北仙台中学校2年生7名の職業体験
11月15日から3日間、中学2年生7名と大人との濃密な3日間。
「職業体験」という趣旨をしっかり意識しながら受け入れました。
ペットショップ、パン屋など選択肢は色々。当方は「復興支援」という
カテゴリーらしいですが、第5希望まで選んで、最後は先生が決めるそうです。
受入指導者は、佐々木統括ご兄弟が座学・まとめも担当。
清藤先生と小林省太さんと私。やたら濃い布陣。
スケジュールは、初日は育苗場・植栽地見学と、座学2コマ。
2日目は終日調査、3日目は調査の残りと、海辺と飛行機の真下の体験。
午後は、まとめの時間(これが大事)。
「おい吉田、ちゃんと仕事考えろ」
「この時期じゃ、やることないですよー」
9月頃、こんな会話から始まりましたが、モニタリング26ヵ所を我々と一緒にやろうと
思いつきました。体験内容としても申し分ない。時間が余った場合や、雨の場合も
一応考えましたが、結果的に60cmの穴を26カ所の土壌調査も加えたので、
我々4名、生徒7名で目一杯1.5日を要しました。
第5希望の生徒も何人かいましたが、かなりキッチリ、実によくやってくれました。
というか、我々も楽しんでいました。
まとめでは、
「穴掘りを褒められました。才能があることがわかって嬉しいです」
「決断という言葉が一番印象に残りました。決断力のある大人になりたいです」
「400年前にこの仕事を始めた人、今もやっている人はすごいなあと思いました」
「私たちのような者を受け入れていただいて、大変お手間とお手数をおかけしました」
感想文が届いたら、ブログで紹介します。
調査結果は年内にまとめ、各関係先に渡すとともに公表しますが
生徒たちにも届けることを約束しました。
このプロジェクトは、各年代平均的に関わりを持てていましたが、
20歳以下との接点だけは、唯一手薄と思っていました。
一見、海岸林という言葉だけでは、若者受けしにくい面もあるでしょうし、
震災後の教育環境変化の影響でもあると考えていました。
ボタンの掛け違えになるから、無理しないで時期を待とうと。
2016年からわずかに変化の兆しがあり、
2017年は「地元10代対策」に取り組んでみようと。
とくに、考えるチカラが付き始める高校生を中心に。
・例年通り、市内大学・各種学校・高校への植樹祭呼びかけ(4年目)
・例年通り、名取市市教育委員会通じて教員などへの植樹祭チラシ配布お願い(4年目)
・県立名取北高校(生徒約900人)での全校生徒への講演
・同校生徒有志100名が植樹祭に参加
・同校生徒有志のボランティア参加
・仙台市立長町中学校・学区内小学校・父兄など80名ボランティア受け入れ(3年目)
・仙台市立仙台北中学校生徒7名の3日間職業体験受け入れ
・東北学院大学文学部、菊池慶子教授ゼミ学生ボランティア参加(4年目)
・損保ジャパン日本興亜環境財団からの大学生インターン1名(福島大学)受け入れ
・福島大学共生システム理工学類2年環境保全論にて上記インターン生がプレゼン
・福島大学大学院、海岸林再生事業地の植生調査受け入れ(今年から2年間)
と、今年は主にこんなことを。
今年できたからと言って、来年も続く保証は何もありません。
いまを過ごしながら、先々に手を打っています。
植えたマツの根はどうなっているか
11月6日、森林総研による「土壌調査」がありました。
2016年・2017年・来年の植栽地は盛土完成後に掘削する現場を見ていましたが、
2014年の現場は初めて。しかも、植えた後なので、運が良ければ根の様子も見れる。
この日は視察対応と並行していたので、国や県の方たちが帰った後に。
場所は2014年植樹祭の現場。
ここは植樹祭用に選んで、残しておいたぐらいいい場所。
1.3mの穴の中にいる職員の方は
「1時間ぐらいで掘れました。こんなにいい場所はなかなかないですね」
すごく目的意識をもって掘っているようで、初面識なのに随分話し込んで
仕事の邪魔をしてるか?と思いつつ、立ち去る気になれない。
「支根の張り具合もいいですね。50㎝ぐらいですね。土の状態もいい。
別の場所では根が暴れてしまって。2m先まで横に伸びていました」
