2023年5月30日

「地球環境を考えるトークイベント2023 春 マングローブ とともに豊かに生きる~対話力が解決へ導く、タイ漁村22人の声~」【5/16実施レポート】

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  • 5月16日、「地球環境を考えるトークイベント2023 春 マングローブ とともに生きる~対話力が解決へ導く、タイ漁村22人の声~」をオンラインで開催いたしました。

    このイベントでは、タイ南部ラノーン県で進む「 マングローブ 林の再生・保全と地域住民の収入向上プロジェクト」(外務省 日本NGO連携無償資金協力事業)の現状や展望について、プロジェクト地で活動に取り組む住民グループのリーダーや事業の指導にあたる行政担当者が思いを語りました。

    住民グループのリーダーたちは5月12~16日まで日本での研修に参加しており、その最終日にこのトークイベントで話をしていただきました。(研修の様子はスタッフブログで紹介しています

    <目次>
    1. プロジェクト概要
    2. 各村の取り組み
    3. 総括
    4.各村の住民リーダーの声

    1. プロジェクト概要

    プロジェクト概要について説明するオイスカ・タイ駐在代表の春日

    オイスカ・タイでは、北部タイ・チェンライ県、東北タイ・スリン県、コンケン県、中部タイ・アユタヤ県、南部タイ・ラノーン県のそれぞれで活動を進めています。これまでに陸地と海の両方で938万本、2,950ヘクタールの土地での緑化活動を行ってきました。チェンライ県では森林火災、それによっておこる大気汚染、下流での大洪水。海沿いでは大津波。海水面の上昇で水に浸かる島。東北部では雨のない干ばつ。

    各地で頻発する自然災害にどう対応するかを考え、出した答えがECO-DRRです。自然災害を抑止するためには自然の力を最大限に引き出して災害から守れる環境を整えることだと考えています。生態系や自然を活用した防災減災。このことをECO-DRRといいます。現在、チェンライ県、スリン県、そしてラノーン県など、タイ各地でのECO-DRR活動を行っています。


    私たちが考えるECO-DRR活動は、これまでのような単純に木を植えて生存率を高めていくものではなく、その地域の社会全体の力を高めていくことを目指しています。森をつくるにはつくる人、守る人、それらの森がなんのために生まれ、何のために守られているのかを理解している住民が必要です。そして、そのためには住民に強い力が必要となります。

    私たちは、熱波、大気汚染、自然災害、コロナ、戦争、物価高といった気候変動や社会的変化による様々な要因に押しつぶされそうになっています。これらに押しつぶされないように適応できれば、より発展していくことができます。では適応するにはどうするのか。変化に取り残されないようなバランスの良い自然環境を取り戻し、そして自分自身も経験やスキルを身に付けます。これを一人でやるのではなく、コミュニティ全体で取り組み、そしてその力を強めます。これで生活を安定させていくことが可能となります。今、この22名とラノーンにいる仲間たちとが力を合わせて行っているのが、N連プロジェクトと呼んでいるこうした活動です。

    ECO-DRR活動は単純な緑化活動ではなく、「強固なコミュニティづくり」という視点で行い、住民たちの生活を安定させるための取り組みなど様々な活動を平行して実施しています。北部タイ・チェンライ県では、森づくりや啓発活動と同時に森の中での山菜栽培、はちみつをとる養蜂、はちみつ石鹸づくり、育牛、養豚などがこれまでに行われてきました。それにより環境が整い、コミュニティは強くなり、彼らの生活は徐々に安定し、少々の社会環境の変化があっても地域で幸せに暮らせる基盤ができてきているのです。

    ここから話を22人の漁村の活動にフォーカスします。事業実施地はタイ南部ラノーン県の3つの島と1つの村。ラノーン県はマレー半島北部のアンダマン海側に位置しミャンマーと一部国境を接しています。ここでは主に漁業がおこなわれております。そしてタイ民族だけでなくミャンマー系、マレー系の住民も多く、イスラム教徒が多く住む地域でもあります。現在4つの村から参加しているメンバーは全員イスラム教徒です。

