今年は典型的な「やませ」の年と報じられました。
1934年(昭和9年)の「昭和東北大飢饉」の年を上回る連続降雨36日、
平年の8月の日照133時間に比べ、今年は30時間。日照不足の夏、と仙台管区気象台は発表。
宮城の小学校の夏休み開始翌日から、毎日雨が降った。
コインランドリーの乾燥機は朝の開店から回り続け、
「商売の上からはありがたいけど、お日様が見たい~」などとニュースでも。
稲作ではイモチ病の心配も出ています。
冷害にも強い品種、温暖化にも対応できる農業が東北でも研究されていますが、
今年はまるでその逆。新しい仙台市長も着任早々早速農地を視察しています。
1930年~34年の「昭和東北大飢饉」は、2・26事件につながったとも言うそうです。
1933年には昭和三陸大津波が。
8月29日現在、仙台空港の降水量は143㎜。平年に比べ多くはありません。
降雨ゼロの日も7日。ただ、日照不足は歴然。主風も東北からの風が多く、
最高気温が30度を超す日はわずか。
昨年は宮城は豪雨。観測史上初の宮城への台風直接上陸の年で、名取は竜巻で防風垣が
170個吹き飛ばされました。
農業への影響が最小限だとよいのですが・・・
河北新報
http://www.kahoku.co.jp/editorial/20170823_01.html
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170815_73008.html
お盆は現場もお休み。
私自身も8月6日~21日は名取勤務を外しました。
仙台管区気象台は36日間連続降雨と発表。
83年前の1934年(昭和9年)の飢饉の年を上回る、日照時間の少ない夏。
小学生の夏休み翌日から、ごくわずかと言っても毎日雨だったと言います。
コメにはイモチ病が発生と報じられました。
一方、仙台空港測候所の気象データでは、今のところ143㎜。
降雨ナシの日が7日、平年並みの降水量ながら、多湿状況は続いており、
マツの根腐れが気になるところでした。
8月22日午前、佐々木統括も真っ先に現場を確認。
戻ってきたところに私も事務所着。統括の表情から、枯損被害は無さそう。
午後は、宮城中央森林組合、松島森林総合、地元ボランティアの三浦さん、大槻さん
損保ジャパン環境財団支援の学生インターンの内川さん、オイスカの浅野さんとともに、
2017年度植栽地14haの現場実踏。優先して下刈が必要な場所を図面化し、
後半戦の草刈の分業作戦を練りました。
今年の新植地の特徴は、何といっても「ツルマメ」。その密度が濃い。
植栽1年前から駆逐に入りましたが、完了は来年以降に持ち越すでしょう。
加えて斑状に合計1haほど「猫じゃらし」などが麦畑のように腰高まで伸びた場所を確認。
一同、唖然。でも慣れたものです。
皆で決めた作戦としては、
「ボランティアは上半期同様、ツルマメに専念」
「森林組合に下刈を部分的に追加発注。その場所は極力ボランティアが先行してつぼ刈り」
ボランティアにも無駄な仕事はさせない分業作戦を立てることができたと思います。
また「彼岸まで」を合言葉に、パワープレーの季節が始まりました。
名取市内の復興の現状
もうすぐ、震災から6年半の日が来ます。
宮城県HPには「復興の進捗状況」として毎月更新されています。
https://www.pref.miyagi.jp/site/ej-earthquake/shintyoku.html
それとは別に、地元紙「河北新報」のオンラインニュースを交えてお知らせします。
●まず、海岸林再生プロジェクト
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170821_13045.html
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201704/20170416_13022.html
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201707/20170704_13032.html
*海岸林県内復旧対象面積750ha。植栽完了面積262ha(完成率35%)。
うち、当プロジェクト植栽完了面積約50ha。(以上7月末現在)
*名取事務所は120m東に移転しました。
●災害公営住宅の入居開始
7月15日、閖上地区の災害公営住宅第1陣140世帯の「鍵の引き渡し式」。
入居が本格化する。市内全660戸計画。工事完了戸数456戸。(7月末現在)
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201707/20170713_11039.html
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201705/20170530_13042.html
