吉田です。おかげさまで、非常に多くの葛刈り経験者に恵まれ、声掛け・アドバイスのおかげでケガもなく順調ではあります。ですが、現場でも繰り返し説明していることを、あらためて確認したいと思います。

 そもそも、なぜ葛刈りをするのか?

 およそ草刈り、つる切り、除伐対象となる草木というもの、すべてが悪いわけではありません。葛も葛餅、葛根湯で知られているように有用でもあります。しかし、造林の世界から見れば、「Green Monster」、「葛は1回出ると7年駆除できない」というほど厄介です。1年生ではなく、とても強い生命力で生き続け、その場所を占拠し、マツの生長点から日光を奪って、生長を阻害し、最終的には枯死させます。ですから断固戦わねばなりません。また、繁茂した場所は、風雨を避けるようにスズメバチなどが巣をつくることもあります。それでは、本題に入ります。箇条書きにしてみました。

①安全面

軍手、長袖・長ズボン、十分な飲み物必携。毛虫もハチもいます。避けられません。松脂がつくことも覚悟ください。

松葉が目に刺さらない様に!これが一番あり得ます。保護メガネの側面から松葉が入ってくる時があります。作業中も、移動の歩行の際も、互いに近づきすぎぬ様に!移動中は、前の人が振り払った枝が目に飛んでくる時があります。作業中は、ターゲットを見すぎて、目の前、目の横に松の葉が迫っていることもあります。

足場が悪い場所もあります。マツとマツの間にも段差がある場所も。捻挫しない様に。

防風垣は風化して、折れる時があります。2・30mごとに防風垣を越えずに通過できる場所もあります。移動中、休憩時など、防風垣を越える場合は、ボルトの上を進んでください。手足を使って、体重が分散するように。ボルトとボルトの真ん中に体重が集中しない様に。

・「マツカレハ」の毛虫を殺虫剤で殺す場合、風下に人がいないことを確認し、風上から使用のこと。ドクガ類がいたら、周りに声をかけ、(殺虫剤をかけるなら風上から)早々に立ち去る。

アシナガバチが飛んでいないか注意のこと。たびたび目に入る場合、周りに声掛けを。巣が近くにあり。目の高さから下、とくに地面から数10㎝の高さに、松ぼっくりに似た大きさの巣をつくります。巣を見つけたら、即、周りに声をかけ、殺虫剤を風上から一吹きかけること。

②技術面

葛の根元を探す仕事ですから、作業の基本姿勢は四つん這い。

土ごと切るように鎌の刃を入れるのがコツ(地上部を切るのでなく、土ごと根を狙う)

・根はゆく先々で着地し、分枝します。着地した場所を辿り、途中で止めてしまわず、周囲の方と声を掛け合い協力して、延々と追及してください。刈り残しがないよう、鎌の先で落葉の下の土の表面を探すのがコツ。葛の根があれば手ごたえがあります。

・葛の根の切断面が1㎝前後の太さがあれば、例えば十字状など傷を多く付け、除草剤の浸透面が増えるように。太い根が露出したら、切断面のみならず、皮を削ぎ傷も入れて除草剤を塗布。ただし、除草剤は一吹きで十分(かけすぎ禁物)。

・原則、除草剤は葛刈り経験者が使用のこと。その際、風下に人がいないのを確認して塗布すること。

・刈った葛は、葛がないことを確認してから山積みに。葛がある場所に積めば、元も子もありません。

・マツに絡んだ葛は、根元が切断されているなら自然に(1・2時間後には萎れ始めます)枯れますので、原則構うことはありません。

③作業後

・休憩時などに、肌の露出部分を流水で洗い流すのが最も良いと思います。多少のプツプツが腕などに出て少しだけ痒いときもあります。それは、草に肌が負けたか、松葉が刺さっただけということも多いです。毛虫の場合は、数時間前後から激しい痒みが生じます。

・毛虫は風で毒毛針を飛ばします。痒みが出た場合は、薬局で相談するか、皮膚科の診察を。「PVA配合」と書かれた薬が良いようです。

左:ドクガ類(1~2cm)黒色基調にオレンジ色でとても目立つ。マツ以外の低木に多くいます。とくに毒毛針を風で飛ばします。刺されるとしばらく(1~3週間)痒みが止まりません。

右:マツカレハ(5cm以上)マツの幹・葉にいる。

名取市海岸林にいる代表的なハチ「フタモンアシナガバチ」。巣は(風雨を避けるためか)下のほうの枝につくることが多い。傾向として林縁部で見かけることが多い。6月頃の巣はとても小さい。