    活動内容は大きく分けると、1.マングローブ林の再生と住民への啓発、2.地域における収入向上プログラム、3.日本での研修になります。1と2の活動を更に発展させるための取り組みとして、今回の訪日研修が行われています。

    では、次に具体的な活動の流れをみていきます。各地域で長期的な地域開発の展望が持てるように、

    ①地図を作成して土地の利用区分を明確にします。

    ②何度も会議を行い、プロジェクトの目的や意義、内容を理解してもらいます。

    ③植林をし、

    ④持続可能性を高めるために苗木づくりも自分たちで行います。

    ⑤同時にゴミ処理の意識を高め、地域と海の環境保全と美化に努め、

    ⑥子どもたちへの環境教育活動も行っていきます。

    生活を安定させるための活動として、ヤギ飼育と精肉販売、マングローブ茶やマングローブ石鹸、草木染商品の製造・販売、魚や小エビの加工販売、漁具の貸し出しと組合の結成を行いました。それぞれのグループごとにも数えきれないほどの話し合いを繰り返し行っていきます。

    こうして確立された各地、各グループの取り組みや成果を線で結ぶエコツアーも展開しています。漁村での生活を体験しながら植林や製品づくりを体験したり、マングローブの森をカヤックや船で散策したりできます。村でできた製品をお土産用に販売し、売れ行きも好調です。更にこれらの取り組みを国際会議や展示会などで広く一般に紹介し、モデルケースとして他地域、他団体にもその手法を提供しています。

    2. 各村における取り組み
    (1)20年間の森づくり、森づくりからヤギ飼育へ、その苦労と問題解決手法【ンガオ村】

    ンガオ村のウィロート氏(自治会職員/ヤギグループ会長)

    ラノーンのマングローブ林は、昔は豊かでしたが、マングローブの炭をつくったり、錫の採掘をしたりしたことでマングローブ林の面積が減りました。

    そのあと、オイスカとタイの天然資源環境省海洋沿岸資源局が協力し合って私たちの地域を支援してくださいました。その支援では悪化したマンゴローブ林を再生して豊かにすることが大きな目標でした。私たちだけではなく、日本の方々や地域の民間団体、学校の子どもたちなど、最初は少なかったですが、徐々に活動に参加する人が増えてきました。これまで日本から参加してくださったボランティアの団体は100以上ありました。皆さんからの協力を得て、現在、世界遺産への登録を進めています。

    マングローブ林が豊かになり、今はヤギの飼育活動を行うようになりました。マングローブ林と共生しながら、ヤギの飼育活動がおこなわれており、住民にとって大きな収入源のひとつとなっています。

    (2)女性たちの活躍(石鹸、お茶、マングローブ染め)【ンガオ村】

    ンガオ村のスワニー氏(主婦/女性グループ会長)

    今はラノーンの再生されたマングローブ林は豊かになりつつあります。そこから、どのようにマングローブ林を生かし、自分たちの生活も向上させながら共生できるかを考えました。私たちはマングローブ林にある植物の効能を知っているので、マングローブ林にある植物を使った商品をつくるようにしました。この活動はオイスカの指導のもとで行われています。女性グループがつくっている商品は5つあります。それぞれマングローブ林にあるハーブが使われていて、異なる効能があります。

    1つ目は嗅ぎ薬です。これは水ヒイラギを使ってつくっています。「吸ったらすぐに元気になる」というスローガンを使って提供しています。2つ目は塗り薬です。水ヒイラギの葉を炒めた油を使ってつくっています。この塗り薬も塗ると肌が元気になります。3つ目もミズヒイラギからつくった石鹸です。顔のしわやしみを消す効力があります。4つ目はお茶です。ヒイラギギクという植物を使っています。その葉をしっかりと洗って、干し、さまざまな加工をしています。お茶は4つの味があり、1つ目の味はオリジナルの味、2つ目はローズマリー、3つ目は良い香りのするパンダンリーフ、4つ目はバタフライピーを使ったお茶をつくりました。なぜいろいろな花を入れるかというと、オリジナルのお茶は独特な味があるので飲みやすくするため、そして色々な好みに合わせるためにつくりました。マングローブ林関連商品の5つ目は草木染です。オオバヒルギなどの皮から染料をつくっています。Tシャツやマフラー、帽子などの草木染をつくっています。

