土の違い ~青森にて~
まず、波打ち際から緩やかに駆け上り、自然砂丘か、昔の堆砂垣工を経た
人工砂丘、または台形状の人工砂丘工に。
次に、いったん沈みます。そしてその先には海岸段丘。
その上の国道や集落、工業用地などまでマツ林が続きます。
ヤマセの本場です。林帯幅は軽く数百メートルあります。
宮城は、被害規模が極めて広大なため「民有地直轄治山事業」として国が乗り出しますが、
当地では、民有地も国が乗り出すというのではなく、国有林は国が、
民有林は県事業でと分担されています。
青森でも、地下水位からの距離が足らないところは当然きちんと盛土してますが、
もとの地盤を活かせる箇所が多くあり、それが名取との最大の違いでした。
つまり、海砂の土壌の上に植えられています。
すると、どこも樹高が一定に揃って。見事です。
当たり前のことながら、やはりきれいです。
盛土は必要ない箇所が多く、津波被害の復旧として6年前に植栽が始まっています。
我々と同じ4年前や最近の植栽地が多く、比較しやすさがあります。
非常に多くのところから土を持ってこざるを得なかった名取と違い、
同じ林班・小林班内に、樹高の凹凸はありません。
広大な人工盛土では均一にするのは困難、凹凸は当然。
うらやましいとは思いません。
ここはここ、名取は名取。
「海岸林保護組合」 ~歴史は繰り返すか~
北海道にお住まいの元林野庁職員で、寄附者でもある方から、宮城県内の海岸林の歴史に
詳しい方をご紹介いただきましたが、私の都合が整わず、ようやくお話を伺うことができました。
「石巻・気仙沼地区 海岸林保護組合連絡会のあゆみ」(平成27年宮城県林業振興会復刻版)
こういう冊子をいただきました。初めて見ました。いただいた3つの資料は一晩で読み終えました。
震災前の平成22年に「連絡会」解散の際、連絡会によって作られ、震災後に復刻されました。
(巻頭抜粋)「驚くべきことに、この地域の海岸林が日本の海岸林事業の原点になっていることがわかりました」
昭和21年までに22の保護組合が設立され、昭和23年、宮城県海岸林保護組合連合会規約が制定。
昭和28年には38の組合が参加、昭和44年には、名取・岩沼、石巻・桃生、仙台、亘理の
4地区に連絡会が存在していた。「原点」というのは組織化されていたということです。
名取にも「北釜海岸林保護組合」があり、「愛林碑」があります。
宮城県北部は(石巻~気仙沼)は、名取と同様「地元の要望」があって、
県が雇用もしながら海岸林を造成した。カキ養殖の万石浦、石巻渡波地区の干物への飛砂防備などの理由。
しかし、2代目、3代目となるうちに、あって当たり前に。
平成21年にアンケート調査。ありがたみは薄れたと考えた。
公的機関で保全をお願いするしかないと思っちゃったんです。
物置、ゴミ捨て場、勝手に伐採して畑にしてる人もいるし。
平成22年に連合会は解散され、平成23年に津波が来た。
存在が注目された渡波地区海岸林などは、当時作った海岸林の
おかげで後背地の被害が少なく済んだのは客観的事実。
災害対応原則は「原型復旧」。
だとしても、もっと「何のために?」という世間への説明、
長期にわたる啓発活動が必要。
カタチも大事だが、魂を重視してほしい。
ご無念を思うと、いまの私には胸が痛い、重く突き刺さる言葉でした。
「今後、社会情勢などの変化により、必要性が高まったときには、この連絡会が再び結成される日がくるものと思っております」(巻頭抜粋)
1月24日、久々に宮城県立名取北高校に行ってきました。
私の弟は高校教員、娘は高校2年生。学校が受験シーズンで忙しいのも
少しだけ知っていますが、快くお時間をいただきました。
いつも校長先生が出してくださるお菓子とコーヒーをいただきながら、