 吉田です。今日は、JR連合荻山会長以下15名、仙台トヨペット18名、第一三共16名、宮城倫理法人会40名、労済労連3名など合計101名で、昨日にUAゼンセンさんの葛刈りの続きを。彼らの毛虫チェックが済んでいて安心して作業できました。ひたすら一日。大人数で臨んだだけあって、昨日の午後の点検(100m)を含めると500m×40mをやり遂げました。ボランティア担当ゾーンは順調に進んでいます。

 ほぼ毛虫はいないと思っていたのですが、やはり「痒い!」という悲鳴も聞こえてきました・・・いないと思っていてもいるんですね。

 今日は写真中心で。

 吉田です。野鳥の種類も一番多く、生物多様性を一番感じる季節です。ですが、局地的ながら、今年も毛虫大発生のこの頃。朝、育苗場で苗木の説明をしていたら、ここにも「マツカレハ」が。昼休みに何人かが協力してくれて10匹以上退治。松の葉をものの見事に食べてしまいます。(新芽は好まないようです)。見つけたら殺虫剤で即退治するよう佐々木統括からも指示されています。去年ほどでないですが、今年もたくさんいます。ドクガに比べ、毛を飛ばす悪さはしないと見ています。

 参加者の皆さんには、バス車中でもこのブログを見てもらい、どんな毛虫なのか写真で確認してもらいました。下の写真が一番問題の「ドクガ」類。どうも、風で毛を飛ばすようです。触れてないのに痒くなる。(薬局では「PVA配合」の薬が良いとアドバイスされました)

 午前中は、名取市サイクルセンター南西で、毛虫探しとゴミ拾い。まったくいないのを再確認したので葛刈りを。ゴミはここだけで可燃ごみ19袋分を回収。冬の間に広浦から風で飛んできたものなどが多かったです。

 午後は、今年のボランティアの主戦場、海岸林北半分の広浦沿いへ。まずは、今後のご皆さんのために、500m×40mを横一列になって歩きながら毛虫探しを。結果、ここにはほぼいないことが分かったので、葛刈り開始。200m×幅40m(0.8ha)を終わらせました。続きは明日の100人が。

 夕方は、空港真東でゴミ拾い。先週と合わせると可燃ごみだけで40袋分を回収できました。

 吉田です。出典は森林文化協会HPの「森林環境2016」。森林総研の中村克典様が書かれたものですが、見逃していました。中村様は「マツ材線虫病」研究の第一人者として森林の世界では非常に有名な方で、私にとってもなんとなく、なぜか節目節目でお目にかかるチャンスがあり、いつも記憶に残るアドバイスやコメントをいただいています。

 お人柄そのまま、広く市民に語り掛けている文章と感じました。読んでから、現場に来てくれる人が多いことを願っています。

 https://www.shinrinbunka.com/wp-content/uploads/2016/07/e34accd12f2ee06a4badd3190dd76f1e.pdf

 吉田です。ボランティアの開幕戦でした。ボランティア受け入れも3ヵ月ぶりなので、私もドキドキしてました。コロナ禍を経て仙台トヨペット若手社員ボランティアが復活。同社からは毎月ご寄付も続けていただいています。今年はこの数年参加できなかった方たちがまとめて参加。毎回15人来てくれますので、我々の課題の地元・20歳前後の参加数が増えることになるでしょう。開幕戦ですから佐藤社長も参加。IBEXエアラインズさんも、新しい仙台事業所長の櫻庭常務以下8名。参加者50名の内訳は、若い人が多く、地元が多い。宮城県内在住在勤43名(他は東北2名・南関東3名・大阪1名)。男性41名・女性9名。若い世代(22歳以下ぐらい)16名。

 まずは、昨日お伝えした毛虫がいなかった海岸林最北端の閖上3.4haへ。ゴミ拾い含めて一気にやっつけようと。午前中では終わりませんでしたし、やり残しが目立ったため、午後はリピーターズが引き続き。昨年11月以来のゴミは、可燃12袋・不燃1袋+炊飯器・持ち運び用ペットケース。漁港駐車場から冬の蔵王おろしに飛ばされたものが、クロマツ林内に散乱していました。

 午後は、初参加者中心に2014年以来葛の繁茂が収まらない海岸林中央部の西側国有林へ。前日の国有林の北半分は毛虫が局所的に大量発生。数は少ないと考えた南方面から攻めました。やはり、手本となるリピーターと別れて仕事になってしまったので、指導が行き届かず、やっぱり必要ない草を刈っている人も・・・15時ごろから合流できてホッとしました。ここは去年まで、プロが担当するゾーンでした。彼らが見落とすほど、マツと見間違えるほどの太さの葛もIBEXの栗原さんが発見。

