吉田37歳。2007年1月、10回目になろうかというタイ出張のとき。
すでに「退職」を考えて始めていた。途中で何かを辞めるという経験はなく、
すでに7年知遇を得たタイの人たちや、戦友でもある後輩たちがいる国への
複雑な気持ちを片隅に持った出張だった。
2007年1月の出張 2列目右からカヤイ君と吉田

2007年1月の出張。2列目右からカヤイ君と私


インド洋大津波から3年の、南部ラノーン県のマングローブ植林プロジェクトを、
出張の本題終了後、じっくり村々を訪ねる機会を得た。
「なんで村の人は造林の労務に参加するのか?」
この疑問を察して、タイ政府職員で県全体の海岸林造林の総責任者カヤイ君や
オイスカタイ総局が急遽応えてくれた。
当時、オイスカとの共同区域だけで700haの再造林が完成していたと思う。
4つの海岸沿いの漁村を訪ねた。傷跡は見られるが、村は元通りに見えた。
「漁獲高が減った。1回の出漁の水揚げが30分の1」
「仕事を求めて若い人は出稼ぎに行き、村には年寄りばかり」
「若い人たちが戻って生活できるよう、マングローブを植えたい」
見た目の復興とは別に、知る人ぞ知る、切迫した事情を知った。
水平線まで見渡す限りの海の森を、マングローブリサーチセンターの4階建てぐらい
あろうかという櫓に登って、「遠くを」眺めるカヤイ君の豊かな表情を今も忘れない。
2007年7月、退職するとき、タイのみんなへの言葉が見つからなかった。
完全にオイスカのことは忘れて林業労働に明け暮れていたが、
2009年、春日智実さん・ヤット君のタイでの結婚式に招待いただき、、
タイの恩人、親友、田野井君など大事な後輩たちと再会。
朝5時半までホテルのロビーで、マングローブの村人も一緒に車座になって飲み明かし、
30分だけ寝て、フラフラで結婚式に行ったことを思い出す。
そして2009年秋、縁あって、一方、恥を忍んでオイスカに復職。
すべてにおいて新入職員として。恥ずかしく、悔しいことばかりの毎日だった。
そうしているうちに震災がきた。これまでのすべてを注ぎ込むと確かに決めた。
もちろん、無意識のうちにタイでの経験を活かすことになった。
孤立無援、四面楚歌、サンドバックとなるのを覚悟し、事実そうなった。
2012年3月11日、カヤイ君、ヤット君と林久美子さんと、
初めての3.11の2時46分は、宮城で海を見ながら一緒に手を合わせた。
あの時は、私がタイの現場を励ます立場だった。
「また頑張ろうと思った。来てよかった」とカヤイが言った。
左からヤット君・カヤイ君・林久美子さん

左からヤット君・カヤイ君・林久美子さん


そして、今年、5年ぶりにそろって宮城で再会。
しかし、私の師匠、見原アイサさんは天国から参加。
6月8日、」日タイ「海岸防災林トークセッションは会場に向かって話をした。
だけど我々、自分に、お互いに、思えば天国のアイサさんにも何かを話していた気がする。
互いの存在を励みに。
オイスカ職員たるもの、みんながこういう心の世界を持っていると思う。
「あいつがいるから、アイツらが頑張っているから、俺も頑張る」
それが私たち。私たちオイスカ。国際協力の醍醐味。
オイスカタイのスタッフブログ「さわっでぃーオイスカタイ」
http://ameblo.jp/oiscathai/
*訪日記録、気長に待ってます。

大鎌で草刈り♪

2017年6月25日( カテゴリー: 現場レポート )

こんぬずわ!海外事業部の伊藤でございます。
先日の6/10・11に海岸林再生プロジェクトの現場を訪問しました。
今回は大鎌の紹介をしたいと思います。
DSC_0113
 
 
 
 
 
 
大鎌を引いた時に雑草がガサリと切り取れると、つい楽しくなり時間が経つのを忘れて作業しそうです!
さて大鎌はまず、草をきれいに刈るために刃の手入れを行います!
刃の鋭さが足りず、草が刈れない場合は草が横に寝てしまい、刈るのが難しくなります。
労力も時間も取られるため、作業前に刃の手入れをすることが大事なのです。
DSC_0039
 
 
 
 
 
 
そこで指導員の佐々木勝義さんによるデモンストレーションをしていただきました。
今回、ボランティアに来られた凸版印刷労働組合の皆さんも、
一瞬でも動作を見逃すまいと集中しておられます。
DSC_0047
まずは片足で大鎌を踏み、動かないようにしっかりと固定します。
きちんと押さえないと刃が動いて自分を切ってしまいますから注意です。
 
DSC_0047150
 
 
 
 
 
 
次に鎌に水をかけて、砥石を使います。
この砥石は灰色と茶色の2面があり使い方が異なります。
セメントとレンガみたいに見えますね。
最初に面の粗い灰色側を使い、円を描くように鎌の表を研ぎます。
鎌の刃に対する砥石の角度は35°が目安です。
DSC_0050
今度は裏面に返り(でっぱり)が出るので茶色側でストレートに研ぐことで、この返りを取ります。
これでOK。
DSC_0053
 
 
 
 
試し切りをして、いざ出陣です、勇ましい!
 