    すべての商品は化学的なものは入っておらず、自然のものばかりですので、体に良いです。これらの商品はハラル、一村一品、コミュニティビジネスの登録ができました。今、ネットを活用してオンライン販売をがんばっています。活動を行うのは私たち住民ですが、外部への発信など、さまざまなアドバイスをオイスカから受けています。何度も何度も繰り返しつくり、やっと自分が70%くらい成功したと思える商品をつくることができました。私たちは主婦であり、大きな収入は夫から得ています。しかし、この活動を通して、私たち自身も収入を得ることができるようになりました。

    (3)これまでの島の歴史、苦労、そして今【ラオ島】

    ルット氏(オイスカスタッフ/ラオ島担当)


    ラオ島は小さな島です。この小さな島のまわりにはマングローブ林があります。昔は島のまわりの海はとても豊かで、島には70世帯がいました。私たちの職業はひとつです。小さなエビを使ってエビ味噌をつくり、収入を得ていました。

    しかし、2004年に大きな津波があり、そのあと海が変わり、漁獲量が減りました。エビ味噌だけに収入を頼っていたため、住民はどんどん別の場所へ移動していきました。70世帯は30世帯にも満たないほどに減り、私自身も小学校卒業後、陸へ渡り、社会人になってからも陸で仕事をしていました。そのときは、漁業は大変な仕事で、陸のエアコンの効いた場所での仕事が快適だと思っていましたが、あるとき、これは自分の仕事ではないと気づき、海が恋しくなり、仕事をやめて島に戻りました

    しばらく漁業をしていたら、オイスカが来て、このプロジェクトを始めました。当初はあまりオイスカのことを知らない住民が多かったですが、何度も何度も話し合いをして村の人々も理解し、協力するようになりました。住民の力を高めるためにグループをつくることになり、グループをつくって漁具の貸し出しなどをしたり、エビ味噌のグループをつくったりしました。エビの収穫量は昔よりも少ないので、少ないものを高めてどのように住民の収入を向上させていくかなど、グループをつくり、力を高めることが大事だと考えました。この収入向上のプロジェクトだけではなく、衛生面のことも考え、ゴミの処理の活動も行いました。

    今、島のストーリーをつくって、島の商品を発信していくことを行っています。機会がありましたら、ぜひラオ島へお越しください。

    (4)政府から見捨てられた島、会議の繰り返し、初めての成功【シンハイ島】

    ドゥーナー氏(教師/島民グループ相談役)

    シンハイ島は小さな島で、タイとミャンマーの間にある島です。島の人口は1,800人ほど、世帯は400世帯あります。住民の95%は漁業をやっており、5%は農業や売店を営んでいます。2004年にインドネシアで大きな地震があり、津波が私たちの方まで来ました。津波のあと、ほかの地域と同じように、海の環境が変わりました。例えばイワシの量が減りました。ほかにもエビやカニの量が昔と比べて減りました。収入が減ったため、生活が苦しくなりました。そのため、家は島にあっても、陸へ働きに行く人が多くなり、漁師が少なくなりました。

    こうして島の生活は苦しくなり、政府や民間団体の支援などもありましたが、そうした支援は短期的なもので、住民が環境の変化に適応していくような準備も整っていませんでした。小さなグループをつくっていましたが、年配の方などはプロジェクトに対する理解はあまりありませんでした。そのため、そうした小さなグループは解散することになりました。
     
    そのあと、天然資源環境省とオイスカが入ってきて、私たちの生活は変わりました。日本政府外務省の支援でオイスカや現地の政府機関が協力し合って私たちの島にしてくださった支援についてですが、一つは漁師への支援として漁具の貸し出し組合をつくりました。もう一つは、島の女性たちを支援するために干物などをつくり収入向上を目指すグループをつくりました。

