北部タイ チェンライ県での森林再生と地域開発プロジェクト

場所
タイ王国チェンライ県チェンコン郡マイチャルーン村
活動開始年
第一期 2024年3月~2029年3月(見込み)
受入機関
オイスカ・タイ総局

水源林の復活で村の生活を守る

<概要>

北部タイ チェンライ県は、山岳民族が多く暮らし、伝統的な農法として山岳部で焼畑が盛んにおこなわれてきました。かつては、生活に必要な農地の開墾に留まっていましたが、商業経済の波が山岳部まで及び、より広い農地を求め、焼畑農業が盛んにおこなわれるようになりました。そして森林の再生能力を超える焼畑利用がされるようになった結果、はげ山が連なり、水源林の山も木々を失う状況となっています。

長い河川を持つタイでは、水源林の消失は地域の村への影響ばかりではなく、下流の都市部にまで影響が及んでいます。2011年、チャオプラヤ川の氾濫による大洪水はアユタヤやバンコク周辺にも大きな被害をもたらしましたが、これも上流の水源地での森林伐採が一因であったとされています。
また、メコン川の渇水問題は多くの国々を巻き込んだ国際問題にまで発展しています。これは中国のダム建設などが大きな原因とされていますが、水源林の消失も一部の原因と考えても良いでしょう。

プロジェクト実施地のチェンライ県チェンコン郡マイチャルーン村は、水源林のふもとにあり、住民の多くは果樹栽培や稲作などの農業を営んでいます。しかし水源林の消失に伴い、山からの水量が明らかに減ったと住民たちは口々に言います。豊かな森の喪失で、野生の豚や鹿は姿を消し、野ネズミや鳥たちの数も大幅に減り、豊かな生態系をも失っています。
木々を失い、萱などの背丈の高い草に覆われた水源地には火が入りやすく、近隣の焼畑からの延焼で山林火災も頻繁に起こります。森を失うことで、人々は生活していく上での安全な環境さえも失ってしまっています。

<プロジェクトの目的>

1. 北部タイチェンライ県の劣化した森林を再生し、山の豊かさを取り戻す【植林面積およそ32ヘクタール(第1期として)】
2. 森林再生により地域の防災環境を整える
3. 周辺に住む住民グループの森林再生活動についての知識、スキルや経験を高め、住民グループが主体的に取り組みを継続していけるようにする。また天然資源環境省と協力し、政府機関や地域住民などを巻き込んで森の持続可能な再生や発展ができるよう目指す。
4. 子どもたちへの環境教育を行い、森林保全の持続可能性を高める
5. 地域住民が植林活動に積極的に参加するように促し、森林保全の意識を向上させ、協力性を高める
6. プロジェクトに参加する村人に雇用の機会を与え、収入向上を図る

マイチャルーン村のスラポン村長(右)と近隣村出身の現地スタッフのスティン

かつては山から豊かな水が流れる川だった