

北部ルソン及び北部ミンダナオにおける養蚕普及・拡大による地域住民の生活向上支援事業【N連】
養蚕普及による農民の生計向上をフィリピンの各地に広める
プロジェクト概要 期間:2025年3月~1年間(予定)
1.事業地
◆ベンゲット州トゥバ、カパンガ町
◆ヌエバビスカヤ州バヨンボン町マソック、ラトーレ
◆東ミサミス州マティナオ町、ナアワン町、オポル町
◆西ネグロス州バゴ市(バゴ研修センター)

2.事業の必要性と背景
織物の盛んなフィリピンでは、生糸を中国からの輸入に頼らず、自国による良質な生糸の生産を目指しています。そのような中、2019年当法人のネグロス島養蚕事業の実績を高く評価した比国政府(PTRI)からの要請を受けて本事業は開始されました。
当該事業地は、かつて養蚕が行われていた地域であるため一定のノウハウを持つモデル農家の存在があり普及拡大が期待されています。養蚕は農家の知識や技術習得を必要とし、時間を要するものの、特に女性に適していることから女性の役割が大きく、農村社会で歓迎されています。各地では地元州政府及び州立大学の理解と協力のもと、事業が進められています。
<これまでの養蚕事業の取り組み>
3.事業地の状況
◆ベンゲット州トゥバ町、カパンガ町
トゥバ町は一部前N連事業により桑園及び壮蚕所が整備されていますが、コロナの影響を受けて多くの農家が養蚕を学ぶ機会を逸してしまっていました。2023年度事業でのPTRIとの協働トライアルでの効果が出てきていることから周囲の農家への好影響が期待されています。一方で多くの農家がトウモロコシ栽培や僅かな果樹等での生計に頼っており、養蚕を始めるにあたっての資金的援助が必要とされています。
カパンガン町は嘗てフィリピン養蚕業黎明期の中心地であったことを受けて、地元では養蚕の再開を強く望んでおり今事業へ大きな期待が寄せられています。

◆ヌエバビスカヤ州バヨンボン町マソック、ラトーレ
前事業により壮蚕所が設置されており、桑園の状態からも養蚕が出来る農家が一部に存在していることから、周囲の農家も関心が高く養蚕への参加を希望しています。当該地域は州立大学による養蚕普及に向けて担当教員が先頭に立って桑苗づくり取り組むなど積極的な活動を展開しています。さらに地元で唯一の科学技術高校では上記大学教員婦人がネグロスバゴ研修センターで学んだ養蚕を実践しながら生徒たちへの関心を通じた親への養蚕普及を試みています。

◆東ミサミス州マンティナオ、ナウアン町
当該地域の3町は北東部に位置し、コンパクトにまとまっています。PTRI及び州政府が少数民族への雇用機会推進策として養蚕拡大に力を入れており、懸念される治安については、ほとんど問題がありません。ミンダナオ州立大学では前事業によるビニールハウス設置により桑や蔬菜の育苗に力を入れており、学生の高い関心があります。対象地の一部は農村婦人が養蚕を取り入れての複合農業を学ぶための見本農場として注目されています。農家の多くがトウモロコシやココナッツなどの果樹栽培による生計を行っており、気象条件や市場価格に左右されない養蚕に期待が寄せられています。

◆西ネグロス州バゴ研修センター
2000年頃より日本からの支援により、現在では小規模ながら蚕種製造、養蚕、製糸、織物まで一貫した工程が築かれており、関係機関からは世界に類をみない事例として注目されています。長年にわたる養蚕事業の経験と実績から蚕種製造及び養蚕技術においては国内でもトップレベルの知識と技術を有する専門家が育成されており、国内の関係機関や大学等からの見学や講義の要請も多数あります。

4.活動内容
<養蚕農家育成>
ネグロスバゴ研修センターを拠点に東ミサミス州の農民を対象にした短期研修を行います。また、ベンゲット州、ヌエバビスカヤ州の農民を対象にPTRIと協同してセミナー及びトライアルを実施します。
<桑苗植栽による桑園整備>
蚕飼育のための壮蚕所の設置及び農家への桑苗栽植等による桑園整備を行います。
<蚕具及び壮蚕所建設による施設整備>
蚕飼育のための簇等蚕具が配備され、州政府支援による壮蚕所を設置します。
<モニタリング>
担当者及びPTRI関係者によるモニタリングを定期的に行います。
【今期事業達成目標:養蚕普及のための基本的整備を行い、繭生産体制を築く】
5.本事業で目指す成果
<養蚕農家育成>
養蚕技術を習得ることにより、対象農家の80%がモデル農家として誕生すること、および農家30名が養蚕の基礎知識を習得し、セミナー及び協同トライアルを行うことにより、全員が優良繭を生産することを目指しています。
<桑苗植栽による桑園整備>
3州で50000本の優良桑苗が育ち25戸で蚕飼育が可能な体制が整うことを目指します。
<蚕具及び壮蚕所建設による施設整備>
3州にて蚕飼育のための簇等蚕具が配備され、東ミサミス州政府が新たに建設する5棟の壮蚕所や既存の壮蚕所が十分に活用されるようになることを目指します。
<モニタリング>
プロジェクトの進捗状況が都度把握されることで活動計画が効率良く展開されることを目指します。