タネまきに科学あり

2017年5月12日( カテゴリー: 清藤先生の視点 )

今年のクロマツ種子播きは、4月27日~28日に再生の会の多くの方々を中心に5万6千粒の種子がコンテナに播かれ、その様子はブログにも詳しく報告されています。
多くの地元の方々がかかわって良い苗木が育てられていると思うとうれしくなります。
苗木コンテストで県の優秀賞からさらに全国一の優秀賞をいただける日も夢ではない、その時は再生の会の皆様は大宴会を開くのだろうな、と妄想?!が走ります。
少しオタク的な話で恐縮ですが、林業も科学だという一端を紹介したいと思います。
タネの前処理としてクロールピクリン、ウスプルン、チウラム剤等が消毒のために使われました。
現役の頃、種子にまぶしてよく使っていたのは、写真の「光明丹」でした。
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種子に鮮やかなオレンジ色がついて播いた目安としてわかりやすく、また鳥の食害に遭ないと言われ安いこともあり重宝して使っておりました。
中身は、化学的には四酸化三鉛で赤鉛とも呼ばれたりもします。
鉛ですので、鉛中毒の危険性が高いことが話題となり、それ以来使わなくなりました。
そして今私たちが使っているのが「ベビーパウダー」。
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どうしてベビーパウダーなのか?
その科学的根拠を考察してみたいと思います。
タネの発芽生長に必要な要因は、
先ず1.水分:タネの細胞は水がなければ栄養分を消化吸収さらに転移、成長させることはできません。
2.温度:発芽に対しては水分と温度が密接な関係をもっていて温度が高いほど吸水速度は速くなります。クロマツでは最低9℃、最適温度は21~25℃といわれております。クロマツはアカマツよりも低温感受性は低いです。
この2つの要因が主ですが、光も影響します。マツは明発芽するといわれ、クロマツは光照射だけで十分発芽するのです(従って種子の覆土は厚くない方が発芽が早くなる!)。さらに発芽した種子のその生長には当然栄養分が必要になり、必要な養分吸収を担う肥料分が土壌中にあるかが問題となります。
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では、どうしてベビーパウダーなの?
種子が播いた時に見やすいということが先ずありますが、発芽・生長に関係しているのです。ベビーパウダーの中身は、「コーンスターチ」と「タルク」です。「コーンスターチ」は料理にも使うのでご存じの方も多いと思いますが、ようするにデンプンです。吸水性に優れていて、タネにまぶすことによってタネに必要な水分吸収の補完的な役割を担ってくれるのです。
「タルク」ですが、粉同士の間に出来る間隙を通って水分の吸収・蒸発を担てるのです。赤ちゃんの肌サラサラとなるのはそのためでしょう。化学的中身は水酸化マグネシウム。農業をやられている方はすぐぴんと来るでしょう、そうです「苦土」です。土壌の㏗調整にもちられますし、植物葉の葉緑体成分として有効で、要するに葉を緑にし葉の生長を促すのです。
種子にまぶして何気なく使っているこのベビーパウダー、このこと一つとってもずいぶん科学的だとは思いませんか?それを最初に利用発見した人はすごいですね。
「林業は科学だ!」
このシリーズを次にも書いてみたいと思います。

植樹祭目前

2017年5月11日( カテゴリー: 本部発 )

今週はほぼ東京本部詰め。
広報室長の林久美子さんは僕らが目前のことで手一杯なので、
6月の企画を先回りして、急ピッチで進めてくれている。(企画内容はいずれ彼女から)
連休で1週間現場を開けただけで、佐々木統括にシェアしたいことは山積。
頃合いを見計らって電話。
でも、携帯の声が全く聞こえないほどの雑音。今日も突風だな・・・
少雨・乾燥を気にして、植栽現場を歩いているのだろう。
すぐ切って事務所に戻るころもう一度電話。
インフラメンテナンス大賞のお祝いの電話が何回も届いたそうだ。
技術系、官公庁系にはずいぶん知れ渡ったことは伝わってきている。
その他諸々の話。でも、統括からは枯死の話題はまったく出ない。
聞くのは野暮。必要がなくなって引っ込めた。

