いま、じつは育苗場を見るたびに悔しい思いをしています。
2・3年前あたり、僕の折衝に厳しさが不足したからです。
その後も粘り強く挽回するチャンスはあったはず。
昨年播種の苗のほとんどは、名取の現場に行き場がないことがわかりました。
聞いたときはさすがに頭が白くなりました。国復旧の盛土への植栽は今年で終わりますが、
復興予算で買い上げた宅地跡に、新たな盛土造成する県・市の新事業が遅れているからです。
2020年までの最終段階は、思わぬ波風があるだろうと、覚悟してましたが。
仕方ない事情は多分にあります。こういう難しい現象は被災地の至る所にあることでしょう。
使い道は十分あり。どこかの復興の現場で、苗は必ず役立ちます。
ですが、自分の手腕に関して「まあいいじゃないか」と簡単に思えません。
1年前倒しで終わる可能性もあったし、それに勝る低コスト経営はないからです。
この経験は決して忘れないでしょう。
「種を播いて植えるまで2年あるんだからね」
2011年5月以来、前種苗組合長から繰り返し教わりました。
計画性、先を見通す力が必要という意味と、工事設計を信じ過ぎても、
いざという時は自分で被るしかないのだと解釈しました。
平時であれば、種苗農家にとって廃棄処分=収入ナシに相当します。
行き場のない苗を焼却したのが消防にバレて、罰金を取られた人もいると。
「吉田君と会って丸7年だなあ」
種蒔きの朝、そう言ってくださる再生の会メンバーがいました。
2012年3月30日が初めての播種。今回で7回目。これが最後。
あの日は終わってから、再生の会とオイスカで、祝い唄を歌いながら涙しました。
以来蒔いた粒数は、約60万粒。
宮城県産マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ 44,664粒(コンテナ1,861台分)
宮城県産マツノザイセンチュウ抵抗性アカマツ 2,184粒(コンテナ91台分)
今回4月26日に蒔いた数です。1日で終わりました。例年の半分以下ですから。
作業は再生の会16人、松島森林総合3人、オイスカは理事長を含む8人。
5月19日の植樹祭、この時には発芽しているはずです。
だいたい2週間で出るでしょう。本当に楽しみ。
「発芽しなかったら、佐々木、清藤、吉田は切腹」って自分たちで話したこと、
1年目は発芽まで28日かかったこと、残雪の安達太良山を登ってるときに
第一報を聞いたこと、毎春必ず思い出します。
国連生物多様性条約というものがあり、オイスカは条約事務局と
2011年から2020年まで協約を結んでおります。じつは。
名取の海岸林は、仙台森林管理署が2013年―2016年に生物多様性調査を
行っており、データを共有いただいています。海岸林の多様ないきものの様子を
観察できるのは役得。もっとも、調査する知識はありませんが。
2015年現在、盛土とその周辺には、植物樹木337種、昆虫278種、
鳥類43種、哺乳類4種が確認され、種の数は増えています。
(実際はもっと多いそうです)
3・4月の現場は、一見いきものの気配が少ないように見えますが、
そうでもありません。まずフキノトウはたくさん。そしてツクシ。
花はセイヨウタンポポ。菜の花、シロツメグサの花が咲き始めました。
スミレはまだこれから? 今年は1種類しか見つけていません。
2018年植栽地では、クロマツとシロツメグサに混ざってハマボウフウが。
ツルマメはまだぜんぜん。1本だけ発見。出るところではクズが出始めました。
広葉樹の開葉調査は、連休明けに延期。木になってきた。結果は良さそうです。
鳥類で珍しいことは、小柄のアマツバメ。南行は10月上旬。帰ってきたのでしょう。
毎日始終、ヒバリの高鳴き。どうしてあんなに気ぜわしいのか。
地面や防風垣には、ヒバリ、ホオジロ、スズメ、コチドリ、カワラヒワ、ツグミなど。
2018年植栽地はカモの群れ、2014・15年植栽地はキジのつがいを
よく見ることができます。日によってはハヤブサも。尻尾がきれいです。
猛禽類で毎日見るのはトビ。ヒメネズミは相変わらず多いようで、
丸々と肥えた野良猫(増加)とキツネも見ます。タヌキは足跡だけ多数。
5月になると、ヒバリ、コチドリ、キジの産卵の季節。
作業道には産まないでください。
汚してしまってごめんなさい
【募集締切】植樹祭および6月16日(土)ボランティアの日
今年の植樹祭は、これまでの状況から定員を超えると予想して告知してまいりました。
過去4回の募集も、なにより地元名取市内を最優先して広報なとりなどで告知し、
例年通り、海岸林を必要とする地元農家や市民、そして自ら申し込んだ高校生が多数。
先着順とは確かに書いてあるのですが、締切日を前に今年は殺到。
例年同様わずか2haに指導者を入れて500人余りになる現場での安全配慮を重視し、
主催各団体と協議し、定数に達した本日、締め切らせていただくことにしました。
まだ今後数日で申し込みがあると思いますが、ご理解いただければ幸いです。
なお、6月16日(土)の公募ボランティアの日についても、すでに定員に達しましたので
締め切らせていただきました。植樹とは植えて終わりではありません。
当プロジェクトでは、そのことを身をもって理解する人を増やしたいと考えております。
人手がかかる7月以降にお申込みいただければ大変ありがたく思います。
以上、ご期待に添えなかった皆様に心からお詫び申し上げます。
公益財団法人オイスカ 海岸林再生プロジェクト担当部長 吉田俊通
先月のボランティアの日が土木作業でヘトヘトになったことは前にブログでもお伝えしました。
午後に根踏みをしたチームの方が面白いものを発見しました。

分かりますか?近くで撮ると…

落花生です。しかも割れてない。
振ってみるとカラカラと音がします…。
こんなところで落花生?しかも一つだけ??