●農地
沿岸部の水稲が可能な場所は、水田として使い尽くされているようにも思います。
TPPへの対応として、1区画100m四方を超える巨大な区画の水田が増えました。
法人化、グループ化、大区画化、取扱面積の大規模化、機械化、六次産業化が進み、
若い就労者も徐々に増えていると思われます。「北釜クイーン」メロン復活も。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201706/20170618_13037.html
●人口増加
震災前の2010年と比べ、現在5,000人増の約78,000人。
宮城県内では山元町、気仙沼市、女川町で大幅に人口が減っている一方、
仙台、利府、名取などは安定して増加。名取では住宅建設が続く。
●住みよさランキング全国で11位、東北で7年連続1位
http://toyokeizai.net/articles/-/177362?page=2
●名取駅東口駅前再開発
図書館、公民館、商業施設、住居など複合ビル建設開始。完成は2018年9月。
●「多重防御」
防潮堤に続く第2次防御ラインの役割も持つ「かさ上げ道路」の工事着工。
仙台市沿岸~閖上~再生の会育苗場西側~仙台空港東側~岩沼市・亘理・山元町
道の高さは、地区によって相当異なるように見える。平均すると3~5m前後か。
●仙台東部道路「名取スマートIC」・東西高架橋の完成
東西横断の利便性向上は長年の悲願と聞いている。かさ上げ道路・スマートICと合わせ、
仙台空港が物流の拠点として飛躍できるよう周辺道路の整備が進みつつある。
●仙台空港民営化から1年
利用客続伸。LCC増便や神戸便復活など順調。
定期便は、千歳、成田、小松、中部、伊丹、関空、広島、福岡。
国際線は台湾、中国、韓国、グアムがあるものの、海外訪日客は震災前の7割水準。
●閖上
シラス漁が新たに許可され7月に初出荷された。最北限のシラスとして赤貝に続く水揚げが
期待されている。漁は11月まで。有名な日曜日の「朝市」は変わらぬ賑わい。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170828_13024.html
●閖上の復興工事状況
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201706/20170625_13029.html
すでに2016年、漁港横3.4haの植栽は完了しています。
●閖上サイクルスポーツセンター
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201703/20170326_11053.html
来年は植栽が閖上に到達。この周囲もすべてクロマツで覆い尽くされます。
●公園整備
空港横、育苗場近くに、防災丘を含む小規模防災公園の建設が着工されました。
しばらくブログをサボってしまいましたが、これだけは・・・
8月3日、6回目となる名取市海岸林再生の会の「総会」がありました。
この日と植樹祭の日は、やはりほぼ全員が揃います。
オイスカは、国・県・市・種苗組合・森林組合とともに一応招待される側。
別団体ですから、この業務には一切タッチしません。
気楽で申し訳ないですが、なんとなく毎年「楽しみな日」の一つです。
いつも会場は大広間のある市内の寿司屋。
ゆったり・・・と思いきや、部屋の予約を間違えたらしく、強烈な狭さ。
身動き取れず、私以下数名は廊下で(笑)
今年は事務所引っ越しが加わって大変だったと思います。
佐々木統括の説明で、毎年何度でも繰り返すセリフですが、再生の会の苗木出荷本数を
市場価格に置き換えたら、3,000万円以上になります。宮城では1本390円ですから。
自家生産せず購入していたら、苗木代は今の倍以上です。
あらためて、20年近く前、オイスカの元上司の亀山さんから教わった
「苗木を自分で作る訳」「ODAにはコストでも負けない」のくだりを思い出しました。
そう言えばあの頃、オイスカの大先輩はちゃんと教えてくれたなぁ。
最後には若干のフリートークタイムがあります。
おもむろに手を挙げたのは櫻井勝征さん。
「石碑はどこに建てるんですか?」
「北釜でしょ!」と誰か。
石碑とは、どこに建てるか、どこに建っているかが重要と聞いたことがあります。
みんなが、励みにしてるのを知っています。
再生の会は少しづつお金を貯めています。
以前、浜松の三方原の開墾記念碑を見ました。
餓死者が出るほど苦労したと碑文にありました。
このぐらい立派な「平成の愛林碑を」と思いました。
石碑だけでなく、今年の下刈後半戦も、豪快にいきたいと思います。
はじめまして!
6月からオイスカ名取事務所にインターン生として来ている内川裕稀です。
今日は簡単な自己紹介と、8月23.24日の活動で見つけた生き物について紹介します!
