2022年3月4日

「海岸林再生プロジェクト」より強靭な海岸防災林を目指して約1万7千本の本数調整伐を実施 ほか【オイスカ誌ニュース】

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  • ※オイスカ誌2022年3月号に掲載した国内ニュースをまとめてご紹介します


    「海岸林再生プロジェクト」
     より強靭な海岸防災林を目指して 約1万7千本の本数調整伐を実施

    チェーンソーを使い、クロマツを切り倒す

     宮城県名取市で進む「海岸林再生プロジェクト」では、1月17日から約2ヵ月にわたって本数調整伐(混み合った保安林において、樹木の健全な成長を促進し、災害に強い森林を育てるために伐採する作業)を実施。2014年に植栽した約16haのうち10ha程度を対象に、約1万7千本のクロマツを伐採しました。

     東北の被災海岸林では1haあたり約5千本を植えており、樹間は約1.4mあるものの、当プロジェクトでは隣り合うマツの枝同士がぶつかり合い、植栽地の中に入ることが困難なほどに茂っています。密度が高いことで、地面に近い下枝が枯れ上がりますが、伐採によってこれを抑えつつ、豊富な枝葉を蓄えた、より高く、太い木を育てると同時に、地中の根もより広く、深く成長させることで、強風や飛塩、飛砂を防ぎ、津波に対する減衰効果を発揮する森林に仕立てます。数十年かけて本数調整を繰り返し、1haあたり800〜1千本にまで減らしますが、今回はその1回目の伐採です。さまざまな生育状況の木がある中、木を選別せず、海岸線に沿って列状に伐採。 2列おきに伐採する「1伐2残(1列伐って2列残す)」と言われる方法で、約33%減らします。 伐採後のクロマツを林内に放置するとマツクイムシなどの病虫害の発生源となるため、すべて林外に搬出し、チップやバーク堆肥などとして適正に再利用する予定です。

     寒風が吹きすさぶ中で作業を担った宮城中央森林組合の作業員の中には、「自分で植えた木を自分で切るのは、林業マンとして非常に稀な経験」と話す人もいました。昨年5月に試験的な伐採を実施したものの、大面積で効率よく、 安全に作業ができるよう、初日には、プロジェクトの佐々木廣一統括から入念な説明がなされました。チェーンソーで切り倒したクロマツは5mに育っており、枝が多く、幹が太いものは20 ㎏以上にも感じるといいます。そのマツを作業道まで運ぶ作業が繰り返されました。

     東日本大震災で被災した海岸林は約3700ha。かつてない規模での再生が各地で進んでいますが、本数調整伐への実践ノウハウも前例がありません。そうした中、当プロジェクトでは、伐採タイミングを逃すことなく着手できました。1月末には林野庁や宮城県庁、森林総合研究所などから31名の見学者を受け入れたほか、新聞やテレビなど地元メディアでも取り上げられ、そうした報道を目にした市民からは「もうそんなに大きくなっているのかと驚いた」といった声も聞かれました。

     3月19日から今年のボランティアの受け入れがスタートし、11月まで毎月活動を行う予定です。下刈り、クズやフジなどのツル切り、外来種ニセアカシアなどの除伐といったプロにお願いする作業もありますが、排水対策やゴミ拾いなど、ボランティアの皆さんの協力が必要な作業もたくさんあります。皆さんのご参加をお待ちしています。

    伐採したクロマツを作業道までの約20mほど引きずって運び出す。
    「切るのは簡単だが、搬出が大変」といった声が聞かれるほどの重労働。多い日は1日500本近く運び出す

    渡辺利夫会長が瑞宝中綬章を受章

    渡辺利夫会長

     令和3(2021)年秋の叙勲において、オイスカの渡辺利夫会長が瑞宝中綬章を受章しました。

     渡辺会長は1939(昭和14年)生まれの82歳。山梨県甲府市出身。慶應義塾大学経済学部を卒業、同大学院経済学研究科修了、経済学博士。筑波大学教授、東京工業大学教授を経て、2000年に拓殖大学に奉職。国際開発学部の新設に尽力し学部長、学長、総長、学事顧問を経て現在、顧問。その間、外務省国際協力有識者会議議長や日本学術会議会員、アジア政経学会理事長などの公職を歴任、わが国のODA施策に貢献するとともに、50年以上にわたり無数の、そして多様な学生と交わり、後進の指導にあたりました。

     昨年末に催された叙勲祝賀会で渡辺会長は「叙勲は私という個人に与えられたものだとは、まったく考えていない。拓殖大学という由緒正しき大学に籍を置かせていただき、学部長とか学長とか教育上の職責を長い時間担わせてもらった。おめでとうと言われるのは本当に嬉しいが、私が感謝しなければならないのはすべて拓殖大学に対してだ」と、大学関係者に心からの謝意を述べました。

     オイスカの会長には拓殖大学学事顧問時代の17年6月に就任。以来、会長としての業務とともに、執筆や講演活動などに精力的に取り組んでいます。

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