吉田です。そもそも、この沿岸環境では、人の手を加えない限り広葉樹が自然に育つことは難しいと考えました。そして、名取に設置されることになった生物多様性配慮ゾーンと、海岸林最内陸部の広葉樹母樹となることを目的に、難しいことは承知の上で広葉樹植栽を決めました。
2013年から宮城県産と皇居産広葉樹を育苗開始、2014年春に植栽開始(1年後生存率17%)、2014年秋・2015年秋・2016年秋と「3度の補植」「総植栽本数1,299本」の末、やっと成立させた広葉樹10種633本(宮城県産コナラ・ケヤキ・サクラ3種で全体の9割)。最終植栽から9年が経ち、インターンの柚原さんと生存木すべて計測しました。 「マツ材線虫病」が蔓延すると、「クロマツvs広葉樹」論争も再燃しかねません。その際の理論武装にもなると思います。
植栽から9年後の広葉樹生存率は36%でした。驚きはありません。ただし、2014年からの総植栽本数1,299本に対するいまの生育率も17%です・・・
【国有林広葉樹:砂質壌土/砂土】 【市有林広葉樹:壌土】
総植栽本数:10種・432本 総植栽本数:10種・201本
植栽生存:8種・105本 植栽生存:4種・125本
平均樹高:225㎝ 平均樹高:333㎝
平均胸高直径:2㎝ 平均胸高直径:2.9㎝
9年後生存率:24% 9年後生存率:62%
生存率 平均樹高 胸高直径 生存率 平均樹高 胸高直径
宮城産コナラ(86/145) 59% 259㎝ 2.3㎝ 宮城産コナラ(64/70) 91% 305㎝ 2.9㎝
宮城産ケヤキ(5/117) 4% 243㎝ 1.9㎝ 宮城産ケヤキ(10/38) 26% 230㎝ 1.3㎝
宮城産サクラ(11/107) 10% 229㎝ 2㎝ 宮城産サクラ(49/91) 54% 366㎝ 3.3㎝
宮城産クリ(1/1) 100% 123㎝ 1.2㎝ 宮城産クリ(2/2) 100% 174㎝ 1.3㎝
皇居産エノキ(1/45) 2% 165㎝ 1.7㎝ 実生 6種・20本:はぎ・はんのき・桐・
皇居産アカガシ(0/11) 0% 0cm 0cm ねむのき・たらのき・みずなら
皇居産スダジイ(0/5) 0% 0cm 0cm *侵略的外来種ニセアカシアの侵入あり・
皇居産タブノキ(1/1) 100% 176㎝ 1.4㎝
実生 3種・12本:はんのき・はぎ・やなぎ
【海岸林中央部最内陸側 国有林 約500m×2列 砂質壌土・砂土】
500mの北半分(1工区)は砂質壌土で乾燥気味。南半分(2工区)はこれぞ山砂。乾燥そのもの。北と南で生育状況が大きく異なるものの、土壌の3要素はともに皆無。海からの距離は約400m。海側にクロマツがあれば、広葉樹がぎりぎり許される距離。葛が毎年押し寄せる場所。ちなみに排水口なし。林野庁から託された皇居産4種(拝領は400粒。うち発芽138本(浮種多数)、植栽に至ったのは62本)。





【仙台空港東 海岸林南部 市有林 約250m×2列 壌土】
地元業者が森林法違反で違法土砂採取した曰くつきの土。粘土質で多湿。排水溝はボランティアで作ったものの、排水口をつくるのは盛土が固すぎて不可能でした。海からの距離は400m以上。海側にクロマツがあれば、広葉樹がぎりぎり許される距離。葛が毎年押し寄せる場所。





