2023年11月30日

地球環境を考えるトークイベント2023秋【11/23実施レポート】

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  • 地球環境を考えるトークイベント2023秋「『災害のデパート』フィリピン北部での37年間の挑戦とこれから」と題して、11月23日(祝・木)大阪市の国民会館で、フィリピンからアブラ農林業研修センターのデルフィン・テソロ所長を迎えて開催しました。(国土緑化推進機構「緑と水の森林ファンド」の助成を受けて実施)

    会場とオンラインのハイブリッド開催で、合計130人の参加がありました。

    当日は、主に以下の2つのプログラムがありましたが、トークセッションの部分をレポートで報告いたします。

     ▶ 講演「世界各国におけるオイスカ10ヵ年計画と、フィリピン北部への想い」

     ー 公益財団法人オイスカ 事務局長 永石安明 ー

     ▶ トークセッション(使用言語:日本語)

     「『災害のデパート』フィリピン北部での37年間の挑戦とこれから」

      <コメンテーター>

       デルフィン・テソロ(オイスカ アブラ農林業研修センター所長)

       清水利春(オイスカ関西研修センター所長)

      <モデレーター>

       マリア・グラゼン・アセリット(オイスカ啓発普及部)


    トークセッションの冒頭に投影した動画はこちら↓

    <グラゼン> 先ほどの動画にもありましたが、ルソン島北部の地域開発を考える時、私たちは2つの重要なポイントがあると考えています。

    ひとつ目は、いかに災害が多い地域であることかという点

    2つ目は、アブラ農林業研修センターのデルフィン所長が持続可能な村づくりに積極的に取り組んでいる点です。

    動画を見ていただくとわかると思いますが、アブラ州でのオイスカの活動でデルフィンさんの存在はとても重要です。私はデルフィンさんと15年間、一緒に仕事をしていて、いつもイロカノ語で話していますが、今日は慣れない日本語で話しますが、全力を尽くしたいと思います。

    ー 今のお気持ちは? ー

    <デルフィン> 日本語が下手になっていますが、どうぞよろしくお願いします。

    ー デルフィンさんはどのような人物だと思いますか? ー

    <清水> アブラ研修センターを設立した時から一緒に仕事をしています。毎年、植林ボランティアをアブラに派遣しており、先月、28回目の植林ボランティアを引率してきました。現地では、とてもきめ細やかな受け入れをしてくれているので、どなたが参加されても、デルフィンさんの活動の様子や仕事ぶり、デルフィンという人物を感じられると思います。

    本日は、どうぞよろしくお願いします。

    ー 地元の人と仕事をする中で、彼らからの信用を得るためにどのような努力をしてきましたか?ー

    <デルフィン> 地元の人たちと一緒に地域のために活動していると、色々な問題が出てきます。そんなときは、話をします。時間をかけて話をすることで解決します。私に難しいことがあった場合は、みんなが手伝ってくれます。仕事をしていても、お金がなくても、一緒になって手伝ってくれます。アブラの人たちは、地域社会とのつながりをとても大事にする人たちだと思います。色々なことがあり、弱気になることもあります。でも、私は、地域の人たちの生活を良くしたいという気持ちがあります。先ほどの動画にもありましたが、台風の季節は、洪水の被害を受けやすく、アブラ川の近くに住む人たちのため、アブラ研修センターで収穫したお米や野菜を支援物資として提供しています。

    ー デルフィンさんが地域を巻き込むことができる最大の理由は何だと思いますか?-

    <清水> デルフィンさんは、地域で災害が発生した時、何を差し置いても率先して被害にあった人をきめ細やかにサポートしていきます。先ほどの動画で「子供の森」計画の話が出ていましたが、アブラ州は大阪府の2倍の面積がありますが、交通網が発達していなため、大阪のように隅々まで簡単に行かれるわけではなく、州境あたりまで行こうとすると2日間も歩いて行かなければならない場所もあります。そんな場所にある学校にも出向き、先生や子どもたちに木を植えて環境について考え、守るという活動を自分から率先してやっています。そんな彼なので、周りの人たちが彼の姿を見て、応援しよう、一緒にやろうと広がりが出てくるのです。

    「子供の森」計画は学校単位の活動ですので、学校で地域の先生のセミナーやミーティングがある時に「子供の森」計画の話が自然と出てきて、私の学校でもぜひやってくださいという話になるようです。彼は、依頼があれば断ることもなく、できる範囲で順番に「子供の森」計画のプログラムを学校で展開していく。そういうきめ細やかな仕事をしている彼の姿を見て、彼に信頼を置く人が増えていくのだと思います。

    州内のほとんどの学校で「子供の森」計画をしているので、ほとんどの人が彼のことを知っていて慕ってくれているのだと思います。

    <グラゼン> 少し補足です。アブラ州には164の学校があり、そのうちの120校で「子供の森」計画を実施してきました。フィリピンは1年中暑いのはみなさんご存知だと思いますが、アブラ州は乾季の時は本当に暑いです。当然、学校には冷房はなく、暑くて子どもたちが勉強に集中できません。学校に森があることで、木陰ができ、快適に勉強できるようになっていることも「子供の森」計画のインパクトだと思います。

