秋田県由利本荘市「岩城海岸林再生協議会」①
秋田県由利地域振興局からのご依頼を受け、「岩城海岸林再生協議会」での講演のため、
秋田市の南、由利本荘市の岩城海岸にいってまいりました。
松くい虫により10数年前壊滅的被害を受けた20haの海岸林の再生に平成23年から取り組んでいる地域です。
私たちも再生に取り組む身。
完全に「教えていただくモード」で朝一番に現地入り。
やっぱり日本海側は砂丘が高い。海抜10m、20mはザラです。風と砂の威力を感じます。
現場を実踏する前に、時間の許す限り地元の方から話を聞こうと集落へ。
まず雑貨屋さんの奥さん。
「15年ぐらい前からだよね。うちは砂の影響はないけど、国道沿いの家は砂が大変と聞いてるよ。
昔は母親と、かまどのために松ぼっくりと松葉を拾いに行ったね。キンタケ、アミタケも採ったよ。
ハエ取りキノコって呼んでるキノコも。ハエ取りキノコだけど塩漬けにして冬は食べたんだよ」
次は、いかにもスポーツ少年団のお世話をしてそうな、体つきの見事な工務店のお父さん。
「松がなくなって風通し良くなったよー。昔と比べて特に冬の風の強さは倍以上。
道も凍るし、海沿いの国道には砂が10cm以上も積もる。
この辺は兼業農家が多いけど、果物の塩害もあるらしい。
うちの工場のトタン屋根の錆もひどい。子どものころは松林がみんなの遊び場。
いいところだったよ。今はニセアカシアがひどくって林には入れないね。
海岸の浸食がひどくって、日本初のロケット発射台は海になってしまった。
植栽だけでなくって、草刈りでもみんな手伝おうという気持ちはあると思うよ。
もっとも、海岸林の恩恵を受けているのは二つの自治会でそれぞれ90戸。
小学生は合わせて20人程度。でも子供たちにも参加させたいね」
最後に美容室で立ち話をしていた奥さんと魚屋のおばあちゃん。
「ここは幾重の砂丘があって、ここは砂が入りにくいところだからいいけど、
場所によっては家まで砂が入ってくるよ。植木は紅葉でないときに赤くなってしまう。
小さい頃は松の葉や松ぼっくりをどの家も拾っていたよ。学校で松を植えた経験もあるよ。
この辺は地域の行事がなくなってしまった。
松林を守ろうっていう地域の行事にすれば、みんなやるんでないかなー」
そういう地元の雰囲気を伺った上で、現場を視察し、そのあと協議会の会場に向かいました。
本部・広報室の林です。
先日のボランティア活動の日は、9名の方にこんな体験もしていただきました。
何をしているところか分かりますか??
・・・・・・これは、モニタリング調査をしているところです。
6月30日のブログで準備作業をレポートしたとおり、11ヵ所50本ずつのサンプルを定期的に調査するのです。植栽場所(内陸側なのか海側なのか)や苗木の種類(ここでいう種類は普通クロマツとマツノザイセンチュウ抵抗性クロマツという違いだけではなく、苗木の入手先も含まれ、第一育苗場、第二育苗場で育てた苗木のほか、購入したものもあります)によって生育にどのような違いが出るのかを調べ、来年以降の参考にするのです。調査項目は生育状況、高さ、今年の伸び、根元の太さです。
3人一組になって一人は根元を、もう一人は高さと今年の伸びを測って、記録係に報告します。重労働ではないものの立って、座って、立って、座っての繰り返しはなかなか体に負担がかかります。
ボランティアの皆さんに調査をしていただいている間、緑化技術担当の清藤参事は土の質を調べていました。
苗木の生育の調査同様、場所ごとにさまざまな項目を調べて記載していきます。植栽場所(盛土)によって土質が全く違うのは素人の目にも明らかです。
ただ“植えて育てる”という活動にとどまらず、こうした調査・分析を積み重ねていくことは、この先の海岸林再生活動をより効率的に行うことにつながる重要な仕事です。
清藤参事のような専門家がいること、またこのような調査の重要性をご理解くださるボランティアの皆さんのお手伝いがあるからこそできる、オイスカならではの取り組みだと自負しています!
住友化学労働組合 宝塚支部の田中嘉人です。
今回で2度目のボランティアに参加させていただきました。
最初に、ボランティア作業前の場面の報告です。
ボランティア当日の朝。
まずは名取事務所に集合しましたが、事務所内には大量の「ユスリカ」が!!
