●松くい虫の早期微害化対策
「松くい虫はエボラ出血熱のような驚異」と太田先生も言います。壮齢以降にしか
発症しないという説は過去のモノ。直径10cmになればターゲットになると考えます。
潮風の影響を受けにくい内陸防風林の植栽には、「クロマツより100倍強い?」と
まで言われる岩手県産抵抗性アカマツを配置し、海岸でも抵抗性クロマツを内陸側
配置しましたが、抵抗性のない残存クロマツ壮齢・老齢木が市内の随所にあるので、
それが足掛かりにされるはず。薬剤防除は「発見後の対応」が重要なので、即対処
を行政当局、住民と共通認識を図らねばならない。「巡視」が重要。見つけたら
「即通報、即伐採・燻蒸・搬出」。沿岸部の農家にも早くから啓発し、理解・協力を
めていなければなりません。
●一番下の枝が、出来るだけ低い位置から生えるように
防災機能を十分発揮するために、枝が低い位置から生え、言わば「ずんぐり
むっくり」の形の松に仕立てたい。枝が高い位置まで枯れあがるのではなく。
「形状比」(樹高÷胸高直径)を低く。「ずんぐりむっくり」は、「苗半作」の
育苗の時点からの大方針です。背丈は高くなく、根元径が太く、枝が豊富な苗を
育てようと、再生の会が頑張ってきました。
●枯れ枝払い(枝落とし)
マツは必ず枝が枯れ上がってきます。襟裳岬では毎年秋「育樹祭」を行って、
町民が決めた個所を大規模に「枝払い(枝落とし)」するそうです。ノコギリで。
そうすることで、その後の本数調整伐の作業員もはるかに仕事しやすく、森に
とっても光も差し込みやすくなり、広葉樹の実生が発芽することを促します。
しっかり指導すれば、襟裳岬の様にボランティアの活躍の場にもなるでしょう。

枝払いの仕事も遣り甲斐がありそうですね。ビフォーアフターが歴然 だし(2013年襟裳岬)

枝払いの仕事も遣り甲斐がありそうですね。
ビフォーアフターが歴然だし(2013年襟裳岬)


●本数調整伐(いわゆる間伐)
海岸林の間伐は、材木目的の経済林と区別して専門用語では「本数調整伐」と呼び
ます。「名取の海岸林では、いつ初回の本数調整伐を迎えるか?」ということは、
いまは誰も分かりません。なぜなら、新たな人工盛土の上に植栽したから。森林
総合研究所の方に伺ったところ、「宮城南部では人工盛土の土壌の性質上、生長に
時間がかかるかもしれない。いつとは言えないが平均樹高が1mを超えた時点で、
やっと1回目の本数調整伐の時期が見えてくる。オイスカにはぜひ平均樹高が3m
未満で初回の本数調整伐を、1伐3残で取り組んでほしい。思い切って伐ることが
肝要。ボランティアでもできる太さ」。佐々木統括の予想は「植栽から20年前後」、
清藤先生はそれより若干早い。2034年ごろ、すでに引退した65歳の私は、むかし
取った杵柄で、植えた木の伐採をしているだろうか。
左がこれから本数調整伐にはいる植栽25年後。右は植栽15年後。 (2013年襟裳岬にて)

左がこれから本数調整伐にはいる植栽25年後。
右は植栽15年後。(2013年襟裳岬にて)


●広葉樹導入の時期は?
まず、圧倒的な高木となるマツを最優先に育てます。広葉樹の実生苗を仕立てる
のは、将来もマツを越えない差がついたその後と考えます。襟裳岬では25年後から
本数調整伐を開始しているそうです。ちなみに、松の間の「林間植栽」は極めて
成績が悪いとの事。やはり本数調整伐をして、実生で生えてきた広葉樹を伸ばして
あげることが理に適っています。コストの面からも。名取では、オオシマザクラ、
ウワミズザクラや、低木系の常緑広葉樹などが有力候補でしょう。ただし、海寄り
のゾーンはクロマツ純林にすべきです。繰り返しますが、人の手では植えません。
●名取の海岸林に「落葉掻き」は必要か?
虹の松原、気比の松原、天橋立などは文化財保護法の「特別名勝」「名勝」に指定
自然公園法の「国定公園」などに指定されています。誤解を恐れずに言えば、「美
しく」なければならない。白砂青松の景観を保全することは地元の希望でもある。
しかし、名取をはじめ全国の多くの海岸林の第一ミッションは、潮風の流入をどう
防ぐかなど防災林機能の重視である。先行樹種としてクロマツを導入し、遥か将来
は侵入した広葉樹の実生を積極的に活かせばいいと思います。従って原則的に、
名取の松原では落葉掻きは不要」と考えています。ただ、閖上や空港近くの北釜
地区の一部では公園的要素を持たせ、親しみやすい林に仕立てても良いと思います。
震災前の名取市閖上地区の林内。想像以上によく管理されていた ことが分かります(2010年名取市役所提供)

震災前の名取市閖上地区の林内。想像以上に
よく管理されていたことが分かります(2010年名取市役所提供)


●(仮称)名取市海岸林を守る会は、いつまで大変なのか?
これ、すごく考えます。個人的に、最悪のことをすぐ考えてしまうのですが、結局、
楽天家なので。それ前提で。30年後までは市民が定期的に集って出来ることは多分
にあります。そのボリュームは確実に減るはず。市民過多なはずはありません。
プロの領域が徐々に増えるでしょう。地権者の成すべきことは明確にあります。
しかし、地権者とは言えども、行政が何でも担うという、行政依存という世の中は、
これからの日本には相応しくないと思います。何でも税金に頼るのでなく。
住民も行政も進化するでしょう。今と同じなわけはありません。しかし、人間の性。
「組織30年」という言葉もあります。まず現代の私たちは、肩の力を抜いて、最大
でも「第3次10ヵ年計画完了まで」と期間を決めて考えても良いのかと思います。
●参考資料
クロマツ海岸林の管理の手引きとその考え方 森林総合研究所
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/2nd-chuukiseika24.html
[PDF]津波被害軽減機能を考慮した海岸林造成の手引き 森林総合研究所
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/…/3rd-chuukiseika24.pdf
[PDF]クロマツ海岸林に自然侵入した広葉樹の活用法 – 森林総合研究所
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/…/3rd-chuukiseika17.pdf

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