今年度最終モニタリング調査

2017年11月27日( カテゴリー: 清藤先生の視点 )

緑化技術参事の清藤です。
職業体験のため7人の仙台の中学2年生が、15日から17までやってきました。海岸林、オイスカ、職業について
学び、体験しました。詳しい報告は他の方に譲るとして、16日と17日は今年度最後のモニタリング調査を4班に
分かれて生長調査・土壌調査の手伝いをしてもらいました。
2014年植栽から今年2017年植栽までの植栽地に26ヵ所の調査地を設けてあります。それを手分けをして、
50サンプルの樹高と根元径の測定、土壌の硬さと土壌酸度を調べるために60㎝深さに穴を掘ってもらいました。
特に潜って根元径を測るのは大変そうでしたし、土壌調査の穴掘りは初めての中学生にはキツイものがあったでしょう。
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さて今回は今年度モニタリング最終回、前回の7月からどの程度伸びたのか、秋伸びはそれほどないものの
育てた苗の産地によっても違いがあるはずです。データを集計し分析しなければ具体的なことは言えませんが、
やはり植栽場所による違い、苗によるちがいなどが見られています。
生長が抜群に良いのは、第一育苗場精英樹露地苗による植栽地。調査プロット内でも2mを超えた樹高の個体が
みられるようになりました。ちなみに一番伸びている個体はやはり2014年に植えられた第一育苗場精英樹露地苗
による植栽地でした。最高は310㎝、根元径8.1㎝でした。樹高3mは通常10年以上経ての海岸林での樹高です。
また一年間で一番伸びた長さは130㎝でした。
無題
コンテナ苗はどうも露地苗に比べて2・3年は生長が遅れるようです。
樹木が生長するのには水と養分が必要です。その水と養分は地下部根から地上部へ送っているはずです。
となると根の発達が生長の大きなカギです。根の発達には土が伸びるにふさわしい硬さがあるでしょう。
硬ければ伸びない限界もあるはずです。そのために土壌の硬度も調べています。また根に酸素が必要ですが、
水がたまるような場所では酸欠を起こし根が枯死するのです。露地苗とコンテナ苗の違いは根量の違いが
大きいでしょう。樹木生理学で学んだ記憶では、根は地下部深さ30~50㎝にほとんど分布している。
植えられた苗の根の伸びを観察したいのですが簡単にいきませんが、たまたま大雨で崩れた今年植栽の場所の
苗の根をみることができました。

コンテナ苗の新しい根の発生

コンテナ苗の新しい根の発生


コンテナ苗です。植栽後半年で写真のようにコンテナで覆われていた下部から大量の根がのびていました。
コンテナで育苗中の根は、底穴の空気に触れる底に向かうため、コンテナ下部に、根は伸び細根が多発します。
伸びてコンテナから飛び出た根は、空中断根、根の切り戻しにより根は切断された状態でコンテから取り出され、
出荷されますが、植栽されるとその下部の断根された空気に触れた部分から根が大量発生し、盛んに養分と水を
吸収して生長の基を作っていくのです。まだ支持根になるほどしっかりした根は発達しておりません。
ではこの状態でその後はどうなるのでしょうか?たまたま2014年に植栽されたコンテナ苗での植栽区で水路を
掘った土手で根の伸びを観察できましたので、写真をおみせします。
苗は現在樹高95㎝、その根をみますと支えとなる水平に伸びた根は1mを越しておりました。また真下に伸びて
いる直根も太くしっかりと張っていました。
今回、サンプル数は少ないのですが、コンテナ苗の根の伸び方をみることができました。植栽当初は地下部20㎝
あたりから大量の根量を増やしながら生長に備える根形作りをし、根の充実に伴って上部の生育が順調に
伸び始め、同時に支持根の根を四方に伸ばし始め、また垂直根も発達してしっかりと生育に堪え得る根が、
樹体を支え生長させていくと想像されました。
水平に根が1m以上伸びている

