第2回「松がつなぐあした」読書感想文コンクールの結果について

2023年2月9日

第2回「松がつなぐあした」読書感想文コンクールの審査の結果が出ました。
入賞した3名を九州地区の海岸林視察ツアー(3月に実施)にご招待します。

【入賞】
山﨑琳菜さん(大学3年生) 山﨑さんの作品はこちら
宍戸翠月さん(高校1年生) 宍戸さんの作品はこちら
柚原結女さん(大学1年生) 柚原さんの作品はこちら

【講評】
■審査委員長 小林省太

まず、「松がつなぐあした」の感想文を書いてくれた学生・生徒のみなさんにお礼を申しあげます。今回は五作品から三点を入選作として選ぶ審査でしたが、どの作品も質が高く、審査委員の意見も割れました。結果として、山﨑さん、宍戸さん、柚原さんが入選しましたが、最後まで五作品の評価にはほとんど差がつかなかったことを報告しておきます。

本の著者の立場で感想文を読み、気づいたことがいくつかあります。一つは、宮城県名取市の海岸林再生プロジェクトは、単に松林をつくる事業ではなく、震災からの復興の一環なんだということを、みなさんがきちんと理解していたことです。感想文の多くに、まだ幼かったころの震災の思い出や親から聞いた話が書かれていました。その具体性に、読んでいて引き込まれました。

もう一つは「人」です。じつは、本のなかで私が一番書きたかったことが、人の意思、人と人とのつながりの大切でした。多くの人の命を奪った震災から地域が再び立ち上がるためには、人の力、人の輪が欠かせないからです。そうした私の気持ちをみなさんが読み取ってくれたことに、感動を覚えました。海岸林はなんのためにあるのか、何が再生のために必要なのか、その答えは「人」なのです。

入選三作品の終わりの部分には、いずれにも「~したい」という決意が表されています。入選しなかった二作品にも同様の決意表明がありました。この感想文コンクールは、若い人たちの力がプロジェクトの今後には欠かせないということから出発しました。その趣旨がみなさんに通じている証だと思います。

面白いミステリーなどを書くローレンス・ブロックというアメリカの作家の本に、「読書とは、つまるところ、聴衆が参加する冒険であり、すべての物語はすべての読者にとって少しずつちがう」というくだりがありました。みなさんが、読書とこれからのさまざまな「海岸林体験」を通じて、それぞれ「少しずつちがう」冒険へと旅立っていかれることを期待しています。それが、入選されなかった方も含む五人全員に対する私の願いです。みなさんにお会いできる日を楽しみにしています。


■伊藤恵梨子(名取市 農林水産課)

まず、海岸防災林について、ほとんどの方がなじみがないなか、「松がつなぐあした」を手に取り、読書感想文コンクールに参加いただいたことに感謝いたします。震災にて海岸防災林が被害を受けた後、今日に至るまでの経過については、ほとんどの方が知らなかったと思います。そのようななか、それぞれの視点で海岸防災林と向き合い、思考を深めたことが表現されている作品でした。

山﨑さんの文章は、震災時の自分自身の経験を交えながら、海岸防災林の大きな役目を捉えており、その重要性が改めて伝わる作品でした。

宍戸さんは、なぜクロマツかという選択肢に疑問を持ちながら、クロマツに勝るものはないと感じるまでの心理描写が素直に表現されており、最後に次世代へつなげていくことの必要性について感じているところに好感を持ちました。

柚原さんは、海岸林になじみがないなか、本を通して東日本大震災、海岸林、再生プロジェクトのことを知り、海岸林プロジェクトに至るまでの経緯に感銘を受け「私自身が行動する原動力となった気がする」と表現しているところに好感を持ちました。

コンクールに参加された皆様が、将来の海岸防災林再生の担い手となってくれることを心から願っています。

 

■川崎智和(IBEXエアラインズ 運行本部)

今回の感想文は応募者皆さんのレベルが高く、選考者としては難しい審査でした。

震災による被害の甚大さに心が痛めたが、この「松がつなぐあした」を読むことにより、自然は脅威ではあるもののその恵みを実感するとともに、海岸林の復興に向けての人々の行動力、つながりによる人々のパワーに感銘を受け、新たな行動を起こしたいという思いが学生に芽生えたことは今後の貴重な人材が誕生したと感じました。

選考においては、「松がつなぐあした」を読んでこの海岸林再生プロジェクトの目的や思いを理解し、さらにはこの活動に参加したいという思いより強く表現した作品を選ばせていただきました。

今後、名取でのボランティア活動および九州への研修ツアーに参加いただき、新たな仲間とともに語り、学ぶための絶好の機会となることを期待しています。新たなリーダーの誕生を予感させる感想文でした。

 

■橋爪有子(宮城県 森林整備課)

山﨑さんは、この本を通して、復興を考えるときに人を見るだけでなく、その地域の歴史や地域の人が守ってきたものを振り返ることが大切であることに気づいた点がとても素晴らしいと思いました。また、その上でクロマツがこの地域で復興されることの意味についてもよく理解されていると感じました。震災以前より心理的な距離が縮まるように行政としても努力していかなくてはと思いました。

宍戸さんは、なぜクロマツを海岸林に植栽するのだろうという素朴な疑問を抱くなかで、ご両親の海岸林の思い出を重ね、海岸林は地域の人々の生活の一部であり、クロマツは万能ではないが勝るものはないこと、そして若者がプロジェクトに積極的に参加し、次世代につなげていく必要があることをこの本を通して理解されたところが素晴らしく、ぜひ実際に実行していただきたいと思います。

 

■吉田俊通(オイスカ GSM担当部長)

行動意欲、胸の内の表現力、独自性のある文章、理解力、共感性をポイントに審査しました。

とくに宍戸さんは、お父さんの話や本の中の森林総合研究所の中村克典さんのコメントを引用した点など、海岸林への理解力が高く、明らかな行動意欲を感じました。

山﨑さんの感想文では、「(マツが)未来の名取市の中で重要なシンボルとなるだろう」「まちを支え人々に真の安らぎを与える『マツ』のような存在に私もなりたい」という言葉に共感しました。自分に足りていない点も書きながら向上心を表現し、文章にも独自性を感じました。

柚原さんの作品は最後の部分、「私自身が行動する大きな原動力となった」「この松林に足を踏み入れたい」「松によって繋がれていく未来を私も築いてゆきたい」という表現に強い行動意欲がうかがえます。福岡出身ということで、宮城県と、研修旅行で行く福岡県との縁も感じました。

 

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