全体の印象としては、思っていた以上に良い結果ながら、直径が細く、枝葉も少なく、樹高も低い!内陸側の広葉樹母樹林の形成には至っていない。樹種別に言えば、コナラの強さが際立った。サクラ類はもう少し善戦すると思っていた。ケヤキの枯死率は予想以上。クリは3本しか植林できなかったが、しぶとく生きている(ただし、9年経っても樹高1m)。エノキには期待したが残念。実生苗の侵入・生育も予想よりずっと低い。
枯死の要因は、これまでのブログ(カテゴリー「広葉樹」)でも縷々書いていますが、風環境と土壌(国有林側は乾燥しすぎ、市有林側は多湿気味)に尽きます。①クロマツが東からの潮風の壁となる前に枯損したこと、②4月頃の「蔵王おろし」の寒風・乾風に耐えられなかったこと、③1本あたり4リットルの良質土・液肥・給水ポリマーを使っても植栽直後の、乾燥と貧栄養土壌に耐えられなかったこと、④海岸林最内陸ゆえ葛に祟られ、葛刈りのときに誤伐の憂き目にあったこと、⑤樹高が1mを超えたあたりで枯死が相次いだことが、印象に残ります。虫害や高温障害もあったと思います。
クロマツの何倍も何倍もコストと労力をかけて作業しない限り、この環境での広葉樹植栽は難しいです。極めて小面積で懇ろに実施するのと、事業規模で実施するのとでは、さらに大きな違いが出ると感じます。ですが、クロマツ万能論一辺倒ではなく、内陸側の多様性や複層林化も目指したいです。
こんにちは、インターンの柚原です。
10月24、25日は広葉樹毎木調査と松枯れ調査を行いました。
吉田さんより、海岸林中のマツクイムシ病の実態やキノコや動物の話をして頂いておりますので、私からは広葉樹毎木調査に焦点を当ててお伝えします!
私たちの現場で海岸林といえばもちろんクロマツですが、実は広葉樹を植林した場所が2ヶ所あるのはご存知でしょうか。
今回は5年ぶりにその広葉樹植林地において毎木調査を行いました!

一ヶ所目はこちらです。クロマツ林の外側に2列植えられた場所です。
一見見た感じ、ポツポツとある感じでしょうか‥早速調べてみると、ほとんどが枯死しているか弱々しい状況でした。全体の生存率は24%でした。
そして生き残り樹種は、圧倒的に“コナラ”。
実はこの場所には、コナラ、サクラ、ケヤキ、エノキ、クリなど9種の広葉樹が植林されたようですが、樹種によってかなり生存に差が出ていました。(例えば、コナラは59%、サクラ10%、ケヤキ4%)
生存率の高いコナラですが、葉や枝が奇形している帯化した個体や病気と思われる斑点が葉にある個体、塩害の症状と思われる先端部からの枯れが見られる個体も複数あり、なかなかに厳しい状況であると感じました。


この場所は現場の中では内陸側ですが、やはり塩の影響は広葉樹にとって大きいのか。そして、盛土の質(粘土質、砂質)も影響しているのでしょう。
また、自生している植物(自然に生えてきた萩やタブノキ)も印象的でした。明らかに植林した木よりも生育も状態も良かったです。
隣のクロマツを見ると、当然ではありますが広葉樹と比較してかなり成長が良いと感じました。クロマツの“強さ”が伺えます。
広葉樹の厳しさ、海岸林としてクロマツがいかにして選ばれたのかを考えさせられるのです‥
当たり前ですが、こんなにも植物に差があるとは。適材適所と言いますが、本当にそれを体感しました。
2ヶ所目の広葉樹植林地は、広葉樹の外側に一列クロマツが植えられてしまった場所で、かなり周囲が繁った場所でしたが、1ヶ所目よりも生存率は体感かなり高かったです。
コナラに加えて、クリやサクラもかなり生き残っており、樹高は高いもので4〜5mのものもありました。
ここは植林地の中でも末端域であり、将来混合林として、広葉樹が自生するのを期待して母樹として植林したそうです。
これからどうなっていくのか、興味深いです。
広葉樹は海岸林の現場では影の薄い存在かもしれませんが、この観察は様々な考察に繋がっていくと思います。引き続き見守っていきたいと思います。
【山形】庄内海岸林 マツ材線虫病被害(山形テレビ)
【山形】庄内海岸林 松くい虫 被害対策強化を(YTS山形テレビ) – Yahoo!ニュース
吉田です。↑ 山形テレビのニュース(1分半)、是非ご覧ください。
「マツ材線虫病被害にどう対処するか」~防除対策の考え方と実践~ (森林総合研究所)
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この写真は、三浦さんが9月末?に撮影した秋田市・秋田港の北「夕日の松原」です。今年の東北全体は、大変深刻な松クイ被害になってしまいました。
クズに負けたマツたち
お久しぶりです。浅野です。
今年もあと2か月で終わり…早いですね。
今年も6月から9月まで、のべ1000人を超えるボランティアの方々と共にクズ退治に取り組みました!
毎年やっている箇所、今年初めて手を付けた箇所など様々でしたが手を付けることができたエリアのマツは皆さんのおかげで元気に太陽を浴びることができています!






