マングローブ植林プロジェクト(インドネシア)
- 場所
- ジャワ島北岸(インドラマユ、ブレベス、ペマラン、ダマック、ジェパラ、パティ)マドゥラ島(パメカサン)
- 活動開始年
- 1990年7月
- 受入機関
- 内務省、中部ジャワ州政府、西ジャワ州政府、各県政府等
沿岸に起きている問題とマングローブの関係
インドネシアには3百万ha以上のマングローブがあり、世界最大の面積を占めています。しかし、マングローブは近年急速に消失しています。主な原因は魚、特にエビの養殖池への転換です。マングローブの生い茂る海岸は、養殖池に最適な土壌環境でもあることが破壊を招いてしまったのです。不幸なことに沿岸のマングローブが消失していくことと並行して、高波等による海岸の浸食が顕著になってきています。
マングローブ植林で沿岸の自然と人々を守る
人口稠密なジャワ島の北岸は、マングローブの消失と沿岸浸食の被害が最も顕著に表れている地域でもあります。気候変動の影響でしょうか、近年は雨季に異常な高波が何日も続き、沿岸が侵食されたり、海面上昇が起きるなどの被害が各地で起きています。
こうした被害を少しでも軽減し、ジャワ島北岸の人々の暮らしや陸地を守るため、これまで約3,300haのマングローブ植林を行ってきました。既にプロジェクトが始まってから25年以上が経過しており、大きく育ったマングローブをどのようにして保全していくかという課題に対しても取り組んでいます。
例えば、マングローブを保全することで成り立つような産業の創出・促進です。マングローブツーリズムの振興、マングローブを極力伐採せずマングローブとともに魚を育てる持続可能な養殖、マングローブに咲く花の密を収穫させる養蜂などの振興などに取り組んでいます。
近況・今後の方針
年を追うごとに雨季の高波が激しく沿岸を襲うようになってきています。何日も高波が続くこともありますが、それはマングローブにとって大きな脅威となります。少しずつ土壌を削っていき、時にマングローブの成木でさえも根こそぎ倒してしまうこともあるのです。この高波と大潮が重なった場合などは、居住地域にまで波が押し寄せ長い間その水が引かず、被害が拡大します。中部ジャワ州のダマック県沿岸は特に被害が顕著で沿岸のいくつかの村が水没の危機にあります。
ここではマングローブ植林だけでは防ぎきれない箇所もあり、その対策として2020年1月、コンクリート製の防波堤を築きました。この防波堤により内側の村が守られ、居住地と防波堤の間にマングローブも植えられるようになりました。これは、宮城豊彦先生(東北学院大学名誉教授)も提唱しているグリーンインフラ(マングローブ)とグレーインフラ(人工防波堤)の組み合わせによる沿岸における効率的な防災減災の試みといえます。
また、現在プロジェクトを実施している地域7カ所のうち6カ所ではマングローブツーリズムを振興するための支援を行政とともに行っており、大きな注目を浴びつつあります。残念ながら過去2年間、コロナ禍の影響で十分に実施できていませんが、コロナが治まりつつあるなか少しずつマングローブツーリズムも再開されてきました。