 ですが、ここにも毛虫がチョコチョコいたようで、昨日のブログのとおり、ひどい目にあいました・・・(ぜひご一読を)海岸林西側は、波打ち際から遠く、塩分微粒子が少なくなっているので、いい意味でも悪い意味でも、生物多様性です。夏になる前に早く一撃を与えたい場所だったのですが。誤算でした。前日踏査で、いない場所で仕事をすることが何より重要と反省しています。

 今朝、岩手在住の佐々木さんからメールをいただきました。ウエットティッシュ、とても良いと思います。「毛虫の被害状況は、切り傷や擦傷に近いように感じました。切り傷用の消毒液やウェットティッシュ、水を入れる容器を用意し、次回持っていこうと思っています。また、私の被害箇所(原因は不明)は、二の腕・首筋・脹脛・脛でしたので、いつもの作業着に、もう一枚(サポーター等)追加しようかと思っています」

 毛虫のせいで、とんだ開幕戦になってしまいましたが、今期も頑張ります。皆さんありがとうございました。

 吉田です。5月25日の公募ボランティア日、私を含め、51人中15人が毛虫にやられました。前日に実踏した際、大量発生ながら局地的と確認しました。当日アナウンスでも注意喚起しましたが、作業場所の選択が甘かった。より念入りな前日実踏と、作業場所選びをする必要があります。長年森林の仕事をしていますが、こんな目にあったことはなく・・・とは言っても猛反省です。

 その毛虫の正体は、「モンシロドクガ・ゴマフリドクガ・キドクガ」。マツではなく、その他の草木を食する類です。去年、局地的大量発生した「マツカレハ」と比べ物にならないほど、毒毛針を飛散させると見ています。作業後に水で洗うのも有効と医者に言われました。まずは長袖、そして近寄らないことですね。蚊に刺された時のような「ム○」ぐらいじゃ効きません。

 https://www.imokatsu.com/imo-monshirodokuga.htm

 https://www.imokatsu.com/imo-gomafuridokuga.htm

 https://www.imokatsu.com/imo-kidokuga.htm

 以下、その2日後、参加者の皆さんに毛虫に刺されていないか確認したところ、地元ボランティア三浦さん(日本野鳥の会所属。ブログにも野鳥調査記録を書いてくれています)からいただいた返信です。

「現在 首と脇に強い痒みがあります。昨日の作業では、私は毛虫がいなかった海岸林最北端メインだったので、痒みが毛虫が原因かは不明です。吉田さん同様、海岸林中央部西側付近で作業した他の方々に症状が出ていないか気になりました。今日5/27に探鳥した時、そこは普通に歩くと踏んでしまうくらいいました。そこより南はたまにいるくらいでした。松の中は未確認です。こんなにいて何を食べているのか気になり食痕を探したところ、葛、ドクウツギにたくさんくっついて目立つ食痕がありましたが、数の多さと、毛虫がいた範囲から近くにある植物を手あたり次第食べてると思いました。さらに正体が何か気になり帰って調べた結果、正体は『ドクガ』。危険。毒針毛をもち、刺さると痛みと痒みがあり、皮膚炎を起こすこともある。発生時期が6ー9月とありました。まだ続く可能性があります。空気中に舞っているかもしれない毒針毛が心配になりました」

 私の場合、最初の数日は全身が痒かったです。息子から「喧嘩したの?」と言われるほど顔も腫れ。医者にも行きましたが、花粉症の薬を飲んでるなら抗ヒスタミン剤入りの薬は出せない。市販薬でもいい」と言われました。この日から10日も経っているのにまだ痒い。外回りを一緒にした浅野さんから「搔くから治らないんですよ!」と言われ(笑) ちなみに、作業着は自宅の洗濯機で洗いました。家族に痒くないか聞きましたが、大丈夫と・・・家からつまみ出されずに済んでます。

 クロマツの生長とともに、年々、生物多様性を実感しています。その一方、増えてほしくないものも増えるはずです。2020年はマツカレハの初発生。2021年はネズミの食害と植えて2年目の苗木へのアカシンクイムシ、2023年は年々増えてきたアシナガバチと、マツカレハの毛虫が大発生、そして今年は初大発生のドクガの毛虫、大面積ではないけどマツカレハもいます。スズメバチ対策はしていますが、海岸林2㎞先には巣がありました。マムシはまだ宮城の海岸林付近では発見されてません。マダニもまだ被害は受けていません。ですが、好ましくないものがいないという保証はありません。プロからの情報、複数の目での「実踏」、そして来訪者への注意喚起・・・引き締めてかからねばなりません。

