■N連2年次がスタート
堅実な取り組みにより活動が7州に拡大
1月20日、在フィリピン日本大使館において、日本の外務省NGO連携無償資金協力(N連)による「ネグロスシルク事業を基盤とする養蚕普及全国展開支援事業」2年次(2020年1月10日〜21年1月19日)の贈与契約署名式が行われ、羽田浩二特命全権大使(写真左)と石橋幸裕マニラ駐在代表との間で署名が取り交わされました。
2年次の活動計画には、カウンターパートであるフィリピン政府農業省所管繊維開発局(FIDA)や科学技術省所管繊維研究所(PTRI)などからの要請を受け、新たにヌエバビスカヤ州(ルソン島)、イロイロ州およびアンティケ州(パナイ島)の3州が加わりました。これらの州は、1年次に活動を展開してきたベンゲット州、アクラン州と隣接しており、そこでの活発な取り組みを見て、参加を希望。その背景には、かつて政府や海外の団体などの支援によって養蚕に取り組んできた経験があるものの、産業としての定着を図れなかった経緯があります。「事業できめ細かなセミナーや指導を受けることができれば、養蚕を拡げられる。再度チャレンジしたい」との思いが関係者に伝えられ、3州も活動地に加えることが決まりました。2年次は、すでにモデル地域となっている西ネグロス州を含む7州で活動が進められます。
初年次は、繰糸機械の入れ替えにより、バゴ研修センター内の製糸場の充実を図ることができましたが、2年次は新たな3州も含め、初年次同様に各州の養蚕普及リーダーおよび農家に対するセミナーや研修などを実施するほか、専門家派遣によるセミナーや技術指導を行う予定です。さらに蚕糸業への理解と知識向上を目的とした訪日研修も計画しており、全国規模の普及拡大を目指して活動を展開していきます。
■ミャンマー農業指導者研修センター 日緬友好の碑を建立
2017年にミャンマーのマンダレー地域に開所した農業指導者研修センター(以下、第2センター)は、施設やスタッフの充実が徐々に図られつつあり、これまでに43名の研修生を輩出しています。19年からは近隣の学校で「子供の森」計画もスタートさせるなど、オイスカ活動の地域への展開も始まっています。
2月7日、第2センターに日緬友好の碑が建てられ、完成式典が行われました。日緬友好の碑は、1997年に開所したマグウェ地域にある農村開発研修センターにも建立されており、これは、96〜08年の間、ミャンマー開発団長として同国での活動の礎を築いてきた岡村郁男参事が、「この地で活動できるのは、日本の支援者やミャンマーの関係者をはじめとする多くの方のおかげ」との感謝の思いで建てたものです。拡充が進む第2センターも同様に、さまざまな形で支えてくださっている方々の存在を忘れることなく、感謝の気持ちを示す象徴として友好の碑が建立されました。
日本から完成式に参加した岡村参事は、「ミャンマーには、太平洋戦争の激戦地となった場所も多く、今も多くのご遺族が慰霊のための訪問を続けている。活動を支えてくださる方の中には、ご遺族も少なくない。オイスカには、日緬の歴史的なつながりを踏まえた、両国の友好促進の一翼を担う役割もある」と話し、今後も専門家として、農業指導をはじめとしたセンターへの支援を続けたいと意欲を示しています。
■インドネシア NGO連携無償資金協力贈与契約書に署名
3月2日、在インドネシア日本大使館において、日本の外務省NGO連携無償資金協力(以下、N連)で採択された「伝統的生活様式を守って生活する共同体の生活基盤の整備と生活環境の改善、生計向上の支援事業」の贈与契約書署名式が行われました。オイスカからは中垣豊駐在代表が出席し、石井正文特命全権大使と共に署名を交わしました(写真)。
今回、N連による本事業で対象としているのは、ジャワ島スカブミ県チソロック郡の国立公園内にあるコミュニティで、約2300人が、祖先からのしきたりや習慣を守った伝統的な生活を営んでいます。ここでは、森林などの天然資源が無秩序に収奪されることのないように厳密に管理され、また、主作物である米は「生命そのもの」という考えの下、神聖な作物として売買を禁じており、さらに地力維持のために年1作と決めるなど、古来より続く生活様式を守りながら、自然との調和を図るコミュニティといえます。一方で、限られた方法で生活の糧を得ている住民の月あたりの平均収入は、スカブミ県の平均の5分の1程度にとどまっており、食糧の自給は可能ながら、教育や医療といった社会サービスへのアクセスが十分でないことが課題となっています。
かねてよりコミュニティからオイスカへの支援要請があり、地域の青年をオイスカの研修センターで受け入れて農業指導を行うなどの協力を長年続けてきました。そうした地域のリーダーとなり得る人材の充実が図られつつあることや、過去のN連支援による農村地域の生活改善・生計向上を目指した事業の実績をもとに、新たな事業を展開できると考え、今回の新規事業がスタートしました。事業は3年間の予定で、初年度は、乾期時の水不足解消のための用水路補修といったインフラ整備を中心に、住民の自助努力による生計向上を目指していきます。