「1.3mから下は礫が混じります。直根はそこまで届いているでしょう」
清藤先生も掘りたい掘りたいといつも思っています。
もう少し、サンプル数を増やしたら、必ずいつかどこかで役に立ちますから。
10月末の台風の跡は、一部の盛土崩壊・防風垣のズレ・滞水と若干の植栽木流出。
ここまでは十分考えられることでしたが、もう一つ。
植栽3・4年の根元周りに、ときに指一本入るような穴が見られたこと。
風で回されたのでしょう。他地区では植栽直後のものから見られました。
土壌の影響、支根の育ち具合なのか、場所が決まっているものの無視できない数。
ざっと見て、5・6・9区に多い感じを受けました。
真っ先に浮かんだのが、2013年に襟裳で知った「根踏み」という「作業」。
当地では「春先に鍬をもって、真っ先に森林組合がやる仕事」。
今まで名取では必要に迫られることはありませんでした。
報告すると、佐々木統括はすぐ見に行きました。
「根が切られるかもしれない」
「お前、下手なこと言うなよ。支柱指すとしたら、苗木代より高いからな」
実際、竹代が馬鹿にならないし、篠竹程度で済むわけはない。
「春先でも間に合いますか?」
「間に合う」
実態調査も年内にまず1回。
できれば、11月のモニタリング調査時と、最終ボランティアの日に。
春先のボランティアの仕事が増えるかもしれません。
ちゃんと戦わないとこうなる・・・
「ツルマメ??切ると白い液が出るのはありますけど。ツル類は見つけたら即切ります」
襟裳では、雑草・雑木・ツルとの戦い方の基本は同じでも、相手が違います。
下草刈りの相手は「何と言っても笹とアキグミ」とのこと。
毎年冬、ようやく繰り出します。日暮れが早いのがいつも残念。
全体的には良好。
しかし、中には課題が。
葛の根の太さ、ニセアカシアの根元の太さ、法面下までの下刈の詰めの甘さ。
一部はそういう場所があり、繁茂の温床になっている。
やはり、大変です。
ツルマメを野放しにするとこうなる・・・
もし苗木屋さんが見てしまったら、廃業したくなるでしょう。
引っ張るとわかりますが、束になって強い力で巻き付きます。
マツを引きずり倒すような感じです。

葛・ニセアカシアは、空中戦で、制空権を奪い合っているかのよう。
マツは防風垣を抜ける高さになりつつありますが、空中戦の下。
空は快晴。夕方でもないのにマツが見えないです。


彼らと戦うべきは誰なのでしょうか?
もちろん先頭で仕切るのは林業行政であることは間違いないです。
今のうちに、提案型施業で重点箇所を割り出し、境界ギリギリから法面含め、
2回刈り対象地を洗い出して対処しなければ、全てが手遅れになる。
もし、協定に手を挙げた民間側が、法面は行政の仕事と言うなら、
協定を正しく説明し、進んでギリギリまで攻めるよう遠慮せず頼んでほしいです。
官民協働でもっと必死で戦って、沿岸全体を及第点まで持って行かないと。
ちゃんと植えないと・・・
襟裳から戻り、少しだけ他地区を歩きました。
全体的に順調かつハイペースで海岸林植栽が進んでいると思いました。
防風垣などの設備のおかげで、活着率も順調。
しかし、いくつかの場所で、秋植えのリスクを思い知らされました。
秋ですから、ほぼ発根しません。その最中、10月末に台風が来たわけです。
でも、運が悪かったとは思いませんでした。
ちゃんと仕事した場所が想像以上に多いだけに、悪い場所が目立つ。
看板が出ていますから、明らかにプロが植えた場所と、市民が植えた場所と
区別がつきますが、結果も明白。穴の掘り方が甘く、踏み方も違ったと思います。
傾向として、深植えではなく、浅植えが多く、中には風に晒され培養土がむき出し。
風が巻いたのでしょう、苗は四方八方に向いて倒れている。
苗木屋さんが見たら怒るでしょう。寒くても、今すぐ直せば、まだ復活できる。
ちょっとした土壌、諸条件の違いもあります。
それによって、植え方の指示が微妙に違います。
指導が悪いと言いがちですが、聞く側の問題でもあるような・・・
同じ人が同じ誤りを続けるというのもよくわかりました。
名取の植樹祭では、森林組合から「ほとんどやり直しはない」と毎年言われてます。
