吉田です。5月25日の公募ボランティア日、私を含め、51人中15人が毛虫にやられました。前日に実踏した際、大量発生ながら局地的と確認しました。当日アナウンスでも注意喚起しましたが、作業場所の選択が甘かった。より念入りな前日実踏と、作業場所選びをする必要があります。長年森林の仕事をしていますが、こんな目にあったことはなく・・・とは言っても猛反省です。

 その毛虫の正体は、「モンシロドクガ・ゴマフリドクガ・キドクガ」。マツではなく、その他の草木を食する類です。去年、局地的大量発生した「マツカレハ」と比べ物にならないほど、毒毛針を飛散させると見ています。作業後に水で洗うのも有効と医者に言われました。まずは長袖、そして近寄らないことですね。蚊に刺された時のような「ム○」ぐらいじゃ効きません。

 https://www.imokatsu.com/imo-monshirodokuga.htm

 https://www.imokatsu.com/imo-gomafuridokuga.htm

 https://www.imokatsu.com/imo-kidokuga.htm

 以下、その2日後、参加者の皆さんに毛虫に刺されていないか確認したところ、地元ボランティア三浦さん(日本野鳥の会所属。ブログにも野鳥調査記録を書いてくれています)からいただいた返信です。

「現在 首と脇に強い痒みがあります。昨日の作業では、私は毛虫がいなかった海岸林最北端メインだったので、痒みが毛虫が原因かは不明です。吉田さん同様、海岸林中央部西側付近で作業した他の方々に症状が出ていないか気になりました。今日5/27に探鳥した時、そこは普通に歩くと踏んでしまうくらいいました。そこより南はたまにいるくらいでした。松の中は未確認です。こんなにいて何を食べているのか気になり食痕を探したところ、葛、ドクウツギにたくさんくっついて目立つ食痕がありましたが、数の多さと、毛虫がいた範囲から近くにある植物を手あたり次第食べてると思いました。さらに正体が何か気になり帰って調べた結果、正体は『ドクガ』。危険。毒針毛をもち、刺さると痛みと痒みがあり、皮膚炎を起こすこともある。発生時期が6ー9月とありました。まだ続く可能性があります。空気中に舞っているかもしれない毒針毛が心配になりました」

 私の場合、最初の数日は全身が痒かったです。息子から「喧嘩したの?」と言われるほど顔も腫れ。医者にも行きましたが、花粉症の薬を飲んでるなら抗ヒスタミン剤入りの薬は出せない。市販薬でもいい」と言われました。この日から10日も経っているのにまだ痒い。外回りを一緒にした浅野さんから「搔くから治らないんですよ!」と言われ(笑) ちなみに、作業着は自宅の洗濯機で洗いました。家族に痒くないか聞きましたが、大丈夫と・・・家からつまみ出されずに済んでます。

 クロマツの生長とともに、年々、生物多様性を実感しています。その一方、増えてほしくないものも増えるはずです。2020年はマツカレハの初発生。2021年はネズミの食害と植えて2年目の苗木へのアカシンクイムシ、2023年は年々増えてきたアシナガバチと、マツカレハの毛虫が大発生、そして今年は初大発生のドクガの毛虫、大面積ではないけどマツカレハもいます。スズメバチ対策はしていますが、海岸林2㎞先には巣がありました。マムシはまだ宮城の海岸林付近では発見されてません。マダニもまだ被害は受けていません。ですが、好ましくないものがいないという保証はありません。プロからの情報、複数の目での「実踏」、そして来訪者への注意喚起・・・引き締めてかからねばなりません。

 

2023年度の葛刈りの結果

2024年6月2日( カテゴリー: 現場レポート )

 吉田です。5月24日(金)朝、東京都立大大学院の梶原君が月例調査で来仙。彼を調査現場に送り届けたあと、せっせと明日の公募ボランティアの準備。午後は、大槻さんと前宮城県支部副会長の矢萩さん(元東北電力副社長・前ユアテック顧問)が「助っ人」。大ベテランふたりと2か月ぶりの現場実踏です。

