おおらかで気の長い取り組み 襟裳岬の緑化に感銘①
宮城県名取市でオイスカの海岸林再生プロジェクトにかかわっている人たちと11月はじめに
北海道の襟裳岬に行ってきました。燃料のため乱伐したり、牛馬や羊の放牧地をつくったり、
さらにはバッタの大発生もあって原生林が姿を消し、いったんは砂漠のようになってしまった
土地を60年以上かけて緑化してきた努力の足跡をみるためです。
海に突き出した岬はどこもそうでしょうが、天気の良しあしとは無関係に風は強いのが当たり前。
襟裳岬も、北海道の気候の厳しさに加え、最大風速10メートル以上の日が年間270日以上あるという、
植物にとっては過酷な場所です。そこが、もちろんトライアル・アンド・エラーの積み重ね、おそらく
エラーの方がずっと多かったはずですが、いま、「えりも砂漠」と言われた光景が想像できないくらい
緑豊かな土地になっていることに、まず感銘を受けました。
襟裳では、風吹きすさぶ裸の地にまず砂を飛ばさないための草を植え、次にクロマツを植え、
最後に広葉樹を増やしていこうという計画を進めてきました。
もともとの原生林がカシワなどの広葉樹林だったので、その姿に戻すという趣旨ですが、
更地の海岸でなんとか育つのはクロマツしかないことを100種以上の木を植えるという
試行錯誤の結果知って、まずクロマツを増やすことに力を注ぎました。そのクロマツを
風よけにする形で広葉樹が下から生えてくる。クロマツ一種類だと病虫害によって全滅する
恐れがあるから樹種は増やした方がいい、という説明も聞きました。
一口に岬といっても、気象条件はさまざまで、特に丘や山の位置、さらには道路一本でも
風の向きや強さに影響を与えるそうです。クロマツを植える作業はいまも続いているのですが、
たとえば背後に山があって比較的風が弱い場所は、45年前に植えたクロマツは全体の2割
程度に減り、シラカンバやカエデ、それにバットの材料として有名なアオダモなどの広葉樹が
自然に芽を出し、大きく育って、明るい広葉樹林になっていました。
これは、広葉樹の邪魔にならないようクロマツだけを人力で減らしていった結果でもあります。
一方では、風が強いため植えてから50年たっても上に伸びられず、高山地のハイマツか、
あるいは盆栽を大きくしたのかと思うような、枝がねじ曲がったクロマツばかりの場所もある。
こういうところでは、背の高い広葉樹が育つことはできません。
名取の海岸林は、第一に、人びとの生活を砂や潮風、津波などから守るためのものであって、
そのためにクロマツの林が欠かせません。プロジェクトが始まったのも震災の後ですから歴史も
違います。それでも、襟裳岬を見て参考になることがいくつもありました。