経済同友会からインフラメンテナンス大賞の祝電をいただきました。 心のこもったメッセージが嬉しかったです

経済同友会からインフラメンテナンス大賞の祝電をいただきました。心のこもったメッセージが嬉しかったです


明日5月9日は宮城中央森林組合の植え付け再開。
あと3日でプロの植え付けは終わると現場代理人の佐々木秀義君。
ということは再生の会と30人態勢だろう。
松の様子はまた彼からも聞けるだろう。
今日は、来週に控える植樹祭の段取りと、とある申請書の書類づくりで終わった。
その間、携帯の通話だけで38本。これでも月定額1,730円。
オイスカ職員でダントツ携帯使用量が多いのでPHS。
おかげさまで、植樹祭の申し込みは400人に達しカウントダウン。
森林組合、再生の会、オイスカ、市役所、県庁を入れると500人となる狙い通りの人数。
名取北高校のおかげで20歳以下の割合は4人に1人を超えた。植樹祭の雰囲気は様変わりする。
最高齢は亀井昭伍支部会長の85歳、多賀城市民の84歳、小野支部事務局長は81歳。
夕方、浅野さんとロジ確認の打ち合わせ。
かなり頑張って、意を汲んでこなしてくれているが、二人の目で抜かりなく確認を繰り返し、
関わる裏方全員のイメージがピタリと合う、これまでで最高の植樹祭を目指したい。
舞台裏で日々苗木を育て、一生懸命植えてくれている人にも光を当て、
一人でも多くの人に何か感動していただけるような植樹祭にしたい。
そういえば、1回目の植樹祭閉会式では突然虹が出て、参加者全員がそれを見た。
目に見えない力の存在を感じたことを改めて思い出す。
植樹祭を乗り切ったら、東京本部海岸林女子を寿司屋でご馳走します

植樹祭を乗り切ったら、
東京本部海岸林女子を寿司屋でご馳走します

支援者がじんわり拡大中!

2017年5月10日( カテゴリー: お助け隊員の声 )

プロジェクト開始当初からご支援を続けてくださっている川崎市の井上さんから写真が届きましたのでご紹介します。
井上さんはこれまでブログに何度か寄稿してくださっているので、ご存知の方も多いかと思います。
ブログ>2017年3月26日
ブログ>2016年6月14日
お墓参りやバラ園へ向かうために自宅前を通る方たちへパンフレットを手渡した数 なんと6000枚!!
名取市の現場へはなかなか行く機会を持てないとの事ですが、ご自身のできることでご支援を続けてくださっていることに本当に頭がさがる思いです。
4月15日に井上さんが所属しておられる「川崎市早野聖地公園里山ボランティア」の総会、感謝祭が行われたとの事です。
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バザーで展示した写真パネル4枚を炭焼き小屋に立て掛け、見てもらいました。
「見ているところを写真とるのでサクラになって!」とお願いして集まってもらいました。
ですが、サクラではなく熱心に私の話に耳を傾けてくれていました。
アルコールを口にしながら、寄付金パンフを「今年の分です。またよろしく」といいながら
手渡ししました。およそ50部 常設用に10部

井上さん解説付きで手作りパネルに熱心に見入ってくださっています

井上さん解説付きで手作りパネルに熱心に見入ってくださっています


新たに里山ボランティアの会員になった方もいましたし、バザーに出なかった会員も出席していました。
ケアプラザの方3人は地域の方々と連携して地域福祉の構築を模索している人で、
里山ボランティアの活動フィールドで何かヒントはないか と、副会長に誘われて
来たと言っていました。
海岸林の写真パネルを前に、ケアプラザの方にプロジェクトの話をさせてもらいました。
7年応援していることに感心していました。
里山ボランティア全体のまじめなイメージが追加されたようです。
福島県いわき市出身の会員はパネルを前に、友人が津波の犠牲になったこと
自主避難者への援助はないことへのいきどおり
避難指示の方の援助金の矛盾 避難前より収入が多くなって豪邸を建ててねたまれて
いることなど 普段はしない話をきくことができました。
写真パネルの副次効果だと思っています。
この冬は炭焼きに1度も参加できなかったのですが、「久しぶりだね。」と言われ
違和感なく受け入れてもらっていることを感じながら うまい酒を飲みました。
大勢が集い、里山の恵に感謝して乾杯!