生徒さんの日常や、行政関連の情報交換をしつつ、徐々に本題へ。
5月の植樹祭や下刈ボランティアの募集の前に、
地元若者に向けて、どう発信してゆくか。
「なぜ?何のために?」そういうことを理解して
参加してくれる人を、増やすために
どう手を打ってゆくか。北高以外の若い人たちにどう伝えてゆくか。
途中から、教頭先生とバリバリの中堅の先生が加わる。
校長先生が二人に自分の言葉で要点を伝えてくださる。
そして私が、なぜこういうことをお願いするか、さらに説明。
昨日のブログで書いたようなことに関連します。
そこから4人で具体的に・・・
続きはいずれ。
先生たちが生徒さんたちと考えてくださいます。
子どもたちのためにといって、
何でも大人が上げ膳据え膳しないのが私の信条。
青森から始まった1週間の出張も、最後まで充実しました。
「創造的復興」を目標とする宮城県震災復興計画は最終の3年に入り、
「発展期」と位置付けられています。私たちにとっては将来に向けて
具体的に手を打っていくことが肝要です。
2017年度モニタリング調査報告書、写真報告書、HPで公開し、
1月22日・23日、まず国・県・市に持参、提供させていただきました。
http://www.oisca.org/kaiganrin/4037
人工盛土上での生育経過・土壌の物理性は、調査事例が決して十分と言えず、
我々が、植栽直後からの基礎データを残して公開すれば、何十年とそれは活かされます。
まず早速、来年度の森林総研東北支所による土壌調査で。
「こういう調査もやっているんですね~」とある行政マン。
あたりまえでしょ。馬鹿にしないで!と思いますが、
まだまだ、単なる植林団体にしか思われていないのか・・・
もっと広く伝えて、考える材料として、使ってもらわないと。
書いただけ、ただ公開しただけでは、まだ努力不足です。
清藤先生、ここぞと取りまとめを頑張って下さいました。
私は当然能力不足なので、主に写真報告。鈴木・浅野は添削。
我々にとっては日常会話の延長。
真新しいことが調査でたくさん分かったという気はしません。
でも、見る人が見れば驚く数字もあると思います。ph3.5とか、堅密度20とか。
そういうことも、清藤先生はかなり噛み砕いて説明していますが、
決して、一般の支援者向けに書いたものではありません。
「疲れた・・・」(添削したうちの女子)
「面白くないし、素人にはよくわからん、同じ言い回しが多いとか、糞みそ」
(清藤先生が漏らした奥さんの反応)
せめて写真報告なら・・・
でも、整理・管理も怠っていたし、林業会社にいたくせに撮影位置と腕が悪く。
先々のために年末年始を活かして、時間をかけて根本から整理しなおし。
私にしてはまずまずの出来。(これ以上はムリ)
よかったら海岸林HPトップ「インフォメーション」から覗いてください。
【観察日記】あっ大変!!
海岸林担当の鈴木です。
今日は東京では珍しく一面雪景色です。
積雪23㎝とかなりの大雪、
静岡生まれの私は雪が降ると少しわくわくします。
まだ足跡のついていない雪のところを選んで足跡を付けながら、ところどころで写真を撮りながらいつもより時間をかけて歩いて出勤しました。
いつも通り仕事を始め、ふと、「そういえば、クロマツが雪でつぶれてしまっていないかな?」と不安になり、大急ぎでクロマツのところに行きました。
一面の雪景色、クロマツはもしや潰れている??
寒冷紗をかけているので、その上に雪が降り積もり、重みで押しつぶされてしまっているかも??
少しずつ雪を取り除き覗いてみると、どうやら大丈夫なようです。
よかった!

日差しが強くなり、少し暖かくなるまであと1ヵ月、もう少しだけ寒さに耐えて、大きく成長するのを楽しみにしているよ!