(※「ユスリカ」:ハエ目ユスリカ科の昆虫。よく蚊柱を作る。日本には約1000種類。)
事務所内では吉田さんが掃除機で「ユスリカ」を回収しています。
(ボランティア開始後も格闘していました、おそらく1時間以上。)
普段、業務で家庭用殺虫剤の開発研究を行っており、
「ユスリカ」を“相手”にすることも多いため、いつごろ、どういった状況で
ユスリカが事務所内に誘引されたのか、非常に興味を持ちました。
さっそく、吉田さんに聞き取り調査。
調査の結果、「吉田さんは前日に残業した」ことが判明。
残業時に、網戸や換気扇から侵入したようだ、とのこと。
納得です。確かに「ユスリカ」は光に強く誘引されます。
事務所内で電気をつけ残業に励む吉田さん。
その電気に寄せられてやってくる「ユスリカ」。
しかし、換気扇から入ってくるとは・・・とても勉強になりました。
さて本題です。
今回、ボランティアでは草取り、葛(クズ)刈り、根踏み、チップ寄せを行いました。
そんな作業中にも、虫を見かける機会に恵まれました。
草取りでは、ハサミムシとともに、カメムシの交尾も観察できました。
ちょうど朝の時間帯、この季節が活動時間なのでしょうか。
何度も目にすることができました。

葛といえば、マルカメムシ。しかし、ここでは目にしませんでした。
東北にはあまりいないのでしょうか、季節が違うのでしょうか。よくわかりません。
その後、根踏みとチップ寄せを行いましたが、
鍬(クワ)を使うのがこんなに難しいとは想像していませんでした。
踏んで、寄せて、踏んで、寄せて・・・
言葉にするとそれほど大変には聞こえない作業ですが、実際に体験するとハードでした。
しかし、こうすることで、厳しい環境でもクロマツが生き抜いていけると思うと、
やりがいのある作業だと思います。今後も機会を作って参加していきたいと思います。
海岸林だけではなく・・・・・・
本部・広報室の林です。
7月19日、今年4回目の“ボランティアの日”の活動に私も参加させてもらいました。
毎回来てくださる地元の仙台トヨペットさんは今回も4名の参加。
いつもは「新入社員なんです~」というかわいい女性社員さんたちがいるのですが
今回は男性ばかりの参加。しかも頼もしい男性ばかり!!
感心したのは海岸林再生のボランティアに来ているのに、
作業の合間や移動中に海岸に落ちているゴミ拾いを自発的にしてくれていたこと。
ほかにも道具の片付けなど進んで動いてくれていました。
その身のこなしに加え、とてもつなぎが似合っていた社員さんに、
日頃からこのつなぎを着て体を動かす部署にいるのか聞いてみると
「普段はスーツでパソコンに向かっています」とのこと。予想は大ハズレ・・・・・・。
皆さんの“受け身ではない参加の姿勢”からたくさん学ばせてもらいました。
次回から仙台トヨペットさんには準スタッフとして活動をサポートしてもらいたいと
心の底から思いました。次回もよろしくお願いします!
先日、最強の雑草「葛」についてブログで紹介しました。
7月19日のボランティアの際にも、葛の刈り取り作業に取り組んでいただきました。
ただ、刈り取らなければならないのは葛だけではありません。
場所によってはこんなに草が茂り苗木が見えない状態! ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
これ、クロマツがどこにあるか分かりますか?????



あまりに大きな雑草なので、ボランティアの皆さん、だんだん楽しくなってきてしまったようで
「今日一番の大きさだ~~~!」
「こいつ、タコみたい~~~~!」
などとわいわいやっつけていました。
小さな雑草をただひたすら引き抜いていく育苗場の草取り作業より、大きなものをやっつける達成感が得られるのは分かる気がします。
草との闘いは地味な作業ながら、自分がクロマツを助ける
ヒーローのような気分を味わえるちょっと楽しいボランティア活動なのかもしれません。
来月のボランティアの日は8月30日。
ぜひご参加ください!!
