砂漠化が進む中国の内モンゴル阿拉善沙漠生態研究研修センター(以下、センター)では、草を根こそぎ食むヤギやヒツジといった家畜に代わるものとして、ダチョウの仲間であるエミューの放牧や平飼いの養鶏に挑戦しています。4月からは新たに味の素㈱の支援を得て、マスコビーダックの飼育・普及への取り組みがスタートしました。
センターでの試験飼育では零下20度にもなる厳しい冬の環境を乗り越えるなど、強い生命力を持つことが明らかになりました。放し飼いであるため飼料購入コストも最小限に抑えられ、鳥インフルエンザなどの病気にも強く、また北京ダックを代表する中華食材としても潜在的な需要が高いなど、さまざまなメリットがあります。
阿拉善周辺の砂漠を流れる地下水はフッ素を多く含みます。フッ素はカルシウムと結合すると骨に異常をきたすため、地域に住むモンゴル族の中高年の多くが骨粗しょう症や関節炎を患うなど深刻な健康被害が発生しています。その点においても、マスコビーダックは解決への糸口を導く可能性を秘めています。肉はカルシウムの吸収を高め骨を丈夫にする働きを持つビタミンDやコラーゲンを豊富に含み、また卵は酢卵にして用いればカルシウムの補給にも役立ちます。砂漠化防止の一端を担うだけでなく、住民の健康増進・疾病改善にも貢献するものとして大きな期待が寄せられています。