    ー 今までの経験の中で大変だったことはたくさんあると思いますが、一番大変だったことは何ですか?-

    <デルフィン> 実は、子どもと一緒に木を植えるのは大変なんです。時間はかかるし、好きなところに植えてしまうし。植えてから1年くらいすると、なぜ私の木は大きくならないんだと他の友達とくらべてやきもちを焼くし。他にも、「子供の森」計画をたくさんの学校で実施したいという要望をもらいますが、資金が足りなくて少しずつしかできません。研修センターでの研修受講希望者はたくさんいますが、食事代や電気代などがかかるため、1年間に20人までしか受け入れられません。

    ー どうやって乗り越えてきたのですか?ー

    <清水> 植林ボランティアさんから精米機を寄贈してもらい、近隣農家の精米を受注することで収入を得ることができるようになりました。また、乾燥機を導入してドライマンゴーの生産販売、野菜の生産販売で収入を得ています。ですが、研修センターでの研修は、寮生活のため、電気代や米や野菜以外の食事代など、資金面で相当苦労してきたと思います。私がアブラから日本に引き揚げた1991年ごろがいちばん大変だったのではないかと思います。

     マニラ近郊であれば、多くの方がアブラに視察に訪れて窮状を察してくれるかと思いますが、アブラ州はマニラから約400キロ離れ、バスで約10時間から12時間かかります。先月のボランティア植林には19人が参加してくれましたが、11時間かかりました。以前と比べて高速道路が半分近くできましたので、少しは楽になりましたが、サイドカーつきの単車が走行しているため、スピードが出せず結局同じように時間がかかります。

     ネクスタ株式会社様、中国電力労働組合様に植林ボランティアに毎年行っていただいています。また、3つの企業の森づくりをしています。東洋紡の森、ネクスタの森、中国電力労働組合の森です。地域の方々と一緒になって森づくりをしていますので、大きなインパクトにつながっていると思います。

    <グラゼン> 補足させていただきますと、資金の面では、オイスカは日本政府から補助金をいただいて、世界各地の研修センターなどに配分していましたが、現在は、プロジェクトベースの支援に変わったため、支援がないプロジェクトはある程度、自立を求めています。

    ー デルフィンさんの最大の功績は何でしょう?-

    <清水> 「子供の森」計画の功績はもちろんありますが、毎年の日本からのボランティアや浜名湖の近くにあるオイスカ浜松国際高等学校の海外体験活動の受入れなど、日本との懸け橋となっていることが大きな功績ではないかと思っています。

    ー デルフィンさんはオイスカ歴37年になりますが、続けてきたモチベーションはどこにありますか?-

    <デルフィン> 西日本研修センターの研修生だった頃、当時の中野良子総裁に「帰国後はオイスカの研修センターの仕事をがんばってくださいね」と言われ、「はい」と答えてしまって、総裁と約束してしまったことが大きいです。帰国後、しばらくは清水所長と一緒に頑張りました。これまで、途中で色々と問題もありましたが、毎年、日本からアブラに来てくれるボランティアの存在はとても大きいです。アブラ州の子どもたちのために、東京の羽村市のさかえ幼稚園様やレナウンのみなさんがデイケアセンター(幼稚園)を建設してくださり、ここを卒園した子どもがやがてアブラ研修センターの研修生となり、日本でも研修を受け、がんばっている姿を見て、私も頑張ろうと思います。

    <清水> デイケアセンターについて補足します。さかえ幼稚園様やレナウン様に建物を建設していただき、その後の建物の維持管理は州政府がしています。デイケアセンターに子どもたちがいない時間帯にはお母さんたちの色々なミーティングなど、コミュニケーションの場としても使ってもらっています。東京からお見えになっているさかえ幼稚園の皆さまからは4つの幼稚園を作ってもらっています。デイケアセンターの建設はアブラ州だけではなく、ネグロス研修センターがある西ネグロス州でも行っています。

    ー 清水所長からデルフィンさんへメッセージをお願いします ー

    <清水> このように報告の機会をできれば2年に1度くらい持ちたいと思います。今回はアブラ州だけの報告でしたが、彼は近隣の北イロコス州、南イロコス州でも植林などの活動をしています。デルフィンの応援は死ぬまで続けたいと思います。一緒に頑張りましょう。

    ー デルフィンさんからみなさんへあらためてメッセージをお願いします ー

    <デルフィン> みなさんご参加くださりありがとうございます。オイスカの仕事は、自分のためにではなく、人のためにです。みなさんからのご支援がなければ、アブラ州の若い人たちは日本で研修を受ける機会はありません。ご支援くださる会社のみなさん、技能実習生を受け入れてくださる会社のみなさん、本当にありがとうございます。「子供の森」計画は日本からの支援で実施しています。活動を通じて、子どもたちが、なぜ木を植えるのかを理解することができ、木を植えて育てた経験を家で母親に教えて家族に広げることができます。PTAミーティングで保護者が学校へ行くと、子どもが嬉しそうに大きくなった木を見せます。すると、保護者も木を植えたいと思うようになり、活動が広がっていきます。だから「子供の森」計画はとても重要なのです。

    <グラゼン> NGOであるオイスカには限られた資金しかありませんが、デルフィンさんのリーダーシップ、地域の人たちの協力姿勢、オイスカ会員のみなさまのご支援が、アブラ州やその周辺の人々の生活を改善していきます。今後ともご理解とご支援をよろしくお願いします。

    本日は、ありがとうございました。

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