夏のボランティアの仕事シリーズ① 「葛刈り」
「葛ってどれだか判別できる人は手を挙げてくださ~い」
毎年夏は、毎回この質問を繰り返します。
手を挙げる人はごく少数です。
ですが、名取の葛刈りを味わい、空き地などで何気なく見ていたたものが「葛」だったことを知りふとした時に改めて名取の海岸林を思い出して下さっていることでしょう。
名取に来た皆さんは、クロマツだけでなく、いくつかの植物を覚えていただきます。
「葛もち」「葛根湯」など人とのかかわりも多い植物ですが、林業の者からすれば、植栽した木に絡みつき、木は曲り、日照を遮ります。
しかも、強烈な繁殖力の、多年草。
「1日1m伸びると思え」佐々木統括はそう言います。
冬場には長さ1m×20cmの「葛芋」が出来、よく夏に溜め込んだ栄養を爆発的に使い、
四方八方に、根もつるも伸ばします。伸びたつるも、あちこちに着地点を作り、またそこに
根をおろし、そこから四方につるを伸ばします。
「山芋理論」と佐々木統括は言います。
爆発的に養分を使って、疲れている夏こそ、集中的に刈り取るタイミング。
ボランティアの皆さんには、「芽が出たての小さなモノを見逃さないで」と指示します。
長く伸びたつるは、根元を手繰り寄せて探し出し、やり残しなく根元で刈り取るか、雨上がりなど地面が柔らかいときは、抜くことにも挑戦していただきます。
1点から数本のつるが出ます。
見落として、刈り残さないことが注意点です。
仕留めた葛は、防風柵などに引っかけたり、作業道の真ん中に置いて、次のボランティアに、「ここ、葛出るよ」とサインを残していただきます。
まだ、薬剤で枯死させることは考えていません。
巨大組織のトップも草と格闘
2011年以降、企業・団体・行政など組織のトップマネジメントの方にも随分来ていただきました。
名取市長は昨年半年で6回も来訪。大雨の中、ボランティアの日には「溝切り」もお願いしました。
経済同友会の長谷川閑史前代表幹事は4回も視察。
昨年はボーイング・ジャパンのジョージ・マフェオ社長が奥さんと共に終日作業。
先日の植樹祭でも、林野庁、宮城県庁、名取市役所の幹部の方も、市民と共に実質1時間半で30本前後(1本あたり3分)植栽していただきました。
7月3日、組合員150万人を有する産別労組「UAゼンセン」逢見直人会長以下27名が、
びっちり8時間作業をしていただきました。
翌日は産別労組「JR連合」も松岡裕次会長以下35名が現場に。
加盟する単組を率いるトップの方は、もちろん大勢来ていただいています。
両組織は、長年のオイスカ法人会員であり、海岸林以外のプロジェクトにも多くのご支援をいただいています。
海岸林は、オイスカ内のどのプロジェクトよりも手加減をしません。
しかも、作業内容・順番も、最終的には当日朝に選択しますので、明確に予告しません。
ただでさえ手荒なので、申し訳ない気持ちもあるにはあるのですが、これがオイスカなので諦めてもらうしかありません。
ですが、リーダー中のリーダーに来ていただき、本当に光栄に思っていますし、現場で格闘する皆さんを見て、惚れ惚れします。
今年度は3か月で、早くも1,100人のボランティアが、戦力として頑張って下さりました。
昨年1年で1,400人なので、今年は2,000人程になると思います。
70歳代後半の方もお見えになっています。
今後もケガなどないよう、緊張感をもって臨みたいと思います。
思い切り仕事し、五感で何かを感じてほしい一心です。
宮城県産抵抗性クロマツの挿し木1,000本実施
7月7日、宮城県山林種苗農業協同組合からのご依頼で、
宮城県林業技術総合センター採穂園の
「マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ挿し木」1,000本を、
我々の第一育苗場でも試験的にコンテナ移植しました。
既に先月、種苗組合の挿し木苗講習会もありました。
採穂は2014年2月とのこと。以来1年半、センターのビニールハウス内の挿し床に
電熱線を入れ、スプリンクラーで散水して育てられています。
抵抗性クロマツ種子が不作続きで、何とかして増産したいという研究・実践の一環です。
挿し木は当然、親と同じものができます。従って、抵抗性の親なら抵抗性。しかし、松の挿し木はスギなどよりも難しいと聞いています。
