つる切りをしないと
2018年2月8日( カテゴリー: Post2020年に向けて~海岸林と地域の将来ビジョン形成調査~ )
「山に入って木に巻きつくツルを見たら、誰の土地だろうとその場で伐るものだ」
オイスカ職員駆け出しのころ、農業専門の上司もそう言っていました。
林業会社在職時代は、武士が刀を差すのと同じで、従業員は鉈を腰に巻くのが当たり前。
歩いて通るだけの山でも、鉈で一振りで切断。瞬殺。水がボタボタ滴り落ちます。
伐採業務では、伐ろうとする木や周りの木に絡んでいないか、毎回、本能的に確認します。
ツル絡みの見落としは、重大災害の典型的パターン。
「いいか、吉田、よく見てろよ。ずっと離れて、木の後ろに隠れてろ」
親方が、わざわざ大声で呼んでまで、伐る前から伐る途中に至るまでの気付き方、
気付いた後の伐り方、逃げ方まで教えてくれました。
事前に見抜けないことももあるので。
伐った直後は、普通に倒れず、不規則な動きをします。
上でツルが絡んでますから、ブランコのように、木の太い根元が一旦向こうに離れ、
その後、加速度をつけて伐り手に向かってきます。
もし避け切れなかったら・・・
海岸林は斜面がないから、山より危なくないですけど。
「なぜツルはダメなんですか?」
本部海岸林女子3人はそれぞれ、現場できちんと聞いてきました。
木の上に上るだけ上って、その周りの木も含めて日照権を占拠し、
木々の生長権を奪い、森林の弱体化につながります。
かつて材木生産を目指して植えた森林でそうなってしまうと、
林業労働者がが「ボロ山」と呼ぶ、出荷など考えられない森林になります。
道を車で走っていて、遠くの木の上でフジが咲いているのは、
管理されていないという分かりやすい指標としてみるものです。
そういう山ばかりで働いた林業会社時代でした。
マツはとりわけ陽樹。
日照権を奪われることは、とくに若齢林では枯死のもとです。
ですから、植栽後5年程度の下刈(つる切りは当然含む)を終えた後は、
3年に1回程度、「つる切り・除伐」を全面的に行わねばなりません。
某県で、ツルだらけの80年齢の海岸林を見ました。
自衛隊基地の関連施設内にあり、森林行政が手を出せない状況にあるのか、
それはもう、ある意味見事なツルだらけ。隣の松林はちゃんとしているのに。
こういうボロ山は、風雪害にも弱いし、害虫にも弱く、大量発生源になります。
別の某県でも、まったく整備する気がない公有地が
松くい虫の発生源になり、延長何十キロの被害が始まりました。
たかがツルなどと、まったく思いません。
つる切り。巡視と森林浴も兼ねて、ボランティアでもできると思います。