 2023年度の葛刈りの結果、全体像を確認しました。やっぱり最短でも1年後ですね。結果が出るのは。ボランティアで手掛けたいくつもの場所も、結果はまちまちですが、少なくとも落第という場所はどこもなく、安心しました。

 胸を張れる成果は、去年のボランティアの主戦場、名取市海岸林最北端(閖上港東)3.4haの区画でした。去年はほぼ半分に侵入され、6月上旬~9月末、正味3ヵ月集中しきった場所。去年葛刈りをした890人の多くがここでも頑張ってくれました。会心の出来でした!明日のボランティア1日で終わると思いました。事実、50人半日で1回目の葛刈り終了しました。(ここでアシナガバチに刺された人も私含めて数人。)葛がなくなって、閖上漁港と釣り客がたくさん来る駐車場からのゴミが、冬の西風に飛ばされクロマツ林内に散乱してました。これも明日の仕事。(葛刈りと同時にゴミ拾いも完了。可燃12袋・不燃1袋+炊飯器ほか)

上の写真は昨年。下の写真は、同じ場所を5月24日に撮影。

 下記、左の写真のように、葛刈りをやらないと、本当に枯れます。うちの現場ではないですが。

5月末の生き物 ~鳥・草花編~

2024年6月1日( カテゴリー: いきもの )

 吉田です。名取海岸林の5・6月は、生物多様性的にとても楽しい季節です。5月24日(金)、大槻さんと、元オイスカ宮城県支部副会長の矢萩さん(元ユアテック顧問・元東北電力副社長)という大ベテランと一緒に、久々の現場実踏を。個人的に言葉を使い分けていて、「巡視」は車でザーッと短時間で見ること(現場に来たら毎回絶対やる)、「実踏」は(巡視と併用で)林内を広範囲歩くことと使い分けています。今回の実踏は翌日の公募日を、どこで、どのように作業するか決めるのが目的。一人の実踏もいいですが、複数の目での実踏は、当然発見が多く、あーだこーだと言いながら。2人来ていただくと本当に助かります。

 矢萩さんが、草花の写真を撮ってくれましたので紹介します。花の名前はご容赦を。

次に、私の撮影。カッコウを撮れたのは初。この冬成功したフクロウに続く自己満足。

 吉田です。この4月以降、東京本部に4人いた「海岸林チーム」という通称名を自然と使わなくなりました。私を含め、業務時間の半分近くを海岸林に充てる人はもういません。それぞれが海岸林の経験を活かし、新しいミッションを最優先にしています。旧海岸林チームが属した「啓発普及部」は、7人のうち、林久美子さんを含む3名が本部海外事業部に異動、我が部は4名に減員という大きな配置転換をしました。ほぼ半数が異動という人事は、少なくともこの約30年のオイスカでは初のことです。もともと、海岸林再生プロジェクトの「ポスト2020年」として、「海外事業部や国内研修センターのバックアップ業務をしてナンボ」と言い続けていましたが、異動した3人、残った4人は、それぞれ不安の2ヵ月だったはずです。それでも、落ち着いて乗り切ったように思います。

 名取市海岸林は生長に伴って変化しています。われわれもそれに対応し、ボランティアの受け入れ時期も、作業内容も変えています。その変遷としては、2014年~2018年頃に来た方は、名取市海岸林の作業と言えば「ツルマメ」、2016~2022年に来た方は「溝切り(排水路づくり)」、だいたいこの2つの印象だと思います。ツルマメの残党は、クロマツの生長によって日光を得られなくなり、淘汰されました。これも高校の授業で習った「植物遷移」の初期の初期段階です。溝切りは、最優先で手を加えたい場所を2023年5月に終えました。これから延々続く作業は、夏の葛の刈り取り(2014年~継続中)と、冬の間伐(2021年~開始)で、相当なボリュームが待ち構えています。