我々にとって、クロマツの挿し木は初めてです。早朝から太田清蔵組合長のご指導のもと、再生の会は6人工。
組合長は、月1回ぐらい我々の圃場に巡回に来ますので、その都度、諸事助言いただいています。
今日は佐々木統括も人数に加わり、作業は1日で何とか終わらせました。
採穂からおよそ3年の育苗を要します。
この1,000本は、早くて来年秋以降の植栽が可能のようです。
「名取市海岸林再生の会」総会 番外編 星形キュウリ
「名取市海岸林再生の会」総会 その2 特別な苗
総会には仙台森林管理署の小澤署長、宮城県農林水産部森林整備課の髙橋課長と技師の志野さん、名取市生活経済部の熊谷部長、宮城県農林種苗農業協同組合の小山専務理事、宮城中央森林組合の佐々木さんが来賓として出席くださいました。
来賓の方からのご挨拶で印象的だったのは、宮城中央森林組合の佐々木さんのお話でした。
「現場で植栽を担当させてもらいましたが、「名取市海岸林再生の会」の皆さんが作られた苗木は根切りがしてあって、伸び過ぎなどのサイズの問題もありませんでした。根切りなど手もかかると思いますが、それをやってもらってるからこそ植える者からしたら作業はしやすいし、活着率を高めることにつながっているのだと思います。
他の業者から購入した苗を使うこともありましたが、植える際に不安を感じました。
“この苗はちゃんと根付き、育ってくれるのだろうか”と。
再生の会の皆さんの苗木は本当に丁寧に手をかけて育ててある、
いい苗木だと、その時に実感しました」

配布資料にはカラーコピーされた育苗場の写真が添付されていました。
一面に青々と育っているクロマツの苗があまりにも見事で再生の会のKさんに「すごいですね~」と声をかけると「これさ、青々と見えるように緑のスプレーかけたのさ」と、いつものようにふざけていました。
せっかく植え手である佐々木さんがあんなふうに苗木をほめてくれたのに・・・・・・。
でも、心の底から嬉しかったはず。私もとても嬉しかったです。
再生の会の皆さんが育てているのは
コミュニティを再生させようという思いのこもった特別な苗なのだと思います。
いい加減な商売としてやっているのではなく、
心の底からいいものを作ろうとして2年間手をかけてきた特別な苗なのです。
「名取市海岸林再生の会」総会 その1 お土産
名取市海岸林背後で本格的に農業生産開始
名取市の海岸林のすぐ背後、震災前1,000棟あったビニールハウス団地で、
震災後初の野菜収穫がありました。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201507/20150702_15014.html(7月2日河北新報)
農地復旧工事は震災後、数キロ先の津波到達地点から始まり、おおむね内陸側から沿岸部に向かって進んできました。昨年12月、海岸林背後の約100haで晴れて地権者に土地引き渡しがされるとともに、農業生産法人「名取北釜ファーム」が起業され、まずは100数棟のビニールハウス建設、露地栽培も始まり、ここに至りました。
同社の設立には、名取市海岸林再生の会の鈴木英二会長が関わっています。「若い人に働きたいと言われる会社にしたい」といつも言っています。
7月2日私が東北電力労組のKさんと現場実踏のためハウス横を通ると、
収穫間際のチンゲン菜が育っていました。
中心になって働いている人の中には、2011年5月の初名取以来お世話になってきた再生の会のTさんも。仕事上がりの時間。笑顔で談笑中。私の車に気づいて、いつものアイコンタクト。順調そうでよかった。
私たちの事務所と空港の間の100ha以上の大農地では、今もまさに毎日、復旧工事中。朝7時には、重機が土をふるいにかける作業の音が大々的に始まります。幸い、農地復旧に先駆けて、その前面の海岸林はすでに植栽済み。これからは温暖化などの影響で、「高潮」の脅威が現実化すると考えています。波しぶきが粒となって、防潮堤はおろか内陸まで風に乗って侵入することもあるかもしれません。
名取の海岸林の存在は、重要になってくると思っています。
広報室の林です。
昨日に続き大阪マラソンの話題です。
今年の冬出場を誓ったフィリピン・バゴ研修センターの渡辺重美所長が
チャリティランナー登録をしてくださいました!!!