    活動に参加する住民のメンバー全員が活動を理解し同じ方向に向かうように、何度も何度も話し合いを行いました。活動を行うのは私たちで、何か指示されて動くのではなく、自分たちが主体となって活動を行いました。例えば漁具の貸し出し組合の活動でも、女性グループの活動でも、村人たちがストーリーの主人公のように、自分たちが主体となって活動を行うようにしています。例えば活動のやり方や、住民が必要なものについても話し合って、改善しながらやってきました。

    私たちの笑顔は戻りました。指導してくださった方の言葉がひとつあります。私は今でも感動して、印象に残っています。それは「ゆっくりでもいい。でも、確実にみんなで前へ進んでいく。これが一番大事。失敗しても大丈夫。みんなで一緒に頑張って進めていくことが大事。誰かを後ろにおいていくのではなく、グループで動くこと。これが一番大事。それでみんなで一緒に豊かになっていく」という話だったのです。これが私自身にとってとても印象に残りました。

    (5)これらの活動を地域全体で盛り上げていくエコツアーの取組み【全体】

    エウ氏(専門家/プロジェクトリーダー)

    私たちは笑顔で仕事をすること。これをスローガンにして活動を進めています。このプロジェクトは大変大きな規模のプロジェクトです。4つの地域で行われていて、多くの団体が関わっています。住民だけではなく、政府機関、民間団体などさまざまな人たちが関わり連携して行っています。

    活動を行う前に、話し合い、会議をすること、知識を高めること。私たちはこれが一番大事だと思っています。知識を高めてみんなが理解することが必要なので、まず、プロジェクトのスタッフは現地に入って何度も繰り返し話し合いや研修などを行いました。

    なぜ話し合いを何度も繰り返す必要があるかというと、ただ知識を高めて理解を得るというだけではありません。島の住民は、自分たちは陸の人と比べて能力が低いと思っているため、自信がありません。何をやっても認められないという、自分たちを低く見下すところがあります。根本的にそういう考え方を変えるために何度も研修や指導を行ってきました。彼らには能力があります。その能力を引き出していくことが一番大事ですので、私たちは研修などをしました。もう一つは地域の特徴が消えつつあるなか、地域の特徴を魅力に変えて地域の開発を進めていくことも考えて行いました。
     
    プロジェクトの活動は、マングローブの植林活動、収入向上プログラム、そしてさまざまな視察などですが、マングローブ林を豊かにして自分たちも豊かになる、そのつながりがあって高めていけるということを活動のメンバーは理解しています。例えば何か活動をやるときに、みんな自分の役割をわかっているので、自分たちの役割を頑張って行っています。私たちはマングローブ林を再生し、マングローブを使った商品をつくりました。
     
    将来的に持続可能な活動をしていくために、今まで行ってきた活動を発展させて高めていくことが大切であることから、エコツアーを考えました。エコツアーはプロジェクトにある活動を活かしながら進めていくことを目指しています。

    エコツアーでは、カヤックでマングローブ林をまわります。例えばラオ島ではエビ味噌の料理がおいしいですが、エコツアーでラオ島の料理を食べられるようにします。ンガオ村にはマングローブの商品がたくさんあります。シンハイ島にもおいしい魚がたくさんあり、干物などを観光客に勧めていきたいと思います。こうして私たちのことを知ってもらえるように発信していきながら、みなさんが来るときにこのプロジェクトにあるものをすべて提供していけるようにしたいと思います。

    今、新しいものをつくり始めており、シンハイ島では海にある植物を使って編み物をつくる活動を始めました。またマングローブを切るのではなく、枝などを使って船のモデルなどをつくってお土産とする商品もつくり始めました。

    エコツアーの企画はまだ完全ではありません。エコツアーで巡るコースは、地域内だけを巡るコース、それぞれの地域を回るコースなどをつくっていますが、まだ開発の途中です。これもプロジェクトの持続可能につながるように発展させていきたいと思います。みなさんも、ぜひいつかラノーンに来て、このエコツアーに参加していただければと思います。