心豊かなボランティアの皆さん
あれからすでに2週間以上経ってしまいましたが、
7月5日、UAゼンセン、ボーイング社、全日空グループの、総勢110人のボランティアの中に、
植栽現場に出た途端、身のこなしが明らかに軽やかな人が目に入りました。
躊躇なく先頭にいて、周りの人とコミュニケーションを取りながらも手は止まらず、膝の使い方が柔らかいから姿勢も良い。
服装は職人と見間違うようなシャープな姿。
まぎれもなく「ベストドレッサー賞」。
作業する場所も、「排水溝の際など、乾燥しやすく、より丁寧に仕事してほしい場所」と指定した所に自分だけでなく、数人で取りかかってくださっている。
全日空の社員さんでした。
率直な参加の動機をお話しくださいました。
名刺をいただけばよかった…そこまで気が回らなかった。
ボランティアの人が来るときは必ず一期一会と言い聞かせていても、
毎回あるんです。もっと話したかったなあということが。
しかし、初めての現場なのに、どうしてあんなにスマートにできるのか。
一体どんな方なのだろう。ぜひまた一緒に仕事したい。
ボーイング社の外国人社員への通訳を買って出てくださった同社の若い男性社員も、一目見るからに印象に残るナイスガイでした。難しい通訳をユーモア交えて意訳していただきました。
実家が北海道の農家と話してくれた、あの方だから難なくこなしてくださったと思います。
その日の最後に、スコップが一本足らないことがわかりました。現場に誰かが忘れてきてしまったようです。広大な現場の中で、必ず見つけて帰ろうと、名乗り出てくださった方が幾人も。道具がなくなったら、その日のうちに徹底的に探すのは、工場でも我々の現場でも当たり前ですね。
捜索範囲は狭かったので、我々に任せてと、皆さんには帰路を急いていただいたのですが、震災直後から丸3年、「ANAすか」チームとして縁の下を担ってくださっている新婚ホヤホヤの若手が、
空港からあの距離を歩いて探しに行ってしまった。
行くなと言っても、あの彼はやっぱり行くよな~
追いついて一緒に捜索。何とか発見。
防風垣に一緒に座って涼みながら、ホッと一息。
彼をはじめとする「ANAすか」の皆さんには、本当にお世話になってきました。
毎週毎週、とても紹介しきれないほどの人間臭い、心豊かな人たちに恵まれています。
たくさんの小さなドラマの日々。
オイスカは全国にいる5,000件の会員に支えられており、
北海道から沖縄まで14支部と46の支援組が運営されています。
7月17日、年に3回程度の全国事務局会議が開催されました。
私たちが現場で存分にできるのも、まずオイスカの会員さんが毎月の月刊誌に必ず掲載されているプロジェクト報告をもとに、各方面に紹介し続けてくださっているから運転資金が枯渇せず、この2年毎日欠くことなくご寄附が寄せられています。
こういうベースがオイスカの強みです。
今日は各地区事務局の皆様に、「当プロジェクトは何が他と違うのか」を、改めて再確認していただくべくオイスカ緑化技術参事の清藤城宏先生から、説明していただきました。要約してご紹介します。
①震災直後にいち早く被災地農家と接触し、
②植林をしたいだけの部外者(地元以外の方)ではなく、
オイスカのこれまでの海外等のプロジェクトと同様、地元中心主義でを進めていること
③2033年までに少なくとも11,000人もの雇用を確実に創出すること
④育苗~植栽~育林までの長期にわたる一貫施業、100haもの大規模プロジェクトは近年類を見ない
⑤行政にかつていた経験を持つ者としては考えられないぐらいの決断を、国や宮城県、名取市がしてくれた
行政からオイスカに対する期待と信用、我々の側からすれば、ものすごいプレッシャー
⑥震災から3年もたった今、年間2,000人ものボランティアが来るのもすごいが、
あくまでも地元中心主義で植栽イベントではなく、育苗や保育作業を補完すべく、非常に有効に活かしている
人づくりのオイスカらしいプロジェクトを確実に実施している。
数多ある植林活動と何が違うのか、スタッフがよく理解することが大事
私の報告は、現場の状況報告のほか、今年度の募金目標は2.1億円。
8月上旬に、これまで3年を総括するDVD(10分)、新しいチラシ、最近の新聞記事などを同封のうえ、
DVDの活用、チラシの設置・配布協力などをお願いするダイレクトメールを、8,500通送ること。
新しいチラシ10万部を来年3月末までに配布。現在350ヵ所の設置個所を1,000ヵ所にする。
活動報告会はいつでもどこにでも伺う。
ギアを替え、外回りの時期が始まります。
先日、7月5日のボランティアの報告をしましたが、その中に
お父さんと一緒に活動に参加してくれた中学生がいました!
