震災から8年目 海沿いのいま
先週、菜の花に関わっている地元の方と立ち話。
震災直後、5月24日に初めて陸上から名取入りした日からの知り合いです。
「去年10月の台風でマツは水に浸からなかった? こっちは大変でさ~
もともと低地だし。菜の花の種まいた後の大雨で、種が腐ってね。
今年はあまり咲かなかった。ガッカリしてるんだ・・・」
海岸林背後の最寄りに約70haの耕地があります。
震災前は1千棟のビニールハウスで小松菜・青梗菜を約300人の農家が
出荷し、仙台卸売市場の軟弱野菜シェア8割と言われていた場所です。
いまは約300棟、回転している耕地は4割、2法人45人が働いているそうです。
この方は、事実上の耕作放棄地を活用しようと地元を代表して、土地を借り受け、
菜の花を育て、ミツバチを買い、ハチミツを生産しようとしてきました。
「排水機も数と威力が小さい。貞山堀拡幅工事の関係で水が溢れたので見舞金が出たけど。
まったく出ないよりよかった。みんなのために良かれと思って、農地に関わったんだけど、
採算も合わないし、軌道に乗せるのは難しいんだ。東京からは地元が関わっていないと
不満を言われるし、地元は海沿いに目を向けてくれないし」
「引き留めて愚痴ってごめんね」「お互い頑張りましょうね」
海沿いの悩みは似ている・・・
目を転じると、第2次防御ラインの「かさ上げ道路」工事が本格化しています。
名取北高校の海岸林説明会も河北新報で報じられましたが
ここ数日では、宮城県立農業高校の跡地にメガソーラーが完成したこと、
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201804/20180425_13013.html
閖上の震災祈念公園の計画も報じられました。
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201804/20180424_11015.html
公園・メガソーラー・・・
典型的な「創造的復興」パターン。荒野の利用計画はあまりに広大でアイデアに乏しい。
8年目を迎えても一歩ずつしか前進できないのが現実。辛抱は続くでしょう。
農業も海岸林も頑張っていることも、もっとアピールしなければなりませんね。
私も周辺の進捗を正確に抑えて、お伝えしようと思います。
3月末に東京の府中郷土博物館で、スズメバチ誘引液捕殺器の設置を見ました。
でも液体が赤い・・・ 作業してる人になんで赤いのか聞いてみた。
「ワインだよ。一番安いの。色がついてた方がハチもわかるのかなってね」
名取で「ワイン」の評価を聞いてみた。
「みんないろいろやってんだよ」その一言でおしまい。
(この人たちワイン飲まないから関心なし)
「宮城では連休前が最高って言われてる」と統括。
「雨が入らない日陰の場所選べよ!」(承知!)
播種翌日4月27日に8ヵ所設置。内陸防風林も含めて、端から端まで。
狙いは女王バチ。
巣をつくらせないのが目的。元を断つ。
「すんごい効果あるんだぞ。最低でも半径1㎞効くっていうんだ」
(半径2㎞という話も聞いたことがある)
日本酒1升1,800ml、酢250ml、白砂糖500g ÷8
2Lペットボトル8本に入れて、ハチの入口作って。
設置は去年から開始。6月初旬に初めて現場で大きなスズメバチを見て、
即設置。即1匹確保。その後は1匹も入らず。それはそれでよし。
「様子見て、液補充しておけよ!」(たしかに)
これは安全配慮義務だと思っています。真剣です。
いま、じつは育苗場を見るたびに悔しい思いをしています。
2・3年前あたり、僕の折衝に厳しさが不足したからです。
その後も粘り強く挽回するチャンスはあったはず。
昨年播種の苗のほとんどは、名取の現場に行き場がないことがわかりました。
聞いたときはさすがに頭が白くなりました。国復旧の盛土への植栽は今年で終わりますが、
復興予算で買い上げた宅地跡に、新たな盛土造成する県・市の新事業が遅れているからです。
2020年までの最終段階は、思わぬ波風があるだろうと、覚悟してましたが。
仕方ない事情は多分にあります。こういう難しい現象は被災地の至る所にあることでしょう。
使い道は十分あり。どこかの復興の現場で、苗は必ず役立ちます。
ですが、自分の手腕に関して「まあいいじゃないか」と簡単に思えません。
1年前倒しで終わる可能性もあったし、それに勝る低コスト経営はないからです。
この経験は決して忘れないでしょう。
「種を播いて植えるまで2年あるんだからね」
2011年5月以来、前種苗組合長から繰り返し教わりました。
計画性、先を見通す力が必要という意味と、工事設計を信じ過ぎても、
