7月中旬、宮城中央森林組合の手で、協定区域内のニセアカシア除伐を終えました。
2013年の盛土造成工事で倒伏したクロマツとともに、すでに繁茂していたものは
抜根、破砕チップ化され、さらに盛土をかぶせて駆除しましたが、
一部もとの地盤が残った個所から広がりつつあります。
我々の現場は「まし」です。
林野庁の盛土造成工事を行っていない他市の民地などでは凄まじい勢いです。
昨日、ニセアカシアに関する論文などを久々読み漁りました。
頭の整理を兼ねて、箇条書き的に整理してみました。
ニセアカシア(別名:ハリエンジュ)
●原 産:北アメリカ東部
●樹 高:25m~30m
●世界3大普及種: ユーカリ属、ハイブリットポプラに続き世界に普及している
●日本への導入:1873年(諸説あり)公園緑化樹等として
●救国樹?:昭和30年ごろまではこう呼ばれた。農業高校の教科書にも出ていた。
●用 途: 鉱山・炭鉱跡地、放牧場跡地、はげ山の緑化、治山・砂防、
      鉱山・炭鉱の坑杭、鉄道の枕木、公園緑化、荒廃地緑化、街路樹、
      養蜂・リンゴなど果樹園の蜜源植物
      長野県や秋田県などアカシア蜂蜜主産県では、8割~9割がアカシア蜂蜜。
●窒素固定の能力:マメ科植物特有の特徴として空気中の窒素を固定する能力。
●窒素固定根粒菌との共生:クローバーなどのマメ科植物は、根に根粒があり、窒素化合物を生産する「根粒菌」と共生しているため、根で窒素窒素肥料を合成できる。
一部のマメ科植物は土の質を「窒素過多」(富栄養化)にし、他の植物が侵入困難となり、長期にわたって単一群落となるとのこと。
●肥料木:窒素を多く含んだ落葉を大量に土壌に供給し、土壌の地力を向上させる。
●増殖戦略:種子のみならず、親株を中心に水平の根で四方八方に広がる。
●強い生命力:39年間埋められても発芽した例がある。
●林種転換が難しい:「一度成林すると林種転換が難しい。導入には慎重さが求められる」。
救国樹と言われた時代もそう指導されていた。
●高い光合成能力:陽樹が生存できないという相対光量6%以下のクロマツ林で種子飛散による
拡大も最近報告された。弱光でも生きてゆけるようだ。
●排他的性質:アレロパシーという他の植物の成長を阻む物質や、動物・昆虫に対して有毒な成分を有し、他の樹木と共存するというより、独占的に生育範囲を広げ、生物多様性を低下させる。
山地の植栽木の種子が下流に流れ、河原で繁茂、自生種を駆逐し占有する例は全国的。
洪水の際の流化能力低下・流木化という治水上の問題が現実化している。
●浅根性:20~30年生の成木は倒れやすい。
●ほかの特性:耐暑性、耐寒性、耐塩性、耐乾性、耐貧栄養性、土壌を選ばない。

ニセアカシア除伐 施工前

ニセアカシア除伐 施工前


【管理することの重要性】
●「生態系被害防止外来種リスト(区分:産業管理外来種)」(環境省)
生物多様性の低下の恐れがある。
*産業管理外来種とは、産業または公益的役割において重要で代替性がないもの。18種類。
緑化や牧草、養蜂における蜜源植物、果樹、養殖、放流、施設栽培の受粉用
などに利用されている。樹木ではビワ、キウイフルーツ、孟宗竹など、動物ではニジマスなど
●「侵略的外来種ワースト100」(日本生態学会)
【駆除する立場から】
海岸林に関しては、クロマツや海岸の広葉樹と競合し、生育を阻害する事例が
全国各地で現実の問題になっている。
プロによる除伐施工後

プロによる除伐施工後


●地下の根茎を効果的に除去する技術、地下部を死滅させる技術は確立されていない。
●伐採により増殖が誘発される。1つの切り株から10本以上の萌芽が発生する。
つまり、一度伐ると幹の本数が10倍以上になる。伐採を繰り返すことで枯死させる。
●伐採時期を選ぶ必要がある。芽吹き前に伐採すると盛夏伐採した場合よりも旺盛に萌芽する。
●成長し木質化した後の「トゲ」は、大きく、固く、鋭く、けがの原因になる。
●実生や芽吹き直後は、幹もトゲもやわらかく、抜き取るまたは掘り取り、根も除去する。
 