水平に根が1m以上伸びている


2014年植栽抵抗性コンテナ苗

2014年植栽抵抗性コンテナ苗


垂直に太い根が伸長

垂直に太い根が伸長

こんにちは、浅野です。
先週の土曜日(18日)は今年最後のボランティアの日でした。
今回は、リピーターの方向けの視察会ということでオイスカの植栽地だけでなく
愛林碑や他の地区の植栽地を見に行きました。
ボランティアリピーター向けということでほとんどが顔見知り。
皆さん、集合も早くて若干早めにスタート。まずは、自己紹介から。
「身体の続く限りは…」が合言葉なのか、みなさん口をそろえておっしゃっていました。
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それが終わると現場へ。もちろん乗り合いで。
まずは広浦の愛林碑を見に。
初めて見る方がほとんどだったようで、「こんなところにあったんだぁ…」
「全然知らなかった!!」など驚きの声を漏らしていました。

広浦の愛林碑を前に真剣に話を聞く参加者

広浦の愛林碑を前に真剣に話を聞く参加者


そのあとオイスカの植栽地を見学し、岩沼市の植栽地へ。
吉田担当部長と佐々木勝義さんの話を聞きながら、それぞれの違いや共通点を
実際に見ていろいろなことを考える機会となったようでした。
来年も皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!
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11月も中旬になるとハチの姿も見えなくなります。
ですから、安心して中学生をマツの密林の中に行かせてあげられる。
ということで、通常のプロット調査のほかに、最大樹高レベルの
ゾーンで生長調査もしてもらいました。
もとの砂浜の基盤ではなく、人工盛土ではどのような生長を見せるか、
知見はありません。未知の世界と言ってよい。

中学生も枝が密集した林内に入って調査

中学生も枝が密集した林内に入って調査


普通、海岸林は、波打ち際に近い方の松は樹高が低いもの。
断面にすれば、海から山へ右肩上がりです。
ですが、当プロジェクトのいまは、それが真逆。
理由の最たるものとしては、「海側はコンテナ苗ではなく裸苗」だから。
名取での経過を見ても、コンテナ苗は、裸苗に比べて2・3年初期生長が遅れるようです。
2014年に植えて、2016年から大きく伸び始めた名取1区の裸苗、
驚いたことに、この1年で130㎝も伸びた個体があります。
樹高は3.2m。普通10年ぐらい要するはず。
辺りはすでに「鬱閉」。地面はまったく見えません。
これが1年で130㎝伸びたマツ。清藤先生もビックリ

これが1年で130㎝伸びたマツ。清藤先生もビックリ


名取1区の内陸側半分はコンテナ苗。
先日のブログ「森林総研の土壌調査」で紹介した個体は直根は1.3m、支根は50㎝。
調査プロットの樹高平均は103㎝、根元径38㎜でした。
きっと来年2018年、裸苗より2年遅れで大きく伸び始めると見ています。

11月16日、再生の会と合同で来年度事業計画・予算編成会議を行いました。
いつも話し合っていることの最終確認ですから、ちゃちゃっと1時間半程度。
・植栽完了は2020年。工事の都合で1年前倒しは叶わず。
・協定面積は若干追加され、約100haとなる見込み。
・最終植栽実面積(生物多様性保護ゾーン・盛土法面・防風垣・作業道・排水溝などを
 除いたもの)は70haあまりとなる見込み。
・播種は最後となる公算。1㎏、約5万粒。育苗場の一部は返還。
・植栽面積は16ha強、約8万本。波打ち際から一番近い場所全長約4㎞×幅20mなど。
 名取市海岸林全長5㎞は繋がることになります。
・育林面積は66ha。プロ野球グラウンド約50枚分。
・育林費が完全にピーク。そのため全体予算は過去最大の見込み。
・ボランティア受け入れは今年度並み2,000人あまり。
・記録編纂を開始。①社史的な詳細版、②読み物風に、③写真集、④技術マニュアル
・植樹祭はあと3年3回、空港から徒歩圏内で開催見込み。
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変わったことと言えば、国・県・市との将来に関した協議を提案しましたが、
動く気配がないので、当方からはっきり申し出ることに変更。
これ以外はまったく既定路線です。

こんにちは。インターン生の内川です。
先日はリピーターのボランティアさんたちと、現場を一緒に見て回りました。
名取はすっかり寒くなっていました…これで今年の現場での活動は最後ですが、
実は、福島で別の活動をやっております。
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9月下旬から、福島大学の教員の方々と面談し、海岸林再生プロジェクトの
広報活動をさせて頂けるよう、交渉をして回っておりました。
十数名の先生とメールでアポイントメントを取り、直接お話を聞いて頂いた先生の中から、
共生システム理工学類の塘忠顕教授に講義中の30分間というお時間を頂けることになりました。
現在、それに向けて授業で使うスライド作りや、知識の補強をしております。
本番は11月28日の3限目(13:00〜14:30)、学生さん達が1番眠い時間ですが、
皆さんに興味を持って頂けるよう、精一杯頑張りたいと思います。
今週末の大阪マラソンも、お手伝いさせて頂くことになっておりますので、
また新たに支援者の方々とお会いできるのを楽しみにしております。