もう少し我慢してね
と健気なクロマツに話しかけてしまいました。
宮城県支部リニューアル
1月22日、宮城県支部幹事会と、支部会員の半数が出席する新春懇談会が
仙台駅近くのパレスへいあんで行われました。
東京からは「災害を防ぐ世界各地の海の森づくり」と題して講演する
本部・海外事業部の長部長。支部間交流として新しく就任された首都圏支部の
藤田副会長兼事務局長、そして小林アドバイザーと浅野、吉田。
震災前と比べて会員数が倍増。
設立から36年間使用した馴染みのホテルでは完全に入りきらなくなり、
今回から会場を変更。初めて行きましたが、華やかな「結婚式場」でした。
広い会場。どこに誰がいるかわからない。
新しい場所で回数を重ねながら、今までのいい雰囲気に染めていきたいです。
長部長は、私自身も強烈なシンパシーを感じている、オイスカが誇る熟練。
取り組む各国の事例をたくさん取り入れながら、30年来の海の森づくりから
名取のプロジェクトに至った背景や関連性、プロジェクトが大事にしている事の本質、
そして名取から世界への技術移転やネットワークを説明しました。
これから各地に引っ張り出し、一人でも多くに聞いていただくつもりです。
川崎での講演と今回の宮城をアレンジし、私自身も聞きましたが、
会員の皆さまもウトウトする人は誰もいない。よかった。
新役員からも「誇らしく思いました。頑張りましょうね」と評価していただき、
2次会では佐々木統括も「今日は嬉しかった」と。珍しい・・(笑)
これはチャンス。
すかさず「清藤先生と一緒に今年ぜひ海外の指導に。実は行っていただきたい現場が
あるんです・・・」というと「そうだな~」と。気が変わらないうちに念押しします。
名取に関わる専門家たちの技術や経験、また専門家でなくても名取での体験を
国内外に伝えていく必要があります。
私自身も名取の報告・計画を説明しましたが、
全国からのご支援、これまで支えてくださった会員、新しく入会いただいた会員に、
新年会の趣旨通り感謝を伝えることができました。
大雪を押して出席いただいた皆さまに御礼申し上げます。
「三日会わざれば刮目して見よ」
「something new」
という感じで頑張ります。
青森県三沢市・おいらせ町にて
我々のアドバイザーの小林省太さん(元日経新聞論説委員)が雑誌に寄稿するのに、
他県も見なければならず、その取材のお供を兼ねて、土日を活かした1月19日~22日、
清藤城宏先生と3人、青森太平洋側と岩手北部に思い切って行ってきました。
岩手北部は現場一つ一つが、津々浦々に非常に小面積という特徴。
青森太平洋側は三沢~八戸間、全長32㎞・134haが計画面積のようです。
その現場を3日間、舐めるように徹底踏査。
青森防災林再生計画書(ページ下部にPDFあり)
http://www.pref.aomori.lg.jp/sangyo/agri/bousairin.html
青森は、津波規模など岩手宮城とは異なるものの、「ヤマセ」本場の町。
まさに「海岸防災林」として現在進行形で復旧が進められています。
2012年植栽(6年目)、2014年植栽(4年目)など、我々と同時進行の現場も多く、
自分たちとの比較検証と、20年~25年の若齢林もあり、名取の将来を考えることができました。
・もとの地盤の優位性を活かしている(仙台平野とは元の地形が違う)
・地下水位を計算に入れ、排水を重視して非常にゆるい傾斜を付けた盛土
・枯損木を排水溝に集積して崩壊から守っている
・宮城・福島のような三角形の防風垣はない
・作業道網が極めて豊富でアプローチしやすく、津波退避路にもなる
・防潮堤代わりで、かつて植栽もした人工砂丘工がある
・徹底したつる切り・除伐(つる類が見当たらない)
・クロマツのコンテナ苗・裸苗、春植え・秋植え
・最前列で、天然更新苗を活用した保育間伐?に一部の区間で挑戦開始
・松くいがまだ来ていない。葛・ニセアカシアも見ない。
・「(海岸)保安林保護協議会」は辛うじて残っている模様
またコツコツ紹介しますが、印象を一言で言うと、「我々もまた頑張るぞ」と
気持ちを温める視察となりました。見れば見るほど、歩けば歩くほど、
将来の参考になると思っています。
第8回 大阪マラソンチャリティ寄付先団体 選考結果
昨年に引き続き…
新年早々、朗報です!!
今年も大阪マラソン寄付先団体に採択されました!!
5年連続です。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました!