と、周りにいた女子たちが不思議がっていると…
「そりゃ、カラスが持ってきたんだべぇ」と松島森林総合のSさん。
Sさん曰く、近くの畑の落花生を取ってきたカラスが落としたんだろうとのこと。
なるほどー。と納得の女子たち。
海岸林ではいろいろな面白い発見があります!
皆さんも植栽地に来たときはそこも楽しんでくださいねー
2017年度事業 速報値
事業量最大期に入った昨年度も、当期支出を収入がなんとか上回り、
もちろん、途中の資金ショートもなく、新年度に入ることができました。。
存分に仕事させていただいたこと、心から御礼を申し上げます。
2017年度および、累計データを速報値的に報告します。
●協定締結面積:96.62ha(2019年に約5ha追加協定見通し)
*うち生物多様性配慮ゾーン、作業道、盛土法面、防風垣などを除いた
植栽可能箇所は約70haとなる見込み。
●植栽完了面積:50.39ha、265,522本(今年度約16ha植付計画)
●2017年植栽:13.66ha 71,945本
●2017年播種数:57,000粒
●2017年雇用数:1,435人、累計:6,087人
*育林部門の葛・ニセアカシア駆除対策が見込より多く計画の1.2倍で推移
●2017年ボランティア数:2,096人 累計:7,214人
●2017年活動報告会数・聴講者数:
30回・5,911人 累計:191回・30,687人
●2017年視察者数:231人、累計:3,223人
●2017年国内メディア掲載数:23回、累計:204回
●累計寄附収入:おかげさまで何とか「6億円」に辿り着きました。
なお、昨年は第1回インフラメンテナンス大賞、全国山林種苗品評会「林野庁長官賞」を
受賞することができました。
今回の写真は、めずらしく「会議」をテーマにしてみました。
震災遺構の荒浜小学校
海岸林担当の鈴木です。
宮城に行ったら必ず子ども達に見させたいと思っていたのが震災遺構となっている仙台市立荒浜小学校
校舎の2階、30㎝くらまで津波が押し寄せ、当時は1階に流された車が何台も突き刺さっていました。津波の威力や脅威を伝える震災遺構として、2017年5月から内部が公開されています。
言葉ででしかわかっていない津波の怖さを少しでも肌で感じてくれればと思い連れてきました。
1階部分はガレキはきれいに片付けられているため、展示されていた写真でしか直後の様子を知ることができませんでした。子ども達は写真を見てもやっぱり現実のものとして受け止めていない様子
2階に上がり、「津波がここまで到達しました」というラインがありました。おそらく掃除用具を入れるロッカーなのでしょう、津波で浸かった部分が少し錆びていました。これを見て、少しだけ現実のものとして捉えられたようでした。
上映されていたビデオに見入り、展示されていたジオラマに見入り・・・そして窓の外を眺めるも、そこには何もない土地が広がり、クロマツがぽつぽつと立ち、海が広がっている。
あーここに人々の生活の営みがあったんだなぁ
荒浜地区は古くから漁業で栄えた地区で、この地区の南北は200mの海岸林幅があるのですが、この地区は三方を海岸林に囲まれ、海岸線のすぐ近くまで住宅が建てられていたようです。
ジオラマは「○○の家」と書かれたプレートが付けられており、活き活きとした人々の生活を想像させてくれます。目を窓の外に移すと何もない。この対比が消化しきれない何かを心の中に残しました。
感じること、感じ方は人それぞれだとは思いますが、
津波の威力や脅威を知るために、訪れなければならない場所だと思います。
名取北高校でも説明会をしました。たくさん来てくれそうです。
植樹祭会場周辺のゴミです。日に日に増えています。
先日はベッドマットの多数のバネが捨てられました。
火をつけて何かを燃やした跡もあります。
たばこの吸殻を大量に捨てた人も3人。
寄附者の銘板があっても気にしないことにも悲しくなります。


とくに開会式・閉会式予定地では、あらかじめ拾うか迷いました。
我々は1年中ゴミ拾いしなければならないのか・・・
処分するのお金がかかるような類のものもあります。
でも、敢えて拾わないことにしました。
当日参加者から叱責を受ける可能性も高いですが。
現状を知ってもらおうと決めました。
司会進行は私がしますが、言うべきことはきっぱり言おうと思います。

海岸林担当の鈴木です。
さぁ休憩!休憩!