10月末の台風21号で盛土が崩れた個所を、
清藤先生に見せようとモニタリング調査の途中で寄り道。
さすが先生。
倒されてもタダでは起きないとはこのこと。
流された苗の根を掘り取っている。
崩落した場所は、広浦沿いの2017年植栽地。
土は目が細かい。乾燥するととても固くなる。
大雨の後は、なかにはトロトロになる場所も。
森林組合の秀君、私ともに太腿まで沈んだ、まさにその場所が崩れた。
目印を付けたのですが、目印自体がなくなっていた。
滞留している水、浸透した水がここに集まってくる。
苗は、宮城県網地島産(準抵抗性)コンテナ苗。生産地はもちろん再生の会。
活着率、生長度合いは極めて順調。
2017植栽後半年網地島コンテナ DSCN0345 (2)2017植栽後半年網地島コンテナ DSCN0346 (3)
平均して、直根らしいものが見当たらないが、根は豊富。
中には60㎝程度の支根もあった。
植えた後の、根のサンプルは少ない。
今月の調査では、極力根にも注目してきた。
森林総研の調査、僕らの土壌調査でも根の一部に出くわした。
東京に帰ってから、引き続き整理してみよう。

11月15日から3日間、中学2年生7名と大人との濃密な3日間。
「職業体験」という趣旨をしっかり意識しながら受け入れました。
ペットショップ、パン屋など選択肢は色々。当方は「復興支援」という
カテゴリーらしいですが、第5希望まで選んで、最後は先生が決めるそうです。
受入指導者は、佐々木統括ご兄弟が座学・まとめも担当。
清藤先生と小林省太さんと私。やたら濃い布陣。
スケジュールは、初日は育苗場・植栽地見学と、座学2コマ。
2日目は終日調査、3日目は調査の残りと、海辺と飛行機の真下の体験。
午後は、まとめの時間(これが大事)。
「おい吉田、ちゃんと仕事考えろ」
「この時期じゃ、やることないですよー」
9月頃、こんな会話から始まりましたが、モニタリング26ヵ所を我々と一緒にやろうと
思いつきました。体験内容としても申し分ない。時間が余った場合や、雨の場合も
一応考えましたが、結果的に60cmの穴を26カ所の土壌調査も加えたので、
我々4名、生徒7名で目一杯1.5日を要しました。
第5希望の生徒も何人かいましたが、かなりキッチリ、実によくやってくれました。
というか、我々も楽しんでいました。

教務主任の先生も視察だけでなく体験

教務主任の先生も視察だけでなく体験


「穴を掘ってどうするのか?」生徒たちは関心を持っていたから聞く態度も真剣

「穴を掘ってどうするのか?」生徒たちは関心を
持っていたから聞く態度も真剣


まとめでは、
「穴掘りを褒められました。才能があることがわかって嬉しいです」
「決断という言葉が一番印象に残りました。決断力のある大人になりたいです」
「400年前にこの仕事を始めた人、今もやっている人はすごいなあと思いました」
「私たちのような者を受け入れていただいて、大変お手間とお手数をおかけしました」
感想文が届いたら、ブログで紹介します。
調査結果は年内にまとめ、各関係先に渡すとともに公表しますが
生徒たちにも届けることを約束しました。

10代対策

2017年11月20日( カテゴリー: 本部発 )

このプロジェクトは、各年代平均的に関わりを持てていましたが、
20歳以下との接点だけは、唯一手薄と思っていました。
一見、海岸林という言葉だけでは、若者受けしにくい面もあるでしょうし、
震災後の教育環境変化の影響でもあると考えていました。
ボタンの掛け違えになるから、無理しないで時期を待とうと。
2016年からわずかに変化の兆しがあり、
2017年は「地元10代対策」に取り組んでみようと。
とくに、考えるチカラが付き始める高校生を中心に。
・例年通り、市内大学・各種学校・高校への植樹祭呼びかけ(4年目)
・例年通り、名取市市教育委員会通じて教員などへの植樹祭チラシ配布お願い(4年目)
・県立名取北高校(生徒約900人)での全校生徒への講演
・同校生徒有志100名が植樹祭に参加
・同校生徒有志のボランティア参加
・仙台市立長町中学校・学区内小学校・父兄など80名ボランティア受け入れ(3年目)
・仙台市立仙台北中学校生徒7名の3日間職業体験受け入れ

