「子供の森」計画4ヵ国6名のコーディネーター研修を行いました
吉田です。10月18日~29日、ミャンマー・タイ・インドネシア・マレーシアの6名の、愛知・岐阜・宮城・東京の全研修日程をサポートしました。
オイスカ職員・海外スタッフにとって「子供の森」計画とは、海外の若手・中堅世代を鍛える格好の場と考えています。私自身にとっても、海外の学校での数々の経験の延長線に、海岸林再生プロジェクトがあると思っています。
振り返れば、私の1994年からの新人時代は、海外出張に行く人や、海外に関わっている人を羨望の目で見る、地方出張もまったくなく、専ら首都圏域の会員担当・資金獲得担当の営業マンでした。ですが、まれにチャンスも転がってきて、一期一会と思いながら学んで、今がある気がします。それから30年近く経ち、定年も視野に入り、強い意欲のある若い世代に機会を提供したいと強く思ってきました。海岸林が始まって以来14年半、現場に多くの職員・関係者を招きました。我々が5年・10年かけて覚えたことを、半分以下の時間で教え、進化を促すのが先輩の役目と考えています。
私にとっての森林保全・再生との大きな出会いは、海外のスリランカ・フィリピン・タイが国内の森よりわずかに先でした。「子供の森」計画の実施校を数十校訪ねる機会があり、この職場で仕事を続ける強い感動、そして意欲が生まれました。実際に自分で直接責任を持つ点では、東京・神奈川3校の学校林保全活動などが大きな転機でした。いずれも数haの小さな森の整備でしたが、知識・技術もさることながら、社会の仕組みや制度、児童・教員・保護者・地域住民・行政・専門家・現場従事者との関わり方、それぞれの現場に合わせたチーム(学校林保全活用委員会)の構築など、海外の「子供の森」計画を参考に応用しました。そもそも、何のための学校林整備なのか、関係する方々と、何年も繰り返し話し合いました。そういう私自身の背景からも、「子供の森」計画の小さな森の再生・保全を数多く実践することで、森林再生・地域開発現場の「基本」が身に着くと考えています。
アブラ州ムディ小学校(撮影2024年吉田)
27年前に初訪問した
「子供の森」計画
劣悪な土壌ながら大きな学校林・集落共有林化
今回の研修では3つの目標をもってサポートに臨みました。
① なぜ、何のために、その森に何を期待して木を植えるのか。そのためにどう植えるのか?森林が成立するまで、何をどうすべきか?まず第一に、目的や将来デザインを、そして、計画を考え抜くことが一番重要ということを伝えたかった。(あえて言えば、報告責任の徹底遂行や広報啓発、資金獲得などの講義は、今回はできなかった)
② コロナ禍で薄れた各国同士、現場最前線の若い世代同士の絆を、復活させたかった。各国同士が関係と関心を持ち、お互いを励みにする起爆剤にしたかった。
③ 最前線のコーディネーターから直接、現場の実情や、関わる人たちのムード・意欲など生の情報を得たかった。
生長モニタリング調査
結果、昨年5月のタイ南部のマングローブ再生プロジェクト漁村住民研修と並ぶ会心の出来。十分な手応えがありました。とくに最もうれしかったことは、戦乱下のミャンマースタッフの代表1人が8年ぶりの訪日を果たせたこと。また、2003年に私も間接的に関わって整備した、オイスカ中部日本研修センター近くの豊田市立上鷹見小学校の学校林(ビオトープと隣接)が、20年以上授業で使われ続け、貴重な草花の保護地になっていたことを知りました。まさか、自分たちの研修先になるとは・・・
右上(山の下)がビオトープ
後日、研修概要報告はHPに掲載されると思います。
愛知県支部、岐阜県支部、宮城県支部の会員・ボランティア、そして多くの協力者のおかげで、無事研修を終えました。あらためて御礼申し上げます。自分の故郷で「子供の森」計画に関わりたいと言ってくれるオイスカの研修生・技能実習生が増えるよう、微力ながら頑張りたいです。
【研修先一覧】
愛知:オイスカ中部日本研修センター(エコプリント製作、農作業、竹炭・落ち葉堆肥圃場視察、間伐作業・森の健康診断体験・タイ北部森林再生プロジェクトオンライン報告会視聴、会員等との交流会)、愛知万博会場跡森の学び舎、トヨタの森、上高湿地(ラムサール条約保護地)、上鷹見小学校学校林・ビオトープ、中金小学校・五ヶ丘東小学校ビオトープ、明治用水頭首工(日本土木遺産)、鳥居種苗店、スーパーやまのぶ、JA松平直売所(以上豊田市)、萩御殿治山工事跡(後世に伝えるべき治山60選・瀬戸市)
岐阜:岐阜県森林アカデミー内学習センター(美濃市)、木遊館(今年、天皇皇后両陛下視察)、鵜飼ミュージアム(日本農業遺産)、岐阜城風致保安林・長良川霞堤群(以上岐阜市)、岐阜県支部小川会長と意見交換、活動報告会(岐阜県支部主催・大垣市)
宮城:旧中浜小学校(震災遺構)、海岸浸食対策養浜工事「ヘッドランド」(以上山元町)、公共工事海岸防災林(岩沼市)、オイスカ海岸防災林(現場踏査・生長モニタリング調査・サイクリング・ボランティアとの交流)、海岸林後背地サツマイモ畑、国重要文化財洞口家住宅の「居久根」(屋敷防風林)、仙台空港北側内陸防風林、樹齢350年以上のあんどん松、スーパー食彩館リサイクルステーション、名取市震災伝承館、震災慰霊碑、ゆりあげ朝市(以上名取市)仙台市内街路樹、宮城県支部亀井会長表敬(仙台市)