まずは自己紹介です。
氏名:内川 裕稀(うちかわ ゆき)
学校・専攻:福島大学 経済経営学類 2年
出身:岩手県 山田町
インターンに応募した理由:
出身地である岩手県山田町で被災し、実家の家屋や家業も深刻な被害を受け、
故郷の復興を願うとともに、同じ被災県である宮城県や福島県に強い関心を
持ちました。そして、名取市海岸林の活動を知り、名取の復興の状況を知りたい、
復興に協力したい、ここでの経験を地元に持ち帰りたいという思いから、
このプロジェクトに参加しました。
ブログを見ている方で、植樹祭やボランティアに参加された方々は、
すでにお会いしている方も多いと思います。
今年一年間名取で活動させて頂きます、今後ともよろしくお願い致します。
それから、23.24日に見つけた生物達…
イソガニは3匹もボランティアの方々に見つけて頂きました!
それから、今回のボランティアで一緒にツルマメ取りをしてくれた皆さん。
とっても頼もしい女性の皆さんです。来年も是非ご一緒したいです!
4回目のボランティア マルエツ労働組合
今年も後半戦のトップバッターはリピーター率60%を超えるマルエツ労働組合の皆さん。
今年も1泊2日で来てくれました。
昨年は台風9号で飛ばされた防風垣の復旧作業をしてもらったため、
「今年は飛ばされなかったー?笑」と楽しそうな皆さん。
今回の作業は前日に確認しておいたツルマメの抜き取り。
ツルマメに専念してもらうために道具は持たず、素手での抜き取りでした。
このところずっと天気の悪かった名取ですが、この2日間の作業中は晴れ。気温も30℃と暑くなりました。
4年目にして初めて晴れたということで、休憩中は「今までで一番、大変だよぉ…」という声も。
しかし、そこはベテラン勢。
メリハリがすごい。休憩中はもうずっと休憩するんじゃないかというくらいなのに
「やりましょ~」の一声ですぐ作業に取り掛かる。
やる時はやる。休む時は休む。すてきですねー
おかげさまで予定していた面積よりも多くのツルマメを取り除くことができました。
マルエツ労働組合の皆さん、また来年もよろしくお願いしますね!

広報室の林です。
今年の春に種をまいたクロマツの様子です。
こんなに大きくなっています。
ちょっと伸びすぎじゃないかなぁと思うような伸び方です。
……とはいえ、2年目の苗に比べたらまたまだおチビちゃん。
ほら、見てください!
来年の植栽を待つ2年目の苗はこんなに大きくなっています。

ボールペンが埋もれています。
こちらもちょっと伸びすぎ!?
虫が出ないように、高温障害を起こさないように、
乾燥しすぎないように、水をやりすぎないように……。
いろいろなところに目を配り、気を配りながら
「名取市海岸林再生の会」の皆さんがお世話をしてくれています。
ここの苗は、宮城県では県知事賞、全国では林野庁長官賞を
いただいた優秀なもの。おチビちゃんたちも先輩たち同様
しっかりとした苗木に育ってくれることでしょう。
東京本部の浅野です。
8月5日のボランティアの時にこんなものを見つけました。
…いっぱいある
…ちょっと気持ち悪い
…中にあるのはなに?
ボランティアのMさんとEさんに聞いてみても分からず。
休憩中にMさんが調べてくれました!
「ハタケチャダイゴケ」
ん?コケ?コケって緑じゃないのもあるのか!!とびっくりしましたが、よくよく調べてみるとキノコの一種ということが分かりました。
ハタケチャダイゴケは初夏~夏にかけて畑地、休耕田、堆肥、もみ殻などで発生するハラタケ科チャダイゴケ属のキノコ。
畑に害があるものではなく、藁や古畳などを分解する働きがあるので、寧ろ役立つキノコらしいです。
昔の田畑にはおなじみのキノコだったらしいが、化学肥料による土壌変化で段々と見られなくなっており、地域によっては絶滅危惧種に登録されたりしていることが分かりました!