大勢が集い、里山の恵に感謝して乾杯!


近所のばら苑の開放が 5/11~28 と掲示されました。
いよいよ自宅前バザーの準備です。
嬉しいことがありました。
里山ボランティアの女性陣から クリスマスローズの苗、ビオラの実生株、
キンセンカの実生株を提供してもらう約束ができました。初めてです。
これからスケジュール調整して、ポットをもって堀上げにいきます。
この間のバザーへの私の出品を見てくれていたのですね。
続けてきてよかったと思っています。
昨日 ミント、コキアの実生をもらいました。
留守の間に ご近所さんから「柏葉アジサイ」「魚吊木」
の挿し木苗が届いていました。
今日の会食会の参加者から「ミヤコワスレ」を1鉢もらいました。
じんわり海岸林再生プロジェクトの支援者が増えています。
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上の文章にあるように、井上さんはお花や樹木の苗を種から育てたり、ご近所さんに譲って頂いたりして苗をバザーなどに出品し、募金していただいたお金をプロジェクトにご寄附くださっています。
井上さんの労苦を惜しまない熱心な活動にはこちらも刺激を受けています。
10日後には名取市の現場で植樹祭が開催されます。
今年は参加応募の出足がよく、植樹祭4回目にして名取のみなさんに受け入れられてきたように思います!
井上さんからの刺激を受けて、植樹祭に向けて抜かりなく準備を整えて本番に備えます!!

本部・広報室の林です。

4~7日まで横浜で開催されていたアジア開発銀行の年次総会 最終日、
サイドイベントとしてセミナーを開催しました。
日本のCSOがどのような取り組みをしているのかを世界に発信しようと
主に環境保全や復興支援などについて紹介しました。

「海岸林再生プロジェクト」については清藤参事が専門的な視点に加え
社会的なインパクトについても触れながら紹介してくださいました。
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会場にはアジア各国を中心に世界中の青年たちの姿が多く見られました。
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「質問がある方」とのファシリテーターからの呼びかけに
たくさんの手があがりその積極的な様子に驚きました。
香港から来たという女性は
「香港はこれまで大きな災害に見舞われてないので政府はそのための 備えをしていないが、今後は防災対策は欠かせないと思っている。 私たち若者が政府に働きかけるとしたらどのようなことができるか」 と質問。若い人たちが真剣に学び、考える場の空気の心地よさを感じました。
 
 
セミナーが終わった後、降壇したパネリストたちに、たくさんの参加者が
声を掛け、コミュニケーションを図っていました。
私が話をしたミャンマーの女性は、国際NGOの事務所に勤務し、
防災意識の向上プログラムを担当しているとのことでした。
「ミャンマーでも地震や洪水などの自然災害が多く、日本での取り組みは
とても参考になる。子どもたち向けにどう防災教育を展開していったらいいか」
と質問されました。日本の学校で行われている避難訓練などを紹介しつつ
それでもやはり地域や学校によって温度差があることを伝えました。
「自分が体験しないと本気にならないのは日本も同じなんですね」と。
日本が世界にできる貢献の一つは、防災教育なのだろうと震災後から
考えていましたが、それをあらためて強く実感したセミナーでした。

多雨多湿の次、今度は雨がまったく降っていない。今日も。
毎年、乾燥と多湿の繰り返しには慣れていますが、心配は変わりません。
植栽開始の17・18日に51mm降って以来3週間、ほぼ降雨ナシ。
去年・今年の現場は、降れば水が引かないし、降らなければチップがないので
乾燥著しい。北西からの乾いた強い風は数日おきに吹き続けている。
今期の植栽地は静砂垣が先に入っているが、風でマツが回されやすい。
「津波で倒され、枯れてもなお役に立とうとする」と太田猛彦先生が言った
松チップの役割は大きい。
5月20日の4回目の植樹祭の申し込み締切目前。
全体の募集もちょうど適正な人数となりそうです。