 作業の変化に伴って、ボランティアを受け入れの時期も、今期から一層メリハリをつけました。私自身の名取滞在も、この3~5月の90日で5日だけ。2週間フィリピン最北部に出張もしました。浅野さんの仕事も、出張の行先も今までと変わっています。

 以上、ブログを更新しなかった言い訳でした。このブログは、2011年以来、2,761回更新しています。私としては忘備録にもなっています。3,000回更新は1・2年先ですが、まだ名取市海岸林はわずか14年目に過ぎません。頑張って継続します。6・7月は名取の集中時期です。8月第1週までに葛の大半に一撃を与えるべく、毎週末+α、通い詰めです。

浅野奈々穂主任、5月19日「子供の森」計画親善大使トークイベントin大阪でファシリテーター

「海岸林チーム」は、名前は消えても海岸林に関わり続けます。そして、これからも「つなぐ」をモットーに、アメーバー的に部署跨ぎ、国跨ぎの仕事を生業としていきます。

6月12日(水)19時~ 下記オンラインイベント、ただいま募集中!

 

 

こんにちは!
東京都立大学に所属する大学院生の梶原です。

先月3月24日~27日の4日間にかけて,新たな調査を行いました。
(前回の調査報告はこちら 土壌調査  土壌調査その2

今回の調査は一風変わっています。これまでの調査では,「盛土の土壌特性がクロマツの生育状況に与える影響」を調べるものでした。
一方で,今回の調査では「クロマツの生育状況が盛土の土壌特性に与える影響」を調べることが目的です。立場が逆転しましたね。

そして,この目的を達成するために,リタートラップというものを仕掛けました.

そもそもリタートラップって何?という方に簡単に説明すると,「落ち葉や枝,種など,クロマツから地表面に落ちてくるもの(=リター)を集めるためのトラップ」になります!

百聞は一見に如かず!ということで実際に設置したリタートラップの写真をお見せします↓

プロットNo.8に設置したリタートラップ。白い布はおよそ3.6 m×3.6 mの大きさです。

だいぶイメージがつかめたかと思いますが,要は写真内にみられる白い布が敷かれている範囲に落ちてくるクロマツのリターの量を調べよう!ということです。

なぜそんなことをしているの?という話ですが….

理由は単純,「クロマツのリターによって栄養価の高い良い土ができる」からです。
“腐葉土“という言葉,多くの方が耳にしたことがあるのではないでしょうか。

腐葉土とは,土壌をより良い状態へ改善してくれる改良用土・補助用土のことを指します。
つまりは“良い土“ということです.

さて,この腐葉土ですが,漢字に着目すると「葉が腐った土」という意味になります。もうお気づきの方も多いと思いますが,私たちが日ごろ目にする落ち葉って,実は植物にとって栄養の塊なんです。

面白いことに,植物が育つための栄養って,植物そのものからきているんですよね.ある種、究極の自給自足なのかもしれません。

海岸林の盛土自体には,植物を育てるための栄養がほとんどありません。
盛土に植えられたクロマツが育ち,リターを供給することによって,盛土はどんどん栄養価の高い,豊かな土になります。

つまり,リタートラップによってクロマツのリターの量を調べるということは,「盛り土にどれだけ栄養が供給されているか」を明らかにする,ということに繋がるんですね。

“盛土そのものの土壌特性の違い“と,“クロマツから供給される栄養成分の量の違い“という2つの違いから,名取海岸林の生育環境を詳細に見ていければと考えています。

さて,おおまかに私の調査内容についてご説明したところで,ボランティアの皆さんへ1つお願いがございます。

今回の調査では,オイスカの皆さんで設置いただいているモニタリングプロットのうち,No.7南部,No.8,No.10の3プロットを対象に,リタートラップを設置しました。

このリタートラップですが,「特定の期間に,自然に落ちてきたリターの量をみる」ものですので,例えば誰かがトラップ内に入ってしまうと,靴の裏についていたリターが混ざってしまったり,入った際の衝撃でリターがトラップ外に出てしまったり…と,正確な量がわからなくなってしまいます。

つきましては,もしボランティアの作業中に写真1のようなトラップを見かけた際には,「白いシートの中には入らない」ことをご協力いただきたいです!(近くで見ていただく分には全く問題ありません!)