●大きくなったものは、6月~7月に伐採し、「ラウンドアップ」などを薬剤塗布する。
薬剤が染み込みやすくなるように、切り株に切り込みを複数入れる。
ボランティアでも、このように上手に引き抜けます。プロとボランティアの併用で駆除します

ボランティアでも、このように上手に引き抜けます。
プロとボランティアの併用で駆除します

「芽かき」 この言葉を覚えたのは2011年秋、秋田県能代市「風の松原」にて。 林野庁東北森林管理局米代西部森林管理署の署長様の説明を聞いてからです。 文字通りの「芽かき」であることは、容易に想像できました。 (能代で言う「芽かき」とは、素人仕事を超えるものも含まれますが) こうして振り返ってみると、わたしは幾人の森林行政当局の皆さんに教えてもらってきたことか。

クロマツ植栽地めがけて、どんどん侵入してきます

クロマツ植栽地めがけて、どんどん侵入してきます


ニセアカシアとの格闘は、秋田県能代市「風の松原」だけでなく、全国的なもの。 海岸林だけではなく、普通の山野でも同じで、鋭いトゲとしつこさは、プロ泣かせ。 腐食に強いため、枕木や、鉱山などの坑内材、土木用の杭のほか、火力も強いため薪炭材として生活や産業を支え、大量の花が咲きミツバチが好む(蜜源植物)ため、今も養蜂農家、リンゴ農家などに重宝されているそうです。そして鉱山・炭鉱跡地、牧場跡地や禿山など劣悪な土地などの造林の植栽木にも活用され、かつて、貧栄養土壌の海岸造林にも「肥料木」(落葉が肥料になる)として導入されました。 ニセアカシアが今となって、これほど苦労するものと、誰も予期できなかった。 かつての技術者もこれを良かれと思って、困難を極める海岸林造成の一助とする方針としました。 名取の海岸林では、将来の群生化を警戒して、「TOP3」に入る、札付きのターゲットにしています。
ダイエーユニオンの女性組合員の皆さん。誰もが驚くこの根の長さ

ダイエーユニオンの女性組合員の皆さん。誰もが驚くこの根の長さ


種の広がりもすごいですが、恐るべきは根の広がり。1年で数m伸びました。四方八方に根でも広がります。 ボランティアで扱えるのは「芽が出たばかり」の柔らかいとき、根っこごと「抜き取る」もしくは「刈り取る」ことです。雨上がりなどは数mの根が面白いほど引き抜ける。
なんでこんなに盛り上がってるんだろ(笑) トゲも柔らかく、ケガなく 仕事できます

なんでこんなに盛り上がってるんだろ(笑)
トゲも柔らかく、ケガなく仕事できます


実行部隊はボランティア。 写真の皆さんは、ダイエーユニオンの女性組合員の皆さん。根っこごと抜き取りやすい雨上がりを狙って来てくれたかのよう。長~い根っこが簡単に抜けるので、ほとんどエンジョイ。目的をよく理解してくださったので、燃えてました。しかし、木質化し硬く大きくなった後、いわゆる「木」になった後は、すごいトゲです。それは「プロ」の仕事。 葛もつるも、雑草も、そしてニセアカシアも、 7月~9月が最も疲労しています。叩くならその時。 明日はニセアカシアの特徴を、現場の立場から整理してみます。未

秋山君が走ります!!

2015年8月1日( カテゴリー: 本部発 )

昨日大阪マラソンのチャリティランナー申し込みが締め切られました。
当プロジェクトのために走るランナーは26名。
その中の一人に秋山君がいます。
秋山君はプロジェクトの立ち上げ当初、学生インターンとして現場に駐在し、佐々木統括の下、「名取市海岸林再生の会」のおじさんおばさんにかわいがられながら
大事なお役目を果たしてくれました。

3月3日 172

育苗場のネットを張るための作業


120113 023

現在盛土が造成されている植栽地。当時は津波でなぎ倒されたクロマツが残る荒涼とした風景が広がっていた


 
 