 

2023年度の葛刈りの結果

2024年6月2日( カテゴリー: 現場レポート )

 吉田です。5月24日(金)朝、東京都立大大学院の梶原君が月例調査で来仙。彼を調査現場に送り届けたあと、せっせと明日の公募ボランティアの準備。午後は、大槻さんと前宮城県支部副会長の矢萩さん(元東北電力副社長・前ユアテック顧問)が「助っ人」。大ベテランふたりと2か月ぶりの現場実踏です。

 2023年度の葛刈りの結果、全体像を確認しました。やっぱり最短でも1年後ですね。結果が出るのは。ボランティアで手掛けたいくつもの場所も、結果はまちまちですが、少なくとも落第という場所はどこもなく、安心しました。

 胸を張れる成果は、去年のボランティアの主戦場、名取市海岸林最北端(閖上港東)3.4haの区画でした。去年はほぼ半分に侵入され、6月上旬~9月末、正味3ヵ月集中しきった場所。去年葛刈りをした890人の多くがここでも頑張ってくれました。会心の出来でした!明日のボランティア1日で終わると思いました。事実、50人半日で1回目の葛刈り終了しました。(ここでアシナガバチに刺された人も私含めて数人。)葛がなくなって、閖上漁港と釣り客がたくさん来る駐車場からのゴミが、冬の西風に飛ばされクロマツ林内に散乱してました。これも明日の仕事。(葛刈りと同時にゴミ拾いも完了。可燃12袋・不燃1袋+炊飯器ほか)

上の写真は昨年。下の写真は、同じ場所を5月24日に撮影。

 下記、左の写真のように、葛刈りをやらないと、本当に枯れます。うちの現場ではないですが。

5月末の生き物 ~鳥・草花編~

2024年6月1日( カテゴリー: いきもの )

 吉田です。名取海岸林の5・6月は、生物多様性的にとても楽しい季節です。5月24日(金)、大槻さんと、元オイスカ宮城県支部副会長の矢萩さん(元ユアテック顧問・元東北電力副社長)という大ベテランと一緒に、久々の現場実踏を。個人的に言葉を使い分けていて、「巡視」は車でザーッと短時間で見ること(現場に来たら毎回絶対やる)、「実踏」は(巡視と併用で)林内を広範囲歩くことと使い分けています。今回の実踏は翌日の公募日を、どこで、どのように作業するか決めるのが目的。一人の実踏もいいですが、複数の目での実踏は、当然発見が多く、あーだこーだと言いながら。2人来ていただくと本当に助かります。

 矢萩さんが、草花の写真を撮ってくれましたので紹介します。花の名前はご容赦を。

次に、私の撮影。カッコウを撮れたのは初。この冬成功したフクロウに続く自己満足。

 吉田です。この4月以降、東京本部に4人いた「海岸林チーム」という通称名を自然と使わなくなりました。私を含め、業務時間の半分近くを海岸林に充てる人はもういません。それぞれが海岸林の経験を活かし、新しいミッションを最優先にしています。旧海岸林チームが属した「啓発普及部」は、7人のうち、林久美子さんを含む3名が本部海外事業部に異動、我が部は4名に減員という大きな配置転換をしました。ほぼ半数が異動という人事は、少なくともこの約30年のオイスカでは初のことです。もともと、海岸林再生プロジェクトの「ポスト2020年」として、「海外事業部や国内研修センターのバックアップ業務をしてナンボ」と言い続けていましたが、異動した3人、残った4人は、それぞれ不安の2ヵ月だったはずです。それでも、落ち着いて乗り切ったように思います。

 名取市海岸林は生長に伴って変化しています。われわれもそれに対応し、ボランティアの受け入れ時期も、作業内容も変えています。その変遷としては、2014年~2018年頃に来た方は、名取市海岸林の作業と言えば「ツルマメ」、2016~2022年に来た方は「溝切り(排水路づくり)」、だいたいこの2つの印象だと思います。ツルマメの残党は、クロマツの生長によって日光を得られなくなり、淘汰されました。これも高校の授業で習った「植物遷移」の初期の初期段階です。溝切りは、最優先で手を加えたい場所を2023年5月に終えました。これから延々続く作業は、夏の葛の刈り取り(2014年~継続中)と、冬の間伐(2021年~開始)で、相当なボリュームが待ち構えています。