 
 
DSC_0101
DSC_0104

 
 
 
 
 
植栽現場にはびこったシロツメクサを刈り取ります。
草に隠れている松を刈り取らないように手早くかつ慎重に進みます。
DSC_0106
無題
 
 
除草後です。
横の拡大図にあるような松が隠れていたのがわかりますでしょうか?
 
 
さながら早朝の満員電車から解放されたかのように松の苗たちがε-(´∀`*)ホッとしているように見えます。
皆様お疲れ様でした!

名取事務所は、南東に120mの名取市有地に移転。
5月から引っ越し準備中。育苗場圃場はもちろんそのままです。
測量、地鎮祭、整地や、仮事務所・電気配線・電話・トイレ・水などの工事手配を
佐々木統括の元の職場の先輩である佐藤さんの助太刀をいただきながら進めてきました。
6月21日、私や佐々木統括はそれぞれ用事があり、立ち会いませんでしたが、
雨天の中、仮事務所を設置しました。

2012年の事務所の時のようです。ぽつんと

2012年の事務所の時のようです。ぽつんと


来週は事務所の本移転。
前田建設工業㈱に寄贈いただいたスーパーハウス(事務所)は、
雨漏り防止や塗装塗り直しも施してあり、これからも利用させていただきます。
倉庫のビニールハウスは7月に入ってから引っ越し。
その時は本部職員も何名か出動要請がありました。
なお、当面ボランティアの駐車場はそのままの見込み。
様子を見ながら変更したいと思います。
7月の公募ボランティアの際は、新事務所で昼食か?
この道を奥に進みます。オイルプラントナトリさんと共用の道

この道を奥に進みます。オイルプラントナトリさんと共用の道


ちなみに、新事務所の住所は番地だけ変わります。
名取市下増田字北原東「478」
郵便番号、電話・FAX番号は変わりません。
しっかり公表すると、突然の視察が増え過ぎて、業務の妨げになるため
必要最低限の公表にとどめるよう再生の会から頼まれています。

6月7日~17日、ツルマメ集中繁茂区域の最右翼2.02ha+αの抜き取り完了。
2017年5月20日植樹祭の会場です。いまは当日とは雲泥の差。
ツルマメの海のような場所もあります。
担ってくださったのは、オイスカタイ総局役員10人、当プロジェクト支援企業の
化学総連&全積水化学労組100人、京セラ労組17人、凸版印刷労組青年部52人、
UAゼンセン39人、ボランティアの日参加者130人(ニコン、仙台トヨペット、
IBEX、三菱UFJニコスとMUFG、ANA、電通共済、ネクスタ、オイスカ北海道支部と一般参加者)
合計348人(指導者除く)8時間換算になおすと255人。

ひたすらツルマメと戦っていただきました

ひたすらツルマメと戦っていただきました


+αの完了面積は0.36ha。したがって、2.38ha、12,138本のお世話。
半日の方を考え、8時間換算で、一人当たり一日約93㎡、約48本。
説明、移動、休憩を除いた実質作業時間を5時間と考えると一人一時間約19㎡、9.4本。
このツルマメの場合、いつもの「つぼ刈り」(マツの周りだけ)ではなく、
ターゲットの敷地を「完璧を目指して」抜き取ります。
だから、このような少ない面積になります。体力的には楽ですが。
ツルマメの海

ツルマメの海


難しい場所から手を入れています。
ここは2度、3度抜き取らねばならないでしょう。
他にも同様の場所はあります。今はまだマシでも後になれば、また増える。
タイから、日本全国からお越しの348人のみなさま、
本当に大事な仕事をありがとうございました。
無事先手を打つことができました。
今年植えた70,000本、13.66ha。
場所によって、土壌・諸条件によって手入れの仕方は多種多様。
しっかり頑張ります。今期の闘い、乞うご期待。

現場から事務所に戻って、一人で一息ついていたら、
いつもと違う場所からスズメの「こっこ」(宮城弁でヒヨコ)の鳴き声が。

170618 雀のこっこ DSC_0001 (14)
170618 雀のこっこ DSC_0001 (15)