いざという時は自分で被るしかないのだと解釈しました。
平時であれば、種苗農家にとって廃棄処分=収入ナシに相当します。
行き場のない苗を焼却したのが消防にバレて、罰金を取られた人もいると。
「吉田君と会って丸7年だなあ」
種蒔きの朝、そう言ってくださる再生の会メンバーがいました。
2012年3月30日が初めての播種。今回で7回目。これが最後。
あの日は終わってから、再生の会とオイスカで、祝い唄を歌いながら涙しました。
以来蒔いた粒数は、約60万粒。
宮城県産マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ 44,664粒(コンテナ1,861台分)
宮城県産マツノザイセンチュウ抵抗性アカマツ 2,184粒(コンテナ91台分)
今回4月26日に蒔いた数です。1日で終わりました。例年の半分以下ですから。
作業は再生の会16人、松島森林総合3人、オイスカは理事長を含む8人。
5月19日の植樹祭、この時には発芽しているはずです。
だいたい2週間で出るでしょう。本当に楽しみ。
「発芽しなかったら、佐々木、清藤、吉田は切腹」って自分たちで話したこと、
1年目は発芽まで28日かかったこと、残雪の安達太良山を登ってるときに
第一報を聞いたこと、毎春必ず思い出します。
国連生物多様性条約というものがあり、オイスカは条約事務局と
2011年から2020年まで協約を結んでおります。じつは。
名取の海岸林は、仙台森林管理署が2013年―2016年に生物多様性調査を
行っており、データを共有いただいています。海岸林の多様ないきものの様子を
観察できるのは役得。もっとも、調査する知識はありませんが。
2015年現在、盛土とその周辺には、植物樹木337種、昆虫278種、
鳥類43種、哺乳類4種が確認され、種の数は増えています。
(実際はもっと多いそうです)
3・4月の現場は、一見いきものの気配が少ないように見えますが、
そうでもありません。まずフキノトウはたくさん。そしてツクシ。
花はセイヨウタンポポ。菜の花、シロツメグサの花が咲き始めました。
スミレはまだこれから? 今年は1種類しか見つけていません。
2018年植栽地では、クロマツとシロツメグサに混ざってハマボウフウが。
ツルマメはまだぜんぜん。1本だけ発見。出るところではクズが出始めました。
広葉樹の開葉調査は、連休明けに延期。木になってきた。結果は良さそうです。
鳥類で珍しいことは、小柄のアマツバメ。南行は10月上旬。帰ってきたのでしょう。
毎日始終、ヒバリの高鳴き。どうしてあんなに気ぜわしいのか。
地面や防風垣には、ヒバリ、ホオジロ、スズメ、コチドリ、カワラヒワ、ツグミなど。
2018年植栽地はカモの群れ、2014・15年植栽地はキジのつがいを
よく見ることができます。日によってはハヤブサも。尻尾がきれいです。
猛禽類で毎日見るのはトビ。ヒメネズミは相変わらず多いようで、
丸々と肥えた野良猫(増加)とキツネも見ます。タヌキは足跡だけ多数。
5月になると、ヒバリ、コチドリ、キジの産卵の季節。
作業道には産まないでください。
汚してしまってごめんなさい
【募集締切】植樹祭および6月16日(土)ボランティアの日
今年の植樹祭は、これまでの状況から定員を超えると予想して告知してまいりました。
過去4回の募集も、なにより地元名取市内を最優先して広報なとりなどで告知し、
例年通り、海岸林を必要とする地元農家や市民、そして自ら申し込んだ高校生が多数。
先着順とは確かに書いてあるのですが、締切日を前に今年は殺到。
例年同様わずか2haに指導者を入れて500人余りになる現場での安全配慮を重視し、
主催各団体と協議し、定数に達した本日、締め切らせていただくことにしました。
まだ今後数日で申し込みがあると思いますが、ご理解いただければ幸いです。
なお、6月16日(土)の公募ボランティアの日についても、すでに定員に達しましたので
締め切らせていただきました。植樹とは植えて終わりではありません。
当プロジェクトでは、そのことを身をもって理解する人を増やしたいと考えております。
人手がかかる7月以降にお申込みいただければ大変ありがたく思います。
以上、ご期待に添えなかった皆様に心からお詫び申し上げます。
公益財団法人オイスカ 海岸林再生プロジェクト担当部長 吉田俊通
先月のボランティアの日が土木作業でヘトヘトになったことは前にブログでもお伝えしました。
午後に根踏みをしたチームの方が面白いものを発見しました。

分かりますか?近くで撮ると…

落花生です。しかも割れてない。
振ってみるとカラカラと音がします…。
こんなところで落花生?しかも一つだけ??
