続き、ご理解・ご支援のほど、よろしくお願いします。
海岸林再生プロジェクト視察ツアーのご報告
2013年6月20日( カテゴリー: 現場レポート )
国際協力ボランティアの木村です。
6月14日、15日に海岸林再生プロジェクトの視察ツアーが 行われました。
両日、天気予報では雨。
しかし、両日とも 雨は降らず、14日は霧がかかり、遠くが見えない状態ではありましたが、
14日は43名、15日は57名の参加者に現場を見ていただくことができました。
最初は仙台空港にて説明会と楽しいクイズ大会を行いました。
全問正解者には「名取市海岸林再生の会」の大友英雄さんが育てた新鮮な小松菜がプレゼントされました。
大友さんが丁寧に小松菜を包装しているのを見ていたので、とても想いのあるプレゼントだと思いました。
視察では、海岸林防潮堤工事、津波で壊されてしまっている「再生の会」会長の鈴木氏の旧宅を見て回りました。
防潮堤は普段、一般人の立ち入りが禁止されている場所で、現場を管轄している国土交通省の方の許可を取っての視察となりました。
海と防潮堤の間にはなにもありません。海からの潮風を直に感じていただき、海岸林の必要性を感じていただけたのではないかと思います。
第一育苗場に行き、現場統括の佐々木廣一さんの 説明を受けた後、参加者全員で草取りをしました。
初対面同士の参加者も多かったのですが、草取りをしながらのおしゃべりでみんなの距離が縮まるのを感じ、草取りは地味でつらい作業だけど、こういった作業を通してみんなの気持ちもひとつになっていくのだと感じました。
この視察を通して、現場を理解してくださる方が増え、支援の輪が広がることを期待しています。
5月18日に第1育苗場でクリ・コナラの播種を行いましたが、
6月10日に発芽しました!
薄紫色。
緑色でないのです。
とても新鮮でした。
しかも何とも弱々しい。
これもまた、「めんこい」。
まず、土から出たばかりの芽は、目立たない。
山なら、まず分かりません。
クリ・コナラはとても似ています。
敢えて言えば、クリの方が少し太いか。
①最終的に、非常に良い苗のみを大胆に選別
②間隔を広めにとって太く仕立てる
以上の方針で予定より多めのクリ1,000粒、コナラ3,600粒を播きました。
ヤマザクラは6月20日に採種、消毒・冷蔵保存し、
今後の播種に備えます。ケヤキも植栽対象です。
我々の計画では、広葉樹は海岸林全体の1割。 海岸林の最も内陸側に植栽する予定です。
クロマツは5,000本/ha、広葉樹は3,000本/haの植栽方針です。
しかし、広葉樹はお金がかかります。驚くばかりです。
クロマツよりも充実した土壌が必要ですから。
広葉樹を植えてみて、育て方の違いからクロマツの強さを再認識することが多い日々です。
こんなに熱のこもった質問攻めは初めて。
再生の会の鈴木会長も、私も、取り囲まれ、気迫で一歩後ろに退いてしまったり。
外務省の方も驚いているほどですから。
連日、矢のように母国に記事を送っていたようです。
6月4日、外務省とフォーリンプレスセンター(FPCJ)からの依頼で、横浜で開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)の会議参加を終えた記者5名の視察対応をしました。
今回は、ケニア、南スーダン、モザンビーク、ウガンダ、マラウイの主要紙。
これで外国記者団の対応は4度目。
35ヵ国、49名がプロジェクト訪問されました。 アフリカからの記者団の来訪は2回目(合計8ヵ国)です。
一面の荒野を見て、そのうちの二人が言いました。
「僕のふるさとみたいだ」
洪水で流されたという事でした。
その話をもっと聞きたかったのですが、どんどん次の質問が。
「住宅の補償は?」
「震源地からここは何km?」
木への愛情も強かった。
再生の会の方10数人と除草を一緒に。
自然、全く打ち解けて。 一生懸命質問して。通訳の方はフル回転。
我々が何をやろうとしているのか、理屈抜きで分かっていただいた気がしました。
ほんとうにいい雰囲気でした。
お受けしてよかった。
FPCJスタッフの皆さんの深い理解のおかげで、
ほんの些細な事ですが、アフリカ開発会議に関わることができました。
木のレクチャー in 日比谷公園
2013年6月17日( カテゴリー: 本部発 )
国際協力ボランティアの木村です。
先日、名取事務所、現場統括の佐々木廣一さんが上京。経済同友会主催の報告会、林野庁への報告が目的です。
さすがは佐々木さん!!現場の人間として熱い情熱と豊富な経験を語ってくださり、 会場の人は聞き入っていました。
そして、移動の途中で日比谷公園に寄りました。佐々木さんは未熟な私にいろいろ、 木のことを説明してくれました。ここでは親切なことに木のところに名前や特色が 書いてありました。
最近は佐々木さんに宿題を出されます。
「樽と桶の違いは何か?」
「木が水分や養分を引き上げる理論とは?」などいろいろあります。
自分自身、佐々木さんに会うたびに成長しているような気がします。
毎日が勉強。現場を知らないといけないということが日々感じられるようになってきた今日この頃です。
よくある質問 クロマツは根が浅い?
