北部ルソン及び北部ミンダナオにおける養蚕普及・拡大による地域住民の生活向上支援事業【N連】

養蚕普及による農民の生計向上をフィリピンの各地に広める

プロジェクト概要 期間:【一年次】2025年3月~2025年2月【二年次】2026年5月~2027年4月

1.事業地

◆ベンゲット州トゥバ、カパンガ町
◆ヌエバビスカヤ州バヨンボン町マソック、ラトーレ
◆東ミサミス州マティナオ町、ナアワン町、オポル町
◆西ネグロス州バゴ市(バゴ研修センター)

2.事業の必要性と背景

 織物の盛んなフィリピンでは、生糸を中国からの輸入に頼らず、自国による良質な生糸の生産を目指しています。オイスカは1989年よりネグロス島での養蚕事業を展開しており、その実績を高く評価した比国政府(PTRI)が、同国でのさらなる養蚕普及拡大をオイスカに要請。これを受けて2019年より養蚕普及全国展開事業を開始しました。以降ネグロス州のほか、東ミサミス州、ベンゲット州、ヌエバビスカヤ州においても養蚕普及活動を継続してきました。
 
 本事業地は、かつて養蚕が行われていた地域であるため一定のノウハウを持つモデル農家の存在があり、普及拡大が期待されています。養蚕は農家の知識や技術習得を必要とし、時間を要するものの、特に女性に適していることから女性の役割が大きく、農村社会で歓迎されています。各地では地元州政府及び州立大学の理解と協力のもと、事業が進められています。

<これまでの養蚕事業の取り組み>

ネグロス養蚕普及プロジェクト

ネグロスシルク事業を基盤とする養蚕普及全国展開支援事業【N連】(2019)

養蚕普及・拡大による伝統文化の復興、発展及び地域住民の生活向上支援事業【N連】(2024年)

3.事業地の状況

◆ベンゲット州トゥバ町、カパンガ町

 当地の農家の大半は、高原野菜や果樹栽培の収益に依存しており、気候変動の影響を受けにくい養蚕に大きな関心と期待が寄せられています。
 特にカパンガン町は、かつてフィリピン養蚕業の中心地であったこともあり、地元では養蚕の再開を希望する農家の声が上がっています。
 トゥバ町、カパンガン町では、PTRI(フィリピン繊維研究所)との協働によるセミナーや、トライアルがモデル農家を対象に実施されており、新規農家からは「実践経験のあるモデル農家のアドバイスが分かりやすく有益である」と高く評価されています。

ベンゲット州農家

◆ヌエバビスカヤ州バヨンボン町マソック、ラトーレ

 州立大学による独自の桑苗づくりや、大学所有の山林での環境保全活動に合わせて桑園づくりが活発に行われており、桑苗の植栽を通じて学生たちの養蚕への関心は1年次からさらに高まっています。
 地元の高校では、ネグロス島での養蚕経験を持つ教員が養蚕を実践し、生徒たちへ積極的に紹介。その生徒を通じて、保護者らの間でも養蚕への関心が徐々に広がり始めています。また、同高校の教諭は大学教授である夫と共に、州内の村落地域からの要請を受けて、休日にボランティアで養蚕セミナーを開催するなど、熱心に取り組んでいます。

高校教員による養蚕実践

◆東ミサミス州マンティナオ、ナウアン町

 2024年度にネグロス島での養蚕研修を受けた農家が地元に戻り、近隣の農家に養蚕への参加を促す動きが各地で見られています。こうした動きを評価した山間地域の地元自治体が、桑苗づくりを支援するケースも出てきており、養蚕のさらなる広がりが期待されています。さらに、当該州を含むリージョンXの農業局長が養蚕の普及・拡大に深い理解を示しており、簡易的ではあるものの、同局による壮蚕所建設の支援が行われています。

東ミサミス州壮蚕所

◆西ネグロス州バゴ研修センター

 当研修センターにおける養蚕短期研修への評価は高く、研修修了後も担当指導員と農家が連絡を取り合っており、新規養蚕農家の不安解消と安心感につながっています。
 これまで当研修センターでの研修対象は東ミサミス州の農家のみでしたが、こうした成果を受けて、2026年度はベンゲット州およびヌエバビスカヤ州の農家に対しても研修を実施する予定となっています。

養蚕研修

4.活動内容

<養蚕農家育成>
バゴ研修センターを拠点に、3州の農家を対象にした短期研修を行うとともに、ベンゲット州、ヌエバビスカヤ州の農家を対象に、PTRIと協働でセミナーおよびトライアルを実施します。

<桑苗植栽による桑園整備>
蚕(かいこ)飼育のための壮蚕所(そうさんしょ)の設置、および農家への桑苗植栽等による桑園整備を進めます。

<蚕具及び壮蚕所建設による施設整備>
ベンゲット州およびヌエバビスカヤ州に蚕飼育のための壮蚕所を建築し、簇(まぶし)等の蚕具を配備。東ミサミス州においては、州政府の支援を得て壮蚕所を設置します。

<モニタリング>
担当者およびPTRI関係者によるモニタリングを定期的に実施します。

5.本事業で目指す成果

<養蚕農家育成>
養蚕技術の習得により、対象農家の80%がモデル農家として育成されること。また、 セミナーおよび協働トライアルを実施し、農家40名が養蚕の基礎知識を習得することで、全員が優良繭(ゆうりょうまゆ)を生産できるようになること。

<桑苗植栽による桑園整備>
3州で50,000本の優良桑苗が育成され、25戸の農家で蚕の飼育が可能な体制が整うこと。

<蚕具及び壮蚕所建設による施設整備>
2州において壮蚕所8棟の建設と簇(まぶし)等蚕具の配備が行われ、また東ミサミス州では州政府の支援により壮蚕所5棟が建築されることで、養蚕農家による優良繭の生産を可能にすること。

<モニタリング>
プロジェクトの進捗状況を随時把握することで、活動計画を効率的に展開すること。