2024年度を振り返って

2025年3月31日( カテゴリー: 現場レポート )

 吉田です。2024年度も年間を通じて無事故で終わることができ、ほっとしています。時々思うのですが、自分の気力を維持できているのは、震災から14年も経っているにも関わらず現場に来てくださる多くの皆さんの存在、励ましがあってのこと。狙って展開したとはいえ、さすがにこれほど多くのボランティアに恵まれ続けるとは思いませんでした。今年度は1,223人(14年間累計のべ15,247人/8時間従事)でした。皆さん、本当にありがとうございます。

 本数調整伐に着手して4年目。今期の16.25ha(2018年度植栽)は無事完了しました。プロ220人・14.15ha(一人あたり106本/日)、ボランティア136人・2.1ha(事前準備含む・一人あたり30本/日)という勘定です。5月末まではあまり名取出張しない方向なので、完了を見届けに歩きました。

 これで名取市海岸林の90%は、1回目の間伐を終えたことになります。全体の成長ぶりと間伐ペースは、被災地全体において圧倒的なスピードと自負しています。順調な成長の理由は、徹底した管理にあると思います。名取市海岸林の北半分の溝切(排水)を8年がかりで終え、植栽直後からニセアカシアの繁茂をほぼ抑えきり、徹底して葛と戦い続け、そして、間伐を迅速に進めているからです。それらの甲斐あって、クロマツの根、枝葉、幹の成長のみならず、林床の乾燥(多湿化を防ぐ)にもつながっていると思います。

 葛との闘いも存分に展開しました。プロも、ボランティア(葛刈りに950人)も、稲刈り鎌と除草剤を持って、四つん這いで格闘する「オイスカ方式」で。多くの人にお世話になって、ほんとうに幸せな松たちだと思います。森林にも「幸福度指数」という評価方法が欲しいなと思います。

 ですが、マイナス点がつくとすれば、残念ながら地元市民、県民からの認知度が非常に低いことと思います。ゴミ拾いをする人が増えたのは嬉しいですが、それでも頻繁に捨てられます。その都度とても悔しい思いをしつつ、まだ我々の誠意が足らないからと思うようにしています。愛される森に辿り着くのは至難の道だと思います。来年は全国育樹祭が宮城で開催されます。海岸林の理解者をを増やす大事な機会と思っています。

 避けようがない本物の危機も迫っています。東京との往復の際など、県外も含め、他市町の海岸林も見に行きましたが、しかるべき筋から「植栽クロマツにマツクイムシ病が発生している」と聞きました。太田猛彦先生(東大名誉教授・オイスカ顧問)はこの危機のことを「エボラ出血熱と同じ」といつも例えます。しかし、防除方法は確立されています。秋田の夕日の松原、風の松原、佐賀の虹の松原など、極めて最小限に食い止めている現場に倣って、行政当局との連携をしっかり行いたいと思います。すでに2024年度、名取海岸林では、松葉を食べ尽くす毛虫「マツカレハ」が異常発生し、自己資金でラジコンヘリ2台で薬剤駆除を行いました。23haを4時間で、自己負担で200万円もかかりました。マツクイムシ対策の予行練習というイメージでしたが、マツクイの場合はさらに費用が掛かります。

 いまはまだ、震災から14年が経過しただけです。道のりは長く、まだ何も成し遂げたわけではありません。ですが、本当に多くの方たちが名取に来てくれます。その方たちの期待を裏切らない様に頑張ります。明日は、2025年度の事業の見通しを書きます。

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