広葉樹植栽から6年目のいま(開葉確認の調査結果)
2020年7月11日( カテゴリー: 広葉樹 )
東京大学名誉教授の太田猛彦先生が「山林」6月号(大日本山林会)に「平成時代における治山事業の変遷」と題して執筆されました。平成30年間の治山事業を総括した形ですが、治山など森林の権威の太田先生が矢面に立った「3つの小さなバトル」として、①海岸防災林の再生と植栽樹種問題、②三保の松原など全国におけるマツノザイセンチュウ対策、③先日の豪雨で大災害となった球磨川の上流、「川辺川ダム」建設をはじめとする「緑のダム」機能に関する論争について書かれていました。当プロジェクトは①に関するクロマツvs広葉樹論争に否が応でも巻き込まれました。震災後3か月ぐらいから約3年にわたり、全国の市民からご意見や質問、あらゆる要望、希望、申し出を受ける立場にあったという点で、最前線に立っていました。事実は、小林省太さんの「よみがえれ!海岸林」(8月発行のvol.12)に譲るとして、今年は震災から10年目。広葉樹植栽から6年目。現場での結果を総括する時期だと思っています。
「あんな海沿いで広葉樹を植えても無駄」「吉田君の趣味」と地元農家の名取市海岸林再生の会のみなさんから「しづられ」(からかわれ)ました。育苗場では散水もしてもらえない時がありました(笑) 植栽後、プロに追肥を頼んだら、わざと??忘れられたこともありました。私たちは「蔵王おろし」の寒風、寒風が吹く荒野のど真ん中、しかも海沿いで、広葉樹がダメなのは最初から分かっていました。しかし、新聞でよく取り上げられるほどの「論争」の渦中にいましたから、どのぐらいダメなのか、検証したいと考えました。ほかにも挑戦した理由はいくつかありますが、かつてのブログに縷々記していますので割愛します。
2014年5月の1回目植栽で、「1年後生存率17%。2014年~16年の間で補植3回!!」(笑)。成立本数はクロマツ36万本に対し、広葉樹10種671本。これまでの成果として、当地では、クロマツは春植えがリスクが少ないのに対し、広葉樹は秋植えが適していることが分かりました。ただし、バーク堆肥や液肥、吸水ポリマーなどを混ぜた、1本あたり4ℓ以上の土を用いる大変重たい「泥付き苗」を使いました。普通の植栽とは大違い。ほぼ、土木作業。
7月4・5日、ボランティアの皆さんとともに、毎年恒例の下刈・追肥と、「開葉確認毎木調査」をしました。
調査結果は・・・
植栽本数671本、生育本数574本(生存率約86%)
【内訳】
名取1・2区(国有林):植栽本数470本、生育本数385本(生存率約82%)*半分は山砂ゾーン
名取9区(市有林):植栽本数201本 生育本数189本(生存率約94%) *山砂は皆無、粘土が多いゾーン
一向に大きくなりませんが、数字上の見た目は、なんとか維持していると言えますでしょうか?
防風垣を超えるほど大きくなると、今度は本当に吹き曝しになり、先端枯れを起こしやすくなるかもしれません。
これまでの広葉樹の経緯はコチラ
後日、写真に特化して何度か報告します。
いまもなお、「広葉樹に関心はない」「ムダ」と身内から言われることもありますが、広葉樹を悪者扱いしているわけでないことも知っています。でも、育苗2年、植えてからさらに6年、十分頑張りました。もし今年の追肥が効かなかったら、これで肥料は最後にするかもしれません。