2022年2月7日

フィリピンネグロス島大型台風22号による被害レポート 養蚕普及事業参画農家支援も視野に募金実施 ほか【オイスカ誌ニュース】

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  • ※オイスカ誌2022年2月号に掲載した海外ニュースをまとめてご紹介します


    フィリピンネグロス島大型台風22号による被害レポート
     養蚕普及事業参画農家支援も視野に募金実施

     2021年12月16日から17日にかけてフィリピンを直撃した台風22号は、同国中南部を中心に甚大な被害をもたらしました。フィリピン国家警察は死者数375人(20日)と発表。オイスカの活動地でも、ネグロス島にあるバゴ研修センター(以下、 センター)の敷地内で大木が倒れて建物が損壊するなど、深刻な被害を受けました。

     センターは農業研修のほか、技能実習をはじめとする、さまざまな制度で訪日を予定している青年たちの事前研修の場としての役割も持ちますが、今回の被害を受け、一時的に研修の中断を余儀なくされました。また、センターを拠点に展開する養蚕普及事業に関しても、製糸過程で欠かせないボイラーがある建物に深刻な被害が出ているほか、島内で繭を生産する農家でも、養蚕のための施設が全壊したケースもあり、大きな影響を受けています。

     被災から数日後、センターの渡辺重美所長から、「センターの再建はもちろんだが、何よりも被災した養蚕農家や地域住民への支援ができる態勢を整えたい」との要請を受け、オイスカ本部では、12月から1月にかけて実施していた冬募金の支援項目に「海外災害支援」を加え、12月21日よりネグロスの被災地支援の呼びかけを開始しました。これまで現地を訪れたことのある全国の会員や支援者の皆さまをはじめ、連日報道される被害の大きさに心を痛めた方々から寄附が届き、その金額は1月20日までに257万円に達しました。

     日本からの支援だけではなく、12月28日にはオイスカ・サガイ支局のメンバーらが、倒木の片づけが進むセンターを訪れ、5万ペソの支援金を渡辺所長に手渡しました。また、大きな木がほとんどなくなってしまったセンターの敷地内に苗木を植え、スタッフらを激励しました。島内に住む日本人コミュニティからも、電動チェーンソーやクレーントラックの貸与といった支援を受け、1月11日にはすべての倒木を片付けることができました。被害が出た8棟の建物では、屋根部分をシートで養生するなど、研修再開に向けた施設の復旧を進めています。養蚕農家については、桑の葉が出始める3月には、蚕の飼育が再開できるよう、それまでに被災農家25戸での、養蚕施設の再建や、修繕を支援する予定です。

     今後、具体的な計画を立て、センター施設の復旧、養蚕農家再建支援に取り組んでいきますが、より災害に強い施設や地域を目指した復興が求められています。今回も台風当日は、不安を抱える近隣住民をセンターに受け入れたほか、10日ほど続いた停電の間は、蚕種保存のための小型発電機を活用し、希望する住民らに携帯電話の充電サポートを行うなど、地域の防災拠点としての機能も発揮しました。センターの果たす役割が大きくなる中、地元政府にも支援要請をしながら、地域に貢献できるセンターの再建に努めていきます。

    フィリピン・アブラ州 台風被災地で支援活動

    「洪水から泳いで逃げた。服も勉強道具も持ち出せずにとても悲しかったが、新しい服や靴を支援してくれて嬉しい」と話す子どもたちに笑顔が戻った

     2021年10月10日から11日にかけて、大型台風18号がフィリピン・ルソン島を直撃。各地で大雨による土砂災害、また広い範囲で洪水が発生し、40名を超える尊い命が奪われたほか、多くの家屋が倒壊・浸水被害を受けるなど甚大な被害をもたらしました。オイスカ・アブラ農林業研修センター(以下、センター)が位置するアブラ州ドローレス町においても、ムディイト村とダルナタン村で洪水被害が発生。センターでは、洪水の翌日より炊き出しや食糧支援など、150戸を対象に救援活動に取り組んできました。

     「子供の森」計画参加校の子どもたちも多く被災する中、家や家財を流された彼らの支えとなるよう、12月25日、80名の子どもたちに衣服や靴の支援を実施。保護者からは、「子どもたちを屋根の上にあげて、一晩過ごした日は悪夢のようだった。家も家畜もすべてを失い、子どもたちは泣いてばかりいたが、支援のおかげで、今彼らは笑顔で過ごすことができる」といった感謝の声が多く寄せられました。

    香港総局「香港日本交流記念の森」20年祝賀式展開催

    炭素削減運動に向けた熱気あふれる式典となった

     2021年12月14日、オイスカ創立60周年と「香港日本交流記念の森」(以下、「交流の森」)の20周年を記念した祝賀式典が、元朗大会堂で開催されました。

     「交流の森」の歴史は、1991年にオイスカが「子供の森」計画をフィリピンでスタートさせたことを受け、香港では日本語幼稚園を運営するオイスカ・カレッジが92年より「親子植林」の取り組みを始めたことにさかのぼります。継続的な植林活動が評価され、2000年には香港政庁・漁農自然護理署より、5ヵ年の植林計画の提案がなされました。そこで、オイスカは、在留邦人組織や企業、有志に呼びかけ、延べ一千名におよぶボランティアの力で植林をしたのが、 「交流の森」です。01年から05年までに13回の活動が行われ、森は大きく成長をしています。

     05年以降は漁農自然護理署の方針変更もあり、植林や育林活動は思うように実施できずに今日に至りました。一方で、近年は炭素削減意識が世界規模の高まりを見せていることから、今回の祝賀式典は植林活動20年の節目を祝うとともに、新たな植林活動を通じた炭素削減運動のキックオフイベントとして挙行することとなりました。

     式典には在香港日本国領事館岡田健一総領事(大使)をはじめ、在留邦人を代表する香港日本人商工会議所や香港和僑會の代表、また漁農自然護理署副署長の葉彦博士、各種団体代表らが参列しました。オイスカからは「交流の森」の経緯と進捗状況の説明がなされ、支援組織や企業に感謝状が贈られました。オイスカ香港総局のアレクサンダー・チャン会長が先導し、植林20周年記念リボンカットが行われると、炭素削減に向けたスローガンが会場全員で声高らかに唱和されました。

     今後は、在香港日本国総領事館、漁農自然護理署、樹賢基金、地元自治会などがパートナーとなって新たな植林活動の計画を策定し、香港在留邦人と香港市民と協力して炭素削減運動を推進されることが期待されています。

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