    このプロジェクトはオイスカや天然環境資源省だけではなく、ラノーン県の労働事務所や郡、各地域の行政などたくさんの人たちが関わっています。私たちだけではできるプロジェクトではありません。そして何より、こちらに村の代表の方々が来ていますが、地域住民が本当に積極的で、本気で活動に参加して、本気で自分たちの活動を良くしていく、その気持ちを持ってくれたからこそ、私たちのプロジェクトは前へ進むことができました。

    3. 総括

    カヤイ・トンヌヌイ氏(タイ天然資源・環境省ラノーン県マングローブリサーチセンター所長)

    最初にマングローブについてお話させていただきます。タイには74種類のマングローブ林があります。マングローブ林はタイの沿岸地域に生育しています。マングローブ林はタイの24の県の海岸にあります。そして100万人ほどの沿岸地域の住民の生活を支えています。自然の堤防としての機能・役割もあります。調査によると、海岸から100mのマングローブ林があると、その後ろに住んでいる人たちへの津波による被害はありません。そしてマングローブ林は他の森と比べ3倍ほどの二酸化炭素を固定することができます。

    無計画な開発のためにマングローブ林が失われてしまいました。オイスカとタイの天然資源環境省海洋沿岸資源局が協力し合い、私たちはラノーンのマングローブ林再生プロジェクトを2000年から始めました。そのとき、日タイの友好のマングローブ植林プロジェクトをテーマとしました。プロジェクトの目的は村の方々が主体となってマングローブ林を守ることです。

    この写真は、どのようにプロジェクトを行っているか、その実施過程を伝える写真です。2000年からこれまでの間に、私たちは2,000ヘクタールのマングローブ林を再生することができました。また、タイと日本の方々の交流もあって、その友好を深めることができました。日本の方々がボランティアとして現地に入って、村の方々と一緒に、活動に参加してくださり、とても丁寧に苗木を植えてくださいました。そのことが村の方々の励みとなり、そしてみなさんと一緒につくった森を大切に守っていこうと感じ、この活動を続けてくることができました。
     
    私たちがマングローブ林の再生プロジェクトを行って学んだこととして、マングローブ林の周辺に住む地域の方々が中心となって活動をしていくと、植林が終わった後も、森はしっかりと守られていくことがわかりました。こうした今までの経験、知識をもとに、日本の政府、外務省を通してODAという資金をいただいて、このN連のラノーンプロジェクトを始めました。
     
    このプロジェクトはマングローブ林を守りながらその地域の住民の収入も向上させること、そして気候変動に適応できるようにすることを考えて行いました。このプロジェクトは2021年から始め、2年以上続けてきました。そして、みなさんが報告したように、さまざまな活動が行われています。プロジェクトを持続可能なものにするために、村の方々が活動をより発展させていくことができるように、地域の開発とともに環境を守っていくことを考えてきました。そうした今までの活動をより良くするために、今回の訪日研修が行われました。この研修では、何よりも村の方々が、今後プロジェクトが終わった後も自分たちで活動を継続していけるようにすることを目指しています。
     
    今回の訪日研修で訪れた場所には、私たちの場所(ラノーン)と共通するところがたくさんあります。そのため、日本で成功した例を学んで、自分たちが村に帰ったら、自分たちの活動に取り入れられることを話し、村のみなさんは自信ができました。

    タイだけではなく、日本も含めて、世界中で気候変動による被害を感じていると思います。最近、気候変動による変化が増しています。海岸地域は、住んでいる住民の方々は社会的には弱者層になっており、そして、一番気候変動の影響を受けている地域でもあります。そのため、このプロジェクトを通して、みなさんが知識を持ち、気候変動に適応できるようにするために、さまざまな活動を行ってきました。

    これで終わりではなく、今後も弱者層の方々への支援、知識・啓発活動は大変大切なことです。海外地域に住んでいる方々にとって、気候変動も自然のことも考えて開発していくことは大事だと思っています。この地域に参加している4つの地域は、今後モデルケースとして、活動の内容を発信・普及していくことも考えています。