の声とともに、午前中の土詰め作業を終えて事務所に戻る途中、
「自然がいっぱいあっていいよね~」
「ここはまだ土筆が出てないね」
3月末に浜松の祖父母の家に行った際に、土筆が山ほど生えている所を見つけていたので気になったのでしょう。
東京都内の住宅地で生活していると、住宅の小さな庭先で季節を感じるだけです。
名取の事務所がある辺りは居住禁止区域になっていることもあり広々としています。
自然の中に身を置いて、心の鍵が少し開いたかな?
そして、宮城行きの目的の「海」!
海岸林の現場から砂浜を歩いて波打ち際に
しばらく波と追いかけっこ
そのうち、石を拾い投げ込み、小さな流木も、さらにはどこかから流れ着いた漁船用のバケツまでも。(私の心のつぶやき:こんな大きなバケツを投げ入れていいものか?まぁ流れ着いたものを戻すだけだからいいのか?)
これがなかなか船出せず、投げ入れては戻り、タイミングを見計らってより遠くに入れるも波に戻されを繰り返し、やっと船出!と思い、次にサッカーボールに興じている間に、数メートル先にまたまたバケツが舞い戻っている・・・
靴が濡れるのも忘れて3人で楽しそう
3人・・・そう吉田部長も一緒になって夢中です。
そういえば、最近、子どもたちが汚れを気にせず夢中になって遊ぶ姿を見たことがなかったなぁ。久しぶりに夢中になって遊ぶ子ども達の姿を見ました。
子ども達は吉田部長のことを「よしちゃん」と呼んで慕っています。
子どもの心も解き放つ吉田マジック!
さらには大木までも船出させようと奮闘
たっぷり2時間くらい遊んだのかな?
もう存分に海を満喫!
と思ったのですが、吉田部長には海その2、海その3が用意されていました。
子ども相手にも手を抜かない
ブログ読者はご存知だとは思いますが、スゴイ人です。
こんにちは 海岸林担当の鈴木です。
しばらくご無沙汰していました。
2018年がすでに4ヵ月も経とうとしています。
つい先ほど、同僚と
「夜になって、今日何したかな?と思い返して、あれ?何もしてない!と思うことが多くなったんだよね~。私の仕事をする手が遅くなったんじゃないかと思うんだよ~」
「いやいや 違うよ! それは時間が経つのが早くなっただけ!1秒が0.8秒くらいに縮んでるんだよ」
という話をしたものの、本当に仕事の手が遅くなったのかも!?と少し不安に思うのでした。
このブログももっと早くに書かなければならなかったのですが、
こんなに遅くなってしまいました(-_-;)
4月3~4日に中学入学直前の娘、4年生になる息子を連れ、1年ぶりに名取を訪れました。
子ども達にとっては3回目の名取です。
春休みなのでどっか行きたい!宮城に行きたい!!というので、クロマツの成長を楽しみにしているのかと思いきや、
「海で遊びたい!」「おいしいものを食べたい!」というので、少しガッカリ
それでも、宮城でのたくさんの楽しい思い出の片隅にクロマツが映っていればそれでいいか・・・
親が思うように子どもは動きませんね(^^;)
再生の会のみなさんと一緒にコンテナの土詰め作業に混ぜていただきました。
私は年に1回ペースでしか訪れることができないのですが、
「あ~ 去年ラジオに出てた人だよね」と。
私のことを覚えていてくださって、何だか嬉しい気持ちになりました。
土詰めのやり方を教えてもらい、親子3人並んで作業にとりかかりました。
目を輝かせて、職人のようにきれいに仕事をしている息子
どんな作業をしても面倒くさそうにする娘は、ここでもやっぱり面倒くさそう
同じように育ててきたつもりですが、2人はやはり違うのですね
再生の会のみなさんのテンポのいい会話が飛び交います
東北の方はゆっくり話すという勝手なイメージがあるのですが、そうでもないのです
短い単語のやりとりが頭の上をポンポンと・・・
子ども達に何を話しているかわかる?と聞いたところ、さっぱり??と
BGMにしか聞こえないようです。
普段の生活の中で年配の方と触れ合う機会があまりないので、いい機会になったのかな
自分が土詰めをしたコンテナで育ったクロマツが海岸沿いに植えられ、何十年か経ったら見上げるほどの大きなマツに成長している・・・・こんなところにまで想像は到底及ばないのだろうな~