今年もチャリティカラーは紫、テーマは「美しいまちと暮らしを支える」です。
ランナー募集は4月から開始になりますが、
今年もランナーとして、応援団としてのご参加お待ちしてます!
2018年 大阪マラソンは11月25日(日)開催です!
ちなみに昨年のチャリティランナー数は58名。(申込いただいた方は61名)
今年はそれ以上を目指してランナー募集頑張ります!!
ご協力よろしくお願いいたします!!
大阪マラソン公式ホームページはこちら → http://www.osaka-marathon.com/2017/charity/contribute2018/
【観察日記】冬ごもり
海岸林担当 鈴木です
観察日記を書かなければと思いつつ、月日が流れ、気づいたら10月6日以来のブログにびっくりです。もう3ヵ月も経ってしまった(^^;)
秋も深まるとほとんど変化が見られないので、写真を撮ることもやめてしまいました。
冬の初め、寒さからクロマツを守るために寒冷紗をかけました。
1年生クロマツはまだまだ小さく、10cmほどで寒さに弱いので寒冷紗をかけ、守ってあげる必要があります。
2年生クロマツは30㎝ほどに成長しているので、自分で寒さに耐える術を知っています。
しばらく気になっていた幹のうろこ模様ですが、
こちらもあまり変化はないもののプレッツェル状態が続いています。
春に伸びるためのエネルギーをためる冬ごもりの時期ですから、表面的にはまったく変化がないのもうなずけます。
春になったらどんな変化があるのか楽しみです!
海岸林担当の鈴木です。
明けましておめでとうございます。
今年のお正月は初詣に外に出た以外、ずっと家にこもり、のんびりしていました。
のんびり過ごしていると、普段は気づかないことに気づくものです。
昨年までは帰省していたので、門松を飾ることはなかったのですが、今年は家に居たこと、息子がスーパーで門松を見つけ、買うとも言っていないのに「どれにする?これがいいかな?」などと買う気満々だったこともあり飾ることにしました。
年末の28日、手が凍えながら門に松を括りつけました。
対になっている松の両方を見比べると、ほぼ形状が同じです。
松の頂芽は春先から初夏にかけて伸びますが、プロジェクトの植栽地のクロマツたちは頂芽の長さがマチマチ、出る頂芽の数もマチマチです。
どの家の門松を見てもほぼ形状は同じ、出ている枝の数も同じ4本。どうしたらこんなに形状が揃ったクロマツができるのだろう?
頂芽が伸びすぎたら切ってしまう?いえいえ、切ったような跡があるクロマツは見当たりません。
頂芽の数が多すぎたら摘んでしまう?いえいえ、門松に使う大量のクロマツの頂芽を摘むのは現実的ではない気がする
と疑問に思っていました。
調べてみると、驚きがいっぱい詰まったサイトを見つけました。
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1201/spe1_02.html
http://mizoguchi-farm.jp/matusenryou1/matuseihinka.html
面白い発見がいっぱいです
〇茨城県神栖市(かみすし)波崎(はさき)地区は若松・千両の一大産地 ・・・まったく知らなかった。若松の産地というところがあるんだ~
〇門松は花や野菜と同じく畑で栽培。10cm間隔で植えられている ・・・へぇ 畑でねぇ 野菜のように一面クロマツ畑があるんだ。しかも10㎝間隔とはかなり密集しているんだなぁ
〇3~4年で出荷するためにすべて刈り取る ・・・門松用に使うところのみを切り取るのだと思いましたが、すべて刈り取ってしまうんだ
〇「穂の長さ、葉の密度、葉の色、持った瞬間の『木鋭(きえい)』で、最終的な等級を決めます」という農業生産法人株式会社ミゾグチファームの溝口さん。「木鋭」とは一言でいえば、その木が持つ力強さのことだといいます。・・・若松に25等級以上のにランクがあるそうです!そんなに細かく分けられるものなんだ~
〇「『ミゾグチブランド』として、全国の市場をはじめ、多くの華道家から高い評価を受けています」・・・若松にブランドがあるんだ~
山から切り出しているのかな?などと思っていたのですが、野菜などと同じく若松の栽培農家さんがいらっしゃるのですね
恥ずかしながら、お正月の発見でした。