    4. 各村の住民リーダーの声
    これまでのタイでの活動と、今回の日本での研修でどんなことを学び、どんなことを得られたのか。そしてその学び得たことを糧にして、どんな目標を持ったのか、住民リーダーのみなさん、ひとりひとりに一言で書いて表現してもらいました。

    <住民リーダーのみなさんが書いた言葉>
    「友好」「国境はない」「目標を持つ」「感謝」「LOVE」「信じる」「笑顔」「あきらめない」「豊かな暮らし」「失敗しても大丈夫」「一歩ずつ歩く」「知識」「継続」「雨上がりの空」「協力」「支えあう」

    言葉にどんな意味が込められているのかを、いくつか話してもらいました。

    「国境はない」プーン氏(タイ天然資源・環境省/ヤギ&森林再生グループ)

    私はプーンと申します。2009年に香川県四国研修センターで農業の研修をしました。
    この言葉の意味は、タイと日本は大変離れていて、文化も違いますが、お互いのことをわかって、知識や経験などを通して、国境を越えて、心で通じることができる、ということです。

    「あきらめない」デーン氏(ラオ島村長/島民グループ相談役)

    あきらめないこと、地域を強くするためにみんなで協力し合って、グループをつくって、何があってもあきらめないで進めていくことを、タイに帰ったら村の住民の方々に伝えていきたいと思います。日本の研修先では被災地を視察させていただきましたが、そこでは、地域の方々がグループをつくって復興をすることができました。それにとても感動しました。タイの住民の方々にも伝えていきたいと思います。あきらめないことです。

    「継続」ポンティップ氏(主婦/女性グループ会長)

    視察先では様々な日本の方々の話を聞きましたが、被災地で復興を成功させることができた方々の話では、継続することがとても大事です。何をやっていてもやめないこと、継続することが一番大事です。

    「失敗しても大丈夫」ルット氏(オイスカスタッフ/ラオ島担当)

    視察先のゆりあげ港朝市の共同組合の櫻井理事長のお話の中で、「失敗しても大丈夫です。でもやめることはだめです。例えば1回失敗して、なぜ失敗するかをみます。そして続けていきます。でも1回、2回失敗してやめてしまうと、その地域はずっとそのままです。」ということが一番印象的でした。これを聞いて、島の若い世代である自分にとって、とても励みになりました。これからも、帰ってから自分たちの地域を一生懸命頑張って開発、発展させていきたいと考えています。失敗してもやめないで続けていきます。

    「協力」ナ氏(オイスカスタッフ/ンガオ村担当)

    被災地で見学させていただき、津波の被害の映像などを見ました。被害のあと、被災地には何もありませんでしたが、地域の方々がグループなどをつくって協力し合い、励まし合って、その被災地は活性化しました。ですから、それを見て、自分が学んだことだと思いましたので、今回の研修で学んだことを伝えるために、「協力」という言葉を選びました。

    「笑顔」スチャート氏(漁師/島民グループ事務局長)

    今回の研修に参加して気づいたことは、笑顔は私とあなたの架け橋になってくれるということです。そして笑顔は愛のシンボルでもあります。笑顔は協力のシンボルでもあります。友情のシンボルでもあります。そして成功のシンボルでもあります。これに気付いたのは2日目の海岸林の再生プロジェクトの作業の中です。日本の方々と一緒に作業に参加し、お互いわからないことはありますが、笑顔で交流をすることができて、活動を終わらせることができました。それで気づいたのです。

    最後に、春日駐在代表がこれらの言葉をまとめ、締めくくりとしました。
    「私たちの間に国境はありません。どんな困難にも立ち向かい、あきらめず、そして努力を継続し、やり続ける。「失敗をしても大丈夫」と前向きに進んでいく。そして共に協力して取り組んでいく。そうすることで私たちの力に変えていく。そしてやがて世界を笑顔に変えていく。」というような私たちのプロジェクトのストーリーになっていることに気づきました。


    本イベントにつきましてはYouTubeでアーカイブを視聴することができます。上記レポートに掲載できなかった話もございますので、より詳しく聞きたい方はぜひご視聴ください。

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