北仙台中学校2年生8名は、生長モニタリング調査・土壌調査を、申し分なくキッチリやってくれました

北仙台中学校2年生8名は、生長モニタリング調査・土壌調査を、申し分なくキッチリやってくれました


・東北学院大学文学部、菊池慶子教授ゼミ学生ボランティア参加(4年目)
・損保ジャパン日本興亜環境財団からの大学生インターン1名(福島大学)受け入れ
・福島大学共生システム理工学類2年環境保全論にて上記インターン生がプレゼン
・福島大学大学院、海岸林再生事業地の植生調査受け入れ(今年から2年間)
インターン生の内川さんは、公募ボランティアや平日対応800人以上の受入補助に当たってくれ、若者への発信として、自分の大学でもプレゼン

インターン生の内川さんは、公募ボランティアや平日対応800人以上の受入補助に当たってくれ、若者への発信として、自分の大学でもプレゼン


と、今年は主にこんなことを。
今年できたからと言って、来年も続く保証は何もありません。
いまを過ごしながら、先々に手を打っています。

11月6日、森林総研による「土壌調査」がありました。
2016年・2017年・来年の植栽地は盛土完成後に掘削する現場を見ていましたが、
2014年の現場は初めて。しかも、植えた後なので、運が良ければ根の様子も見れる。
この日は視察対応と並行していたので、国や県の方たちが帰った後に。
場所は2014年植樹祭の現場。
ここは植樹祭用に選んで、残しておいたぐらいいい場所。
1.3mの穴の中にいる職員の方は
「1時間ぐらいで掘れました。こんなにいい場所はなかなかないですね」

事も無げに言っておられましたが、人力で穴を掘るのは大変なんですよ

事も無げに言っておられましたが、
人力で穴を掘るのは大変なんですよ


すごく目的意識をもって掘っているようで、初面識なのに随分話し込んで
仕事の邪魔をしてるか?と思いつつ、立ち去る気になれない。
「支根の張り具合もいいですね。50㎝ぐらいですね。土の状態もいい。
別の場所では根が暴れてしまって。2m先まで横に伸びていました」
「1.3mから下は礫が混じります。直根はそこまで届いているでしょう」
理想的土壌では、支根も理想的。50㎝横に張っていた

理想的土壌では、支根も理想的。50㎝横に張っていた


清藤先生も掘りたい掘りたいといつも思っています。
もう少し、サンプル数を増やしたら、必ずいつかどこかで役に立ちますから。

根踏み

2017年11月18日( カテゴリー: 現場レポート )

10月末の台風の跡は、一部の盛土崩壊・防風垣のズレ・滞水と若干の植栽木流出。
ここまでは十分考えられることでしたが、もう一つ。
植栽3・4年の根元周りに、ときに指一本入るような穴が見られたこと。
風で回されたのでしょう。他地区では植栽直後のものから見られました。
土壌の影響、支根の育ち具合なのか、場所が決まっているものの無視できない数。
ざっと見て、5・6・9区に多い感じを受けました。

こういうものが時々あるから手ぶらでは「仕事」にならない

こういうものが時々あるから手ぶらでは「仕事」にならない


真っ先に浮かんだのが、2013年に襟裳で知った「根踏み」という「作業」。
当地では「春先に鍬をもって、真っ先に森林組合がやる仕事」。
今まで名取では必要に迫られることはありませんでした。
根元を足で挟んで踏むと「役に立った感」がある。

根元を足で挟んで踏むと「役に立った感」がある


報告すると、佐々木統括はすぐ見に行きました。
「根が切られるかもしれない」
「お前、下手なこと言うなよ。支柱指すとしたら、苗木代より高いからな」
実際、竹代が馬鹿にならないし、篠竹程度で済むわけはない。
「春先でも間に合いますか?」
「間に合う」
実態調査も年内にまず1回。
できれば、11月のモニタリング調査時と、最終ボランティアの日に。
春先のボランティアの仕事が増えるかもしれません。

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