 
 
 
 
 
 
社会人となった今、彼は仙台で仕事をしています。
今年の植樹祭には、レンタカーを借りて仙台から名取に来てくれました。
DSC_0120日本一麦わら帽子が似合う20代男子!
多くを語らず、自分を飾ることをしない、純粋でまじめな好青年です。
再生の会のおじさんおばさんたちが嬉しそうに「秋山君、秋山君」と声をかけていたのが思い出されます。
その秋山君が大阪マラソンのチャレンジを“恩返し”と位置付けています。
大学を休学して彼が体験したこの現場は、彼の力を借りてスムーズに走り出すことができました。でも、彼にとってもかけがえのない出会いと体験にあふれたインターンだったのだと思います。その彼の思いが“恩返し”という言葉になったのでしょう。
秋山君のチャレンジを、ぜひ皆さん応援してください。
クレジットカードを持ち、ジャパンギビングのサイトで登録をされた方は、500円以上100円単位で彼のチャレンジを応援できます(寄附は「海岸林再生プロジェクト」に充てられます)。
2月29日 520
トラクターも乗りこなす、本当になんでもできる秋山君が、今回「走ります!」と言ってくれた時は本当に嬉しかった。
海岸林再生への思いを背負い、頑張って走ってください!!
皆さん、秋山君のチャレンジへのご支援、よろしくお願いします。
→支援はこちらのページから
 

2015年7月31日( カテゴリー: 現場レポート )

ボランティアの日、皆さんにつぼ刈りというやり方で草を刈って
もらっています(見事なつぼ刈りの写真はこちらのブログをご覧ください)。
苗木の周りだけを刈り取り、それ以外のところは残しておいてもいいのですが、
神経質なまでに摘み取らなければいけないのはツル性の草。
CIMG8171 例えばこんなもの。
下の写真のように完全にマツの苗が巻き付かれてしまっていたらすぐに分かるのですが、まだツル状に伸びていないものは分かりにくいかもしれません。でも、あっという間にツルが伸びて、このような状態になってしまいますから、皆さんには葉の形などよく覚えてもらい、小さなうちに摘み取ってもらいます。
CIMG8124
 
 
今年新しく出てきているツルはこちら↓
ツルの色を見てムカゴがつく、ヤマノイモのような感じがしましたが、葉の形が違うようです。ムカゴも食べたいですが、つる性植物は我らが敵。徹底的に排除しなければなりません。どんな小さくても見逃さず、根っこから引き抜く!
リピーターの方々はツルを見つけてはやっつけてくれていて、心強いです。
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これは何でしょうか??

2015年7月30日( カテゴリー: 現場レポート )

名取事務所にあるものです。
何だと思いますか??
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吉田は“ドリアン”みたいだと言っていましたが、
こんなふうに積んである杭をアップで撮ったもの。
CIMG8191
 
 
 
 
 
 
 
何に使うのか。
それは、 植栽現場に設置する ↓ 階段です。
CIMG7634
 
 
 
 
 
 
 
階段があれば法面を崩すことなく登れます。
今年度の植栽地には約20ヵ所設置しています。
この資材で、昨年度植栽地にも設置する予定です。

イネ科の植物。これも種をつける前に刈り取りたい。

これはまだ出たばかり。大きくなると葉の茎が親指ぐらいに太くなります

これはまだ出たばかり。
大きくなると葉の茎が親指ぐらいに太くなります


我々が「1区」「2区」「5区」と呼ぶ昨年の植栽地で、とくに出ました。
植栽後に宮城中央森林組合の手で施肥をしますが、
その場所で有機化成肥料をたっぷり吸収して
驚くほど大きく直径1m、真っ平かつ円形に広がります。
雨の後は、簡単に引き抜けます。
しかし乾いている時は、とても手強く、根元で刈り取るしかありません。
根元で刈った後は、土をふるい落とします

根元で刈った後は、土をふるい落とします


根についている土は有機化成肥料付きの土。ですから、土はクロマツの周りで、地面に叩きつけて払い落とします。
刈ったメヒシバは「逆さ」にし、根を乾燥させるように、捨て置きます。
逆さにしないと、また根が土に伸びて生き抜く、強い根です。逆さにしても、根が土を目指して生き抜くものもあります。
捨て置く場所は、クロマツから少し離れた場所。枯草の下に、善からぬ虫が発生し、影響を受けると困るので。
去年のボランティアの成果で、「5区」の秋植え個所以外は、ほぼ根絶しました。
今年の植栽地、6区の一部と、7区・8区・9区では、これから出るのかもしれません。
天地を逆にして捨て置きます。ダイエーユニオンの女性組合員の皆さん、頑 張りました!