 作業の変化に伴って、ボランティアを受け入れの時期も、今期から一層メリハリをつけました。私自身の名取滞在も、この3~5月の90日で5日だけ。2週間フィリピン最北部に出張もしました。浅野さんの仕事も、出張の行先も今までと変わっています。

 以上、ブログを更新しなかった言い訳でした。このブログは、2011年以来、2,761回更新しています。私としては忘備録にもなっています。3,000回更新は1・2年先ですが、まだ名取市海岸林はわずか14年目に過ぎません。頑張って継続します。6・7月は名取の集中時期です。8月第1週までに葛の大半に一撃を与えるべく、毎週末+α、通い詰めです。

浅野奈々穂主任、5月19日「子供の森」計画親善大使トークイベントin大阪でファシリテーター

「海岸林チーム」は、名前は消えても海岸林に関わり続けます。そして、これからも「つなぐ」をモットーに、アメーバー的に部署跨ぎ、国跨ぎの仕事を生業としていきます。

6月12日(水)19時~ 下記オンラインイベント、ただいま募集中!

 

 

こんにちは!
東京都立大学に所属する大学院生の梶原です。

先月3月24日~27日の4日間にかけて,新たな調査を行いました。
(前回の調査報告はこちら 土壌調査  土壌調査その2

今回の調査は一風変わっています。これまでの調査では,「盛土の土壌特性がクロマツの生育状況に与える影響」を調べるものでした。
一方で,今回の調査では「クロマツの生育状況が盛土の土壌特性に与える影響」を調べることが目的です。立場が逆転しましたね。

そして,この目的を達成するために,リタートラップというものを仕掛けました.

そもそもリタートラップって何?という方に簡単に説明すると,「落ち葉や枝,種など,クロマツから地表面に落ちてくるもの(=リター)を集めるためのトラップ」になります!

百聞は一見に如かず!ということで実際に設置したリタートラップの写真をお見せします↓

プロットNo.8に設置したリタートラップ。白い布はおよそ3.6 m×3.6 mの大きさです。

だいぶイメージがつかめたかと思いますが,要は写真内にみられる白い布が敷かれている範囲に落ちてくるクロマツのリターの量を調べよう!ということです。

なぜそんなことをしているの?という話ですが….

理由は単純,「クロマツのリターによって栄養価の高い良い土ができる」からです。
“腐葉土“という言葉,多くの方が耳にしたことがあるのではないでしょうか。

腐葉土とは,土壌をより良い状態へ改善してくれる改良用土・補助用土のことを指します。
つまりは“良い土“ということです.

さて,この腐葉土ですが,漢字に着目すると「葉が腐った土」という意味になります。もうお気づきの方も多いと思いますが,私たちが日ごろ目にする落ち葉って,実は植物にとって栄養の塊なんです。

面白いことに,植物が育つための栄養って,植物そのものからきているんですよね.ある種、究極の自給自足なのかもしれません。

海岸林の盛土自体には,植物を育てるための栄養がほとんどありません。
盛土に植えられたクロマツが育ち,リターを供給することによって,盛土はどんどん栄養価の高い,豊かな土になります。

つまり,リタートラップによってクロマツのリターの量を調べるということは,「盛り土にどれだけ栄養が供給されているか」を明らかにする,ということに繋がるんですね。

“盛土そのものの土壌特性の違い“と,“クロマツから供給される栄養成分の量の違い“という2つの違いから,名取海岸林の生育環境を詳細に見ていければと考えています。

さて,おおまかに私の調査内容についてご説明したところで,ボランティアの皆さんへ1つお願いがございます。

今回の調査では,オイスカの皆さんで設置いただいているモニタリングプロットのうち,No.7南部,No.8,No.10の3プロットを対象に,リタートラップを設置しました。

このリタートラップですが,「特定の期間に,自然に落ちてきたリターの量をみる」ものですので,例えば誰かがトラップ内に入ってしまうと,靴の裏についていたリターが混ざってしまったり,入った際の衝撃でリターがトラップ外に出てしまったり…と,正確な量がわからなくなってしまいます。

つきましては,もしボランティアの作業中に写真1のようなトラップを見かけた際には,「白いシートの中には入らない」ことをご協力いただきたいです!(近くで見ていただく分には全く問題ありません!)

一応,現地には写真2のような注意書きも設置してありますので,遠くからでも視認しやすくはなっていると思います。

現地に設置したリタートラップの注意書き。これが見えたらご注意いただきたいです!

以上,よろしくお願いいたします!

長くなりましたが,今回のブログはこれにて終了です。
また新しい結果がでましたら,改めてご報告できればと思います!

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