6月25日、横浜港に面したホテルの一室で、オイスカ・インターナショナルの中野良子総裁が、来日中だったチベット民族の国家的、精神的指導者として知られるダライ・ラマ14世と会見しました。
1967年4月、中野與之助初代総裁が当時のインディラ・ガンジー首相とインドの首都・ニューデリーで会見した折に、ダラムサーラにいる法王を訪問したい旨を申し出たところ、ガンジー首相から最寄り駅まで臨時列車が提供されました。当時は治安維持のため、インド陸軍が法王の周囲を警護しており、インドの一般国民はもとより、外国人が自由に近づくことはできなかったのですが、ガンジー首相の配慮により、初代総裁と法王の初めての会見が実現しました。また、随行していた中野良子現総裁が法王に面識を得たのもこの時です。以後、中野良子総裁と法王はインドや日本で幾度も顔を合わせてきました。
チベット民族が自立を維持するためには農産物の生産を通した食糧自給が不可欠であり、男女を問わず、青年の人材育成が欠かせないという考えから、当時の会見での合意事項の一つが、インド、ネパール、ブータンに住むチベット民族の日本での農業技術研修でした。最初の数年間は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が仲介していましたが、その後はオイスカが直接研修生を受け入れ、今日まで続いています。今回の会見でも、オイスカの行う人材育成やチベット人研修生の話題が多くあがりました。
法王ご自身も、祖国・チベットを知らないインドやネパール、ブータン生まれのチベット民族の青年たちへのチベット文化や伝統、言葉の伝授などに力を注いでいます。
また、ノーベル平和賞を受賞している法王は、近年特に顕著なチベット内部でのいろいろな変化に対する内面の苦悩を微塵も感じさせず、平和の使者として世界を駆け巡っています。
さらに、世界各国の科学者たちとの対話も積極的に進めています。法王は、仏教には科学、哲学、宗教の3つの側面があると述べ、科学を極めた学者は政治やイデオロギーを超越しているため、ロシア人でも米国人でも分け隔てなく対話が進む、という体験談を中野良子総裁に披歴しました。
67年4月会見時のダラムサーラでの2枚の写真を中野良子総裁が手渡すと、法王は懐かしそうに目を通していました。そして、法王からは、中野良子総裁にインドの果物が入った金色の器が贈られました。
30分間という短い会見ではありましたが、再会を喜ぶとともに、法王に創立50周年を目前にした最近のオイスカの活動について説明する貴重な機会になりました。