今年1月より、日本NGO連携無償資金協力によってスタートした「ネグロスシルク事業を基盤とする養蚕普及全国展開支援事業」。その一環として、6月6〜12 日、フィリピン政府蚕糸関係機関の代表者9名が来日し、日本の蚕糸業の歴史的背景や実態から、知識や技術を学ぶ研修に参加しました。
参加者は、本事業実施対象地であるルソン島ベンケット州、 パナイ島アクラン州、ミンダナオ島ミサミス州などにおけるシルク産業の管轄、推進の中心的役割を担っており、今回の研修により、同国の養蚕普及や蚕糸業のさらなる発展が期待されます。
研修では、日本国内の蚕糸業の研究開発を担う(一社)大日本蚕糸会の協力のもと、新蚕品種および繭から生糸を引くまでの研究開発の現場を視察。各部署の専門家から講義を受けました。特に蚕の防疫は、フィリピンでも最も関心のある分野であることから、参加者の矢継ぎ早な質問に、一時説明が中断するほどの熱気に包まれる場面も見られました。一方、シルク新素材の研究開発のために導入された、日本の最先端技術を駆使した生糸検査機械にも強い関心が寄せられ、その高い性能に驚きの声が上がりました。
また、国内でも数少ない山梨県の大規模養蚕農家を訪れた際には、蚕が順調に育つための良好な飼育状況や、蚕が繭をつくる上で重要な上蔟の様子を、時期、繭の品質ともに最良の状態で視察することができました。また、フィリピンの養蚕事業に詳しい養蚕家から、飼育管理における農家の留意点について詳細な説明がなされるなど、有益な訪問となりました。加えて、長野県の桑園では、養蚕に欠かせない桑の育て方について、 長年世界の養蚕開発に携わってきた専門家の指導を仰ぎました。
各所への視察のほかにも、ネグロス養蚕事業への協力に厚いオイスカ長野県支部関係者との意見交換を行うなど、参加者にとって実りの多い研修となりました。
※蚕が十分発育して体が透き通った時、繭をつくらせるために蔟(まぶし)に入れること