もし正しくなかったら、現行犯で、即その場で直すように言っています。
誰が何班の指導をしたかも、身内同士全員がわかりますし。
我々の来年の場所は難しい場所。明日は我が身。
来春、森林組合と見に来ようと思いました。
佐々木統括からも「その場所をしっかり覚えておけ」と言われています。
観察して学べということでしょう。
防風垣は朽ち始めても・・・
宮城のスギ間伐材の半割、防腐加工ナシです。
4年で防風垣が朽ち始めてきました。
肝心の防風効果は問題ありません。
防風垣に上る時は気を付けて場所を選ばねばなりません。
上るために、座るためにあるわけではないので、大事に扱わねばならないし、
来年は、諸注意、KY(危険予知)の指導事項にも加えねば・・・
たとえ朽ち始めても、当分の間、その防風効果に頼る必要があります。
ですが、いつか撤去しなければならないだろうと。
ですが、簡単に撤去を口にするのも憚られます。
先日、マツが下敷きになっている箇所80mだけ撤去させていただきました。
解体・集積に2人で3日間。高さ2m×10mとトラック1台分に相当。
ボルトはまだ錆びていないので何とか抜いて保管してあります。
ボルト1本でも私たちの所有ではありません。
そのままだとすると、先々の作業・本数調整伐の障害になり、ボルトも錆びて危ない。
林内集積だとすると、上手に置かないと作業の障害。富栄養化となりマツにもよろしくない。
林外搬出だとすると、誰が処分の当事者になるのか。常識的に考えれば地権者でしょうが、
人件費・処分費というコストが問題。被災地全体で考えれば、相当な額。
小林さんの「省太のつぶやき」にもありましたが、
おおらかに、気を長く持って、じっくり話し合いたいと思います。
大事なことは 1.排水 2.防風垣 3.作業道
えりも岬海岸林は事業開始から64年。
「終わった治山」と思られがちだそうですが、試行錯誤、まさに現在進行形。
目下、着手したばかりの我々からすれば、現場の基本に溢れています。
タイトルは、襟裳で何度か聞いた言葉。
名取でも、これが海岸林造成の基本環境です。
すべて整えてから植付に取り掛かると。
先月震災以来2度目の、最多月間降水量355㎜超でした。
数日で250㎜の降雨は、今後も起こる。悪い意味の基準にしなければならないと思いました。
「降った雨の8割は排水が必要。蒸発と浸透はそれぞれ1割」と佐々木統括は言います。
えりもの排水溝は、森林組合が実踏して設計。掘削深は場所によっては1.5mかそれ以上。
名取では、作業道を1.5m掘り下げ、排水溝代わりにする機転で、当面の難は逃れました。
しかし、その分、作業道を事実上捨てることになりました。
名取を含む東北では、えりもで開発されたものとほぼ同形の防風垣、静砂垣は充実しています。
今年も99.8%という高い活着率は、これらのおかげだと思います。
相当先の話ですが、任務を全うして朽ち果てた後どう処理されるのかが気になっています。
量が半端ではない。防風垣80mだけでトラック1台。
えりもは、森林組合がチップ工場を持っており、バイオマス発電所が買う販路があります。
林業に道は不可欠です。
作業道に関しては、名取の場合、水没しましたが、それでもサイクリング道があります。
でも、それを存分に使うことができるのか非常に心配。
東西の道の不足を訴えていますが・・・
粘り強くお願いしようと思いながら帰ってきました。
台風よりも爆弾低気圧
「台風よりも、(南東から吹く)爆弾低気圧のほうが怖い」
えりも岬で、最も印象に残った言葉です。どうも塩害らしい。
「乾風害・寒風害はもっと面的被害。赤くなるが戻る。塩害は部分的な被害。
枯れ方が寒風害とは違う」とえりもの緑を守る会の緑化技術部会で、
林野庁OBの方や、森林組合の専務さんたちが教えてくださいました。
被害は道有林を中心に数ha。
ですが、樹齢50年以上の貴重なマツが、震災直後の名取のように枯れていた。
爆弾低気圧というのは、10月から春までに起こりやすいそうです。
南東という風向きも妙に気になりました。
名取の主風は南東と北西。
