2014年2月22日

「海岸林再生プロジェクト」  合計92・89haの協定締結により 毎年10万本規模の植栽スタート

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    「海岸林」を「市民生活や地域農業を守る防潮林」と表現してその再生を目指す名取市の方針が三浦亮一副市長(右)より示された

    2月22日、宮城県名取市で「海岸林再生プロジェクト」第一回定期活動報告会(於:名取市文化会館)が開催され、担当者よりプロジェクトの進捗状況や今後の計画について市民や支援者に報告がなされました。会の冒頭、同13日に宮城県、名取市、名取市海岸林再生の会(以下、再生の会)、オイスカの四者による海岸林再生に関する協定が締結されたことが再生の会の鈴木英二会長から報告があり、同県および同市からもその経緯などが述べられました。この協定は、宮城県が新たにスタートさせた制度「みやぎ海岸林再生みんなの森林づくり活動」に基づくもので、2011年3月の東日本大震災で津波の被害を受けた県や市町村あるいは個人などが所有する海岸林の再生活動に対し、民間の活力を導入する根拠となる制度です。
    オイスカでは、震災直後より名取市の海岸におけるクロマツ林の再生を目指し、関係者らと協議を重ねてきましたが、土地所有者との協定が結ばれない限り具体的な植栽計画を立てることができず、これまでは苗木の供給を第一の目標とした育苗を中心に活動の歩を進めてきました。今回の協定締結により、オイスカと再生の会とが連携しながら自治体と協働で89・98haへの植栽および育林を担うことが決まりました。これは本格的な再生活動に向けたスタートラインに立ったことを意味しています。まずは5年の契約期間に、多くの市民の参画を得ながら〝名取市民の森〞づくりを目指します。また、名取市内の国有の海岸林については「『みどりのきずな』再生プロジェクト」の枠組みの下で、同28日に国(東北森林管理局)と協定を結びました。こちらについては今年度2・91haの植栽を行う予定です。

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    震災の爪痕が残るサイクリングロードから参加者が見ているのは葦原となった場所に建つ“愛林碑”。
    海岸林の歴史が刻まれた重要な記念碑

    全国津々浦々に広がる海岸林は、防潮や防風、飛砂防止といった明確な目的があり、 その多くは保安林に指定されています。植栽や保全は自治体によって厳しく管理され、 また独特かつ高度な技術が必要とされています。そのため、民間団体が一から抜本的な再生かつ大面積施業の協働に加わる事例は極めて稀なことであるといえます。
    報告会で名取市の佐々木一十郎市長は、「名取市海岸林再生の会のメンバーとして、家も何もかも流されてしまった被災者の方々が地域を守るために立ち上がったことはたいへん貴重なこと。今も苗木を一所懸命育てていただいている。この事業が成功するように、多くの市民の皆さん、企業・団体の皆さんに支援をお願いしたい」と述べ、会場の市民らに積極的な参画を呼び掛けました。
    翌23日に実施された視察バスツアーには50名が参加し、5月からスタートする植栽の予定地や育苗場で30㎝ ほどに育ったクロマツの苗木を見学。内陸部に住む市民の参加が多く、「これまでは海岸林の存在意義を意識したことがなかったが、とても大切なものだと理解できた」といった感想が聞かれ、海岸林再生の重要性を理解する機会となったことがうかがえました。

     

     

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