一応,現地には写真2のような注意書きも設置してありますので,遠くからでも視認しやすくはなっていると思います。

現地に設置したリタートラップの注意書き。これが見えたらご注意いただきたいです!

以上,よろしくお願いいたします!

長くなりましたが,今回のブログはこれにて終了です。
また新しい結果がでましたら,改めてご報告できればと思います!

鳥見ing(2024年3月30日)

2024年4月3日( カテゴリー: いきもの )

地元ボランティアの三浦です。3月は30日に現場に行ってきました。

鳥の状況
季節の変わり目が鳥からも見れる時期となっていました
・これからの繁殖の為
渡って来たツバメがエサ取りに飛び回っていました
縄張り確保かヒバリ、ウグイス、ホオジロ(写真)、カワラヒワがさえずっていました

・もう一月もいないでしょう、北へ帰る前の居残り組の
ヨシガモ(写真)、ツグミが小群れでハウス群横の畑で採餌していました


・留鳥の
シジュウカラ、ヒガラがの群れが黒松林を移動し採餌していました
今季カラ用の巣箱設置構想が間に合わなかった為次季に持ち越しました

昆虫
成長で越冬したルリタテハ(写真)、タテハチョウの仲間(写真)が
作業道路付近を飛び回っていました

四つ足
中間の脇道の凹に小さ目なタヌキの遺体がありました(写真)
カラスが狙っているのか次々集まって来ていました

 吉田です。新年度を迎え、オイスカも人事異動があり、林久美子課長は東京本部海外事業部海外開発協力担当部長になりました。浅野奈々穂さんは私の部署で地方支部との連携の最前線に立ちます。

 オイスカの仕事は人数・事業規模と比較して、広すぎるほど広いのが、強みでもあり弱みでもあります。なのでなおさら、一つの仕事が、一見すると無関係に見える他の何かに好影響を与え、つなげていく姿勢がとても大事だと私は考えています。海外の経験が、海岸林再生プロジェクトのシステム構築に大きな影響を与えたように。

 彼女たちはいま、オイスカ中部日本研修センター(愛知県豊田市)に10日間ほど即戦力として応援に出ています。いまも海岸林の経験を活かして、10日間の業務に当たっているのが手に取るようにわかりますし、帰京後も私の期待通り、「つなげる」「つなぐ」仕事をしてくれるでしょう。

 私は彼女たちに先立って去年4月から新たな業務が加わり、オイスカ関西支部事務局長も兼務し、去年は6回大阪出張しました。そしてこの3月は、宮城・フィリピン(2週間)・宮城・大阪・兵庫・愛知という1ヵ月で、家には4日?しか帰れませんでしたが、無事乗り越えて新年度・新体制になりました。これまでとは違うことがきっと待っていると思います。まずは仲間の無事をサポートしつつ、私も安全運転を心がけて・・・という気持ちです。

 海岸林ブログはずいぶんさぼりました・・・じつは今年の3.11はフィリピン最北部の災害多発地帯アブラ州で迎えていました。ここには、1984年設立のオイスカアブラ農林業研修センターがあり、1997年からの私の師匠、デルフィン・テソロ所長がいます。名取には3回来ています。「アブラ州の行政マンや学校の教員に、海岸林の公募ボランティアの日を体験してもらう企画を練ってるんだ」「オイスカ海岸林チームをアブラの人達に見せたい」と言ってもらえました。チームを褒めてもらえた・・・しかもデルフィンさんに。予想してなかったのでびっくりしたし、何よりの誉め言葉でした。やっぱりここにもつながってるんだな・・・ボランティア一人一人が、名取発、世界へを体現し、海外に影響を与えている証拠です。その話はおいおいまた・・・

