吉田です。今年3月以降、マツ枯れを思わぬ日は、ただの一日もありませんでした。とうとう「決して逃げられない敵」が、オイスカが管理する内陸防風林に侵入しました。2015年植栽の宮城県産マツノザイセンチュウ抵抗クロマツです。すでに名取市内のオイスカ管理地外も侵されています。9月以降、予想通り海岸林まで被害が拡大し、11月1・2日の独自調査で市内沿岸部で188本を確認しました。うちオイスカ協定外が65%です。名取の数㎞南から先はとうに激害地。名取でも、そのはじめの一歩が始まったとの認識です。
3月19日、ラーメン「ねぎっ子」に行く途中、空港敷地内北側と、それと接する内陸防風林のが金色に変わったことを確認しました。いわゆる「越冬枯れ」と疑いました。4月2日、マツノマダラカミキリが脱出するまでの対応を願って、地元会員企業に仲立ち・同席いただいて空港職員の方々に説明しました。同時進行で、市役所にも所轄の宮城中央森林組合から申し出ていただきました。もちろん、県にも国にも状況説明・対応を繰り返しお願いしてあります。そのなかで、「越冬枯れ」すら知られていない現実にショックを受けました。
「被害は広がる」と思い、記録を続けています。9月上旬以降は、毎週のように東京名取を往復しましたが、そのたびに被害木が増えました。本当にありがたいことに、ボランティアリピーターも異変に気付いて場所を教えてくれました。近隣の県の悲惨な状況を知らせてくれる方もいました。すでに我々には、枯れ木を見て「我がこと」として報告してくれる「監視員」がいます!
この病気の対応は、油断が禁物。「この程度でいいだろう」とか、そういうのが一番ダメなんです。森林・林業の大家、東大名誉教授の太田猛彦先生は、この病気を「エボラ出血熱」に例えたことがあります。根絶は極めて困難なのです。ですが、施業技術は確立されています。覚悟を決めて、なすべき時までに、確実に、徹底的に対処して、微害に抑えている事例はあります。9月上旬、森林組合の方たちから今春の「越冬枯れダメ施業例」を聞きました。単なる勉強不足で、恐ろしさを知らないのでしょう。もし江戸時代にこの病があったなら、「予算がない」といういつもの言い訳は通用しませんから、本当に切腹です。
10月4日の全国育樹祭「育林交流集会」シンポジウムの朝、空港東の残存林南端にまた新たなマツ枯れを見つけてしまい、非常に悔しい気持ちでリハーサルに向かいました。プレゼンを前に暗澹たる思いでした。私も10年か20年に1回ぐらいは落ち込むこともあります。さらにシンポジウム会場では、「吉田君は松枯れにはならないって言ったじゃん!」と言う方がいました。世間では「マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ=枯れない」と思われているんです。自分の名誉のために書きますが、そんなことは、一度も言ったことはありません。それよりむしろ、14年を超える道のりの、27,000人への労いの一言もなく。空しかった・・・。あらためて、プロジェクトを取り巻く現実社会を再認識する日となりました。
全国育樹祭を終えて帰京した晩、大勢の人から松くい被害を責められる「夢」を見ました。昔、クロマツばかり植えることをなじられる夢も見たし、現実にもありました。オイスカが責められるのはいくらなんでも見当違いです(笑) でも事実、そういう人も出てくるでしょう。冷やかしや粗探しもあるでしょう。それでもあの頃のように辛抱します。
すでに我々は、徹底的に戦う決意を固めています。ですが、「オイスカはお金があるから彼らにさせておけばいい」という本音を垣間見ることもあると、佐々木統括ともども感じています。事と次第では、「オイスカ側の資金が底をつき、名取で頑張れる寿命が短くなる」シュミレーションの現実化も感じています。お金がかかるのは松枯れだけではありません。2027年度からは樹高10mを越えている本数調整伐2巡目も始めねばならないかもしれませんし。
本当に長い闘いが始まりますが、名取だけじゃダメなのです。県内各市町と地元関係先の連携、行政の徹底対応が何より肝要と思っています。名取ではとくにリピーターの方対象に、この冬・春に現地視察や勉強会をしたいと思っています。11月13日、懇意にさせていただいている当代一流の専門家の方にもご指導いただきました。お世話になりながら、松くい虫病防除のモデルを目指します。私はこれまで15年間、全国各地の激甚被害地、徹底防除先進地をいくつも訪ねました。この文章も、「過去最大の松枯れ被害」と報道されている宮崎県の「一ッ葉海岸」(「シーガイヤ・リゾート」で知られる)で書いています。この数年、伐採が追い付かない年が続き、被害が拡大したようです。12月には松枯れ防除実践講習会in宮崎(全国から100人余り参加。私は参加2回目)も受講しました。
新年を前に、徹底抗戦宣言をします。

2015年植栽「内陸防風林」の枯損確認







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三浦さんが発見






「フラス」(糞と木くず)
罹患を確信