震災由来の瓦礫や危険物、岩もこうやって取り除きました。仙台トヨペットの女子社員のうち一人は北高出身

震災由来の瓦礫や危険物、岩もこうやって取り除きました。仙台トヨペットの女子社員のうち一人は北高出身


植樹祭開催地。閖上方面、北を望む。三角の防風垣の中は30m×20m。これを約40区画が植樹祭対象面積2ha。10,000本名取北高校の女子生徒5名を含む78名で4月のボランティアの日に割り箸をさして準備してあります

植樹祭開催地。閖上方面、北を望む。三角の防風垣の中は30m×20m。これを約40区画が植樹祭対象面積2ha。
10,000本名取北高校の女子生徒5名を含む78名で4月のボランティアの日に割り箸をさして準備してあります


 
 
連休前、東京本部の鈴木和代さんから電話報告。
「植樹祭に、名取北高校から先生含めて100名申し込みありましたよ!」
まさかの100人。これはビックリ。
校長先生にお礼の電話をすると、
「人を育てようという皆さんの目標は、我々と同じですから!少しづつイキマスヨ!」
少しじゃないです。このインパクト。あの校長、教頭先生ですから動員ではないです。
私たちの希望通り、自分で手を挙げた100名です。
きっと先生たちは、すでに次の一手も考えていることでしょう。
「今年は若い世代の参加に力を入れる時期」とチームで話し合ってきました。
連休明け早々、損保ジャパン日本興亜環境財団主催の大学生インターンの面接もあります。
大学生から「卒論の研究素材に」という申し込みもきています。
6月・7月のボランティア申し込みは去年以上。
事務所の引っ越し(120mだけ移動)も加わって、お盆まで多忙な毎日となりますが、
安全と健康に気を付けて、着実に結果を出してゆきたいと思います。
4月15日に準備してくれた78名。3年後にはマツはこうなります

4月15日に準備してくれた78名。3年後にはマツはこうなります


それにしても休みすぎた・・・ 仕事できるかな??

休憩中に収穫です

2017年5月3日( カテゴリー: 現場レポート )

またまた浅野です。
先日のブログで林室長は四葉のクローバーを見つけられる。ということを書きました。
それに引き続き、林室長のお話を…。
播種作業の休憩中…
林室長がハウスの中にいませんでした。ちょっと気になってハウスの外に出てきょろきょろ。
誰かと話してるわけでもないし、トイレかなぁ…?と思っていると、
発見!!なにか作業をしてるじゃないですか!

何かをしている林室長

何かをしている林室長


「何してるんですかー?」
「ノビル採ってるの」
…ふむ。ノビル…うん。聞いたことある。食べたことない。
宮城の地名にもそんな名前のところがあったなぁ…。などなど思いながら、
近くに行って見てみると…いっぱい!!
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思ったよりもたくさんのノビルが収穫されていました。
自然に生えてきたもののようで、林室長は味噌で食べたり、餃子に入れて食べたりするそうです。
「ほぉ・・・食べたことないです」「おいしいよー」などと話しているうちに
休憩終了。そのまま作業に戻りました。
出張を終え、月曜日に東京の事務所に行くと…
「浅野さん、これ。ノビル入り餃子」と林室長がわざわざ持ってきてくれました!
ごめんなさい。写真撮るのを忘れました…。
でも、お昼においしくいただきました!
皆さんも休憩中に育苗場をプラプラすると、何か見つけられるかもしれないので、ぜひ。

平凡なオタクの休日

2017年5月2日( カテゴリー: 本部発 )

