緑化技術顧問の清藤です。
諸外国の研究者と日本人の研究者とを比較すると、
諸外国ではテクニシャンが調査・実験を指示されてデータをとり、
その結果を研究者は報告書にまとめるという傾向にありますが、
日本人の研究者は、自分でデータを取りまとめるところまで自分でおこなう傾向があります。
例えば何人かで組んで調査を行うこともありますが、
その場合でも誰かに任せて、自分が立ち会わないことはほとんどありません。
今回は調査区全26ヵ所のモニタリング調査を大勢で行いました。
なぜこの時期に実施するかというと春先から生長を開始し、7月初旬には生長を休止するパターンを示すからです。しかし秋伸びする個体もあるので、最終的な調査を11月に実施しています。
モニタリング調査で明らかにしようとしていることは、苗木の種類による違いがあるのか、植栽場所による差はどうか、苗木の育苗方法(露地、コンテナ)による違い、また植栽時期(春、秋)による違い等を明らかにするためです。
26ヵ所に各50本の調査木、合計1,300本、それに一番成長のよい場所で10本を加えて調査を行いました。
これを1~2組の調査者で樹高と根元径を測る作業を行うのはかなり大変です。今回は東京海上グループの11人のボランティアとオイスカ側のベテラン経験者5人で、3~4人のグループを5組作って一気に調査を終えました。私の組は私とボランティアさん2人、過酷な猛暑の中、よく私のペースについてきてくれたと思います。
そこに植栽されている苗木はどういうものか、生長のずば抜けてよいものとして選ばれた精英樹とマツノザイセンチュウに侵されず抵抗性があるものとして選ばれた抵抗性品種の違いはどうか、またコンテナで育てた場合と露地で育てた場合の生長の早さなど説明を加えながらも、手際よく5ヵ所を半日で終えることができました。
調査結果はどうであったか、今回のデータは、オイスカの浅野さんに入力してもらうように渡してあるので、ここでは細かい報告はまだできませんが、各調査区における傾向は、ほぼ前年同様、各区の差はあるものの順調に生長してきていると思われます。
やはり精英樹苗で露地、しかも第一育苗場産の苗で植えられた場所は、抜群に生育が優れている傾向にありました。抵抗性コンテナ苗区は、これまで露地苗に比べ生長は著しく遅れていましたが、今年の調査区9の抵抗性コンテナ苗(写真)をみると、伸び方も本来の姿になってきたと思われます。これは根が広がり、根から水分を葉に運び、葉で作られた糖類を各部に運ぶようになってきたことを示します。
静砂垣の1mの高さを超える生長のよい場所があちこちで見られるようになり、
見ているとうれしくなります。浜側の場所で大きい個体群の中で10サンプルを測定しました。
最高を示した個体は樹高2.67m根元径7㎝でした。今年の伸びは100㎝です。
もっと大きい個体もあると思います。この分で行くと10年で8~9mになるかもしれません。
しかし単純に喜んでよいのか不安にもなりました。
1年に1mも伸びるということは、幹の構造をつかさどる仮道管細胞は膨潤で大きく、
それが台風や大雪に耐えられるのだろうかという心配です。
調査に携わった皆さん、酷暑の中本当にありがとうございました。
調査に参加して一段とクロマツ植栽木に愛着を感じて下さったのではないでしょうか。
次回も是非ご参加、ご協力ください!