2013年6月14日( カテゴリー: 海岸林あれこれ )
長いブログになります。すみません。
何件も質問が来たので・・・。(汗)
「クロマツは根が浅いため、津波で流され、被害を拡大させた」
これまで2年間、この質問(意見?)を何回聞いたことか…….(笑)
特に宮城県では、噂が異常に広まったので、特に耳にしました。
クロマツが悪いのでしょうか?……
我々、2011年5月の初調査、この地域のクロマツの、ある根の特徴に注目しました。
話しは変わりますが、2011年夏、宮城地元誌で「仙台空港周辺は水はけが悪い」
という記事を読みました。
また、出張時に、仙台の古本屋で見つけた古地図を見たら、沿岸部は池だらけ。
2011年秋の台風以降も、全く水はけが悪く、いつまでも干上がらない。
排水路やポンプ場も多い。我が育苗場の井戸も、ほんの2~3mで水に到達。
林野庁「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」の、
「宮城県南部沿岸部は地下水位が高い」という指摘の裏付けは、
この他にもまだまだあります。
余談ですが、名取の定食屋のおかみさんの話では、
かつての仙台空港周辺の田んぼは「深い田んぼ」で、
腰まで入らねばならないから、嫁入りを嫌がられたとか。
話を元に戻します。
重要なことは、本来、クロマツは他の樹種と比べ、 根がまっすぐ下に伸びる「深根性」であるということ。
これ、疑いありません。
しかし、基本的に根っこは水を吸い上げる訳ですから、地下水位が高ければ 深くまで根を伸ばす必要がなくなるため、クロマツの特徴である太い直根は深根性を活かすことなく、下の写真のように途中で90度曲がってしまいます。
しかし、かつて造林したときは、盛土などできず、元々の地形の上に
植えたのです。そこに地震があり、液状化や地盤沈下の影響もあったでしょう。
津波が来たわけです。
強く根を張っているわけではないので、津波の力に強烈に抵抗して
「幹折れ」するのでなく、じわりと「倒伏」した状態を多く見ました。
クロマツが悪いのではありません。
このように地下水位が高く、被災地域の海岸林で壊滅的な打撃を受けた約1,100haのうちの
多くを占める宮城南部では、国が直轄事業として、とくにクロマツの深根性を活かすための
「盛土」を含む工事を行うのが大きな改善策です。
名取市下増田北釜地区(仙台空港真東)にも、その模範となる地形とともに 生き残り、今もなお役割を果たすクロマツ林がわずかに残っています。
我々、2011年5月の初踏査2日目、クロマツ、広葉樹ともに、「微地形」という わずかな高低差で生死を分けたことを結論付け、 その後も、林野庁「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」の議論の方向や、最終的な国の方針に間違いないと自分たちなりに判断しました。
初お一人様、名取出張 第3弾 「お一人様、名取出張の考察」
2013年6月13日( カテゴリー: 現場レポート )
国際協力ボランティアの木村です。
ついに初お一人様、名取出張も最後の第3弾です!
