あらためて「松くい虫防除」を考えてみました
2018年2月7日( カテゴリー: Post2020年に向けて~海岸林と地域の将来ビジョン形成調査~ )
この年末年始、襟裳岬、青森太平洋側、千葉県富津岬を見てきました。
青森太平洋側では、松くい虫被害がないことにホッとし、、
枯れ木の何本かは見ることかと予想した富津では、鈴木和代さんがブログで紹介した
巨大展望台から青々茂る様子を一望して、努力の成果に圧倒されました。
千葉県も厳しい戦いがある場所です。
「松くい虫はエボラ出血熱のようなもの」
東大名誉教授の太田猛彦先生は、将来を考える私に注意喚起してくださいますが、
長年の努力の甲斐あって、北海道・青森にはまだ侵入していなかったのですが、
2015年、青森日本海側で、とうとう被害が確認されました。
同時に広葉樹に被害を与える、さらに質が悪く、対処が厳しいナラ枯れも。
カシノナガキクイムシです。
「日本には森林害虫が大まかに400種類」。
林業会社在職時代に、松くい虫駆除の作業者講習でそう聞いたことがあります。
「蔵王の樹氷が見れなくなる?」
昨年秋、蔵王の樹氷をかたどるシラビソ枯損が報じられました。
トウヒツヅリハマキです。オイスカが取り組む「富士山の森づくり」のきっかけとなった蛾です。
全国の名もないような海岸林もたくさん歩いて、見聞きしてきた7年間でしたが、
日本海側はさすがに「防風林」「防砂林」として、海沿いの床屋でも、スーパーの従業員でも
松に守られていることをわかっている人が多いと感じました。
住民参加の森林整備活動は地元でメジャーな存在とは言えなくても、知らぬ人は少なく、
不断の啓発活動の重要性を感じました。
「みんなが1年に一度でも松林に集い、何か作業をすることに意義がある」(ひだか南森林組合幹部)
しかし、太平洋側のある場所で、農家や住民だけじゃなく、官有地としての所有者や環境行政と
森林行政の調整が不調で、薬剤駆除が後手に回り、松くい虫被害を増長させた話も聞きました。
「どんなに懸命に説明しても、壊滅的被害を受けた後まで、ありがたみを分かってもらえなかった。
われわれも、もう知るもんかと匙を投げてしまったのも悪いんです」と行政マンは言いました。
唐津の虹ノ松原では「218haの松原で昨年度は年間で228本。住民の巡視体制・通報もあり、発見即対処」。
年間6,000人も市民が整備に参加します。「住民啓発には力を入れており、反対意見なし」。
徹底した考え方は官民で共有されており、見習うべきモデルです。
宮城県では、津波に追い打ちをかけるように震災翌年に大発生。
福島や岩手でも、山に墓標が立っているような被害を見た年でした。
名取市でも「当初予算も補正予算も使い切る」と聞きましたが、いまも駆除は続いています。
名取では、数に限りがある貴重なマツノザイセンチュウ抵抗性クロマツを内陸側に分厚く配置しました。
しかし、虫もさるもの。抵抗性の効果は確約されていません。
植栽後10数年の若齢マツに被害を与えた例も国内にあります。
2020年以降のあり方を考える時、海岸林内だけではなく、
森林組合と組合員など民間協力体制による市内、周辺地域の巡視体制・徹底駆除の継続、
農協などと連携した普段の住民説明・啓発は、大前提として織り込まねばならないと思っています。
官民連携はこういうところから始まります。