「田植え、頑張ってください」
森林組合のY班長にこう言って別れた。
東北の森林のプロも、幾つもの顔を持つ人が多い。
ここの仕事に来る人は音楽業界も多い。

再生の会は植栽のための苗の出荷と並行して、播種56,000粒

再生の会は植栽のための苗の出荷と並行して、播種56,000粒


同時進行で、宮城中央森林組合は岡山県産マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツを植栽。

同時進行で、宮城中央森林組合は岡山県産マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツを植栽


青梅線も、東京の自宅も、いつも妙な感じがする。
帰ってきたと思うのはいつも名取の美田園駅。
帰京した途端、ヒノキ花粉。くしゃみ連発。ティッシュと友達。
東京は宮城と違ってヒノキが多いから。
よく働いた。できることは全部やった。
ちょっとクロマツを忘れよう。珍しくそう思った。
29・30日の2日間で32時間熟睡。やっぱり自宅は自宅。
テレビを見てても、すぐ寝てしまう。こういう日は年に何度か。
ちょっと料理したり、洗濯、風呂掃除、犬の散歩・・・すこしだけ家事男。
近所のチビたちとサッカーしたりするから、なかなか捻挫は治らず。
水路を走り幅跳びして今までにない嫌なコケ方だった。折れてなくて良かった。
私が寝ている間も、一部の森林組合作業班は「施肥」に突入している。
全身に鞭打って田植えをしている人もいる。
むろん、私と同じように、ひたすら寝ている人もいるだろう。
連休明け、まだ15000本ほど植えねばならない。植樹祭もカウントダウン。
プレッシャーはあるけど、仕事を完全に忘れることはできないけど、
その割にはイイ気分転換できた気がする。
再生の会・森林組合・オイスカのコアチーム集合写真をやっと撮れました。2年ぶりに。むろん、まったく全員揃っていませんが。

再生の会・森林組合・オイスカのコアチーム集合写真をやっと撮れました。2年ぶりに。むろん、まったく全員揃っていませんが

ピンセット?

2017年5月1日( カテゴリー: 現場レポート )

こんにちは、浅野です。
56,000粒の播種のことは林室長小林さんのブログに書いてありますが、私はその時の休憩の話を…。
休憩中は皆さんハウスの中でお茶やコーヒーを飲みながらひと息。
いろいろな会話が飛び交います。

そこかしこから分からない言葉が…

そこかしこから分からない言葉が…


わぁー今年も分からない言葉が飛び交ってるなぁ…。と思っていると、
「へぇーすごいねぇ」「考えたねぇ」「こりゃいいわー」となにやら女性陣の声が…。
後ろを向くと女性陣が誰かを囲んで何かを見ている…
何かをのぞき込んでいる女性陣

何かをのぞき込んでいる女性陣


気になってのぞきに行くと…
手作りピンセット!!

手作りピンセット!!


なんと森林アドバイザー会の方が自ら作られたそうで、
去年来た時、種が手にくっついちゃってまきにくかったから…とのこと。
このためにわざわざ作って持ってきたみたいです。
女性陣はべた褒め。来年はいっぱい作ってきてくれるかもしれませんね。

チームワーク

2017年4月30日( カテゴリー: 省太のつぶやき )

前回、クロマツの苗を海岸に植える作業を「海岸林再生プロジェクト」の肝だと言いましたが、もう一つ、肝がありました。海岸という悪条件に耐えられる丈夫な植える苗を育てる作業です。前回も書きましたが、名取市海岸林再生の会がつくった苗はことし、宮城県山林種苗品評会で最優秀賞をとりました。これからも頑張ろう、というわけで、クロマツの種まきが先だっての4月27、28の両日、名取市の育苗場でありました。
海岸に苗を植えるのが職人技だとしたら、種まきはチームワークの作業です。まくのはマツクイムシに強い宮城県産の抵抗性クロマツの種1・2キロ。5万5千粒ほどにもなります。素人には気の遠くなるような数なのですが、約20人で、28日の午前中には、予定を半日あまして終えてしまいました。
種まきというのは、いくつもの細かい作業の積み重ねです。一つ一つは決して難しい仕事ではないように思えます。こんな手順です。
①トラクターで畑の地ならしをする→②ビニールハウスに用意してあったコンテナポット(苗をまくために土を詰めた容器)を軽トラックで畑に運んで並べる→③コンテナポットの上から水をまく→④ポットの土に木の棒で小さな穴をあける→⑤その穴に種を一粒ずつ入れる→⑥穴を埋め、足りなければ土を足す→⑦乾燥や寒さを防ぐためポットの上にムシロと合成繊維の覆いを二重にかける→⑧最後にもう一度上から水をまく。

