2011年7月11日

国際森林年記念事業 被災した海岸林の再生を目指しシンポジウムを開催

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  •  東日本大震災の津波によって、海岸林約3700haが甚大な被害を受けました。その再生に関して、将来、国民的運動ともなるであろう活動の一端を担うために、オイスカは震災直後から、行政や林業事業体、被災地住民と連携を続けています。具体的な行動として、7月11日に東京・千駄ヶ谷の津田ホールで、海岸林再生シンポジウム「東北にもう一度、白砂青松を取り戻したい」を開催しました。 

     このシンポジウムは国際森林年記念事業としても位置付けられており、国内だけでなく世界に向けた発信の場として、国連の藩基文事務総長、ジャン・マックアルパイン国連森林フォーラム事務局長、アフメッド・ジョグラフ生物多様性条約事務局長からもメッセージが寄せられました。当日は、海外17ヵ国をはじめ、北海道から沖縄まで、全国各地から352名が参加。オイスカが再生活動を予定している宮城県からも大型バスでの大勢の参加を得ました。 

     シンポジウムではまず、オイスカが4月末に行った航空調査、5月の陸上調査の映像を、本活動の協働パートナーであるNGOアース・ブレークスルー代表の菅文彦氏がレポート。続いて、5月に林野庁が設置した「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」の中間報告の趣旨を、同検討会座長の太田猛彦東京大学名誉教授をはじめ、林野庁の皆川芳嗣長官と井上晋山地災害対策室長よりお話しいただきました。 

     また、2004年のスマトラ島沖地震からの復興に関わってきたインドネシア・アチェ州のオイスカスタッフは事例報告の中で、道路や建物など一通りの修復の終わりが復興の終点ではないことを強調。この後、被災地からパネリストとして迎えた名取市東部震災復興の会の鈴木英二会長と宮城中央森林組合の佐々木勝義課長の二人を交えて活発な討議が行われ、オイスカの渡邉忠副理事長からは、「海岸林の重要性を被災した東北だけでなく、広く世界にも訴えていくべきであり、復興のプロセスには世界の人に関わっていただくことがオイスカのミッションの一つ」とのコメントがありました。 

     シンポジウム後、参加者からは「海岸林の再生は絶対に必要だと感じた」といった感想が多く寄せられましたが、「はっきりとした植林プランが示されなかった」という意見もありました。早急な植林プラン作成がなぜ困難かを伝えきれなかった点を反省しつつ、被災者の雇用を伴うマツノザイセンチュウ抵抗性クロマツなどの育苗事業、そして先々の造林・育林事業に向けて各関係先との連携を図りながら、一歩一歩着実に準備を続けていく所存です。

    会場を埋めた参加者を前に被災海岸林の調査報告がなされた

    ※なお、このシンポジウムは(公社)国土緑化推進機構「緑と水の森林基金」の助成を受けて実施されました。

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