2階から下を見ると、2羽落ちて、そろって「固まって」いた。
防風ネットの上には、すでにカラスが待ち構えている。

急いで下に降りて1羽は確保。
もう一羽は事務所の下にもぐってしまった・・・
仕方なく、その1羽も事務所の下に。

それにしてもかわいかった。

今日は楽してタクシーを呼んでしまった。
車に乗り込んで走り出すと、植栽現場で時々見る、
灰色で太ったネコが、
隣の会社の細いフェンスの上に。

彼女は防風垣の上にいることもある。
トビと同じように上からヒメネズミを狙ってるんだろう。
貞山運河に橋が架かったから、運河を超えて半径1㎞以上が行動範囲か。
おそらく、私と同じように地ベタからひなの鳴き声がするのを聞いて
気付いたのだろう。

あのこっこ、ダメかもな・・・もう少しで飛べるようになって巣立ちなのに。
たとえ1羽でも、梯子持ってきて、1階と2階の隙間にある巣に返せば良かった・・・
だいぶ後悔しながら帰京する、オタクの休日。

piece of NATORI

2017年6月22日( カテゴリー: 本部発 )

こんにちは、浅野です。
6月4日の鈴木のブログでも紹介したとおり6月の「piece of NATORI」は<名取市民の森>特集でした!
ボランティア参加者や私たちスタッフも投稿させていただいています。
6月10日に放送された「piece of NATORI」では、いつもボランティアに来てくださっている大槻さんをはじめとする
ボランティアの皆さん、そしてまさかの私の投稿が紹介されました。
投稿が紹介された方にはico.さんの書き下ろしイラストがプレゼントされるということで…
DSCN1625
はい!お送りいただきました。
とっても素敵なイラストです。左下には「名取市民の森」、左上には私の名前が。
この木製の白フレームが何とも言えない!と鈴木と2人で大はしゃぎでした。
今回の放送をお聞き逃しの方は再放送をお聞きください。
再放送は6月24日(土) 17:30〜18:00です!
「FM名取が入らない!」という地域の方もListen Radioで聞くことができます!
このListen Radioはスマホのアプリにもあるので、全国どこでも「なとらじ」を聞くことができます!
ちなみに来月は<名取市民の森>特集 後半ということで、
7月8日と22日の17:30〜18:00には、また別の方の投稿が紹介されます。
ぜひ、皆さんお聞きください!!

自然界は厳しいのです…

2017年6月21日( カテゴリー: いきもの, 現場レポート )

こんにちは、浅野です。
6月9日~11日、たくさんのボランティアの方が来てくれました。
それについては別のブログで…。
いつも草が茂っているところには「タマゴがあるかもしれないので気を付けてくださいねー」と
アナウンスをするのですが、今回はなんと!
タマゴだけでなく、孵ったばかりのヒナが!!
DSC_0848DSC_0851
初めて見た方も多かったようで、「おぉ~」と静かに歓声が上がりました。
かわるがわる見に行っていると上空から親鳥らしきヒバリの声が。
このままだと親鳥がエサをあげられない…ということで、別の場所で作業することに。
次の日(10日)、作業をしていると「昨日のヒナいなくなってましたよ!タマゴは全部ありましたけど」という報告が!
まだ巣立つような大きさじゃないし、この辺りには天敵が…と思いながらも、
親鳥が移動させたということにしておこう。と目を背けてみました。
DSC_0852また次の日(11日)、まだ残っていたタマゴのことがどうしても気になり、
見に行ってみると…
確実に食べられたであろうタマゴの残骸が。
私たちが草取りをして見えるようにしてしまったからなのか、
そうでなくてもそういう運命だったのかは分かりませんが、
タマゴやヒナを見つけたらすぐに手をとめて
その場から離れようと誓った1日でした。
自然界は厳しいので、巣立つまで無事に過ごせるかは
運次第なのかもしれませんが、
これから参加される皆さんも気を付けましょうね

快晴のもと、130名の皆さんと活動をしました!

まずはいつものように事務所で参加者の紹介やプロジェクトの説明など。

写真は3月に救急救命講習を受けてくださった方に修了証を渡しているところ

写真は3月に救急救命講習を受けてくださった方に修了証を渡しているところ

終わってからはリピーターの皆さんにはすぐ現場に移動していただき、
残りの皆さんは吉田が育苗場を案内。
リピーターチームは佐々木勝義さん率いる大鎌部隊。
研ぐところからはじめ、草に覆われた植栽地の草刈りを終日頑張っていただきました。
CIMG9887

CIMG9885

柄が長い大鎌は距離をとって作業をすることが大切


 

ほかの皆さんも合流して草取り開始。
ひたすらツルマメ草を抜いていただきました。

CIMG9892
 

午後からはさらに30人ほどが加わり、またツルマメ草との闘い。

CIMG9964

昨年参加してくれた小学1年生の少年もご両親と共に今年も来てくれました!
近くにいたお兄さんに抜くべき草を教えてもらい、
すぐに一人で作業ができるようになりました!
(彼にはほかの人にはできない重要なミッションを
遂行してもらったのですが、 それについてはこちらをご覧ください)