天地を逆にして捨て置きます。
ダイエーユニオンの女性組合員の皆さん、頑張りました!


 

以前ハウスの中で再生の会の方が育てているスイカを紹介しました。
大きくなったかなぁと見に行くと、ちゃんとわらがかぶせてありました!
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・・・・・・ということは、ちゃんと大きくなっているはず!!
CIMG8159

立派なスイカが育っていました。
10個ぐらいあったでしょうか?

カラスにつつかれたりしないよう、
大きく育って皆さんを喜ばせてもらいたいものです。

育苗場の今

2015年7月27日( カテゴリー: 現場レポート )

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播種後2か月の苗


再生の会の皆さんは、自分の農業や、お孫ちゃんのお世話に没頭しています。
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今年は香川・岡山県産マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツも播種


それでも、散水、除草、根切り虫・立ち枯れ病・シンクイ虫対策などの消毒は抜かりなく、日々行い続けます。
加えて今月は、マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツの挿し木1,000本の作業、オイスカ名取事務所・第1育苗場での種苗組合講習会、再生の会の総会、岩手県庁・静岡県庁などの視察対応、取材対応などがありました。
先週は、播種して2か月の幼苗から寒冷紗をはずし、1年2か月の苗は「空中断根」の作業をし、直射日光による黒いコンテナ南側の高温障害対策として、木材で日よけしました。
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播種後1年2か月の苗。来年4月に植えます。


当プロジェクトの最大の強みは、何と言っても、自家生産による育苗。
どこに出しても恥ずかしくない、抜群の優良苗。
月に一度以上、時に前触れもなく立ち寄って下さる全苗連・宮城苗連の太田清蔵組合長も、先日「満点」とメモを残してくださいました。
植栽は何と言っても苗次第。
森林組合の作業班諸氏も、我々も、この苗が植栽の手に渡るまで2年間見続けるのです。
今回の出張でも、真っ先に圃場を見ました。
整然とした美しい育苗場。
今回も僕には輝いて見えました。

溝切りのプロ

2015年7月26日( カテゴリー: 現場レポート )

18日のボランティアに9名で参加してくださった埼玉トヨペットグループの皆さんは
翌日もそのまま現場に残り、午前中たっぷり作業をこなしてくださいました。
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そのスタイルからして玄人のwさん(左)。
足下は地下足袋です(アップの写真を撮るのを忘れました!)。鍬の使い方といい、姿勢といい頼りになる溝切りのプロ!
どんどん排水用の溝が掘られていきます。
ある方がおっしゃっていました。
「いろんなボランティアに参加してきたけど、その中でもここのボランティアはハードだね」と。
 
 

前日は比較的涼しかったものの、この日は太陽も出て暑さも体力を奪っていきました。
そんな中黙々と溝を作るWさん。
きっと雨が降ってもここの苗は根腐れしないことでしょう。
ありがとうございました!

CIMG8185

広報室の林です。

16・17日にモニタリング調査を終え、ほぼ全エリアの
生育状況を見て回った吉田は、どうしてもこれを見せたかった様子。

CIMG8165 CIMG8163

このエリアの生育は良好で、この写真のマツの背丈は115cmほど。

今年80cmも伸びたものも、
根元が直径が3㎝以上に育っているものも見られました。

みんな、名取市海岸林再生の会のお手製の、抜群に良い優良苗。

しかし、こんなに育っているものもあれば、
ほぼ成長していないのではないかと思われる苗も。
その違いは歴然。

左は順調に育っているところ、右はそうでないところを上から撮影したもの。

CIMG8177 CIMG8176

 
 
 
 
 
 
 

土壌や風の影響もありますが、苗木の良しあしも大きいようです。
モニタリングの結果は来月以降、ホームページでも公開していきます。

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