全ての作業がチームワークです

全ての作業にチームワークが必要です


仕事はこれだけではありません。コンテナポットに土を詰める作業は3月にありました。種を5万粒まくためには、土詰めも5万回必要です。300ccの土を詰め、缶コーヒーの空き缶で適度に固めるという、これまた地味な仕事でした。また、種は数日前から水につけ、まく日の朝にはベビーパウダーをまぶします。発芽を促すとともに、まいた種がよく見えるようにする工夫です。コンテナポットを並べるとき曲がらないように目印に糸を張るようなきめ細かさもあります。
なんだかいい香りがします

なんだかいい香りがします


丁寧に一粒ずつ…

丁寧に一粒ずつ…


そして何より、種をいつまけばいいのか、の決断がありました。気温の上昇具合など見ながら、種まきに最適なタイミングを探すのは佐々木廣一統括の役目です。
こうした数多くの仕事が、よどみなく行われていく。種まき当日は好天でしたが、それにしても、傍から見ていると気持ちよく仕事が進んでいく。人によって仕事の速さや丁寧さに多少のばらつきがあるのはしょうがないのですが、それぞれが遅れている工程にさっと入っていく様子は見事でした。下を向いて黙々と、という作業が多く、そのうちに飽きて集中力がなくなりそうです。そこはおしゃべりで気を紛らわし、効率を上げているようでもありました。作業はボランティアではなく給与が支払われています。だから真面目にやって当たり前ではあるのですけれど、きちんと仕事をすることの美しさのようなものが現場にはありました。
私自身は種まきは二度目です。去年はしゃがみこんだ姿勢を取り続けたため腰を痛めてしまったので、今回はコルセットを着け、ズボンを汚してもいいからなるべく楽な姿勢でやろうと決めていました。プロジェクト自体の種まきは震災の翌年に始まりことしが六回目。試行錯誤を繰り返しながら、ふさわしい形に収れんしてきたようです。苗づくりを担う「名取市海岸林再生の会」には農業を営む人も多く、それぞれが一国一城の主です。そのせいか、作業中には「みんな、考えてることが違うから」などとぼやく声も聞こえましたが、それがただの冗談に聞こえるほど、仕事はつつがなく終わったようでした。種の数をちょっと読み間違え、土を詰めたコンテナが足りなくなって種が数百粒余ってしまったのが、唯一の小さな失敗だったでしょうか。
最初から最後まで腰が痛くなる体勢です…

最初から最後まで腰が痛くなる体勢です…


種は2、3週間で発芽し、順調に育ったものが2年後に海岸に植えられます。そして、種まきは来年で終わるといいます。プロジェクト第1次10ヵ年計画も第3コーナーです。

昨日発表された第1回インフラメンテナンス大賞
「海岸林再生プロジェクト」は農林水産大臣賞を受賞したことを報告します!

インフラメンテナンス大賞は農林水産省のほか、総務省、文部科学省、
厚生労働省、国土交通省、防衛省で新たに創設したもので、
社会資本のメンテナンスに係る優れた取り組みを表彰するというもの。

プロジェクトとして強調した民間活力の活用、市民参加といったところが
評価されたのでしょうか。いつも支えてくださる皆さんのおかげです。
どうもありがとうございます!

「海岸林はインフラ」と訴えながら活動してきたプロジェクトが
こうした賞をいただけたこと、うれしく思います。

引き続き応援よろしくお願いします。

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