こんにちは、2025年度インターン生の渡邊です。(理化学を専攻していく東京の女子大生さんです。談:吉田)
2月28日の海岸林ボランティア会に参加させていただいたので、その報告をしたいと思います。今回は、名取北高校野球部の皆さん、ご父兄、リピーターボランティアさんとの作業でした。
今回の目標は2つ。1つ目は、夏のボランティアとの活動の違いを体験すること。2つ目は、マツ材線虫病(通称:松食い虫病)の状況を知ることでした。
目標1 夏のボランティアとの活動の違いを体験すること
前回参加させていただいた時は葛取りを行いましたが、今回は、枝払いを行いました。葛を刈る際に枝が障害となるため、この作業を事前に行なっておく必要があるのです。葛取りの作業の際もそうでしたが、他の人を配慮して作業をすることの大切さを考えさせられました。葛を取る人が困らないように枝を切る、切った枝を重機で運びやすいように集めるなど、次の作業を想像することで、今何に気をつけるべきなのかを考えるべきなのだと思いました。
目標2 松食い虫病の状況を知る
松食い虫について知りたかったことが今回ボランティアに参加した大きな動機となっています。昨年9月の名取での活動の際に、松枯れについて教えていただいたことをきっかけに、もっと知ってみたいと思うようになりました。
2日目の午前、吉田部長に松食い虫病の被害状況について教えていただきました。
ここからは、事前に調べたことも含めお伝えしたいと思います。
釈迦に説法ですが、松枯れは、マツノマダラカミキリによって運ばれてきたマツノザイセンチュウによって引き起こされるものです。以前は、マツノマダラカミキリをはじめとした8種の穿孔性甲虫類が一次性害虫として松を枯れさせている、という説もありましたが、枯れ松の根やその周りの土壌を用いた菌の分離作業の際に見つかった線虫をきっかけに、松枯れの犯人がマツノザイセンチュウであることが分かりました。そして、体長1ミリ程度の線虫の移動方法として、マツノマダラカミキリがマツノザイセンチュウの乗り物になっていることが分かりました。
さて、前置きはここまでにして、実際に見せていただいた松を示します。まず、松が枯れていても必ずしも松くい虫病によるものではないそうです。例えば、この松は、松くい虫病にやられてしまったものです。幹にマツノマダラカミキリの痕があります。

モサモサしているものは、マツノマダラカミキリによる切り屑と糞(フラス)だそうです。松くい虫病の目印となります。
通常マツノザイセンチュウは、松の上の方から侵入しているようです。そのため、枯れている松(松くい虫にやられているかどうかわからない、怪しい松)を見つけたら、木に登り、噛み痕?がないかどうか確かめるそう。

こちらの松は、枯れた原因が不明。マツノマダラカミキリの痕はみられませんでした。

こちらは、先日の不審火によって焼けてしまった松です。
オイスカの管理している場所では、まだ松くい虫病の被害は大きくありませんが、すぐそこまでやってきているようでした。

例えば、この松はオイスカのエリアのすぐそこにあったものです。この写真では産卵痕か摂食痕かわかりませんが、、、とにかくボロボロの松です。キツツキがマツノマダラカミキリの幼虫を食べようとしたため、木がボロボロになったそうです。
健全な松で摂食中のマツノマダラカミキリの気門から、線虫が松に移動しそこで松を枯らせる。そして、枯れた松にマツノマダラカミキリが産卵をする。そこでマツノマダラカミキリが幼虫から成虫になり、飛び立つ。マツノマダラカミキリは、樹脂分泌の低下した松寿にしか産卵できないので、松を枯らすマツノザイセンチュウと相利共生の関係です。
成虫が羽化して新たな健全な木に飛んでいく5月頃までに、これらの枯れてしまった松にいる線虫を駆除しなければならないようです。が、処理が追いつかないほど、松が枯れてしまっているようで、その現状を教えていただきました。

亘理町の松です。いつ倒れるかわからない松で、全て松くい虫病にやられてしまったものです。一昨年に枯れてしまった松が放置され、今年松くい虫の被害が拡大し、今のこの姿となっているようです。今年も松を放置すれば、更に被害は拡大し、じきに名取までやってくるだろう、とのことでした。

少し高いところから見渡すと、多くの枯れた松が見られました。枯れた松はとても脆く、切るのにも一苦労だそうです。切っている際予想しない方向へ木が倒れていく可能性もあり、林業者も逃げることを念頭に置いて松を切るようです。
数百本もの枯れ松、全てを処理することはとても難しそうです。
そして、名取から東京への道中、枯れてしまった松が多々見られました。
今回吉田さんに様々な場所の松の状況を見せていただき、想像していたよりも深刻な状況であることが分かりました。そして、枯れた松の対処が追いついておらず、今後も被害が深刻になっていくだろうことも予想されました。
今回見た現状を忘れず、今後もこの問題に関心を持ち続けていきたいと思います。
以上より、今回たてた2つの目標は達成できました。今回見た海岸林は、長い海岸林の歴史のほんの一部です。海岸林がどのように変化していくのか、今後も見ていきたいと思います。そして、また名取に訪れたいです。
余談
枯れの状況を見たあと、吉田さんが震災遺構の中浜小学校や、東日本大震災・原子力災害伝承館へ連れていってくださいました。震災当時のことははっきりとは覚えていないのですが、計画停電の暗い中で夕食を食べた記憶は残っています。津波による被害をそのまま残している中浜小学校や、私たちの生活に大きな影響を及ぼした原発事故についての展示を見て、改めて震災について考える機会となりました。私はどうしても今、目の前のことに夢中になってしまいがちですが、こうした過去の出来事にも目を向け続けなければならないのだと思いました。
参考文献
二井一禎著、松枯れは森の感染症 森林微生物相互関係論ノート、文一総合出版、2003/11/08