関東からの参加。被災地でのボランティアは初めてとのこと。津波で海岸林が失われてしまったことを知ってショックだったけど、こうして再生のための活動が進んでいること、そして自分がこうしてそのお手伝いに参加できたことがうれしいと話してくれました。
周りはみんな大人たち。その中で大人と同じように作業に取り組んでくれていました。普段はお父さんと一緒に出掛けたりすることは少ないそうですが、こうしてお父さんの声掛けに応じてボランティアに参加したことはとても貴重な体験となったのではないかと思います。
夏休みに入ったら“親子でボランティア参加” が増えたらいいなぁとちょっぴり期待しています。
最強の雑草「葛」への対応
当プロジェクトを深くご理解いただいているリーダーに率いられた「住友化学労組」が
委員長以下全国各地から23名、朝8時過ぎから5時まで作業してくださいました。
終日、手加減なしの現場実務。(ただし、昼寝付き)
作業内容は、いつも通りの育苗場の除草、植栽地での根踏み、チップ寄せに加えて、
最強の雑草「葛(くず)」の刈り取りに着手。
繁茂はまだ部分的ですが、盛土工事完成から日もたたないのに、範囲は広くありませんが法面に生え始めました。放置すれば植栽した苗を覆ってしまいます。
タイ南部のマングローブ植林に長く関わってくださっている住友化学の皆さんですので、プロジェクトサイトでの、葛に似た太いつる草との戦いについても、少し説明しました。
私自身、100mを優に超えるつる草の刈り取りの厳しさ、使いにくく慣れない現地の大鎌、強烈に高い湿度の中で熱中症になりかけたことなど思い出しました。
今後は佐々木統括の言う「山芋理論」に基づき、
毎年7月と8月は集中的に、葛の刈り取りを行うことになるでしょう。
プロとボランティアの併用でも、相当な作業量になるかもしれません。
薬品で駆除することも検討しましたが、草が盛土法面の崩れを防いでいることも考えて、
薬品駆除は見合わせました。
今回は早目の着手ができました。やっぱり先手必勝です。
何より機動力のある体育会系メンバーが繁茂している場所にさっと分散し、
実質一時間で刈り取りは終了。鎌と剪定鋏で根元をきっちり攻めました。
≪「葛」 出典:ウィキペディア≫
つるを伸ばして広い範囲で根を下ろし、繁茂力が高い。
かつての農村では、田畑の周辺に育つクズのつるを作業用の材料に用いたため、
定期的に刈り取られていたが、刈り取りを行わない場合は短期間で低木林を覆い尽くすほど成長が早い。
伸び始めたばかりの樹木の枝に巻き付くと、それによって樹木の枝が曲がってしまうこともあるため、
人工林においては、若木の生長を妨げる有害植物と見なされている。
クズは根茎により増殖するため、地上部のつるを刈り取っても地下に根茎が残り、
すぐにつるが再生する。抜本的に除去する方法として、除草剤のイマザピルを使う手法がある。
薬剤を染みこませた楊枝状の製品であり、根株に打ち込むことにより効果を発揮する。
植栽苗の活着率(7月3日現在)
植栽を開始したのは4月28日。植栽を終えたのは5月30日。
それに続いて、住友化学㈱と同労組から寄贈いただいた20kg×150袋の有機化成肥料の施肥は
6月2日に開始、6月30日に終了しました。全長1km以上、15haの広大な現場の75,182本に1本づつ。
「施肥は梅雨明けまでに完全に終えよう」と雨の日も続けました。体力的にも極めて厳しい仕事に従事した
宮城中央森林組合作業班の皆さま、本当にお疲れさまでした。
私が東京にいるとき、名取事務所の皆さんや、森林組合の佐々木君との電話では、天気の話題が出ないことはありません。
台風の襲来などまだまだ、厳しさはこれからも続きますが、名取市海岸林再生の会の農家の皆さんにその後の植栽現場のデータ速報を伝えるべく、全員が集まる「総会」の前日7月3日に、佐々木統括が括着率を調べました。
カウンターを手に、ランダムにたくさんサンプルを採って短時間で割り出す、現場の「職人」の方式で。
98.4%が活着(枯損率1.6%)!
「補植が必要」と言われるのは3%以上ということなので、非常に優良な成績であるといえます。
しかし、わずか2カ月後の単なる通過点です。
3ヵ月で1,000人以上のボランティアが、プロによるスピード施業の後を追跡するように、
根踏みとチップ寄せを繰り返し、1本でも多くの生育を助けるべく、丁寧さで勝負する日々です。
プロとボランティアのこれらの分業は「当プロジェクトならでは」と自負しています。
ここまで現場に来てくださったボランティアの皆さま、私の強引なリードをお許しいただき、
気持ちのこもった仕事をしていただき、本当にありがとうございます。
今後年3回、いわゆるモニタリング調査を行うための標準地は、6月第3週に決めました。
初回調査は7月19日(土)のボランティアの日に、参加した皆様にも一部協力いただいて実施します。
たくさん歩いていただくことになるでしょう。