(こちらにその時のことは→「千代の松とネグロスの繭」 吉田は
ランナー募集100名と大きなことを言っています・・・・・・実際は30名です)
東京農大在学中にオイスカの創立者から直接話を聞く機会を得て、
以来オイスカ一筋。お父さんの背中を見て育ってきた息子さんも今、
現場で一緒に活躍中です。
そんな渡辺所長がフィリピンから「海岸林再生プロジェクト」の応援のため
フルマラソンに挑戦してくださるというのです。私たちにとっての大大大先輩が!!
どうぞ皆さん、今年の11月で65歳になる渡辺所長のガンバリを応援してください。
よろしくお願いします。
→→→寄附ページはこコチラ
皆さま、応援宜しくお願い致します!
はじめまして。
オイスカ中部センター、国際協力ボランティアの増留です。
ただいま中部センターにて、1年間の研修をさせて頂いております。
日々学ぶことが多く、新鮮な毎日を研修生達と送っています!
さて、以前にも募集のお知らせがありましたが、
今年10月25日(日)に第5回大阪マラソンが開催されます!
オイスカ中部センターの職員の村松、そしてわたくし増留も
「チャリティランナーとして出場したい!」と、只今猛特訓(!?)と
目標金額達成に向けて活動を行っています。
先日は、海岸林再生のボランティアツアーに参加させて頂きました。
すくすくと育っているクロマツの成長の様子に感動し、
またそれが、地元の方々がこの5年間根気強くクロマツをお世話にしてくださっている
からだというのが、現地に行くことであらためて分かりました。
ボランティアとしての参加だけではなく、
今回はプロジェクトを少しでも多くの方に知っていただけるよう
この大阪マラソンのチャリティーランナーという立場で広めていきます!
海岸林再生プロジェクトに、そしてそれを広めていく私達に、
是非みなさんのご協力をお願い致します!
オイスカ流、地元農家と森林のプロとボランティアの完全分業
地元農家、森林のプロ、ボランティアの完全分業が、オイスカ流の持ち味です。
「それぞれにしかできないことを」という流れが完全に軌道に乗りました。
平成26年度は、地元の雇用1,400人、ボランティア1,500人
平成27年度は、地元の雇用1,000人以上、ボランティア2,000人の見込み。
かつて被災地農家と交流したいという声をフィードバックし、何度か話し合いましたが、
「我々への期待の第一義は、交流ではない。このプロジェクトの事業は例を見ない規模。
事業としてモノを考え、それぞれの持ち場に徹し、徹底して分業しよう。」
名取市海岸林再生の会は、原則月曜~木曜日で業務に当たります。
週末は体を休めるなり、自分の家や畑のことに集中する体制です。
ちなみに、視察対応、報告会参加、交流などには、その分の日当が発生します。
宮城中央森林組合は、安全管理などからも、オイスカが「現場監督」として指定した
佐々木統括か私がいる時しか業務に当たることが出来ません。
一方ボランティア来訪は、意図して金・土に集中させています。
その指揮・指導は、オイスカ東京本部が執ります。
業務の自然な流れから、ボランティアと農家、森林組合が接するときもあります。
あくまでも自然であるよう心掛けています。出来ないときは出来ないというだけです。
6月から7月初旬、森林組合は海岸林・内陸防風林の「施肥」、内陸防風林の「下刈」。
7月に入りましたので、待ちに待った海岸林のニセアカシア「除伐」の季節を迎えました。
林業の世界は、春から初夏にかけて仕事が薄く、むかし私も苦労しました。
平年の安定雇用に、少しは貢献できていると思います。
再生の会は、育苗場の散水、除草、消毒などに連日誰かが出勤し続けています。
宮城県の苗木生産調査、宮城県農林種苗農業協同組合の研修、静岡県・岩手県庁などの視察対応、事務的には役員会、会計監査、総会資料作りなどが続いています。
ボランティアは4月以降すでに1,100人。
昨年を大きく上回るペースで、意図して受け入れています。リピート率は4割と申し分ありません。
団体参加は、組織的に継続的に支援いただき、担当者に理解と統率力があり、戦力足り得る団体のみ。
私たちは体験活動受け入れを一義としているのでなく、ミッションと期待されていることは、
現場で結果を出すことです。
地元農家、森林のプロ、ボランティアの完全分業を極め、事業を必ず成功させ
復興の一端を担いたいと思います。