2024年9月2日

6種類の猛禽類確認 ~フィリピン ヌエバビスカヤ州での 生物多様性 調査実施~

  • フィリピン
  • 本部スタッフ
  • 海外事業部のグラゼンです。

    8月18日から26日までフィリピンに出張し、マニラから車で7時間のルソン島ヌエバビスカヤ州アリタオに行ってきました。アリタオでは、1993年から森林再生プロジェクトを実施していて、今回は、専門家が実施する鳥類を主な調査対象とした 生物多様性調査に同行しました。野生動物の専門家がオイスカのプロジェクトサイトの評価をするのは今回で3回目です。

    風景
    プロジェクトサイトは600ヘクタールあり、この写真はごく一部です
    生物多様性調査をする専門家(右)

    私は、これまで何度もこのサイトを訪れていますが、今回の訪問では、特に多くの種類の野生動物を確認することができ、プロジェクトの成果を実感できる、とてもいい訪問になりました。

    今回の調査で収集したデータの詳細は分析中ですが、興味深いのは、プロジェクトサイトで6種類の猛禽類が確認されたことです。5種類は一年中ほぼ同じ地域に棲む留鳥、1種類は渡り鳥でした。プロジェクトをはじめた1993年当初は一面のはげ山が広がっていましたが、今は、ワシのような生態系ピラミッドの頂点捕食者が確認できる植生が豊かな場所に移行していて、今回、調査にあたった専門家は、「単に森を再生させるという意味だけではなく、生物多様性という意味でもオイスカが長年取り組んできたことは正しいと思う」と話してくれました。

    私は、空を悠々と舞う2羽のBrahminy kite eagle(シロガシラトビ)と、木にとまり羽を休めるCrested Honey Buzzard(ハチクマ) を見ました。もっといい写真を撮るために専門家が近づいていきましたが、鳥は身じろぎもせずたたずんでいました。狩猟が盛んな他の地域では、猛禽類は人間の気配を察知するとすぐに逃げてしまうが、このサイトでは、近づいても人間の脅威を感じることなく、猛禽類にとって安全な場所であることを示していると、専門家が語っていました。

    Crested Honey Buzzard(ハチクマ) ©Mr. Bob Natural

    木が戻ったことで水が豊かになったサイトを流れる小川の下流の竹やぶ近くで、固有種のカワセミ科の仲間が餌をとっているのが確認できました。専門家によると、下流でも水質が良いことを示す指標になるとのことでした。

    トンボ
    ©Mr. Bob Natural

    では、上流はどうなのか興味が湧いてきました。さらに、サイトを管理しているワーカーに話を聞くと、サイト内でカタツムリやウナギなどの淡水魚を捕り、食用や小遣い稼ぎをしているといいます。私は今回の調査で初めて知りましたが、地元の人たちは、サイト内でキノコや野生のシダや根菜類を採っているのだそうです。幸い、彼らはサイト内の野生化したニワトリなどの鳥類や動物を狩ることには関心がなく、鳥類の生態系が維持されていました。

    手にしているのはキノコ

    調査中、野生化したニワトリをよく見かけました。このサイトは植生が密になっているにも関わらず、野生ニワトリの個体数が多いことにも注目していました。これはおそらくプロジェクトマネージャーのロペス氏がサイト内への不法侵入を警戒していることと、サイトを管理しているワーカーがサイト内に住んでいることで、密猟が少ないことが影響していると思われます。

    プロジェクトサイトを管理するワーカーさん

    20年後、私たちが植えたフタバガキが豊かな植生の森に遷移し、フィリピンイーグルをはじめとする豊かな生態系を育む森に成長していくことを願っています。そして、大自然を守っていくために、人々が自然や野生動物に関心を持ち、自然を愛する人たちが増えることを願っています。

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