※オイスカ誌2023年3月号に掲載した国内ニュースをまとめて紹介します
■「海岸林再生プロジェクト」
高校生・大学生海岸林リーダー誕生 ボランティアによる本数調整伐も
宮城県名取市で進む「海岸林再生プロジェクト」では、将来にわたって海岸林を守り育てる地元の若者の育成を目指し、アイベックスエアラインズ株式会社との共催で、宮城県内の高校生・大学生を対象にした読書感想文コンクールを開催。コンクールで入賞した4名を海岸林リーダー(以下、リーダー)に任命しました。彼らにはさまざまな学びを得ながら、同世代の若者たちへの発信などに取り組んでもらっています。
2022年12月9〜11日、リーダー一行は、将来必要となる名取市の海岸林の保全について学ぶため、福岡県と佐賀県の海岸林を訪問。福岡の生の松原では、大きく育った海岸林を視察したほか、佐賀の虹の松原では、日頃から保全活動に参加している県立唐津南高校の生徒らと共に、除伐作業を体験しました。
松葉を使ったサイダーや化粧品などの開発、販売に携わっている生徒から話を聞いたリーダーの和泉壮汰さん(大学3年生)は、「名取でのボランティアでは草取りや溝切りなどをして、クロマツの保育管理作業をしてきたので、クロマツは守るものと思っていたが、ここでは活用する段階になっていて驚いた」と話し、熱心に質問をしながら情報を集めていました。また、虹の松原の保全推進団体であるNPO法人唐津環境防災推進機構KANNEの藤田和歌子理事長から、同地での活動内容や現在抱えている課題などについてレクチャーを受け、あらためて海岸林の役割や保全活動の重要性を認識した様子でした。
また、23年1月21日には、ボランティアによる本数調整伐(間伐)が4名の指導員の下で行われ、普段から活動に参加している地元のボランティアリピーターに交じり、活動するリーダーの姿も見られました。
プロジェクトでは、昨年度から本数調整伐を始めましたが、ボランティアの手で実施するのは今回が初めて。参加者は、作業前に佐々木廣一統括による講習を受け、本数調整伐の目的や、伐採の方法、安全管理などについて学びました。今回伐採を行ったのは15年の植栽地で、胸高直径(地面から約120㎝のところ)が10㎝ほどに成長したクロマツ。作業に慣れたボランティアメンバーが多く、切り倒す作業はスムーズでしたが、5mにも成長したクロマツは重さが20㎏以上になっているものもあり、林外に運び出す作業に苦労をする姿が見られました。長年ボランティアに参加して、クロマツが順調に育つように世話を続けてきたメンバーからは、「強い海岸林を育てるためと、目的はわかっているけど、やっぱり切るのはかわいそう」といった声も聞かれました。
この日の夕方には、リーダーによる活動報告会が仙台空港で開かれ、本数調整伐に参加したボランティアのほか、アイベックスエアラインズ社員や読書感想文コンクール参加者ら約30名が、会場、またオンラインで聴講しました。今回の報告会では、九州地域の海岸林での体験を通じた学びや、今後取り組んでいきたいことなどをそれぞれが発表し、若者世代を代表する海岸林リーダーとして、これからも名取の海岸林を守っていくことを宣言しました。
■オイスカ4センター支援連携サミット
OBとの連携強化を目指した意見交換 カンボジア・モンゴルからの事例発表も
23年1月28日、オイスカ西日本研修センターで、「日本で学んだ海外研修生のSDGsへの貢献」をテーマに、訪日研修生OBによる活動事例発表会が行われました。西日本支部会員や地域で活動を支えてくださっている方々など、約150名が集まり、センター卒業後に母国で活躍するOBたちの取り組みや現地で抱える課題などに関する発表に耳を傾けました。
この発表会は、オイスカ4センター支援連携サミットの公開プログラムとして実施されたもので、今回はカンボジアとモンゴルからそれぞれ現地でオイスカ活動を支ている訪日研修生OBを招聘。また、ミャンマーからは動画での報告がなされました。
16年から1年間、西日本研修センターで学んだモンゴルのザグダさんは、農業研究員としてウムヌゴビ県ダランザドガド市のアグロパークに勤務しており、厳しい環境のゴビ砂漠での農業開発に従事しています。気候変動の影響や、他の産業への労働人口の流出などの課題に直面しながらも、新たな技術開発にも意欲的で、ゴビ砂漠初となる稲作にも挑戦したいと話しました。また、オイスカの活動を発展させるために、ビジネスセクターへの参入も欠かせないと、自身の失敗事例も含めて紹介したカンボジアのソバンナさんの報告には、「オイスカの会員らが、起業支援などを行うような仕組みを作ったらどうか」といった提案が会場から寄せられました。
今回が3回目となったサミット。来年は、四国研修センターと四国支部が事務局となって実施される予定です。