 で、新年度のいまは北部タイで始まる新たな「はげ山造林」のためのクラウドファンディングの告知、5月19日(日)の「地球環境を考えるトークイベント2024@大阪」、「子供の森」計画親善大使(タイ・インドネシア)受け入れ準備、秋の「子供の森」計画コーディネーター研修準備など、表面的には海岸林以外のことに追われています。ですが、心の中では片時も、名取発で世界へつなげる、次世代につなぐという気持ちを忘れたことはありません。片時も。もはや完全に自分の血になりました。

 以下、告知2点です。ぜひご参加ください。元海岸林専属チームの吉田・林・鈴木・浅野らを核に、職員一同が気合を入れて取り組んでいます。拡散にご協力いただけたら、さらに嬉しいです。

昨日に続き、ウズベキスタンの話題です。

昨年「海岸林再生プロジェクト」の海岸林リーダーに任命された東北大学の
柚原さんが、昨日ウズベキスタンに出発しました。1年間の留学です。


ウズベキスタンでは、オイスカのカウンターパートである
カラカルパクスタン農業大学で学びながらアラル海の沙漠緑化の活動に参加します。
参加といっても、インターンとして、プロジェクトの運営全般に関わるため、
現場での植林はもちろんですが、
日常的に行われる育苗場の管理や各種調査研究の補助、
また、会計報告書の作成など事務的な部分も体験することに。

初めての海外ということもあり、心配が尽きない彼女と、見送りのために
福岡から上京してきたお母さんとお会いしてきました。
(おばさんといとこのお兄さんも来てくださっていました)
彼女自身が行ったことのない国で、やったことのない活動や業務を体験するのですから
その彼女からいくら話を聞いても親御さんや親戚の皆さんが不安に感じるのも無理はありません。

ウズベキスタンと日本がいかに友好的なお付き合いをしてきているか、
ウズベキスタンの人たちがいかに親日であるか、
カラカルパクスタン農業大学の学生さんたちがどんなにまじめであるか、
私の印象では40~50年前の田舎の日本のような社会であること、等々、
私が知っていることをあれこれお話させていただきました。
彼女の滞在中にぜひ現地を訪問してほしいということも。

オイスカは海外から青年を受け入れて研修を行っていますが、
こんな風に名取の現場で活躍してくれた若者が、世界に羽ばたき、
オイスカの現場で活躍してくれるのは本当にうれしいこと。
柚原さんがたくさんの経験を積んで、たくさんの学びを得て
戻ってきてくれるのがとても楽しみです。そして、私も彼女の滞在中に
ウズベキスタンを訪問したいという気持ちが強くなりました!
名取からも柚原さん応援団を結成してみんなで行きませんか??
現場の責任者はボランティアの大槻さんを「サツマイモの専門家」として
招聘したいとずっと口にしており、「カラカルパクスタンのサツマイモの父」に
なれると、大槻さんを誘っています。柚原さんが現地で受け入れてくれるなら
大槻さんも安心して行ってくれる!?と勝手に思っています。

今日、タシケントからカラカルパクスタン農業大学があるヌクスに移動する予定。
1年間の新しい生活の始まりです。
柚原さん、思いっきり楽しんでくださいね!


※柚原さんが出発前に福岡のRKB毎日放送で紹介された映像です!

本部・啓発普及部の林です。

3.11を前にした週末、名取に日帰りで行ってきました。
日帰りで行くことはなかなかないのですが、今回はウズベキスタンの
環境副大臣が現場を視察されるということで、その対応のための訪問でした。
(結局副大臣は急きょ帰国しなければならなくなり、視察はかなわず、
環境省の国際部長さんと林野庁の国際関係部局長さんのお二人にお越しいただきました)

東京からは、ウズベキスタン担当の長部長に同行してもらい、
また現場では佐々木統括に案内役をお願いし、昨年10月にウズベキスタンを訪問した
大槻さんや「名取市海岸林再生の会」の鈴木英二会長にも同席いただきました。
(森さんも来てくださっていました!)