CIMG9921
CIMG9914
 
 
 
 
 
 
 
 

この日参加していた東北学院大学の菊池先生に
海岸林の歴史など、プチ講座もしていただきました。
CIMG9986

そして最後は防潮堤へ。
今回は海まで走って行く人たちの姿も。

CIMG9991CIMG9992

今回は変則で、現場で終わりの会をしました。
トヨペットの新入社員君。
「社員研修の一環としての参加なので、ボランティアというよりは
研修という気持ちだったが、いろいろな企業の方と一緒に作業ができて
とてもよかった。また参加したい」と感想を話してくれました。

toyopet

丁寧にツルマメ草を抜き取ってくださった皆さん、ありがとうございました。
今回の現場は今年植えたばかりの小さな苗が並んでいるところでしたが、
きっと皆さんが手をかけてくださったところは3年後にはこんなふうになっているはず。
これからもクロマツの成長を見守ってください!

T_kun (2)

おかげさまで、今期の成績は過去最高の模様。
育苗場:播種50,000粒の発芽率96%
植栽地:植栽70,000本の活着率99.9・・・%
*吉田一人の調査ですが、枯れた苗が見当たりません。
植栽は4月20日~5月8日までで60,000本。
5月20日の植樹祭で市民の手で植えたものが10,000本。
普通、植栽後2週間で結果が出ますが、1ヵ月経ってこの状況。

DSC_0170

ちょっと見にくいのですが、枯れているものは見当たりません


植樹祭箇所で、説明・指導より「3・4cmも深過え」し、
力枝まで土に埋めた人が、今年は相当多かったのが心配でした。
監督が足らない指導側の責任ですが・・・
根腐れの問題もあります。これからの本格的な多雨が心配です。
越冬後の二つの寒風・乾風、それと交互の多雨も心配です。
ぬか喜びせず、やるべきことをやるべき順に頑張ります。
私にとって「良かったね」と本当に思うのは来年の今頃なので。
DSC_0041

乾風、寒風、多雨に耐え、1年後、すべてのクロマツが元気に育っていて欲しい

179人のボランティアと

2017年6月18日( カテゴリー: 現場レポート )

「種から育てるゼロ歳児からのクロマツ保育園を卒業したら、海岸最前列の過酷な環境の実社会」
6月7~11日、オイスカタイ10名、化学総連・全積水化学労組100名、
京セラ労組17名、凸版印刷労組52名、リピーター多数。合計179名の皆さんが来てくれました。
まず育苗場で「苗半作」とあわせてこのように説明します。
また、種からクロマツを育てている育苗場を見ることは、余程のことがない限りないでしょう。
ここで苗を育てている人たちの話をします。
そして海岸林造林の現場へ。
皆さん慣れない現場だと思います。
お互いに有意義に一日を過ごすには、目標を持っていただくことが大事です。
滞在時間や現場の都合にもよりますが、植栽後2年目~4年目の様子を見ていただきます。
「ここはこれからお願いする場所と同じぐらい雑草の駆除に苦労したんです。
ちゃんとやればこうなるんです」と説明します。
2014年植栽地は、大きなものでは2.5m近くなっています。
ツルマメグサ、葛・・・みんなで苦労した場所です。
ただ与えられた目の前の雑草を機械的にむしり取るのではなく、
苗の気持ちになって、自分が苗になったつもりで、また、苗を育てている人と同じ気持ちで
草刈りをするというのが、ここでの一番のコツだと思います。
そして、本番の2017年植栽地へ。
最初はまず判別できるように、探してとるような場所から
慣れてきたら、海のようなツルマメの場所へ。見て呆然・・・
 

DSC_0116

ここはツルマメ草抜き入門講座の場所


DSC_0118

海のようなツルマメ草繁茂地・・・きれいな緑のじゅうたんではありますが、この中にクロマツが埋もれています


179人で2017年植樹祭開催地2.02haのうち、1.2ha完了。
私なりの計算、あの現場では、一人当たり6時間換算で82㎡、42本のお世話。
今週末の155人で、植樹祭開催地、ツルマメ集中繁茂第1区は終わるでしょう。
DSC_0121

クロマツを傷つけないように丁寧にツルマメ草を取り除く。これだけの人の愛情を受け続けている現場は他にはないでしょう


「一期一会」
ボランティアの皆さんを受け入れる直前、必ず自然に思い浮かびます。
4年前、河北新報の記者さんからお願いされました。
「オイスカさんの現場にはこれから多くのボランティアが来てくれる気がします。
その時、ぜひこういう気持ちで」と。
いい言葉を教えていただきました。
多くの愛情で立派な海岸林を育てます

2025年7月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  
月別アーカイブ

ページトップへ