ただ、皆さんに助けていただけた運のいいマツだけではないのです…。
今年の夏も暑すぎて8月は一切ボランティアの作業はせず、さすがのプロチームでも作業がほぼできませんでした。プロチームはただでさえ少数精鋭で取り組んでいただいているため、クズ繁茂エリアすべてをカバーすることはできず…。
9月に入ってから手を付けた一部のエリアは時すでに遅しでした…。ボランティアの皆さんにもいつもお伝えしている〝放っておくとこうなる〟が私たちの現場にも出てしまいました。




今年間に合わなかったエリアには来年も元気にクズが出てきてしまうでしょう…。
松くい虫対策にクズの駆除と来年も大忙しの1年になりそうですが、ボランティアの皆さん、現場でお待ちしています!!!
【福島北部】常磐道沿いなどのマツ材線虫病被害
吉田です。今年3月から「越冬枯れ」が明確になった名取の松枯れ被害をずっと記録してきました。これから12月ぐらいまで枯れが進行し続けるのかもしれません。ですが、11月の福岡・宮城・宮城・岐阜・愛知の出張ロード前に、もう一度落ち着いて状況把握をと思い、11月1・2日に調査に向かいました。
往路の常磐道沿い、思わず写真を撮ってしまいました。いわき市から明らかに被害木が増え、南相馬以北は特に酷いと感じました。宮城県内に入ると松はあまりなく、ぱっと見、被害は確認できませんでした。仙台空港ICと名取IC施設内などは、あらためて確認しに行きたいと思ってます。














下記は相馬市の「松川浦」北部の9月の様子です。




「マツ材線虫病被害にどう対処するか」~防除対策の考え方と実践~ (森林総合研究所)
10月のいきもの ~ニホンカモシカなど~
吉田です。私にとって、今年のいきものは何といっても「マツノマダラカミキリ」と「マツノザイセンチュウ」です。いわゆる「松くい虫病」の名取海岸林・内陸防風林への侵入。その暗澹たる気持ちは、ちょっと横に置いて、10月24・25日、柚原さんとの広葉樹毎木調査と松枯れ調査した時の写真です。
マツクイムシ病の枯死木は、キツツキがカミキリの幼虫を探してつついた穴だらけ。10月3日に見た時の小さな穴とはまるで違いました。この1ヵ月弱、キツツキがたくさん来ていたんですね。枯れた樹皮もはがしてました。地元の三浦さん曰く「コゲラもアカゲラも確認しています。餌になる幼虫を探して松林を巡回しているはずです。穴がたくさんあいているということは現在進行形。待ってると見れるかもです」とのこと。次は待ってみよう。アカゲラはまだ見たことないし。





地元農家の間で噂になっていた「海岸林付近にニホンカモシカがいる」という話は本当でした。地元の人が自分で撮った写真を見せてくれました。たしかにクロマツの防風垣が写っています。2011年頃、広葉樹のタネを拾うために、山奥の名取と仙台市境付近で、何度もカモシカを見ました。はぐれて、名取川を河川敷伝いに降りてきたのかもしれません。名取の海岸林にカモシカがいるなんてことは普通ではない。
イノシシを見た人もいるそうです。畑が荒らされたという話を聞きました。海岸林内でも、落葉したクロマツの葉が多い場所を鼻で掘ってミミズを探した跡は珍しくありません。私はまだイノシシも見ていませんが、5月にアナグマを撮影しました。アナグマの掘った穴は、キツネが再利用するようですね。柚原さんと歩き回っているときに、今まで見た穴と比べてとびっきり大きい穴を見つけました。
次はクマか・・・いくら何でもここまで来るとは・・・今回は鳥の写真がない写真報告です。

























【インターン】宮城2025全国育樹祭〜育林交流集会に参加して〜
こんにちは、インターンの柚原です。
今回は10月5日に開催された「育林交流集会」についてお伝えします。
概要や重要な情報は既に吉田さんと寺田さんが報告して下さっているので、私からは少し焦点をずらした個人的な感想をお伝えします。