左から長部長、佐々木統括、林野庁国際部局長さん、環境省国際部長さん、そして今回素晴らしい通訳をしてくださった株式会社ニッポンドのナジロフ・ドニヨル代表取締役社長)

現在オイスカでは、ウズベキスタンで沙漠緑化に取り組んでおり、
同国の森林行政に関わる方々とは密に連携をしていくことが求められています。
今回外務大臣の訪日に同行された環境副大臣ご一行様が
日本の森づくりの現場を視察したいということで、調整を進めてきました。
結果的に副大臣にはお越しいただくことができませんでしたが、
実務レベルの担当責任者のお二人にオイスカの現場を見ていただき、
意見交換をする機会を持てたことはとてもよい機会となりました。

佐々木統括からはプロジェクトの経緯や概要などのほか、低コスト林業の実施の重要性、
また、その実現のための努力などが語られると「資金はどう集めたのか」
「再生の会が苗木生産をして販売した分の収益は誰にどう配分されたのか」
「これまでにどのくらいの費用がかかったのか」など具体的な質問が多く飛び出しました。

鈴木会長からは「一番大事なのは官民の連携。オイスカが海岸林の再生を手伝うといって
名取に来てくれたが、我々地元の人間が行政と一緒になって取り組んでいかなければ成功しない。
アラル海での緑化も、同じように取り組んでもらいたい」とコメント。
私たちは、どの国においてもプロジェクトを通じて、
地域の人たちが豊かになる方法を模索しながら活動を続けています。
地域の人たちが主役でなければなりません。
地元の代表でもあり、2度アラル海での緑化活動に参加している鈴木会長から
一番の肝の部分をズバッとお話しいただけてとてもうれしかった!
(準備段階で、どうやって現地のお役に立つ技術について伝えたらいいかを悩んでいて、
日本の林野庁から現地林野庁に専門家として派遣されていた方に相談したりしていたのですが
最後は「オイスカらしさを伝えることが大事」という結論に達していたので、
その打ち合わせなく、鈴木会長が伝えてくださったので心の底から拍手!でした)

      佐々木統括(右)が缶コーヒーを鍋で温めてもてなしてくれました!

ウズベキスタンは世界に二つしかない二重内陸国
(国境を接する国のすべてが内陸国=海なし国)で
森林率は10%にも満たない、日本とは全く違う自然環境の国です。
海がない国での造林に、海岸林の技術が役に立つだろうかと思われるかもしれませんが、
乾燥地が広がるウズベキスタンにおいては、海岸という貧栄養の乾燥地における技術は
参考になるものが多いのではないかと考えています。

ただ、今回の視察や意見交換を通じてお二人がとても関心を持っていたのは
鈴木会長が大事だと指摘した官民の連携がどのように実現されているのかという点。
ウズベキスタンでも民間の力をどのように森林行政に活かしていくかは
これからの大きな課題になっているようです。

ウズベキスタンでもオイスカは官民の連携にとどまらず、国を超えたさまざまな団体が
一つの目的に向かって一緒に活動していくための調整役を担うつもりです。
行政と地域の住民たちが一緒になって活動するのをお手伝いする時、
その役割をうまく発揮できるよう、今回のお二人が行政側の立場から
いろいろサポートしてくれるようになったら本当にうれしいことです。

今日、東日本大震災から13年となりました。
あの震災後、オイスカは、長年海外で取り組んできた植林プロジェクトの
ノウハウや手法をもとに「海岸林再生プロジェクト」を立ち上げて歩んできました。
海外からの視察も多く受け入れてきました。オイスカの海外の現場スタッフの研修も
この現場で実施しましたし、これからも実施する予定です。
もっともっと、多くの国の活動のモデルとなれるよう、
これからも歩みを止めることなく、取り組んでいきます!

