「親子でつみ木」―― お母さんの心に触れた
「次はぜひ親子でつみ木をやりたいわね……、園児のお父さんやお母さんも含めて、安心して園に来てもらうきっかけにできればと思うの」「ぜひやりましょう!」。副園長の博子先生と交わした新たな「約束」を守るため、6月23日に気仙沼市の双葉保育園を訪れました。今回で3度目の訪問です。
「お久しぶり」と大人びた挨拶で、見覚えのある顔が出迎えてくれます。「憶えていてくれたの?」と聞くと得意げな顔で大きくうなずいてくれました。
継続的に訪問することで、刻々と変わりゆく街の様子を知ることができると同時に、子どもたち、先生たちとの繋がりも少しずつ深くなり、誰の髪型が変わったとか、今日は誰がいないとか、そんなことも分かるようになってきました。
今回は園児約40名に加え、親御さんが10名ほど参加し、子どもと一緒につみ木遊びを体験してくださいました。また、子どもたちに変わった様子が見られないかどうかの観察、親御さんたちの相談役、そしてつみ木の第三者的評価をしていただくために、小児科医であり、ホスピタル・プレイ・スペシャリスト(英国スティーブンソンカレッジで修学)でもある順天堂大学医学部の田中恭子准教授(小児科)にも同行していただきました。心と身体両方の専門家ということで、先生の訪問は大変喜ばれ、私たちも安心して活動に専念することができました。
つみ木の合間にお母さんやお父さんにお話を聞いて回ると、「少し揺れると過剰に怖がる」「以前通っていた保育園が津波で流され転入してきたのだが、まだ新しい環境に慣れなくてぐずる」、「こどもの赤ちゃんがえり」、「安全な遊び場の確保」などの話を伺うことができました。また田中先生との座談会でお母さん方が一生懸命聞かれていたことは、子どもの予防接種の時期のことや、アレルギーのことでした。本当にお母さんたちが相談したかったことは、特別なことや震災の影響による心理的な負担よりも、通常の生活であればあたり前なことが、今は制限されていること、などが主であったように感じます。お母様方は田中先生の言葉に本当に安心した様子でした。
特別ではなく普通のことを相談できる場がなかったのだということを、改めて実感しました。そして、特別なことや特別なケアを望まれているわけでもないことを知りました。
保育園を後にする時、お母さん方が「こんなふうにみんなで集まって、不安や愚痴、いろんな話が共有できるような場が持てたのがよかった。これからもこんな場をつくるように、頑張る!!」と前向きにおっしゃっていたことがとても嬉しく、印象的でした。そして、「遠くから本当にありがとう。みんなに助けてもらって……。」と何度も何度もお礼の言葉をいただきました。
「まだつみ木で遊びたい!!」と泣いている子、「次はスカイツリータワーを創る」と、すでに次回を楽しみにしている子がいて、後ろ髪を引かれる思いでのお別れとなりました。
実は今回、予想もしない出来事がありました。前回の訪問時、オイスカ・タイの春日駐在員がタイの子どもたちからの応援の絵を双葉保育園に持って行ったのですが、今回はそのお返しにと、保育園のみんなが書いた絵のプレゼントを準備してくれていたのです!! つみ木遊びをしている時の様子がいきいきと描かれていました。
震災というきっかけではありましたが、このように子どもたちの間でお互いを思う気持ちが芽生えて国境を越え、国際交流が生まれたことはとても素敵なことだと感じ、心が温まりました。このご縁が長く長く続きますように……。
(報告:本部啓発普及部 長野純子)