はじめに、集会のオープニングを務めた宮城県農業高校・科学部の方達は本当に圧巻でした。
研究内容はもちろんですが、プレゼンテーションが非常に印象的でした。
おそらくこれまで何度も発表する機会があったとは思われますが、スライドの作り、喋り方、聞き手へのアプローチ、至る所に工夫がなされていました。
そしてまた、個人的に気になったのは、有機酸による植物耐塩性と乾燥耐性の向上。
実は、ウズベキスタン砂漠化防止プロジェクトの冨樫先生からも伺ったことがありました。
プロジェクトに限らずとも、カラカルパクスタンで活動する中で切っても切り離せない現地の課題が、深刻な塩害です。
ということで、有機酸の持つ力に着目して、少々調べました。
酢酸を植物に付与すると、傷害応答に関わる植物ホルモンの一種であるジャスモン酸が合成され、ストレス耐性に関与する下流遺伝子ネットワークが活性化されることで、乾燥耐性が上昇するとのことです(https://www.jst.go.jp/seika/bt2019-08.html)。
さらに、酢酸やクエン酸などの有機酸は土壌中の栄養分を可溶化させたり、植物の根を強化したり‥と実は色々な側面からの力を持っているようです。
今後何かに繋がりそうな重要な情報を知ることが出来、非常にワクワクしました。
そして、集会のプレゼンターである、小西美術工藝社の福田氏、日本建築家協会の齋藤氏、オイスカの吉田部長による講演とパネルディスカッション。
3人とも一見別分野であり、話の内容も焦点もかなり異なっていました。
そんな中で繋がっていたのが、地域、現場の人とのつながりを重視する姿勢です。
小西美術工藝社の福田さんは、漆の原木のある岩手県二戸市を生産の拠点として活動を行なってきました。その話の中で、地域の方との関わり方が印象的でした。
福田さんは地域の方との関係性作りを大切にされていて、仲を深める機会を作ったり、挨拶を意識して社内の人に指導されたりしているとのことでした。
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オイスカの吉田さんは、海岸林プロジェクトを宮城県名取市で始めました。
いつも私が感じていることですが、なんと言っても吉田さんや浅野さんは名取の方やボランティアリピーター達と圧倒的に仲が良いのです。
それは、プロジェクトを共に進める仲間であり、お互いの力を尊重して高めあう関係であり、たわいなく笑い合える友達であり‥
そういった姿を見ていると、吉田さんや浅野さん達がどのようにプロジェクトを進めていたのか、そしてプロジェクトの人としての魅力がよく分かります。
何十年と続く森作りの基盤には人がいて、実はそこをどれだけ深め、繋げて強くしていくかが必然的に重要となるのです。そこに住んでいるわけでも、直接的な関係性があるわけでもなかった、厳しく言えば他所者という立場から現場で動き出し継続するには‥
これは、私も留学を通してとても考えさせられたテーマの1つでした。
そのことを改めて今回考えることができました。
名取市で育林交流集会2025 「地域と紡ぐ森林づくり」テーマで海岸林を紹介

こんにちは! インターンの寺田です。今回は宮城県/公益社団法人国土緑化推進機構が主催の、育林交流集会に参加してきました。本集会は、10月5日に開催された、第48回全国育樹祭の併催行事として開かれたものです。「地域と紡ぐ森林づくり」~次世代へ伝えるメッセージ~がテーマで、オイスカからは「海岸林再生プロジェクト」を紹介する吉田部長が、プレゼンターとして登壇されました。
集会は、宮城県農業高校・科学部の学生さんたちの司会で進行されました。高温障害で弱ったサクラに散布する、「桜色活力剤」を発明した学生さんたちの発表は、とても興味深いものでした。森づくりが次世代へつながる様子を垣間見ることができたような気がします。
その後、漆を手がける小西美術工藝社の福田氏と、日本建築家協会の齋藤氏が登壇され、森を守り、育て、そしてそれらを有効活用するサイクルについてのお話しを聞くことができました。

三人目、最後のプレゼンターとして登壇されたのが吉田部長。
プロジェクトがかなりの規模で行われており、多くの方からいただいたご寄附の話になったときは、周りから感嘆の声が聞こえ、荒れた土地が緑になっていった写真が登場したときには、観客の方々の感心したようすが見られました。こうして海岸林を次世代に伝えていく場があるのは、とても大切なことだと思います。ですが、集会のような場所に来てくださる人はほんの一部。
先日インターンで開催したオンラインイベントで、「日本の森づくり」について議論したときに、「人手不足」という言葉が何度も登場しました。森林に携わる仕事の経済的や身体的な障壁という問題以外に、森林づくりに対する日本人全体の関心の低さが原因の一部になっていると思います。吉田部長がいつも「関心のなさにつける薬はない」と仰っていますが、海岸林において、そんな「薬」をつくってみたいものです。
客席にはベテランボランティアや「名取市海岸林再生の会」の方々の姿も多く見えました。現場だけでなく、集会のような場所に足を運んでくださる方々が多いのは、海岸林に携わってきたオイスカ職員のみなさんが、まさに「地域と紡ぐ森林づくり」を実践してきたからだと思います。海岸林の大切さを伝え、安全で楽しいボランティアを10年以上開催し続けてきたことのすごさを改めて実感し、その一部に関われていることを誇りに思います。