本当に無茶な風は、きっと南東から来ると思っているので。
将来、スーパー台風というものが来るかもしれないから。
漁協でも森林組合でもリーダーで、ご尊父が海岸林復活の立役者である飯田さんと
育樹祭の作業中、ずっとご一緒させていただき、たくさん話ができました。
木村参事や専務のご配慮だろうか。運が良かった。森林組合作業班の班長だそうです。
親父さんもご本人も長年マツと向き合ってこられました。
関わる人はみな、本当はすごく悔しいだろうと思います。
でも、明るい。町ぐるみの活動に誇りを持っている。
我々にもすごく親切に教えていただきました。
明るさと心の大きさ、それに包まれた不屈の気持ち。
日本屈指の強風地帯の襟裳では、こういう気持ちの持ち様を、
とても大事なことを、あらためて教わったのかもしれません。
「おおらかでしたね」。
視察が全部終わった後、そんな感想を仲間と交わしました。林野庁や北海道、えりも町、森林組合などの
関係者が集まって毎年「えりも岬緑化研究部会」という集まりが開かれます。オブザーバーとして
会議に参加させてもらったのですが、面白い経験でした。会では広葉樹化がなかなか進まないこと、
シカなどの食害が深刻なこと、まだ北海道まで北上していないマツクイムシへの備えが必要なこと、
などさまざまな意見が出ました。でも、なんとなく「気長にやればいいんじゃないか」という方向で
まとまってしまう。同じ広葉樹の若木でも、人工的に植えたものはシカに食われるが自然に生えたものは
なぜか食われないのだそうで、だったら気長に自然に生えてくるのを待とう、というような雰囲気がありました。
みなさん、オイスカに参加を許してくれただけでなく、十分に発言をさせてもくれました。
多分、かけてきた時間の積み重ねに対する自信と、北海道の風土とがそういう雰囲気を
培っているのでしょうが、そうしたおおらかさが、事業全体を包み込んでいる印象を受けました。
もう一つ、襟裳岬の緑化を支えているのが地元の人びとの事業への参加で、そういう仕組みがきちんと
できあがっていることに、事業にかかわる人たちが自信と誇りを持っていることを強く感じました。
滞在中、クロマツの枝を払って広葉樹のために日当たりをよくする作業がありました。これが「育樹祭」
なのですが、始まる午後2時の1時間前、ちょうど午後1時に参加を呼びかけるアナウンスが防災行政無線で
町じゅうに流れました。平日ですから放送を聞いて実際に参加する人はほとんどいないということですが、
まるで「火の用心」を訴えるように、育樹祭を当たり前のできごととして放送していることに驚きました。
襟裳岬の緑化を学ぶ活動は地元の小中学校、高校の授業に組み込まれていますし、町内にある
航空自衛隊襟裳分屯基地からも、隊員が交代で10名ぐらいづつ行事に参加する。「育樹祭」で
目立ったのは隊員たちの迷彩服ですけれど、さらに目についたのは飾られていた大漁旗です。
緑化が進むとともに町の主要産業である漁業が活性化したこともあって、漁業者の緑化への
積極的なかかわりを象徴しているように見受けました。
名取の海岸林再生にかかわっていて、つねに考えるのが「地元」「若者」です。
プロジェクトを息長く続けていくためには欠かせない要素だからです。
いろいろ苦労はあるにしても、地元と若者を巻き込む大切さをあらためて知りました。
ひとつ気になったのは、樹齢20年あまりまで育ったクロマツがまとまって立ち枯れている区域が
あったことです。海辺の風の強い場所で、おそらく低気圧や台風による海からの冷たい強風(というより暴風)に
さらされて急激に塩をかぶったせいではないか、ということで、詳しいことは調査しているそうですが、
今後枯れ木に虫がつかないか、枯れた区域が拡大しないか、などの心配があるといいます。
たまたま海辺に昆布小屋一つ建っているだけでクロマツにあたる風の強さが変わるという話もありました。
名取でも、いまはクロマツの成長は順調ですが、何かの拍子に大きな被害を受けることがあるかもしれません。
それは自然現象か、病虫害か。襟裳岬の緑化の歴史に、息長い活動の大切さと、突発する事態の怖さと、
いろいろなことを教えられました。