今回はこの出張を通して自分が考察したことを綴っていきたいと思います。
再生の会のメンバーのお話を聞き、そして一人で名取の街、震災現場を視察し、強く感じたことは「震災の風化と開発の在り方」です。風化と書きましたが、 実際に震災復興は着実に進んでいる部分があります。
海岸林の再生に向けた盛り土工事の現場近くで、交通整理に従事している 60代ぐらいのおじさんが「ピーク時は1日で400~500台のトラックが走っていたが今は200台ぐらいまでに減っている」と話してくれました。工事も終盤を迎え、来年の春には植林ができる予定です。
海岸林再生に向けた前進はうれしいことですが、やはり、まだ地元の方々の中には、今後の生活拠点の選択など未だ不安が大きく残っているようです。
その方によると「被害が大きかった閖上地区の7割は地元に戻りたくない」そうです。戻りたい 人たちのほとんどが高齢者で自分たちの土地を手放したくないようです。
津波の被害が少なかったと言われる、「美田園駅」や「杜のせきした駅」周辺ではどんどん、
新しい家やお店が建設されてきています。最近は住宅展示場に行く方が増えているそうですが、
この名取市も例外ではありません。仙台空港を中心に「仙台のベットタウン」になりつつある状況です。
再生の会のメンバーも、海岸林の再生とともに気がかりなのは、若い世代の雇用問題だとおっしゃっていました。
雇用創出のため、仙台空港を民営化し、その周辺にホテルやテーマパークの建設を望んでおられる方もいれば、
今回の津波を忘れないためのメモリアルパークを望む方もいます。
今後の開発のあり方を慎重に考えていかなければならないと思いました。
プロジェクト担当の吉田です。 この2年、よく伺うご質問に対してクイズを交えてお答えします。 まず、下の写真をご覧ください。 震災直後に踏査した森です。美しい!と思いました。
で、クイズです。 Q1.ここでは最初から同時にマツとサクラを混ぜて植えた? Q2.大きなサクラとマツの樹齢は、それぞれ何歳ぐらいだと思いますか? ここは海岸波打ち際から600m以上も離れた内陸です。 海側には400m以上の幅のクロマツがあり、海からの潮風の影響を 受けにくい立地です。しかしここも当然、津波が直撃しました。
A1.同時に植えたのでも、交ぜて植えたのでもありません。 人が植えたのはマツのみ。サクラは自生です。
A2.マツは100年超(明治時代植栽。サクラは50年程度か。) 結論から言えば、同時に交ぜて植えることは考えていません。 海岸林の海側から200mほどは、潮風のストレスなどが強烈です。 それに対して最も抵抗力があるのがクロマツです。 全国各地で、長い年月をかけ、多くの先人が数ある樹種の植栽を試す中で選び抜かれたものです。
技術者はクロマツを評して「犠牲木」とよく言います。 私たちは、海岸林の存在意義を、農業や生活を守るためのインフラと考え、 その機能を果たすための森づくりを最優先に考えています。
場所を選ばず広葉樹を植えても、塩のストレスに耐えられないと考えます。 マツと広葉樹を同時に混植する(ランダムに混ぜる)と、 いずれ、マツは広葉樹に光を奪われ、枯死すると思われます。 場所を分けて、同時に植栽するとしても、200m以上内陸で、 クリ・ヤマザクラ・ケヤキ・コナラなどを植えるのが妥当だと考えています。
「マツとサクラは相性が良い」と聞いたことがありますが、 写真のヤマザクラは、人の手で植えたのではありません。 クロマツが間伐され、光が差し込んだ場所で、自然に生えてきたものです。 海に近い部分に植えられたクロマツの、「身を挺した犠牲」のおかげで クロマツに守られながら広葉樹は大きくなったのです。
写真の場所は、波打ち際から遥か内陸ですから、背丈の高い順に、 高:クロマツ、中:ヤマザクラ、コナラ、低:アオキ、ヤブツバキ、ヒサカキ。 下草も多数。4段構成。いい森でした。
宮城南部沿岸部の「極相林」(植物遷移の行き着く先)はヤブツバキなどです。 潮風の影響を受けにくい海岸林の内陸側では、長い年月をかけて クロマツ→広葉樹とゆっくり遷移するのでしょう。
私には、森づくりはスケールの大きな子育てに思えます。 大きくて、長い気持ちで森づくりを見据えたいと思います。 拙速に遷移を進める考えはありません。
出張の大半は新幹線で移動しています。
仙台駅から仙台空港アクセス線に乗り換え、仙台空港駅に。
空港内の事務所でのアポイントには少し余裕が。
「そうだ。設置されてるかな?」
するとすぐ目に入ってきました。

先日、空港関連会社の社長さん、部長さんと、仙台空港アクセス鉄道㈱に行き、 プロジェクトについてじっくり説明させていただきました。
時間を下さったトップのお二人は、海岸林というより、従来のオイスカの海外協力を ご存じで、空港駅、美田園駅、杜せきのした駅への、海岸林再生プロジェクトの「ご寄附のお願いチラシ」設置をしようと決めてくださいました。
「チラシはどんどん無くなるというわけじゃないけど、 地元の人には、まず知ってもらわないとね」
名取市内には、酒屋さん、美容室、市役所、市民会館、駅前駐車場など
すでに置いていただいていますが、まだまだ。
でも、協力者が増えるのは嬉しいですね。
現在チラシを設置できているのは、北海道、宮城、東京、神奈川、埼玉、
富山、山梨、長野、静岡、愛知、奈良、兵庫、香川、愛媛、広島、福岡。
もちろん、「点」でしかありませんが。設置個所は、宮城がダントツ。
広島、愛知、香川には割と多く設置できています。
東京は少なく、まだまだ努力不足。
設置個所と、寄附者数は明らかに比例しています。




















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