今回、この交流集会に合わせて名取入りしましたが、集会の前には浅野さん、インターンの柚原さんと一緒に、モニタリング作業も実施しました。クロマツがどれだけ伸びて、どれだけ幹が太っているかを計測していくのですが、前回のモニタリング時との記録と見比べながら数字を記録していくとき、1本1本がきちんと成長していることがハッキリ分かり、成果が現れていることで暖かい気持ちになりました。
しかしその後、クズに覆われたクロマツが完全に枯れ切ってしまっている場所に遭遇。分かってはいましたが、クズの繁殖力の前にクロマツはこんなに無力なのだな、と改めて感じました。冬に入り、クズも枯れ始める時期になりますが、来年はクズにやられてしまうクロマツの数が減って、すくすく育ってくれればいいなと思います。
松くい虫病の恐ろしさ ~長野県中信地域にて~
吉田です。浅野さんとともに長野県支部を担当することになり、10月15・16日に松本・上田・佐久にお住いの役員さんを訪ねてきました。道中、松くい虫病激甚被害地を通りました。その恐ろしさを知ってもらうために写真報告します。
まずは松本市から。「日本の森林の1割は松林」と言われています。松くい虫防除はコストが高く、すべての松林を病害から守るのは不可能です。目下、県・市町村が重点地域(高度公益機能森林・地区保全森林)を指定し、「選択と集中」戦略で対策にあたっています。ですが、薬剤散布に反対する住民の存在がある地域では、行政は難しい立場に立たされています。また、その行政担当者の専門性も大きな課題の一つとよく聞きます。
そういうことも絡んでなのか、以下は想像に過ぎませんが、70年か80年前?に造林されただろうこのアカマツ林は、重点地域の指定外とし、敢えて防除(薬剤空中散布)せず、自然枯死を待って「樹種転換」を図ろうとしているのか・・・。



人家に近いところは伐採されていました(2月に通った時はまだ立ち木のままでしたが)。浅野さんが言いました。「またマツが生えてしまってますね・・・」。まず遠目が効く。そのうえ、目の付け所が流石です。樹種転換ではない・・・またいつかやられてしまうかもしれません。でも、枯れ松で放置する間に林床に光が差し、天然下種更新が進み、植えるよりもコスト安で、危険な裸地状態から早く回復し、土砂流出防備機能を果たします。行政が考えに考えた「苦肉の策」と思いました。(松しか生えない、栄養分が少ない岩山なのかもしれません)
あわせて次は、JR篠ノ井線「聖高原」駅周辺の写真。電車の種中から延々・・・この周辺では、こういう山は一つ二つじゃありませんでした。





名取では葛刈りが終わりましたが、東京で電車通勤するときは、「松保護士の手引き」という分厚い本をもう一度読んでいます。ほぼ松くい虫病に関する本です。ですから、松くい虫病のことが一日たりとも頭から離れません。10月23日(木)~25日(土)、生長モニタリング調査とその準備、広葉樹毎木調査と合わせ、マツクイの被害調査もします。
今後も時々、この15年訪ねてきた全国の被害地や対策を紹介しながら、過去教わったことを自分なりに振り返るきっかけにするつもりです。
みやぎ2025全国育樹祭 ~公式式典に参加して~
吉田です。47都道府県を一巡した育樹祭。運よく宮城で参加出来、光栄に思います。
若い人への目がさらに変わる2日間でした。国歌独唱、大河ドラマ「独眼竜政宗」のテーマなど終始演奏した吹奏楽部、書道パフォーマンスで全国随一の実力の仙台育英やの生徒さんたち・・・。前日のシンポジウムも含め、高校生のチカラを思い知らされる一連の行事でした。「子どもたちのために」と言いながら、上げ膳据え膳、なんでも大人がやってしまう茶番とは大違いの、本気のパフォーマンスでした。北高も宮農も、熱意と指導力のある先生方の努力の賜物なのでしょう。夢中で見ていたので、写真を撮るのを忘れました。
利府市のセキスイハイムスーパーアリーナに約4,000人が参加したと報道されましたが、県庁職員総動員だったことでしょう。数年前からの準備の賜物で、最初から最後まで、極めてスムーズな見事な運営。感服しました。

空き時間で会場を歩いていると、顔見知りだけでなく、前日のシンポジウムを聞いてくださった方など、ほんとうに色々な方から声をかけていただき、嬉しく思いました。

名取市海岸林再生の会とともに、「第48回全国育樹祭緑化功労賞」をいただきました。多くの皆さんのおかげです。あらためて、心から御礼申し上げます。


【番外】当日の宮城県産食材満載の特注弁当


【配布物一式】