じゃあ、中身はなんなんだ?となるわけですが…
黒いのはペリジオール(小塊粒)と呼ばれる胞子の固まりで、雨で周囲に広がり胞子を拡散させる仕組みになっているそうです。
きっと雑草が元気すぎて雨が当たらなかったのでこんなにきれいに残っていたんだと思います。
ボランティアの方も言っていましたが、現場ではいろんな発見があっておもしろいですね
土壌の物理調査とクロマツの思い出話②
前回の続きです。
研究テーマは「クロマツの核型について」でした。
核型とは、生物は細胞から成り立っていますが、その細胞中の核内にある一セットの染色体の形態をいいます。
生命の本体はDNA(遺伝子)といわれていますが、生物体の組織的単位は細胞で、細胞は大まかに核と細胞質
から成り立っています。
各々の細胞の一つ一つに一定数の紐状の染色体をもっているわけです。
例えば人間の染色体は46本、1~22番がそれぞれ対で計44本、それに性を決定するX、Y、
男ではXY、女ではXXの染色体2本を加えた合計46本ですね。紐状の分子の染色体は小さいものでも
長さが2㎝くらいで、一個の細胞の中にある46本をつなぐと2mの長さにもなるといわれています。
(今回ボランティアの皆さんに人間の染色体はいくつでしょうか?の質問を投げかけましたが、皆さん???)。
「樹木にも染色体があるの?」と言われたことがあります。
もちろん生物体ですから当然あるわけです。
では、針葉樹樹木の染色体数は、どうなっているかというと、コウヤマキ属は20本、スギ科、ヒノキ科では22本、
私の研究したマツ科は24本(写真参照)、同じくイヌガヤ属、イチイ属、イチョウ属も24本です。
ナンヨウスギ科は26本とすでに明らかになっております。
ではなぜ染色体数がわかっているクロマツの染色体を、
研究対象としてとりあげたかというと、マツ属には沢山の
種があり、その種の違いを染色体の形態的違い(核型)から
明らかにしようというのがねらいでした。
染色体の細部の違いがわかれば、交雑の成功率も向上するであろうというものでした。
したがって、染色体の各長さ、くびれの位置、サテライト(付随体)の有無を調べたのです。
染色体を調べる方法は、種子を発芽させ、伸びた芽の先端をとり、それをプレパラートにのせて酢酸オルセイン
という染色液をたらしてガラス棒で押しつぶし、顕微鏡で覗いて細胞分裂した染色体をさがして、その染色体を
さらに詳しく見ていくという根気のいる仕事でした。夜遅くまで顕微鏡を覗いていた研究室の仕事がなつかしいです。
染色体の形態は、同じ樹種でも変動が見られ、新しい知見も見られたので、先生と共同で大学の研究報告、それに英文誌の染色体学会誌にも投稿しました。それがはじめて世に研究者として名前が出た記念すべき報告でした。
今ではさらに進んでDNAレベルでの解析がおこなわれています。今後植栽地のクロマツの生育差が
著しく見られたら、細胞学的解析、DNAレベルでの解析ができたら面白いだろうと夢見ております。
土壌の物理調査とクロマツの思い出話①
緑化技術参事の清藤です。
8月3-4日、名取市海岸林再生の会の総会ならびにモニタリング調査で名取に出張しました。
4日はUAゼンセンのボランティア28名が、ツルマメの除草作業を行いました。
腕力のありそうな方2名に協力してもらい、植栽地の穴掘りを実施しました。
天気は曇り、多少小雨もパラつきましたが、今回の調査目的を果たしてきました。
これまですでに植栽した植栽地・約50haに、調査年度別、苗木別、植栽時期別などで
26ヵ所の調査区を設けてあります。今回は広葉樹植栽地2ヵ所、今年度植栽地5ヵ所
計7ヵ所の土壌の物理性を調査しました。生育の土壌基盤はご存知のとおり、約3mの
盛土をした人工基盤。その基盤が、クロマツが正常に育つために必要な土層であるか、
特に粘土分、礫、硬度、透水性を明らかにする必要があります。今回は約60㎝の深さで
ボランティアの方に穴を掘ってもらいました。最終的な調査は今年度中にまとめますが、
今回の調査地では、おおむね生育不良を起こすような大きな問題点は見当たりませんでした。
今後は植栽木クロマツの根の発達状況と土壌硬度をさらに詳しく調べたいと思っております。
さて、調査も順調に終わり、まだボランティアさんは作業中でしたが、そっと帰ろうと思った矢先、
吉田部長につかまり、「先生、帰る前にボランティアの皆さんにクロマツの話をしてください!」。
なんの準備もないのでアタフタ……オドオド……。そこで突如思い出したのは、「クロマツの染色体」のこと。
実は私は学生時代に染色体を調べていたのです。クロマツは、私の卒業研究のために用いた材料でした。
研究室は、生態学、生理学、土壌学、育種学等を対象とした造林学教室で、私は何か新しいものが
育種学によって創れる、そのことに夢を託し、林木育種学を専攻しました。
(それについては次のブログで…)