 ご無沙汰しております!東京都立大学に所属する大学院生の梶原です。

初めましての方もいるかと思われますので簡単に自己紹介をしますと、私は2020年から名取の海岸林を対象に、「クロマツが育つ土と育たない土にはどのような違いがあるの?」ということを研究しております。
前回の記事はこちら

今回の記事では、昨年7月22日(土) ~ 7月24日(月)の3日間にかけて行った調査からわかったことをご紹介できればと思います。

まずは、前回の調査のおさらいを。

前回の調査でやったことを一言で言えば、「ひたすらに土をとる」に尽きます。名取の海岸林の土は数歩歩けば大きく環境が変わるようなトンデモ土だったので(詳しくは2023年7月19日のブログを参照ください!)、「クロマツが育つ土と育たない土の違いはズバリ、○○だ!」と、ビシッと言うためには、多くの地点から土を取って、たくさんのクロマツと照合する必要があります。結果から言えば、3日間でおよそ300地点の土をとり、1000本近くのクロマツの樹高と根元径(幹の太さ)を計測していました。

調査の様子です。研究室の先生や先輩・後輩には本当に助けられました


そして、無事に調査を終えたところで、怒涛の実験が始まります。
頑張って土を取ってきてしまった分、それだけ多くの回数実験を行わなければいけないわけで……。

実験の際は、1つの地点につき最低2回以上繰り返してデータを取る必要があるので、300地点の土があると、600個以上のデータが必要となります。この場合、実験にかかる1つの行程を、1個1分ペースでこなしても、全部終わるのに600分(10時間!)かかります。この手間が実験に関わる全ての行程で発生するわけですから、もう大変です。おかげで、7月に調査をしたはずなのに、結果が出るのに半年以上かかっちゃいました……。

でも、長らく頑張った甲斐があり、それなりに良い結果をだすことができたのではないかと思っています。

結論から言えば、「土が酸性であるか・土の水はけが悪いか」という2つの観点で、クロマツにみられる生育不良の原因の42%を説明できることがわかりました。また、この2つの観点のどちらの方がクロマツへの影響度が強いかという点に関しては、ケースによって異なります。

オイスカさんのモニタリングプロットを参考にご説明しますと、異なるモニタリングプロットの間にみられる数mレベルの大きな生育差に関しては、「土が酸性であるか」という部分がかなり効いていると思われます。土が酸性だと、アルミニウムイオンのような植物の生育に有害な物質が溶け出してしまうので、クロマツが弱ってしまいます。今回は、そのような特徴がはっきりと見られたということですね。

一方で、同じモニタリングプロット内に見られる細やかな生育差に関しては、「土の水はけが悪いか」という部分が効いていました。恐らく、ちょっとした土の硬さの違いや傾斜などが雨水の動きに影響しているのではないかと思います。

これらの結果をふまえると、オイスカの皆さんが取り組まれていた土壌pHの調整や溝切りは非常に的確な施策であったことがわかります!

なお、先ほど生育不良の原因の42%を説明できるといいましたが、残りの58%に関してはまだわかっていません。土に原因があるかも知れませんし、日当たりや潮風の当たりやすさなど、土以外に原因があるのかもしれません。

そして、この謎めいた58%を少しでも解明するために、3月末に再度調査を行いたいと思っています。今回は、土だけでなく、クロマツの落ち葉も集めることで、ちょっと面白い分析を行えればいいなと思っています(写真は落ち葉などを集めるためのリタ―トラップと呼ばれるものです)。
詳しくは、後日改めてご紹介します!

私は大学の博士課程に進学したため、あと2年ほど名取の海岸林で研究を行う予定です。少しでも今後の管理のお役に立てるような情報を発信できるよう、頑張りたいと思います。

引き続きよろしくお願いいたします!

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