と、周りにいた女子たちが不思議がっていると…
「そりゃ、カラスが持ってきたんだべぇ」と松島森林総合のSさん。
Sさん曰く、近くの畑の落花生を取ってきたカラスが落としたんだろうとのこと。
なるほどー。と納得の女子たち。
海岸林ではいろいろな面白い発見があります!
皆さんも植栽地に来たときはそこも楽しんでくださいねー
2017年度事業 速報値
事業量最大期に入った昨年度も、当期支出を収入がなんとか上回り、
もちろん、途中の資金ショートもなく、新年度に入ることができました。。
存分に仕事させていただいたこと、心から御礼を申し上げます。
2017年度および、累計データを速報値的に報告します。
●協定締結面積:96.62ha(2019年に約5ha追加協定見通し)
*うち生物多様性配慮ゾーン、作業道、盛土法面、防風垣などを除いた
植栽可能箇所は約70haとなる見込み。
●植栽完了面積:50.39ha、265,522本(今年度約16ha植付計画)
●2017年植栽:13.66ha 71,945本
●2017年播種数:57,000粒
●2017年雇用数:1,435人、累計:6,087人
*育林部門の葛・ニセアカシア駆除対策が見込より多く計画の1.2倍で推移
●2017年ボランティア数:2,096人 累計:7,214人
●2017年活動報告会数・聴講者数:
30回・5,911人 累計:191回・30,687人
●2017年視察者数:231人、累計:3,223人
●2017年国内メディア掲載数:23回、累計:204回
●累計寄附収入:おかげさまで何とか「6億円」に辿り着きました。
なお、昨年は第1回インフラメンテナンス大賞、全国山林種苗品評会「林野庁長官賞」を
受賞することができました。
今回の写真は、めずらしく「会議」をテーマにしてみました。
震災遺構の荒浜小学校
海岸林担当の鈴木です。
宮城に行ったら必ず子ども達に見させたいと思っていたのが震災遺構となっている仙台市立荒浜小学校
校舎の2階、30㎝くらまで津波が押し寄せ、当時は1階に流された車が何台も突き刺さっていました。津波の威力や脅威を伝える震災遺構として、2017年5月から内部が公開されています。
言葉ででしかわかっていない津波の怖さを少しでも肌で感じてくれればと思い連れてきました。
1階部分はガレキはきれいに片付けられているため、展示されていた写真でしか直後の様子を知ることができませんでした。子ども達は写真を見てもやっぱり現実のものとして受け止めていない様子
2階に上がり、「津波がここまで到達しました」というラインがありました。おそらく掃除用具を入れるロッカーなのでしょう、津波で浸かった部分が少し錆びていました。これを見て、少しだけ現実のものとして捉えられたようでした。
上映されていたビデオに見入り、展示されていたジオラマに見入り・・・そして窓の外を眺めるも、そこには何もない土地が広がり、クロマツがぽつぽつと立ち、海が広がっている。
あーここに人々の生活の営みがあったんだなぁ
荒浜地区は古くから漁業で栄えた地区で、この地区の南北は200mの海岸林幅があるのですが、この地区は三方を海岸林に囲まれ、海岸線のすぐ近くまで住宅が建てられていたようです。
ジオラマは「○○の家」と書かれたプレートが付けられており、活き活きとした人々の生活を想像させてくれます。目を窓の外に移すと何もない。この対比が消化しきれない何かを心の中に残しました。
感じること、感じ方は人それぞれだとは思いますが、
津波の威力や脅威を知るために、訪れなければならない場所だと思います。
名取北高校でも説明会をしました。たくさん来てくれそうです。
植樹祭会場周辺のゴミです。日に日に増えています。
先日はベッドマットの多数のバネが捨てられました。
火をつけて何かを燃やした跡もあります。
たばこの吸殻を大量に捨てた人も3人。
寄附者の銘板があっても気にしないことにも悲しくなります。


とくに開会式・閉会式予定地では、あらかじめ拾うか迷いました。
我々は1年中ゴミ拾いしなければならないのか・・・
処分するのお金がかかるような類のものもあります。
でも、敢えて拾わないことにしました。
当日参加者から叱責を受ける可能性も高いですが。
現状を知ってもらおうと決めました。
司会進行は私がしますが、言うべきことはきっぱり言おうと思います。
